静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~   作:Magical forest

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彼は目を覚ます

 

舞い落ちる書類を見る光景で人生を終えた修だが、彼は再び目を覚ます事となった。

 

再び目を覚まして見た光景は、窓から入る白い光と、緑の壁、そしてどうやら自分は木の檻に閉じ込められているようだ。

 

「ああうっ。あうあう。」

 

驚いて、叫び声を上げようとするが、全く言葉が出ない。

 

白い柱を基調とする豪華な部屋の中で、木の檻に囚われているようだ。全く意味が分からない。

 

そして体も思うように動かない。首をちょっと動かせるだけだ。

 

もうどうしょうも無くなって、くるものがあって、泣き始めた。

 

「ぎゃーー――ん。」

 

そうすると、すごく美人な女性が駆けつけてきた。髪は茶髪で目は青色だ。

 

しばらく後に、その女性が自分の母親であり、過労死したはずの自分は異世界に転生した事を知った。

 

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------------- シュウ視点 -------------

 

5歳になった僕は、朝の鍛錬が終わると、恒例の図書館に行くことにした。

 

この世界に転生した後の名前は、シュウ・ルミエール。エルフの元締である、ルミエール公爵家の次男として生を受けたみたいだ。

 

城の中では、エルフの公爵領らしく、6割ぐらいの使用人がエルフ、残り4割が別の種族の使用人になっている。

 

「エルラ先生居る?」

 

「シュウ様、剣術の鍛錬は終わられたのですか?」

 

「もちろん終わったよ。僕が訓練をサボる訳が無いじゃないか。」

 

「そうですね。それで、今日はどのような本をご用意いたしましょうか?」

 

「アリディアの建国までの歴史を見たい!」

 

「わかりました。それでは、カイル・アリディア様の伝記をご用意いたしますね。」

 

エルラ先生は、なにやら呪文を唱えると、司書のエルラ先生が僕のリクエストした本を魔法で戸棚から取り出して、フワフワと宙を舞わせると、テーブルまでゆっくりと本が独りでにやってきた。

 

エルラ・ミュリス先生は、このルミエール公爵家の図書館の司書さんなんだけど、歩けるようになった頃に、本に興味を持ち始めてから、先生になついて、今では僕の家庭教師の役を兼任してもらっている。

 

彼女は若いエルフの先生で、エルフらしい緑髪をポニーテールにして、眼鏡をかけた、やさしい緑の目を持つ美人さんだ。

 

ちなみに、王都のアリディア王立総合学院の史学編纂科主席の才女で、学園の卒業後に僕の母親にスカウトされて、ルミエール公爵家で働き始めたみたいだ。

 

僕がトコトコと歩けるようになってから、図書室に入り浸るようになって、彼女に文字の読み方なんかを教わって、自然と仲良くなった事で、エルラ先生は僕の家庭教師となった。

 

公爵家であるルミエール家は、今の僕ぐらい(5歳ぐらい)の年齢になったら、文字や算数、一般常識などを教える家庭教師が付くのだけど、エルラ先生からすでに文字なんかを学んでいた僕は、両親から家庭教師が不要と判断されて、代わりに引き続き、エルラ先生に教えてもらうようになっていた。

 

もちろん、単純に図書館にお邪魔して、エルラ先生の仕事を邪魔するのは申し訳無かったので、父さんと交渉して、エルラ先生の給金に僕の家庭教師料を追加する対応を取った。これによって、僕はエルラ先生の公務として勉強を教えてもらえるようになったし、エルラ先生は、僕に勉強を教える事で、司書の給料以外に給金が発生するようになり、WIN-WINの関係の築けている。

 

僕は、テーブルまでフワフワと飛んで来た本に目をやる。

 

「やっぱり、エルラ先生の魔法はすごいよね。」

 

「風の魔法で本を空気の台に載せて浮かせて持ってきただけですよ。シュウ様も風の属性はありそうなので、もうすぐ出来るようになりますよ。」

 

「でも全然魔法を使えないよ?5歳の誕生日の時に受けた女神教会での魔力検査でも、七属性の全部に反応なかったし。もしかして、魔法が使えないじゃないかと思ってショックを受けたんだけど。」

 

「風の属性である私の魔力が引き合うので、風属性に近い属性は持っていると思います。それに5歳時点では、そもそも魔法の概念がしっかりしていませんから、魔力検査でも上手く反応しない子も多いですね。」

 

「やっぱり反応しない子も居るんだ。」

 

「まだ5歳では、魔法に対するイメージや概念が出来ていないので、仮に魔力属性があってもまだ発現しない可能性も十分ありますね。ですから、これから成人に向けて何度か確認していくのが普通ですね。中年になった頃に突然魔法が使えるようになった人も居るぐらいですよ。」

 

「中年まで使えないのはいやだなぁ・・・。魔力検査で反応が無かった時に、『魔法が使えない無能など、このルミエール公爵家には不要だ!!』とか言って追放されるかと思ってヒヤヒヤしたんだよ。そうしたら、みんな、ほっとしたり、『ふ~ん。』みたいな感じで、あんまり関心なく流されちゃうし。」

 

「シュウ様は想像力が豊かですね。バルグレイア帝国じゃ無いのですから、公爵様がそんな理由でシュウ様を追放したら、アリディア中の笑い者ですよ。そもそも、その程度の理由で普人族のシュウ様を追放したら、奥様の御実家のヴァルト公爵家が黙っていないと思います。」

 

「でも、アルノルト兄さんは、水と光と風のトリオで、特に水が強すぎて水の魔石が砕け散ったって言うよ?」

 

「あれはあれで、大変だったんですよ。砕け散った水の魔石で、数名が怪我をして流血して大騒ぎでしたし、属性検査用に調整された基本魔力が1マナセルの水の魔石を作るのも大変なのですから、簡単に破壊して良い物では無いのです。ですから、同じぐらいの強力な魔力を持つシュウ様の検査時は厳戒態勢だった訳です。むしろ、大事にならずに、魔力検査器具も壊れなくて、みんな胸を撫で下ろしています。」

 

「うわっ。反応しない方が喜ばれたとか、すごく複雑な気分。」

 

「あの検査は自然属性のうちのどの属性が強いのかを、各属性の魔石の対する相対的な反応で見るような物なので、魔力が対象の属性を帯びていなければ、反応しませんし、そもそも、火水風土雷光闇と言った自然属性ではなくて、空間や術式みたいな概念属性を持つ場合には、対応する魔石が無いので無反応なのですよ。」

 

「エルラ先生は僕の魔法が概念属性だと思うの?」

 

「正直、その可能性は高いと思っています。そもそもシュウ様はアルベルト様と遜色のない魔力をお持ちですし、魔力を体内で消費して身体強化も使えます。風の魔力を持ちながら、風の媒体や術式が反応しないと言う事は、風に近いが風では無い何かの概念属性と考えるのが自然です。」

 

「相対反応だから、七属性全部が全く同じ力なら吊り合って、反応なしと誤判断されるのじゃないの?」

 

「普通はやっと1属性という中で、七属性全部は統計的に見ても非常に稀でしょうね。それにシュウ様は明らかに強い魔力がありますから、その場合にはすでに風魔法が使えているはずです。魔力が強ければ、多少、雑な術式やイメージでも魔法は発動しますので、シュウ様が魔法を使えないとは思えません。となると、珍しい概念属性の可能性を考える訳です。」

 

「概念属性ってどうやって魔法に目覚めるの?」

 

「火水風土雷光闇の自然七属性はそれなりに居るので、同じ属性の人がアドバイスをしたり、その属性の魔法が使われているのを見れば、イメージが出来て自然と使えるようになるのが多いですね。そのための魔法の属性検査という意味でもありますし、自分の属性を把握できれば、後はその属性の魔法を見ていれば自然と使えるようになるのが多いですね。」

 

「特にドワーフの火属性による鍛冶魔法は、完全に師匠を見て慣れろという世界ですし。対して、概念属性は難しくて、同じ属性の人に出会う事自体が奇跡ですから、何かの切っ掛けで、気長に魔法が発現する瞬間を待つしか無いですね。」

 

「むぅ~。風魔法が近いのだから、風魔法は僕でも使えるんじゃないの?」

 

「現時点では、風の魔石にも術式にも反応しませんから、使うのは無理ですね。ただ、概念属性を持つ人は、概念属性に目覚めた後に、自然属性の魔法も使えるようになる事も多いみたいなので、まだ完全に使えないと言い切るのは早計ですね。 その良い例が、この本に書かれている、アリディアの建国者である、カイル・アリディア様になります。」

 

「そっか。それじゃ、さっそく、カイル・アリディア様のお話をお願い!」

 

「はい。もちろんです。」

 

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