前略、グランドオーダーに巻き込まれました。 作:モフモフ毛玉
未だにミナト達以外が眠る早朝、ミナトは気配を感じて起きる
さて、唐突だが皆さんは顔面宝具という単語をご存知だろうか?
宝具演出で顔がアップになる事を言うらしい。
さて、昨日の一覧の中に顔面宝具持ちが居る、誰だろう?
答えは…
「やぁ!朝早くに起きて偉いね!しかも起きたらボクの美しい顔がお出迎え!こんな贅沢な事はないと思うんだけどなぁ!」
ニコニコと、愉快犯が笑う。
「…最悪の目覚めだよ」
「ひっっどいなぁ!折角ボクがこんな森の中に来てあげたのに酷いじゃないか!!」
「…?全員起きない…?」
ここまで騒いでいるのにも関わらず、誰一人として起きる気配がない。
「いやいや、私は夢魔だよ?…誰も起きないに決まってるじゃないか」
そう言って、愉快犯…レディ・アヴァロンは笑う。
「ふふ、キミの事は知ってるよ、キミの前世も、キミが体験してきた事も、キミの好みも…全て見させて貰ったよ」
そう言うと、レディアヴァロンは顔をミナトに近付ける。
「私と取引しないかい?」
「…取引?」
「そう、取引だよ。ボクから出すのは『キミが何故こっちの世界に引き込まれたか』という理由」
「……引き込まれた?」
ミナトのその言葉に、レディ・アヴァロンは首を小さく傾げて言う
「そもそも、おかしくないかな?キミの世界ではボクらはゲームのキャラクター、そしてキミは人類最後のマスターとして、そこそこの数の英霊と縁を結んで戦って居ただろう?
そんなキミが不思議な現象で気を失って、赤子になって、創作の中に呼ばれるなんて、普通は有り得ない
誰かが手引きしない限りはね」
「…何が言いたいんだ?」
「それを教える為に取引をするんだよ、どう?気になるでしょ?」
「いや、別に」
その言葉に、レディ・アヴァロンはピシリと固まる。
「そもそも、輪廻転生自体が半信半疑だったし、今こうして起きている以上は『そういうもの』だろう。理由だのグダグダ考えた所で余計だ。
今はただ人類最後のマスターの『予備』として動くだけだよ」
そう言うと椅子から立ち上がる。
「だから、お前と取引は応じない。契約も結ぶ気はない。お前が欲しいのはオレじゃない。本来は訪れない物語を読む事だろう?」
そう言い切ると、レディ・アヴァロンがプルプルと震えている
「ん?」
よく見れば、目は若干潤んでおり、その目は真っ直ぐにミナトを見つめている。
「なんだよー!ボクと契約くらいしろよー!!!昨日見ただろう!ボクはキミの味方なんだよ!?」
「愉快犯の間違いだろうが!」
「ちーがーうー!ボクが見たいのはキミが歩む英雄譚なんだ!あんな事で死なれたら後味が悪いし!ボクの気が沈む!」
そう断言するレディ・アヴァロンは、息を整えて改めてミナトを見た。
その吸い込まれそうな桃色の瞳から、ミナトは目を逸らす。
「そんなに疑うなら誓おうか?キミの命令には出来る限りは従うし、キミを夢に捕らえはしない。
…だからお願いだ、私と契約して欲しい」
そう言って、レディ・アヴァロンはミナトの手を掴み、ジッと見つめる。
「……はぁ、分かった。そもそも召喚した覚えがないぞ?」
「ああ、それはキミが彼女達を召喚した残り香を追って徒歩で来たんだよ」
何でもない事の様に、レディ・アヴァロンは答える
「特異点って徒歩で来れるのか??」
「ま、そんな疑問は良いじゃないか、さぁさぁ契約しようじゃないか!」
「朝から騒ぐな…頭に響く…」
顰めっ面で頭を抑えながら、ミナトは呟く
「失礼だね、響かせてるんだよ」
そう言うと、レディ・アヴァロンはミナトの頬を優しく両手で持ち上げ
口付けをした。
「むぐっ…!?」
離れようとするも、体は石の様に固まり身動きが取れない。
そのまま暫く、レディ・アヴァロンに好き勝手された後
「…うん…君の味は極上だよ…こんなの癖になるじゃないか」
ふふと花の様な笑顔で、妖艶に舌舐めずりをするレディ・アヴァロンはそう言ってミナトを見つめる。
「で、コレで契約は終わった訳だな?」
「そうだね、じゃあ私は君の周りに居るから」
それじゃあね、と霊体化するレディ・アヴァロンを見送ったミナトは
「……マスター、その匂い、何?」
「…ねー、誰か居たでしょ?」
(あ、あの愉快犯めぇぇぇ!!)
不機嫌なメタトロンと彦斎の対応をした後に、起きて匂いを嗅ぎギャン泣きする呼延灼を慰め、眉間に皺が寄ってるアルトリア・ランサーを宥めた。