高校生活二周目の彼女達が重すぎる件について   作:こーたろ

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第4話 篠本紗奈が優等生すぎる

 高校生活の幕開けは波乱と共に。

 うん、俺が体験した今朝の出来事にタイトルをつけるとしたら、そんなところだろうか。

 

 迷子になってしまったと思ったら急に3階から美少女が降って来て。

 その後に違う美少女から秘密押し付けテロにあった。

 今時のギャルゲーでもこんな展開作らないぞと思いながら、今日から1年間自分のクラスになる教室へ足を踏み入れる。

 

 やっぱり遅くなってしまったからか、もう既に教室にはかなりの人数が揃っている。

 その中には、知っている顔もあった。

 この紫水ヶ丘高校は最近中高一貫校になり、俺はその中学からの繰り上がり組。

 同じように中学の頃から知っている顔はいくつかあったが……そのほとんど全てが俺を見て目を逸らした。

 それどころか、なにやらひそひそと噂話をしているらしい声まで聞こえてくる。

 

 ……まあ、別に良いけど。

 

 気にせず、自分の机へと向かおうとすると。

 

 「とっちゃん遅かったなァ!」

 

 急に強い力で肩を組まれる。

 それだけで、相手が誰だかわかった。

 

 「小暮……朝から元気すぎない?」

 「ハッハッハ!また同じクラスたぁ僥倖だなあ!よろしくぅ!」

 

 俺よりも3サイズくらいでかいこの男は、小暮純一郎(こぐれじゅんいちろう)俺と同じ中学からのエスカレーター組で、唯一と言っても良い友人だ。

 端的に表すなら気の良いデブ。デブであることに誇りを持っていて、そして何故か学年でも相当可愛いと言われてきた美少女と付き合ってる。何故だ。

 

 ばしばしと背中を叩かれた後、席へと向かう。

 

 指定されていた席は都合の良いことに、俺の席は一番窓際の一番後ろだった。

 まぁ名字が「宮」だからね。意外と一番後ろになることもあるのだ。

 

 隣の席には先客が。

 ぱっ、と目に入った瞬間に、綺麗な子だな、と素直に思った。

 そんな俺の視線に気が付いたのか、1秒、目が合う。

 ウルフカットのセミロングに切りそろえられた髪は黒に近い深い紺色のように見えた。大人びた印象を抱かせる、細い瞳に長い睫毛。

 クール系美少女、と言ってしまえばそれまでだが、それ以上に幻想的とすら思ってしまいそうなほどに、端正な顔立ちだった。

 

 ……ハッキリ言って、タイプです!かっこ良い女の子、スキ!

 

 席に座って、なんと話しかけようか迷う。

 こういうのはファーストインプレッションが大事だからね、うんうん。

 

 「あ~えっと、初めまして、宮智一です。隣ということで、よ、よろしくね?」

 

 う~ん、完璧だな!ヨシ!

 クール系美少女は、少しこちらを向いたかと思うと、そのまま表情を変えずに。

 

 「……泉想夜(いずみそよ)」

 

 と、それだけ口にした。

 ほえ~!そよちゃんね、把握把握。

 ……って、ちょっとマテ茶。

 

 「……泉?この席名前順だと思ってたけど、違うの?」

 

 俺は「宮」という名字だから後ろの方になるのは全然わかるのだが、まさか「泉(いずみ)」で一番後ろになることはあるまい。

 このクラスの女子ほぼ全員「あ」で始まる名字になってまうがな。

 

 「……女子は逆順らしいよ。なんでかは知らないけど」

 

 「ほえ~、なんでなんすかねえ」

 

 はは~んなるほどね、まあそれなら確かに不思議ではないけれど……。

 ……ま、まずい。このままでは会話が途切れてしまう。

 

 「え、え~っと、泉さんは高校編入組だよね?中学の時見たことないし……」

 「……うん」

 

 やっぱりそうだよね。この俺がこんな美少女を見逃すはずないからね、当然だね。

 

 「やっぱりそうだよね~!俺中学から繰り上がり組だからさ、多少は分かることも多いだろうし、なんかあったら、ほら、なんでも聞いてね」

 

 どうよこの完璧ムーブ。第一印象完璧なこと間違いなし!

 これはこらからの高校生活頼られまくっちゃいますなあ~。

 

 最高級のスマイルを見せた俺を、泉さんはその切れ長な瞳で見つめて。

 興味なさげに、窓側へと向き直ってしまった。

 

 ……無視されました☆

 

 心の中で涙を流していると、教室の前方にある扉が開いて、教師が入って来た。

 

 「はいはい、全員席に着いてね~。これから1年間お前らの担任になる青柳奈子だぞ~」

 

 教師は知っている顔だった。

 中学の頃から英語の教員で教わることもあった女性教師。身長が低い上にいつもくたびれて猫背だから更にちっちゃくなっていることで有名だった。

 

 「やぎちゃんうおおおお!」

 

 「はいそこのデカいの黙れ」

 

 小暮も当然一緒に授業を受けたことがあるので盛り上がっている。

 まあ、良い先生であることには間違いないから、当たりを引いたと言っても良いだろう。

 

 

 

 「んじゃまあ最初のHRはこの程度にして入学式始まるから廊下に並んで~」

 

 ある程度の連絡事項を伝えられた後、入学式のために体育館に行くことになった。

 ばらばらと全員が席を立って、廊下へと向かって行く。

 その最中、前方から視線を感じたので顔を上げると。

 

 「……!」

 

 すぐに顔をそむける、女の子。

 ……今朝、2番目に会った美少女だった。優等生っぽい感じの。

 秘密押し付けテロされた子。

 

 同じクラスだったんかい……。

 

 

 とそんなことを思っていたら更に、入学式にて。

 

 「では、今期の新入生の代表として、編入生から主席で合格された篠本紗奈さんに新入生挨拶をお願いしたいと思います」

 

 ぼけ~っと入学式の進行を見守っていた俺だったが、体育館の一番前にある壇上に登った生徒を見て、目ん玉が飛び出てしまう。

 

 『桜の花が咲き誇る中、私達189名はこの素敵な校舎で学ぶことができるようになりました』

 

 篠本紗奈。

 編入生主席として紹介されて壇上へと登った少女は……朝からギャンブル大好き宣言をされたあの美少女だった。

 

 「……マジかよ」

 

 優等生っぽいなあとは思っていたが、マジもんの優等生だったとは……。

 ……そりゃまあ、本当にギャンブル大好きなら、バレたらまずいか……。いやまあ、誰でもバレたらまずいんだけど。

 だからこそ余計に分からなかった。何故俺にだけカミングアウトを……?

 俺が覚えていなかっただけなら申し訳ないが、当然面識はない。

 

 結局、篠本さんがハキハキと口上を述べている間考えてみたものの、答えが出ることは無かった。

 

 

 

 

 

 「じゃあ、今日はこれにて解散。部活動とか見たい奴は各々好きにしな~」

 

 呑気なやぎちゃん(青柳先生の愛称)の号令で、入学初日の日程は全て終了。

 午前中で全てが終わる形だ。

 鞄を持って帰宅の準備をしていると、のしのしと足音を立てながら小暮が近づいて来た。

 

 「うぃ~とっちゃんはこの後バイトか?!」

 「んあ~そうだね」

 「精が出るねえ!んじゃまた明日な!」

 「はいよ~」

 

 小暮が教室から出ていく。その廊下には小暮の彼女の姿もあった。小柄で、黒髪ロングのおしとやかな子。

 目が合ったので、軽く会釈をしておく。

 不思議だ……何故あんなデブが良いのか……いやウルトラ良い奴だから見る目はあるんだけど。

 

 ふと隣を見てみると、既に泉さんの姿は無く。 

 優等生(ギャンブラー)の篠本さんは、友達に囲まれて忙しそうだ。

 時折こちらをちらちら見てくるのだが、気にしたら負けだと思って、教室を出ようとする。

 

 「あ、ちょっと待って!」

 

 ……のだが、そうは問屋が卸してくれないようで。

 

 教室を出て行こうとする俺を引き留めたのは、今まさに同級生に囲まれていた篠本さんだった。

 き、気まずい。

 

 「え~っと、な、なんでゴザイマショカ」

 「私、篠本紗奈って言います!貴方のお名前は?」

 

 え~!

 この人ファーストコンタクトやり直しにきてる~!

 朝あったこと、な、無かったことにしようとしているのか?!

 

 ニコニコと笑っているその表情は大変可愛らしいだけに、朝と本当に同一人物か?と不安になってくるレベルだ。

 

 「あ、ぼぼぼぼ僕は宮智一です……よ、ヨロシクネ」

 「智一君!よろしくね!」

 

 すごい良い笑顔で手を出されるものだから、勢いで握手してしまう。え、普通同級生の挨拶って握手すんの?

 そして力強っ!めっちゃ握ってくる!暗に「朝のこと口外したら殺すから」って言われてるのかこれ?!

 

 と、そんな時。

 

 「篠本さん、ちょっと」

 「……紗奈ちゃん、その人は」

 

 先ほどまで篠本さんを囲んでいたクラスメイトの女子達が、篠本さんを連れ戻しに来たようだった。

 見れば、そのどちらもが中学からの繰り上がり組。名前は憶えてないけど。

 なるほどね、俺の事を知っている人達だ。

 

 ここに小暮がいなくて良かった。

 あいつがいると絶対にガン飛ばして雰囲気が終わるからな、うんうん。

 

 まあ、美少女の篠本さんに俺の噂が吹き込まれるのはちょっと悲しいけれど、これも定め。

 さっさと教室から――

 

 

 

 

 「今智一君とお話してるんだけど?」

 

 

 

 しん、と空気が凍った気がした。

 し、篠本さん?

 

 「で、でもその人は……」

 「篠本さん知らないと思うんだけど……」

 

 俺でもこわいよ~って思うくらいの迫力だったのだが、女子達はまだ粘っている。すごいね。

 

 「ごめんね、私編入生だからよく分からなくて。でも私は」

 

 篠本さんがこちらに向き直る。

 え、緊張するんだけど。

 

 「この人と話してみたいって思ったの」

 

 そこまでストレートに言われるとは思っておらず。

 まあ、その、なんだろう。

 素直に、嬉しかった。

 

 「あ、後で話すね」

 「うん、ごめんね!」

 

 流石に諦めたのか、女子達は元いた席へと戻っていく。

 

 「察するに、智一君は中学時代になにかあったみたいだね?」

 「え~っとまあ……?そう、ですかね?」

 「敬語とってよ、私達同級生だよ?」

 

 こ、これがコミュ強?!

 思わずたじたじになる俺は悪くない。

 これがギャンブル大好きってマジですか?いや別に言わないけど……。

 

 柔らかい笑みを浮かべている篠本さん。

 ……流石に気になったことを、そろそろ聞いても良いだろうか。

 

 「……えっと、そろそろ手離してくれたりとか」

 

 実はこの問答の最中、握手をしてから一度も手を離してくれていないのだ。

 流石に長すぎない?と思って聞いてみたのだが。

 

 「嫌です」

 「え」

 「嫌です♡」

  

 否定しながら笑顔で首をこてん、と傾げる篠本さん。

 あんなにキリっとして新入生挨拶をしていたからこそ、ギャップでめっちゃ可愛く感じるけど。

 

 ニコニコと笑みを浮かべ続ける篠本さん。

 ……やっぱり怖いかも~~(泣)

 

 

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