ぶちギレ玲華ちゃん!   作:推してまいる

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三ワ

ある日の放課後。

華園玲華と阿慈谷ヒフミは、学園近くのカフェで向かい合っていた。

白いレースのカーテンから差し込む陽光と、ほのかな焙煎の香り。

玲華はスプーンを揺らしながら、隣のヒフミを横目で見た。

 

「ふぅ……やっと今日も終わったぜ」

「お疲れさまです。玲華ちゃん、また部活の勧誘ですか?」

「ああ……何度断ったら諦めるんだろうな?あいつら。……まぁ、お前とこうしてお茶できるだけで、疲れも吹っ飛ぶわ。」

 

そう言いながら、玲華は椅子をずるりと近づけ、ヒフミの肩に軽くもたれる。

お嬢様然とした立ち居振る舞いを忘れ、幼馴染みにだけ許された距離感で甘える。

ヒフミは驚きもしない。幼い頃からの付き合いだ。

不良に絡まれれば真っ先に助けに来てくれるし、ヒフミの趣味──ブラックマーケットでモモフレンズグッズ探し──にも付き合ってくれる。

(中身はさておき、ガワだけは)完璧なお嬢様が、こんな風に素を見せるのはヒフミにだけだ。

 

ヒフミの胸中に、独占欲めいた感情が芽生えないはずがない。

玲華もそれを知ってか知らずか紅茶を口に運び、優雅にため息をつく。

 

「……お前の隣が一番落ち着つくわ」

「ふふ、もっと甘えてもいいんですよ」

「……そか、ならもう少しだけ」

 

そんなやり取りを交わしながら、二人は軽食をつまむ。

クロワッサンのバターがほどよく溶け、ジャムの甘酸っぱさが口いっぱいに広がる──至福の時間。

 

……そのはずだった。

 

ガシャァンッ!!

 

突如響く破砕音に、二人の視線が入り口へ向く。

そこには、食欲と破壊衝動を兼ね備えた面々──美食研究部が目の前で暴れていた。

 

 

 

「うわぁ……」ヒフミの声が引きつる。

近くのテーブルをなぎ倒し、クロワッサンも紅茶も空中へ飛んだ。

玲華は咄嗟にヒフミを抱き寄せ、背中で破片から庇う。

 

幸いヒフミに怪我はないようだ。

だが──

軽食が吹き飛んだこと。

自分の至福の時間が一瞬で終わったこと。

そして、ヒフミが怪我をしかけたこと。

 

……ぷつん。

 

「……おい」

低く、鋭い声が店内を刺す。

玲華は椅子を蹴って立ち上がり、制服の上着を脱ぎ捨てた。

金色の髪をひとまとめに結い上げ、その瞳は氷のように冷たい。

 

「おい、テメェら……美食屋やらなんやらしらねーけどよ。…あんま調子のんなやっ!」

 

次の瞬間、玲華の姿が掻き消えた。

一歩踏み込むごとに床板が鳴り、美食研究部員が一人、また一人と吹き飛んでいく。

テーブルを盾にしようとした部員も、カウンターの影に隠れた部員も、容赦なく引きずり出され、叩き伏せられた。

武器は一切なし。それでも反撃の隙すら与えない。

 

数十秒後──

店内は静寂を取り戻し、立っているのは玲華と、玲華に怪我はないか確認してるヒフミだけだった。

 

「……はぁ、せっかくのクロワッサンが」

「玲華ちゃんっ怪我はないですか?!」

 

その言葉に、玲華は少しだけ口元を緩めた。

ヒフミの髪を優しく撫でて今日一の笑顔でこう言った。

 

「ふっ。…怪我なんてしねぇーよ。」

 

店を出た二人の背後で、美食研究部たちが逃げる音が微かに響いていたが──玲華は一切振り返らなかった。

 

 

 

 

 

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