ロドス・アイランドの事務職員   作:妖精絶対許さんマン

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ケルシー

ロドス・アイランド製薬は言葉を選ばなければドが5個ついてもおかしくないブラック企業だ。ロドスのCEOアーミヤさんを始め、最近ようやくまともに休めるようになったドクター、そしてロドスきっての仕事中毒者(ワーカーホリック)──────

 

「・・・・・・ケルシー先生」

 

「──────ヒスイか。話があるなら手短に頼む」

 

目の下に濃いクマを作りながらカルテの整理をしているのはロドス・アイランド製薬医療部門総責任者、フェリーンのケルシー先生だ。

 

「ケルシー先生、最近まったく寝てませんよね?何徹目ですか?」

 

「五徹目だが君が心配する事ではない。適度に休憩、仮眠はとっている。それにこのカルテの整理が終われば少し休むつもりだ」

 

そう言いながらケルシー先生はカルテの整理作業に戻った。なんせこのケルシー先生、他者に休むように促すわりに本人はまったく休む様子がない。どうせ自室に戻っても鉱石病の研究を一人でするつもりだろう。

 

「失礼しますねー」

 

ケルシー先生を両脇から持ち上げて肩に担ぐ。このやりとりも何回もしている。結構軽いんだよな、ケルシー先生って。

 

「・・・・・・ヒスイ。この姿勢では下着が見えてしまう」

 

「なら、下着が見えないようスカート抑えておいてください。もっというならこんなことしなくて良いように休んでください。ケルシー先生が休みをとらないと他の医療部門のオペレーター達も休みづらいんですよ」

 

「ならば私に構わず休みをとるよう伝えてくれ」

 

「そういうことはケルシー先生がアーミヤさんに直接言ってください」

 

実際、複数の医療部門オペレーターからアーミヤさんが直談判されたり、何故か俺に泣きつかれることもある。

 

「みんなケルシー先生のことが心配なんですよ。アーミヤさんやドクター、ケルシー先生はロドスにとって代えが利かない存在なんですからもっと自分を大切にしてください」

 

「代えが利かないのはロドスにいる全員だ。それにたとえ私が倒れたとしてもワルファリンやガヴィル、ルイーサがいる。ゆっくりではあるが着実に若い芽が成長している」

 

「なら、その若い芽が一端の芽になるのを自分の目で確かめて『よくやった』って褒めてあげてください」

 

喋っているといつのまにかケルシー先生の自室についていた。部屋の暗証番号を入力してドアを開ける。何度もケルシー先生を自室まで連れて帰っているから、部屋の暗証番号も覚えている。

 

「食堂で何か作ってきてもらいますから、その間にシャワーでも浴びて休んでいてください」

 

「・・・・・・わかった」

 

自室まで連れて帰ればこっちのものだ。ここまで連れて帰れば自分でシャワーなり着替えるなりいつもしてくれている。

 

「絶対に医療部門に戻らないでくださいね」

 

「何度も言わずともわかっている」

 

そう言いながら過去数回、医療部門に蜻蛉返りしていたことがある。その時は首根っこ引っ掴んで連れて帰った。

 

「レッド、いるだろ」

 

通路の影から赤いコートを着ているループス、レッドが出てきた。

 

「ん、レッドいる。ケルシー、見てれば・・・・・・いい?」

 

「ああ、いつも通りケルシー先生が抜け出そうとしたら引き止めてくれ」

 

「レッド、わかった」

 

「いつもありがとな。これやるよ」

 

入院中のチビ達が泣いた時用の飴を取り出してレッドに渡す。

 

「レッド、この飴好き」

 

飴を口に含んだレッドは通路の影に消えていった。一度気になってすぐに通路を確認したらその時には誰もいなかった。

 

 

 

 

「ケルシー先生、お待たせしました。閉まりかけてたんで軽食になりますけど──────」

 

およそ二十分後、食堂で片付けをしていたマッターホルンに頼んでサンドイッチを作ってもらってから、ケルシー先生の部屋に戻った。・・・・・・戻ったのは良いんだけど。

 

「なんでバスタオル一枚で寝てんだよ・・・・・・っ!」

 

シャワーを浴びたばっかりなのか髪は濡れていて、シャワー室からはケルシー先生の足跡が続いている。やっぱり疲れてたんじゃねえか。

 

「ケルシー先生、起きてください。濡れたままだと風邪引きますよ」

 

「・・・・・・んっ、拭いて・・・・・・」

 

寝ぼけているのか唯一身につけていたバスタオルを渡そうとしてきた。

 

「渡さんで良いから大人しくしとけっ!」

 

思わず上司に向かってタメ口を使ってしまった。急いでシャワー室からタオルを持って来て髪や腕、拭ける範囲を拭いていく。あとは寝巻きになる物を着せないと。

 

「ケルシー先生、自分で服着れますか?」

 

「・・・・・・問題ない」

 

ふらふらと覚束ない足取りでクローゼットの前まで移動・・・・・・したと思ったら巻いていたバスタオルを落としやがった!慌てて後ろを向く。普段から背中丸出しの服装、寝ぼけているとはいえ男の俺がいるのに素っ裸になる、警戒心が足りないんじゃないか?ケルシー先生にはもう少し露出度低めの服を着るように提言するか?

 

「ヒスイ・・・・・・着替えた」

 

なんでわざわざ俺を呼ぶ?しかも広げた両手はなんだ?ベッドまで連れてけってことか?ケルシー先生はもっと自分の容姿の良さを自覚すべきだ。美人さんなのを自覚してほしい。小児病棟のチビ達からケルシー先生宛の恋文を何度渡して欲しいって頼まれたか。

 

「あぁーもう!今回限りですからね!」

 

いまだに動こうとしないケルシー先生をお姫様抱っことやらでして抱き上げる。そのままベッドまで運んで寝かせて、掛け布団をかける。しばらくすると寝息が聞こえて始めた。備え付けの冷蔵庫にサンドイッチを入れ、濡れている床を拭く。最後にメモにサンドイッチが入っていることと裸を見た事の謝罪を記しておく。

 

「起きたらクビ切られねぇよな・・・・・・」

 

ケルシー先生が起きてる時に詫びの品持ってもう一回謝れねぇとな。

 

「そんじゃあケルシー先生。お休みなさい」

 

部屋の電気を消して俺も部屋を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯月◯日

 

ロドスに新しい事務職員が入職した。極東出身で『鬼』と呼ばれる極東以外ではまず姿を見かけない種族の男性、名前はヒスイと言うらしい。背も高く力も強いため戦闘オペレーターに移動するのを打診したが断られた。本人曰く戦いより裏方の方に勤めていたいらしい。今後も折を見て移動の打診を継続していく。

 

◯月△日

 

しばらくヒスイの様子を観察していると書類仕事は少々覚束ないところはあるがそれなりに出来ているようだ。その代わりに小柄なオペレーターの代わりに棚の上段の物を取る、大量の書類を一人で運んだりと力仕事全般に適性があるようだ。再度、戦闘オペレーターに移動の打診をする予定だ。

 

△月◯日

 

今日は一日通して災難な日だった。クルビアのとある移動都市に寄港した時、積み込んだコンテナの中で大量のオリジムシが繁殖していた。オリジムシの大群はロドス艦内に侵入、艦内の施設の一部を食い荒らしていた。その時に限って戦闘オペレーターの多くが外勤任務で出払っていた。その状況下で真っ先に動いたのがヒスイだと報告が上がっている。

 

オリジムシが食い荒らした壁の一部を剥ぎ取ってシャベルのように扱い、オリジムシをロドスから放り出していたそうだ。ロドスは二週間の臨時寄港、艦内修理を余儀なくされた。ヒスイは壁の一部を剥ぎ取ったことで修理費をクロージャに請求されていた。

 

⬜︎月×日

 

──────ロドスにドクターが帰還した。『石棺』で眠っている間に記憶を失ったらしい。アーミヤと話し合った結果、機転が効くヒスイを当面の補佐につけることが決定した。

 

×月⬜︎日

 

最近、モヤモヤすることが多くなった。ドクターも順調にロドスに馴染み始めた。どうやらヒスイが一役買っているようだ。戦闘オペレーター以外のオペレーターとの橋渡し、入院患者との面会もヒスイが手配している。

 

そのせいだろうか・・・・・・必然的にドクターとヒスイがロドス艦内で共にいる時間も長くなり、ヒスイと会話する機会が減ったように感じる。

 

×月×日

 

はだかみられたぁ・・・・・・

 




・ヒスイ

ロドスでケルシーに強く出れる数少ない人物。
ケルシーが徹夜するたびに回収、寝かしつけている。ヒスイがケルシーを回収、残った作業は手隙の医療オペレーター達が代わりに処理する暗黙の了解が出来上がっている。

・ケルシー
・依存度 10段階中3

ロドス医療部門総責任者。自分が徹夜している時に現れては自室に連れて行かれる。ドクターが戻ってからヒスイがドクターの補佐についたことで話をする機会が減ったことで、謎のモヤモヤ感に戸惑っている。
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