頼れる騎士は頼れない   作:北村 進

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第二十一話 破滅の願い

 

 

「……とりあえず、終わらせないとな」

 

 

パチパチと炎が弾け煙が立ち上る中、周辺の家から拝借した火打石を投げ捨て、ダインは空を見上げる。

 

 

「潰してやる」

 

 

違和感があった。この霧は、生きているモノに向かって広がってくる。

まるで何か指示を受けているかのように、正確にこちらを(おびや)かしてくるのだ。

 

 

「いるな、そこに」

 

 

亀裂の向こう側。気配があるわけではない。何かの影が見えたわけでもない。

それでも、そこに霧を操る元凶がいると勘が告げていた。

そして、それを討つことができるのは自分(ダイン)だけ。

 

 

()は感染しない」

 

 

エーレと接吻したことで確信した。

あの時、感染する覚悟でしたのだが、いつまで経っても感染する気配はなかったのだ。

どさくさに紛れて彼女の肩や顎にあった傷口に自分の傷口をくっつけても感染しなかったので、どうやら完全に耐性をもっているらしい。

 

 

「……絶対アレの影響だよなぁ」

 

 

ちなみに、それならと自分の唾液やら血液やらを口や傷口からエーレに押し込んだのだが、そちらの方はまったく効果がみられなかった。

世界はそう都合よくできていないらしい。

 

 

「まあいい。行くか」

 

 

まだ燃えている篝火へ最後に一度深く頭を下げて背を向け、建物から飛び降りる。

まずはダングルを回収し、生き残った騎士と合流する。避難所の安全確保もしなければならないだろう。

亀裂に突っ込む前に首謀者の捕縛と一般人の保護、そして諸々の報告を済ませておかなければ。

 

 

「あぁ…………生きていると、しがらみが多いなぁ……」

 

 

彼女が止めてくれていなければ、心の折れたダインはただ楽になるために自刃していたかもしれない。

だからこの命は彼女に救ってもらった大切なものだ。

ならそう簡単に捨てることはできない。

 

それでも早くあちら側に行きたいと、ダインはどうしてもそう願ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

⬜︎⬜︎⬜︎

 

 

 

 

 

『まだ、まだです』

 

 

ダインの懐に収められた球は、うわごとのようにそう呟きながら弱々しく光り続ける。

“己”はまだ消えていない。アレをどうにかするまで、世界のどこかでまた似たような騒動が起きてしまうだろう。

そうなる前に、アレを破壊する。

そのためには、この人の協力が必要だ。

 

これまで出会った中で最も強い人。

彼がいなければ、本気で逃げる“己”は捕まえられない。

 

 

『一回できたんだから……もう一回……!』

 

 

そのために、というわけではないが。

彼女は、一か八かの勝負にでていた。

 

もし、彼に愛する人と再会させることができたなら。

それが肉体を伴わない、幻のような再会だとしても。

 

 

『何に宿るかはわからないけど……きっと見つけてくれるよね』

 

 

喜び、恩に感じてくれて、協力してもらえるかもしれない。

 

そう信じ、少女は動き続ける。

 

 

霧の街に生まれたものは、決して絶望だけではなかった。

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