静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~   作:Magical forest

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ソフィア先生は感動で訳が分からなくなる1

 

------------ ソフィア・ルメイユ視点 ------------

 

その日、私と父はヴァルト公爵様に呼び出されていた。

 

「ルメイユ卿、そなたの娘のソフィア嬢を、パイプオルガンの先生として、派遣できないだろうか?」

 

「閣下、ソフィアは第二王子との件があり、今は療養中の身でございます。今は傷心ゆえに外で活動するのは難しいかと。」

 

ヴァルト公爵様は、私の顔を見ると、言葉を選んで言われました。

 

「第二王子の件は私も依頼した事ゆえな。第二王子があそこまで阿呆だとはな。とは言え、結婚前に婚約破棄できたのはかえって僥倖であろう。」

 

「何を言っておられるのですか。あの第二王子のせいで、娘の評判も傷ついたのですよ!」

 

ヴァルト公爵様を支える敬虔な侯爵である父が珍しくヴァルト公爵様に嚙みついております。私はそんな父の姿に驚きを隠せませんでした。

 

「我も悪かったと思っておる。だからこその、パイプオルガンの講師派遣の話だ。」

 

「どのような話ですかな?」

 

公爵様の話を受けて父も少し冷静になったようです。

 

「今回の件は、第二王子の暴走であり、ソフィア嬢には責任は無いものの、ソフィア嬢の資質を疑う声もある。だが、歴史に良い方向で名を残す継火の先生となればどうだろうか?」

 

「ルミエール公爵の第二子はそんなに凄いのですか? しかし、いかにカイル様の継火と言えども、名前が知られるのには時間がかかるのでは? 5歳の魔力属性の儀を迎えたばかりだと聞きます。」

 

「問題無い。あやつはもうルミエール公爵領だけに留まる存在ではないだろう。ここ2~3年ぐらいには何かをやらかして、アリディア王国中に名を轟かす事になるだろう。」

 

「公爵様がそこまでおっしゃる傑人なのですか?」

 

「わりと周りの空気を読んで大人しい静かな人間のように擬態するから、見抜ける人間は多くは無いが、すでにその知性の一部は、アリディア王立総合学院の教授を超えているぞ。斬新な発想も素晴らしい。私の子供の頃を遥かに超えている。」

 

「公爵様がそこまでおっしゃられるのであれば・・・。」

 

「ソフィア嬢もどうだろうか? 別に堅苦しく考える必要はない。せっかく堅苦しい第二王子の夫人教育から抜けられたのだ。難しい事を考えないで、結婚前に見識を上げるためにアリディア王国中を巡るグランツーリスモ(グランドツアー)の一部とでも思うと良い。ノルダ山脈の麓に広がる美しい風景をルミエール公爵家の客人待遇で楽しめるだけでも、価値がある事だろう。 どうだろうか? パイプオルガンの講師として継火に音楽を教えてもらえないだろうか?」

 

「謹んでお受けさせていただきます。」

 

私は、シュウ様のパイプオルガンの講師を引き受ける事にしました。 この決断が後の自分の人生に非常に大きな影響を与える決断だとは、この時は全く考えもしませんでした。

 

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「お嬢様、もうすぐルミエール公爵様の屋敷に到着いたします。」

 

私付のメイドであるミアナが御者から情報を聞き出して私に教えてくれます。雄大なノルダ山脈に抱かれた、白くて美しいお城が見えてきます。ゴールが見えて来たせいか、馬車の速度も心持上がったような気がします。

 

私の講師としての派遣は思いのほか大がかりとなりました。

 

私は正式にヴァルト公爵家から派遣された音楽の講師となり、ルミエール公爵家では客人待遇として迎えられるのですが、さらにヴァルト公爵様は、シュウ様にオルガリンをプレゼントするという熱の入れようです。

 

パイプオルガンは、女神教会の楽器という事もあり、女神教会のおひざ元であるヴァルト公爵領と王都で盛んで、貴族も盛んに演奏する楽器ですが、自然崇拝が主で女神教会での参拝が一般的ではない他の公爵領では、その配下の貴族もあまり演奏する事はありません。

 

だから、他の公爵家では、非常に高価なオルガリンをわざわざ設置する事も無かったので、ルミエール公爵家にもオルガリンは無かったのですが、ヴァルト公爵様がそんな高価なオルガリンをプレゼントするまで認めるシュウ様に、私はとても興味があります。

 

私と共に、ヴァルト公爵領に居る職人さんとオルガリンも移動する事になり、私は馬車で8日の道のりを走ることとなりました。

 

ルミエール公爵家に到着すると、ルミエール公爵夫人や使用人一同と一緒に、学院で想錬の探究家の異名を持ったエルラ先輩と、黒髪黒目の男の子が出迎えてくれました。

 

私は、シュウ様と思われる黒髪黒目の男の子に目を奪われます。 そのお姿は、まるで邪神ゼルナヴァス様のような漆黒で優雅な美しいお姿でした。

 

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