ようこそ同志、革命主義の教室へ   作:道瀬 昆那門

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4話を投稿して次の日起きて見たらバーに色がついていて驚きました
閲覧していただいた方、誤字脱字報告してくださった方、感想を書いてくださった方、皆様に感謝いたします

今更ですが、原作の記憶があやふやなのとBクラスの情報が少ないので今作は捏造モリモリです


第5話・啓蒙

 今僕の目の前には、Bクラスのクラスメイトたちが一人の例外なく集まってくれている。放課後の貴重な時間を、僕の話を聞くために集まってくれたことに、素直に感謝しよう。僕はひねくれものではあるけれど、だからこそ感謝は忘れてはならないと自戒している。

 

「みんな、忙しい中集まってくれてありがとう。柴田君なんて、サッカー部で忙しかったんじゃない?」

 

「え?ああいや、大丈夫だぜ。今日は活動はなかったしな!」

 

 うんうん、やっぱりノリがいい人は話をふっても合わせてくれるからやりやすい。柴田君の身体能力も彼の大きな武器だろう。

 

「ではみんなにこれまで僕が集めてきた情報と、そこから考察できることを教えようと思う」

 

 さあ、始めよう。今日一日ですべてを変えることはできない。だが、確実に今日が一歩となるために、やらなければならないことがある。

 

 

 

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 そもそもである。僕はこの学校が快適な刑務所であると気が付いた時から(実際はもっとクソみたいな環境だったわけだけど)、この学校が嫌がることは何だろうと考えていた。いくつか案もあったけど、今朝の答え合わせでSシステムやクラス対抗の仕組みについて知ったことで、明確な実行案として考え付いたことがある。

 

 ではこの学校が一番嫌がることは何か。それは停滞である。もしAクラスからDクラスまでの全生徒がクラス間闘争を放棄し、ポイントを追い求めるのをやめ、Aクラス特権をあきらめた場合、どうなるか。学校はただやる気のない生徒に毎月ポイントを振り込まなくてはならなくなる。何らかの方法で生徒に支給するポイントを減らしてもなお、生徒は生活を送ることができる。無料配布の衣料・食料はあるし、寮があるからな。それさえも打ち切れば、それは1学年を死に追いやるに等しいために、その最低限の支給をやめることはできない。生徒を競わせてこその高育だ。それがなくなれば、学校にとってただ飯を生徒に食わせるだけとなる、最悪の事態になる。

 

 もっとも、これを実行することは不可能だ。人間だれしも人より上へ、人より先へと行きたがるものだ。それに人間の欲望には際限がない。プライベートポイントがもっと欲しいと考えるのは道理であるし、その最も大きな源泉であるクラスポイントを増やそうとするのは理にかなっている。学校もそう考えてこのシステムを運用しているのだろう。

 

 加えて言うなら、この学校が単なる成績優秀者を集めているわけではないのも、この辺の事情が関与している可能性もある。Cクラス(ヤンキー)は停滞を受け入れないだろうし、Dクラス(バカ)は短期的な利益に飛びつくだろうから。Aクラスは……どうだろうな。遠目に見たことしかないからはっきりとは言えないが、プライドの高そうな人間が多いように見えた。他者より下になることは受け入れがたいだろう。

 

 ではBクラスは?これが僕の本命の策に大きく影響している。他のどのクラスでもない、Bクラスのみが僕の策の実現可能性を高めているのだ。

 

 二番目に学校が嫌がること、それはすなわち自主退学である。

 

 この学校はポイントという飴と退学という鞭で僕らを躾けている。だがそれは僕らが退学を嫌がるという前提があってこそだ。もしも退学をいとわない場合、学校側は僕らを制御する方法の一つを失う。

 

 それだけではない。この学校において、退学は死と等しい。つまり、退学を恐れない者たちは、死兵となることができる。死ぬことを恐れない兵は戦場でもっとも強い存在だ。学校に対しても、他クラスに対しても、退学を恐れなければ取れる戦略の数が増える。人がいいBクラスにとってこのメリットは大きい。

 

 さらに、退学を恐れずポジティブに考える空気ができれば、生徒は自由になる。もしかするとこれが最も大きなメリットかもしれない。学校への不信感と不満、自由への渇望があれば、面白いことができるかもしれない。僕らの世代では想像もできないことだけど、少し前の日本では大学生たちがゲバ棒もって暴れまわっていた。やりようによっては、それをこの学校で再現できるかもしれない。

 

 もっと極端なことを言えば、僕ら生徒が全員退学してしまえば、学校側にとって大打撃だ。全員なんて不可能だろうけど、そうなった未来を見てみたくもある。全生徒が退学届けをもって職員室まで行進する光景と、それを見て泡を吹く教員、『退学を使って脅していたのに逆に全員に退学されたの、どんな気持ち?ねえどんな気持ち?」と聞かれる理事長の顔が見ることができたら、僕はその瞬間に死んでもいい。いやむしろ人生でもっとも愉快な気持ちになっているその瞬間にこそ死なせてほしい。僕は大笑いしながら躊躇なく自らで首を掻き切れるだろう。もしかしたら、笑いすぎて心臓ショックで死んでしまうかもしれないな。

 

 ――話を戻そう。もちろん、全校生徒を自主退学させることは不可能だ。しかし、我がBクラスはそれが可能だ。

 

 Bクラスは良くも悪くも平凡だ。普通であればそこそこの高校へ行き、そこそこの大学へ行き、それなりに豊かな社会人になるタイプの人が集められている。僕がそう考えるのは実力云々によるものではなく、彼ら彼女らの性格によるところが大きい。顔を合わせて1か月しか経っていないが、僕はこのクラスメイト達が過剰なリスクや報酬に対して距離を置き、安定を求め、一般的な常識の中で生活しようとする人間だと考えている。逆に言えば、Bクラスの人間は足るを知る者たちだ。見事なまでにこの学校に合わない性格の人が集められている。

 

 平凡という評価には、もしかしたら苛立ちを覚える人がいるかもしれない。あるいは、馬鹿にしていると感じる人がいるかもしれない。けれど、それは僕の本意ではない。僕はこのクラスメイト達のような人を、素晴らしいと思う。彼らにはやさしさがある。思いやりがある。誠実さがある。一致団結して課題を解決しようとすることができる。今日、これまで影の薄かった僕の話を聞こうと、放課後に集まってくれたことがそれを証明している。断言してもいい、この学年でもっとも人間力に優れたクラスは、Bクラスだ。クラスメイト達は、僕がこの学校で見たかったエリートや天才ではないけれど、この学校が求めている人物像ではないけれど、それでも素晴らしいと思う。

 

 だからこそ、彼ら彼女らがこの学校にすりつぶされ、ほかのクラスの踏み台となるのを見ていたくはない。彼らには、彼らにふさわしい環境があるはずだ。そしてそれはここではない。Bクラスの同志たちよ。このクソのような学校に囚われる必要などない。自由と自立を勝ち取ろう。

 

 誰にも言えない僕の目標を、僕の心の中で高らかに宣言しよう。

 

 僕はBクラスを退学へと、そしてその先の未来へと導こう。そのために、彼らの学力とそれ以外の能力を、できるだけ高めよう。その過程で、できるだけの、ありったけの嫌がらせをこの学校に仕掛けてやる。できることならば、革命を他のクラスへと波及させてやろう。この箱庭の世界にとらわれた哀れな生徒を、できるだけ多く救ってやる。それこそを僕の使命としよう。

 

 

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「結論から言おう。卒業時にAクラスに在籍していたとしても、希望する進路に進めるとは限らない。同時に、CクラスからDクラスに在籍していたとしても、どこかしらの大学に入学できる可能性がある」

 

「にゃ、ちょっと待って?Aクラスでも希望の進路に行けないってどういうこと?」

 

 一番最初に反応したのは一之瀬だった。やはりこういう時に躊躇なく発言できる人は貴重だ。とはいえ、一之瀬にあまり発言をさせすぎるとクラスが彼女の影響を受けてしまうのが痛しかゆしではある。彼女のカリスマは脅威だ。

 

 まあいい。そうなったらそうなったらで手はある。

 

「実は今日の朝、生徒会長の堀北先輩にチャットでいくつか質問を送ったんだ。その答えがさっき帰ってきた。いろいろ情報が得られたけど、その一つに3年生の最後まで、クラス間での闘争が続くというものがあった。これは大問題だよ」

 

「えっと……?」

 

「みんなにも考えてみてほしい。普通、高校3年の12月から3月って、何をしていると思う?」

 

 神崎君がはっと息を吐いた。やはり彼は機転が利くな。

 

「神崎君。気づいたなら、言ってみて」

 

「……受験勉強、か?」

 

「そう、その時期、普通の高校3年生は受験勉強をしている。ところが僕らはクラス間闘争の真っ最中というわけだ。当然、普通の勉強に身が入るわけじゃない。堀北先輩にそういう特別な試験の内容も聞いたけど、各試験で内容は異なるという前提ながら、その多くが単純な勉強によるものではないという返答だった。つまり試験勉強は受験には結びつかない可能性が高い。

 しかも!受験期間中も外部との接触禁止は維持される。つまり、物理的に大学受験自体が不可能になるかもしれないんだ」

 

「でもよ、それだと……BクラスからDクラスの人たちは受験できないから、大学に進学できないってことにならねぇか?」

 

 今度は飯村君か。

 

「そう、その通りなんだ。もし僕らがBクラスのまま卒業した場合、大学受験ができないため自動的に浪人生になる」

 

 クラスの反応は3つに分かれた。『はぁ!?ふざけんな!』と憤る者、本当にそうなのかと懐疑的な者、何かに気づいた者。

 

 一番最後に当てはまるクラスメイトの名前を頭に入れながら、僕はつづけた。

 

「でも、そんなことはあまりに理不尽だ。強烈な不満を抱くであろう彼らが、そのまま浪人生となれば、学校側としても都合が悪い。秘密にしたい学校のことを、不満がたまった卒業生が口にしてしまうかもしれない。だから、適当な進学先を用意して、もし浪人をしたくないのならば、そして進学先から退学したくないならば、この学校のシステムや環境について話さないようにと取引を結ぶ。そうすれば、学校側の口封じはより強固なものになる。これまでの卒業生が誰一人として学校の情報を漏らしていないのも、こうやって口封じしたと考えれば辻褄が合うんだ」

 

 もちろん、そんなことはない。いくらでも反論の余地はある。それでも今はただ堂々と、彼らを目覚めさせるために声を張り上げる。

 

「逆に、Aクラス特権の進路保証100%が全く信頼できないというのは、なんとなく納得できるんじゃないかな。すこし考えただけでも、例えば成績不振の人が医学部に入学できるかといえば、それは厳しいと分かる。そうでなくても、全員が希望する進学先をすべて用意するのは不可能だ。この学校の進学保証というのは、つまるところ裏口入学だからね」

 

「じゃあAクラスなら希望する進学先に行けるって……」

 

「おそらく、事前に指定校推薦のような形でいくつかの大学の枠を用意しているんだと思う。その上で、Aクラスの人にどこに行きたいか選ばせるんだ。そうすれば()()()()()()()()()()()()()ことになるだろう?」

 

 クラスメイト達が納得と不安、そして不信感が表れた表情を浮かべるのを見て、僕は今日の目標の第一段階が成功したと分かった。

 

「だから僕は、たとえこのクラスがAクラスになっていたとしても、3年生に進学する前に自主退学しようと考えている。みんなもどうか、将来を含めて考えてほしい。この学校で何を得られるのか、何を失うのかを」




次回
浦路零人、Bクラス指導部就任
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