ゴールデンOKITAさん   作:アイヌ文化保存係

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永倉爺さん、登場。


生ける伝説 永倉爺さん

『杉村』と表札の書かれた御立派な武家屋敷が小樽に建っていた。ここの家主は表向きは杉村義衛と名乗ってるが、それは表向きである。小樽に住む者と軍人や近隣の刑務所滞在の人間は屋敷の人物がどのような人物で、本名がなんて名前なのか知っている。

 

「沖田さん、本当にここ?」

「その筈なんですけどね。この前、小樽で琴さん…土方さんの恋人と瓜二つのお姉さんが居たのでこっそり聞いてみたら間違いないです。そのお姉さんに、試衛館の人間でしか知らない永倉新八の話を家主にして下さいって伝えたので」

 

数日前…沖田さんは杉元が川で砂金を一生懸命探している頃、小樽の町をぶらぶらと歩いていた。当時、銃の規制は令和と比べて圧倒的に緩く、ガンショップもあり、アイヌの漁師や退役軍人達が利用していた。そのため、ライフルや散弾銃、ピストルを持つ住民も多く居ており、帯刀は厳密には法律違反だがしてても違和感はなかった。

 

『永倉さん?』

 

とそんな時に、沖田さんは1人の筋骨隆々な白髪の老人を見てしまう。その老人は最盛期とは比べて弱体化したが…衰えを感じない戦士、新撰組最強と称された男 永倉新八であった。永倉新八は『杉村』と書かれた武家屋敷の中に消えていった。暫く張り込みを続けていると、土方歳三がかつて愛した女性 琴と髪色や目の色は違うが気味が悪い程にそっくりな若い女性が出てきた。

 

『えーと、どうかしたのかな?』

『私、沖田さんって言うんですけど…新撰組のファンなんですよ!!』

『そうなの?私は市川真琴。新聞記者よ』

 

その女性、市川真琴と仲良くなった沖田さんは、真琴に新撰組の初期メンバーしか知らない永倉新八と土方歳三の話を教えて、それを家主に伝えるように言ったのだ。そして、アポをとって今日来たわけである。

 

「な、感じです!いやー、遠目でしたけど…永倉さん、全く衰えて無かったですよ」

「おい、誰が衰えて無いって?」

 

と、後ろから声がかけられた。だが、沖田さんはもちろんのこと日露戦争帰りの歴戦の兵士である杉元、森で神秘が色濃く残る試される大地と共に狩猟生活を送るアシリパさん、埋葬機関の1人として吸血鬼を屠り続けたヒンメルが声をかけられるまで気付かなかった。

後ろを振り向くと、そこには仕込み杖である刀を担いだ筋骨隆々で白髪の老人が立っていた。衰えていない肉体は流石であるが、財布がはみ出した腹巻き、下駄、咥えたキセルのタバコと言った感じにイケテルお爺ちゃんファッションを決める永倉新八(Fate)お爺ちゃんであった。

 

「真琴のヤツから聞いた時はガキの悪戯かと思ったが、マジなようだな。沖田」

「はじめまして、杉村さん……いいえお久し振りです、永倉さん」

 

転生を果たした沖田総司、そして明治時代まで新撰組を伝えて生き延びた永倉新八。両者が再びここにであった。

 

「しかし、アイヌの猟師の子供、埋葬機関所属のエクソシスト、日露戦争帰りの兵隊さんか?どんな組み合わせだ。

そこのお前さん、随分鍛えた身体してるな。名前は?」

 

永倉爺さんは杉元に興味が有るのだろう、杉元の顔を覗き込む。永倉爺さんは新撰組でも珍しく、剣だけでなく拳を含めた体術の達人でもある。だからこそ、杉元の体つきを見て、ただ者ではないと判断したのだろう。

 

「杉元佐一だ」

「杉元か…お前さん、ちょっと握手してから袖を握りあいっこしようや」

 

本物の達人同士なら刀と刀がぶつかっただけで、一合つばぜり合いしただけで考えや力量が分かると言われている。そしてそれは剣術の達人ではなく、体術の達人も同じと言えるだろう。永倉爺さんに言われ、杉元は永倉爺さんと握手をして…次に柔道の掴み合いを行う。

 

(この爺さん…マジで還暦過ぎてるのか!?重心がどんだけ底なんだよ!!見えない…まるで地球にばかでかい大木が生えてるように!!)

(若いのに大したもんだ!!ここまで見込みが有るのはなかなかいない!!)

 

お互いにそう思ってると、永倉が構えを解いた。

 

「おっと、このままじゃ殺し合いになりかねない。気に入った!お前さんは若い頃の土方歳三に似てるしな。

中に入れよ、ゆっくりしていけ。お前達の話を聞かせてくれや」

 

永倉爺さんは杉元の背中をバンバンと叩き、笑顔で沖田さんご一行を屋敷の中に入れたのだった。

 

応接間。

 

「全員酒で良いか?サッポロビールってキンキンに冷えた旨いヤツが有る。飲むときゅーときて、旨いぞ」

「永倉さん!?まだ朝なんですけど!!」

 

応接間に通された沖田さんご一行。そこで永倉爺さんからもてなしのドリンクはサッポロビールという近年発売されたばかりの、キンキンに冷えてる麦のお酒を提供されかけたが、沖田さんのツッコミで無しとなり…代わりに真琴さんが淹れてくれたお茶となった。

 

「真琴さんって土方さんの孫ですよね?」

「沖田ちゃん!?なにを「おう、良く分かったな」永倉さん!?」

 

序でに分かった事だが、市川真琴は土方歳三の孫娘のようだ。だが、土方歳三は自分の子供が誕生したことすら分からずに戦死しており、孫が居ることを知らないだろう。

 

「さて、沖田がそっくりそのまま転生したことも驚きだが。新撰組の生まれ変わり、アイヌの少女、埋葬機関のエクソシスト、ロシア帰りの兵隊さん。なんの集いだ?お前達の話を聞かせてくれや」

「おう、そうだな…先ずは俺からだな」

 

杉元は語る。杉元は日露戦争で戦死した親友の頼みも有るが、未亡人となった親友の嫁であり幼馴染みのために、目の治療費と執刀医の居るアメリカまでの往復費用で200円必要なのだ。その為には、金が必要であり…幼馴染みのために北海道まできて砂金を探していた。その中、沖田さんと友人となったり、その後に刺青のあるオッサンから囚人に刻まれた刺青の暗号と埋蔵金の事を聞き、件の囚人がそのオッサンだったこと、そのオッサンが人喰いクマに喰われたこと、人喰いクマを倒すためアシリパさんや沖田さんと戦ったこと、その人喰いクマが吸血鬼…死徒であり、その専門家であるヒンメルが救援に来たこと、皆で協力して人喰いクマを倒した後…各々の目的のために埋蔵金を探す旅を始めたことを。

 

「俺は幼馴染みの目を治すため、沖田さんは俺達の協力者、アシリパさんは死んだ親父さんの敵討ちとして埋蔵金探しだ」

「なるほどな、ますます気に入ったよ杉元。沖田が懐くのも分かる。良い武士道精神だな」

 

永倉爺さんはそう言い、キセルで煙草を味わう。味わった煙草を灰皿に落とし、ヒンメルに視線を向けた。

 

「その囚人の刺青、埋蔵金とやらは気になるが…エクソシストの小僧。確か、ヒンメルだったな。

沖田の目的はだいたい分かる。杉元とアシリパの目的は聞かしてもらったが、お前さんは未だだ」

 

確かにヒンメルの目的はなんだろうか?人喰いクマとの戦いも成り行きに近いし、その後の一行への関わりも成り行きだ。

 

「そうですね、俺だけ黙ってるのもアレですし。何時かは話さないといけませんね。実は俺、普通の人間じゃないです」

「「「知ってる。致命傷受けても直ぐに復活するし」」」

「俺は本来、あり得ない存在らしいです」

「「あり得ない存在?」」

 

あり得ない存在、それはなんなのだろうか?吸血鬼が実在すること、吸血鬼は本来…死徒と言うこと、生まれつき吸血鬼は真祖と言うことなどは聞いた。ではなんなのだろうか?

 

「最上位の死徒…死徒二十七祖の番外。人間に憑依して肉体を乗っ取って乗り移るロアという吸血鬼と人間の混血で産まれました」

 

なんということでしょう。ヒンメルは最上位の吸血鬼と人間の混血だったのだ。しかし、永倉爺さんが異を唱える。

 

「ちょっと待ちな。ワシは新撰組の名誉回復運動を行いながら、北海道では軍人のわけぇのや看守に剣術や体術を教えた。当然、軍上層部や政府が隠す魔術とやら神秘とやらは聞いたことがある。だがな、吸血鬼は混血が存在しない、子供が出来ないと聞いたぞ」

 

そう、吸血鬼は真祖も死徒も子供が出来ない、子孫が残せないのだ。

 

「はい。偶然が重なった結果です。母は若くして俺を妊娠し、妊娠中にロアの転生体に選ばれて乗っ取られました。ロアもその事は想定外だったようですが、母の身体を乗っ取ったロアの中で胎児は成長し…臨月の時、ロアは討伐されて…灰の中から俺は産声をあげました」

 

偶然が重なった結果の話だった。ヒンメルを妊娠した母親が死徒ロアに乗っ取られて、臨月の時にロアは討伐された。だが、ロアの体内で成長した赤子は人間と吸血鬼の混血として誕生し、あり得ない存在となったのだ。吸血鬼は本来、血が必要だ。普通の死徒は日光に浴びれば消滅する。だが、ヒンメルは生まれつきそれがなく…接種した栄養その物をエネルギーに変換でき、血の接種の必要がないのだ。

だが、ヒンメルの悲劇はここからである。

 

「永倉さんは魔術というのを知識としてはご存知みたいですね。政府や軍上層部は隠してますが、この世には魔術という不思議な力が有ります。まあ、一言で言えば物語に出てくる魔法に近いです。

その魔術の総本山であるイギリスの時計塔というところで、人体実験の限りを受けました。生きたまま燃やす、真空状態で放置する、首を切断する、砲弾の試しうちで肉片に変える、昔の拷問器具の実験台にする、真鍮で出来た杭で尻から串刺しにされて…そのまま焼く、銃で一斉射撃する…人が思い付く死因は全て試されました」

 

なんということでしょう。ヒンメルは赤子から数年間、あり得ない混血児ということだけで人権を与えられず、実験動物のように殺され続け、その分復活したのだ。

 

「時計塔のやつらはこうも言ってました、お前を調べ尽くせば魔法への扉が開かれる、生きていけない存在だから構わない、とかいろいろですね。でも、そのときでした」

 

今から数年前。時計塔とキリスト教の暴力装置 埋葬機関といざこざが発生。最上位の死徒でありながら人の心を失わなかったべ・ゼというエクソシストが何者かのリークにより、時計塔に単独乗り込み…ヒンメルを保護したのだ。

 

『生きる理由は後から見つければ良い。エクソシストになれ。私という先例が居るのだ。問題なかろう』

 

その後はべ・ゼによりドイツ語で『空』『天国』という意味のヒンメルと名付けられ、ヒンメルの体質を用いた最短距離での実践的修行が始まり…保護から数年で埋葬機関の第6席に叩き上げられたのだ。しかし、キリスト教の派閥からも戦闘力でしか見てもらえず、戦闘任務以外は村八分状態である。因みに信仰心皆無であり、聖書はキャベツの漬物の漬物石と成り果てた。

 

「日本に来たのは、魔術師のロシア人が真祖女性と北海道に来たから、その調査でした。なんか、過去の英雄を使い魔として蘇生させる実験をしてるとかで。

杉元の旦那と行動するのは…この人達と居れば、生きる理由が見つかるかもと思ったからです」

 

と語り終えたヒンメル。すると、杉元のニシパ、号泣であった。

 

「ぞれば辛いよなぁ!!俺だって村八分にされたこと有るから、お前の気持ち分かるよ!!よし!!全部終わったら、旨いもんいっぱい食べよう!!絶対見つかる!!」

 

と、そのとき…沖田さんが口を開く。

 

「あれ?でもヒンメルはなんで刀を?」

「確かにそうだな…外国の剣は使わないの?」

「任務で七夜って日本の祓魔師の方とであって、日本刀に一目惚れして刀匠の刀崎さんを紹介してもらったんです」

 

と、その時だった。呼び鈴がなり、ひょっとこお面の人物が現れた。その人物は刀を背負っているが、使うのは彼ではない。

 

「刀崎さん!?お久し振りです!!お元気でしたか!?」

 

ヒンメルがひょっとこお面の人に挨拶する。すると、その人はなぜか包丁を取り出した。どうやら、彼が刀匠の刀崎さんなのだろう。

 

「ヒンメル…良くも折ったな…折ったな…俺の刀をぉぉぉぉぉおおお!!ぶっ殺してやるぅぅぅ!!キルゼムォォォォォォオル!!」

「刀崎さん!?」

 

ヒンメル、中庭に逃亡!!だが、刀崎さんもヒンメルを追いかける。もちろん、出来たばかりのヒンメルの新しい刀は応接間に置いてだ。

因みにヒンメルの身体能力は最上位死徒や上澄みサーヴァントに匹敵する。そんなヒンメルに追い付きそうな刀崎さん…もうアンタが死徒と戦えよ。

 

「待てやぁぁあゴラァァァァア!!」

「刀崎さん!!落ち着いて落ち着いてぇぇ!!」

「みたらし団子100個献上しやがれぇぇぇえ!!」

 

 

「沖田は刀だったな。今すぐ用意できるのは…日本軍でも使われてるナマクラだけだぞ?刀匠も少なくなったしな」

「はい!」

「それと、ロシアの商人から試供品(つまりサンプル)としてもらった最新式銃はどうだ?ウィンチェスターライフル、ポンプアクションのショットガン、セミオートの拳銃などだな」

 

永倉爺さん、サポート役になる。因みに、後日…土方爺さんご一行と杉元さんご一行の兼任となる模様。

 

「永倉のニシパ。ヒンナヒンナな飯はあるか?」

「おう、アシリパちゃん。近くにライスカレーが旨い洋食屋がある。皆で行こうや」

 

因みに刀崎さんはみたらし団子を渡せば怒りは収まったとか。あと、刀崎さんはポンプアクションショットガンなどの最新銃のサンプルを永倉爺さんの許可で持ち帰った。なに、日本人の職人の作る物は質が良いし、日本は魔改造国家だ。




次回、ライスカレーでヒンナヒンナ。

沖田さん「おいしい!永倉さん、この肉って?」
永倉爺さん「カエルだが?鶏肉みたいで旨いだろ」

昔のカレーはカエルが使われていた!!

食べてみたい食事!!

  • チタタプ
  • オハウ
  • サッポロビールとライスカレー
  • ラッコ鍋
  • 杉元のオソマ
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