フルダイブ型の戦争ネトゲを始めたら、
キャラ外見が「タイプB」に自動判定されました。

……男なんですけど?

なのに、なぜか「かわいい」「姫」「守るぞ」と囲まれて、
気づけば戦場のアイドルに。

可愛いって言われても嬉しくない。

(ちょっと頑張ってみました。TSFを最初目指していたけど、ネット上のみの疑似TSFです。主人公はきっと美少年っぽい)


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第1話

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 男しかやらなそうな割と硬派な戦略ゲームを始めてみた。陣営で分かれて大人数が戦場でぶつかるFEQというファンタジーゲームだ。しかもフルダイブだから凡人なら相当エネルギーを消耗しそうだが……しかし、この手のゲームに慣れている硬派な俺にはぴったりだと思った。レオンという名前でキャラメイクを始めた。始めたのは良かったんだが。

 

「なんで外見Bなんだよ!」

 

 このゲームは本人の顔を読み取り、そこから外見が振り分けられる。そのゲームキャラが本人に似てるというわけではなく、単にAかBかがざっくり決まり、そこから調整ができる。性別の概念はない。実質的にAは男の子、Bは女の子なのだが、その概念がないのだ。かっこいい系のAか、かわいい系のBだけだ。

 

 はっきりいって余計なシステムで評判は悪いんだが、こんなゲームはどうせ男ばかりだろうから問題ないと思ってた。どうせみんなAだろと。

 

 実際その通りで、街を歩いているのは外見Aばかり! 俺以外! 残念ながらバグでもないらしい。

 一旦、頭にかぶっていたダイブヘルムを外して現実に戻った。

 

「なんでだよ! 俺は男だよ!」

 

 叫んでたらお母さんから怒られた。あっ、だめだ、現実から逃げなくては。

 もう一度、ヘルムをかぶったら、なんか周りに人が集まってる。イベントでもあるのかと、周りを見回したがよくわからない。というか周りが見えない。レーダーによるとここだけ集まってるのだが……。

 

「あ、動いた」

 

 誰かが言った。何か動いたらしい。見えないから歩いて人だかりの外へ出る。別に視界の邪魔なだけで、当たり判定がないのでお互いぶつかるということはない。だがやはり何もない。微妙な風景の街並みがあるだけ。

 

「うわっ」

 

 思わずまた叫んでしまった。みんなこっちを見てる。みんなというのは外見Aの群れ。しかも何も言わない。なんなんだ?

「お前が声かけろよ」とチャットが流れた。コミュニケーションは声を出すのではなく、チャットとして周りに伝わる。今のは彼らのギルドかパーティチャットの間違いだったらしい。「誤爆」とか言ってるし。

 

 でも並んでる面々を見たら、なかなかかっこいいな、衣装。強くてかっこいいのは当然有料らしいが……お小遣いの少ない俺が手に入れられるのはいつになるやら……。まあ、見ててもしょうがないので狩りにでも行くか。

 何しろレベル1だから、まずは強くならないと。強くなってから、戦場に出る。レベル1では当然即死になるから。狩りをしていたら、妙なやつが近づいてきた。敵をいっぱい集めてきて、俺のそばに立っている。何がしたいのか意味不明。その場を離れたら、ついてきた。

 

「殴って」とその男は言った。

「変態?」

 

 思わず驚いてしまった。すると彼は泣いたようなモーションをする。どうやら、モンスターを殴れということらしい。これはいわゆるパワーレベリングか。

 

「このゲーム、モンスター狩っててもつまらないから、さっさと戦争に参加できた方がいいよ」

「あっ、そうなんだ。ありがとう!」

 

 素直に答えてそれに従うと、相手は笑顔のモーションをした。なんか全体がスイカみたいな鎧でかっこいいのか微妙だが。ネタ装備っていうのか?

 すぐにレベルがまあまあ上がった。

 

「そろそろ戦争行ってみようか」

 しらたまの提案に即答した。

「行きたい!」

 俺たちはパーティを組んでいた。今だけの即席のものだ。一緒についてきて教えてくれるらしい。ふたりで同じ戦場に入った。

 

…………

 

 初戦争はもう必死でわけがわからないうちに終わった。なんだかすごく負けてたと思う。当然だが、最初はみんな初心者で、それならそれなりに役割があるのだと、スイカ鎧のしらたまさんが言っていたが、あまりにも負けすぎていて役割分担もクソもなく生き残らなければならなかった。しらたまは謝っていた。

 

「戦争から離脱しても良かったのに」

「いや、それは悔しいかなと思って」

 

 まだ前線に出られるような強さではないので、攻撃してもダメージは食らわないし、逆に被ダメージは大きい。ただ、避けるのはテクニックだ。俺はこの手のゲームはやり込んでるからな。

 

「おれ結構うまかったでしょ?」

「ああ、意外と死んでなかったね」

「もっと褒めてよ」

「私も必死で余裕がなかったから……ほんと離脱しても良かったんだよ。でも最後までいたのは偉い! ……かな?」

「まあそれでもいいけど」

 

 ホームタウンへ帰った。というかロキという国の首都。首都以外ないけど。この世界は首都以外はモンスターか戦場しかないという、どうやって生きてるんだという状態だ。省略されているだけかもしれないし、ゲームだから考えても無駄なのだ。

 

「よかったらうちの部隊に入らない? 一緒に初心者指導もするよ。今回はちょっとうまくいかなかったけど……」

「入った方がいいの?」

「うん、まあ、たぶんものすごく勧誘されるだろうし」

「うますぎて?」

「いや、外見Bだから」

 ムッとした。外見で誘われるなんて別に嬉しくもない。

 

「じゃあ、部隊なんか入らない。好きでBになったんじゃないよ!」

「女じゃないの?」

「ちがわい!」

「ふーん、そうなんだ……まあ、入りたくなったら言ってよ。私がいるから」

 

 

2

 もう初陣も済ませたんだから。今までと違う気分で街を歩いていたら、声をかけられた。

 

「レオンちゃん、うちの部隊入らない?」

「レオン、ちゃん?」

 

 声といってもチャットの文字に変換される。だから読んでないと時々見逃すのだが、さすがに見逃せなかった。

 

「レオンちゃんって今、おれのこと呼んだの?」

「おれっ子? かわいいね」

 

 なんだこの寒気がする感じ。勝手に「俺」が「おれ」に変換されてしまったのも文句を言いたいが。近寄って来ないでほしい。

 

「悪いけど、一切悪くないけど、部隊は入りません」

「入った方が得だよ」

 

 そいつが言うのはわかる。戦争ゲームである以上、部隊・チームを組んだ方が良い。でもさっき断った手前もあるし、俺はソロにこだわりたい。凡人とは違うから。

 えーいもう一戦だ行くぞ!まだゲームの経験が足りないんだ。すぐに決める必要はない。

 

 だが、今回はうまくいかなかった。何が悪かったのか、さっきのボロ負け戦場よりも個人としては悪かった。しかも敵から煽られた。途中から泣いてしまっていた。でも、逃げなかった。そんなことはお構いなしに、相手からは狙われてやられ続けた。

 

「もう、辞める」

 

 癇癪、あるいは泣き言を言った。街で。言うつもりはなかったけど、言葉を勝手に拾われた。周りがざわめいた。個人メッセージが何個か届いた。

 

「やめないで」

「いや、もうなんか嫌になったから」

 

 返事の仕方がわからないしどうでもよくなってその場チャットで答えた。

 

「さっきの戦場、相手がひどかったね」

「レオンちゃん筋は良かったよ」

「もっとうまくなれるよ、装備が悪いんだよ」

 

 もう個別じゃなく次々にチャットが来た。

 

「装備買ってあげる」

 ん?となるような物が届いた。

「これなに?」と尋ねた。

「最高装備。あげる」

 それは、嬉しい、のか?

 

「いいの?」

「いいよ、スパチャみたいなもん」

「なんか猫の着ぐるみセットって書いてあるんだけど」

「名前はともかく性能は最高だから」

「そうなんだ。……ありがとう」

 単純すぎるけど嬉しくなってすぐにつけてみた。

 

「かわいい」「可愛い」

 合いの手みたいに文字が大量に流れた。

「お前ら、かわいいってなんだよ!」

 嬉しくもねえ! それに一人称だから自分の姿がわからない。少し、視点を変更して自分を見た。

 

「あ、かわいい……」

 自分でそう言ってしまった。それが転落の始まりだった。

 

 

3

 今日は学校が長かった。帰ったらすぐにFEQを起動した。ログインすると、当然ながら昨日終わったままの姿でレオンが立っている。

 

「かわいいなあ……」

 

 眺めてしまう。なんだか、戦争行きたくない。攻撃されるのが嫌だ。でもYouTubeを見たらみんなかっこよく戦っていて、だけど俺の方がうまい、と思った。あんな程度でいいなら……。

 じゃあ戦争行くかぁ、装備もそのためにもらったんだし。前は装備がダメだったからダメだったんだよ。

 

「あと、邪魔!」

 勝手に周りに人が集まってきて、視点を変えても自分が見えない。Aばかりがぞろぞろと! 邪魔だ!

 

「尻尾動いてるよ」

「尻尾くらい動くんじゃないの?」

 後ろを見ると確かに動いている、何かしたわけでもないと思うが。

 

「あ、知らないのか。テンション高いとよく動くんだよ。今から戦争行くの?」

「知らない!」

 カッとなってあいつらから逃げるように戦場に行くと、大勢入ってきた。

 

「レオンちゃんを守るぞ!」

 ずいぶん気合が入っている。まあ、守ってくれるっていうんなら、盾になってもらおう。俺はまっすぐに前線に向かった。

「待って待って」

 呼び止められて「ん?」と思ったらしらたまさんだった。知り合いということでパーティーをまた組んだ。

 

「初心者は、まず戦争の流れを学ばないとだめだよ、裏方が大事だよ」

「おれはうまいから全然平気だよ」

「うまいとかじゃなくて、戦略とか戦術があるんよ、全体のマップを見ながら戦うとかってこのゲーム独特の部分もあるしね」

「ええ……戦争をしたくて始めたのに」

「戦争でも軍師とか補給の大切さとかあるっしょ」

「言われてみれば確かに」

 戦争で補給や準備を考えないバカ、というのはマンガでも出てくる。

 

 前線が押されてる!とチャットが流れてる。

「ほら、考えないからああやって一番早く敵とぶつかって一番早く死ぬんだよ。死んだらしばらく復帰できない。たとえバカでも復帰してくれないと押し返せない」

「そっか……まあ殺されたくはないから下がるよ」

 

 それで、しらたまさんと一緒に戦争の裏方仕事をした。自分のキャラがてくてく歩いているのを見ているだけで可愛い。とはいえここで急に敵が来て襲われたとしたら、自分を見ていちゃ戦えない。まあ、どうにかうまくやるよ。

 

「うまくやるどころか、ひたすら資源集めて渡してただけだったんだけど」

「いや、すごく良かったよ。みんながやたらやる気があったから今回は結果理想的な戦いができてた」

「というと?」

「レオンくんにいいとこ見せようとして全員が張り切ってたっぽいな。あとはもともと強いやつが入ってきたな」

「……あ、そう」

 まあ、嬉しくないとは言えない。

 

「部隊入らない?」

「まだ入るつもりはないよ。たくさん勧誘来てるし……強いとこ選んだ方がいいのでは? いや、悪く言うわけじゃないけど」

「まあそうかもしれん。でも逆に気軽に抜けたっていいし、構えすぎる必要はないよ。後からだって強かったらいくらでも誘われるし、入れてもらえるから」

「そっか。一応、アドバイスありがと。お礼は言っとくよ」

「素直で可愛いぞ」

 なんだかそう言われるとからかわれてるみたいで、言い返した。

「おれは男だよ? 知ってるだろ」

「わかってるよ」としらたまは答えた。

 

 どうせ口だけだろと思ってた人も多かったかもしれないが、その後、順調に俺は上達していって名の知れたプレイヤーになっていた。もちろんそれは腕前と可愛さの2つの効果があったのは事実だ。俺がいると仲間の士気が上がって、勝手に頑張る。いいところを見せようというわけだが……意味もないのになってことは思う。それでやたらチャットの意思疎通が良くなるのも大きい。

 

 でも、それで逆に悪いこともある。いや良いことなのだが。敵の問題だ。敵にちょっと変態が多い。暗殺者みたいな職業があるのだが、そいつが次から次へと襲ってくる。レオンを殺して興奮する変態。でも来るとわかっている暗殺者なんて、俺からしたら餌でしかない。毎回スコアになってくれてありがたい。

 

「ねえどんな気持ち?」

 ってたまに煽ってあげると喜んで次も来る。好循環。敵国の真面目にやっている人は怒っているらしいが、それは仕方がないよな。敵より恐ろしいのは無能な味方という話。

 

「今回もすごく活躍してたね」

 街に帰ると、しょっちゅう声をかけられる。

 

「ふん、まあ、とうぜんだが? いや、勝手にひらがなにするんじゃねえバカマイクが」

「尻尾すごい動いてるよ」

「この装備まじでもうやめようかな」

 

 そう言っていたらまた装備が送られてきた。今度はプリンセス装備。見た途端、ひとりで怒ってしまった。

「こんなの、おれに着せてどうしようっていうんだ!」

 

 でも着てしまった。周りにいた連中が集まってきた。

「レオンちゃん、それ新しい服? すっげえかわいい」

「くるって回ってみてよ」

「狂ってるのはお前らだ!」

 

 今度のは着ぐるみみたいな愛嬌のある感じじゃなくて、プリンセスとは名ばかりのなんとも露出の多い感じ。王女にこんな格好させる家臣がいたら追放してやる!

 だが、家臣どもは喜んでいて、俺もなんだか妙に……顔が熱くなってきた。思わずしゃがみ込んでしまう。

 だが、それは非合理だ。

 だってこれはゲームだから、しゃがむ必要なんかないんだ。

 

 ……自分とキャラが同一だと思い込んででもいない限り。

 

4

 その頃から、厄介なことが起きた。戦場ではなく、街中に強敵が現れたのだ。そいつはファンの顔をしていた。妙に物を送ってきてくれる。最初はありがたいと思ったが、俺がログインするたびにいつもそいつがいて、すぐに声をかけてくる。

 

「レオンちゃん? 戦争行く?」

「いや、今は行かない」

 

 そう答えたらそばに来てずっといる。戦争に行けばついてくる。パーティーに誘ってくるから、断るのも悪いかというのでその時次第で入ったり入らなかったりする。

 

 問題はこの人すっげえ下手ってことだ。ついてくるのは勝手なんだが、俺についてこれなくて勝手に死ぬ。凄まじい足手まとい。

 にも関わらず、リアルマネーがかかるような装備を送ってきてくれるのだ。はっきりいってそのことは嬉しい。嬉しいからこそ困る。断ることができない。なんにもお金使っていないのに服ばっかり充実してる。だがしかし。だがしかし……。

 

「かわいい! レオンちゃんはやっぱりその装備が似合うね」

「あ、はい、どうも……」

 

 顔が引きつっていると思うが、それはたぶん反映されない。いっそ、反映された方が良かったかもしれない。俺の気持ちが相手に伝わるのなら。でも伝わりそうにないなあ。

 

「ずいぶん困ってるようだね」

 しらたまと街で会ったら、個人チャットでいきなり言われた。隣にはもちろん彼がいる。

 

「困ってるとは言いづらいんだけど……」

「ああいう手合はいるもんだよ。どこにでも。なんなら私からお話してあげようか?」

「お話って? いや、いやそれはちょっと、おれとしては悪くも言えないから」

「気にしなさんな、うまいこと言うから」

「……そう? ……それなら……」

 そう答えたら、本当にどうやらお話しているらしい。ハラハラする気持ちでそれを見守っていた。

 

「やっぱりうちの部隊入らない? また来ても追い払ってあげるからさ」

「本当にうまく話ししたの?」

「アイドルに手を触れるなって言っただけだよ」

「アイドル~~?」

「絶対見るなというのも無理な話だからね。まあ、いいんじゃない?」

「そっか……」

 

 結局それで部隊に入った。まあ、しらたまさんは最初からお世話になっていたし、なるようになったというところかもしれない。

 ただ、部隊の人だけが入れる場所でそこの人たちと顔を合わせたら驚いた。みんな外見Bだったのだ。

 

「え、え、何? Bの人ってこんなにいたの?」

「いや、集まってるだけだよ。普段はAでやってる人が多いしね」

 しらたまがこともなげに答える。

 

「どうやってやってるの」

「そりゃあうまいやり方があんのよ、というかあるに決まってんじゃん、こんなシステム。じゃないとレオンちゃんみたいになるから。このゲーム、B用のキャラや装備はやたら可愛いしね、なぜか」

 

「ええ……じゃあ」俺はメンバーをざっと見た。「しらたまさんだけがAなのか」

「そうだよ。でもこれキャラを弟に作ってもらっただけで、私は女だけどね。今後はレオンちゃんには避雷針になってもらおうかな」

 

「世界の流れはこわいなあ」

 

 




よかったら感想とかお気に入りとかお願いします。
あと他のでTSF系のものとかもあるから良かったら読んでね。

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