「……華園玲華さん、ですか」
ナギサは書類から視線を上げ、紅茶をひと口含んだ。
先ほどまで正義実現委員会に届けられていた報告書──その中には、ある一年生の名前が記されている。
「記録では特に強いわけでもない……はずなのですが。銃を持った一般生徒五名を、何も装備せずに瞬殺……ですか」
読み返すたび、報告の文面は常識から乖離していく。
正直、今年の一年生は特に目立つ人材はいない──そう高を括っていた自分が、少し恥ずかしくなる。
しかし、そんな人物が何の派閥にも属していないのは……不味い。何にも属さないならそれでいいのですが。確約がないとおちおち夜も眠れませんね…
(派閥外の実力者は、制御が難しい。……ふむ、一度直接お会いしましょうか)
そしてもう一つ、頭を離れない疑問がある。
──なぜ、玲華さんは武器を持っていなかったのか。
トリニティの生徒ならば、携行武器を持ち歩くのは基本のはずだ。
意図的に持たないのか、それとも……。*1
ヘンタイさんなのでしょうか?
そんな経緯で、玲華はナギサからお茶会への招待を受けた。
白磁のカップから立ちのぼる香り高い湯気。
豪奢なサロンのテーブルを挟み、ナギサが穏やかに微笑んでいる。
「本日は、お時間をいただきありがとうございます。少しお話をしたくて。アイスブレイクも楽しみたいところですが、なにぶん忙しいもので、本題にはいらしていただきます。…………」
少女説明中
(……つまりは、下手な派閥に力を持たれると困るから、『入らないなら入らないと言え、こちらで対処する』ってことか。なるほど、なるほど。うん。)
玲華は、カップを傾けながらも内心ではため息をついていた。
(……はぁー。マジでなんで俺、トリニティなんか入ったんだよ……!)
表情には出さず、優雅な笑みで答える。
「今後、どこかの派閥に属する予定はございません。というのは分かっていただきたく。」
「そうですか…残念ではありますが。そういうことならこちらも何もいえませんね。」
ナギサはわずかに頷く。
その仕草から察するに、本来なら正義実現委員会──正実──への勧誘も考えていたのだろう。
だが、玲華にその気はなかった。
(俺はヒフミと遊ぶ時間の方が万倍も大切なんだ。ぶっちゃけトリニティがどうなろうともしったこっちゃないし。)
そう胸の内で毒づきながらも、玲華は最後までお淑やかな態度を崩さなかった。
(流石ギヴォトスオジョウサマモドキだなと思いました。まる)