静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~   作:Magical forest

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女神マテリア様はわりと暇神2

 

「つまり、自然との調和を取るために、わざと人口を制限しているという事です。人口の増加は魔獣などを排除して自然破壊を生みます。それを望んでいないのではないかという事です。」

 

「なるほど。現状が星の創造神たる私の理想郷であり、このバランスを壊すのは私の意図に反するという考えだな。」

 

「そうです。人類の繁栄を願った結果、神の怒りに触れて人類絶滅の未来はあまりにも救いが無さすぎます。」

 

「その点は心配要らない。私達は人類が宇宙(そら)へ旅立って星系内で営みを始める刺激的な未来を夢見ている。そうして初めて、私の権能が星系内の他の星々に根付くからな。」

 

女神様からさらっと言われた宇宙規模の真実に僕は凍り付いた。

 

「逆に言えば、今の状況はマテリア様が意図した所ではないという事ですか?」

 

「そうだな。この星の人口は7000万人をピークして徐々に下降し始めている。原因は君が予想した通り、食糧生産が人口に見合っていない。これを解決できなければ、人類は数を減らしていき、最後には絶滅する事だろう。これは私が意図した所ではない。 お父様もこの状況を見て、文明の立ち枯れが始まっていると嘆いておる。」

 

「しかし、僕が元居た地球のように80億人に迫るほどに人口が増えすぎて自然環境を破壊するのも問題じゃないのですか?」

 

「なぜだ?全然問題じゃないぞ? もうすぐ地表を人類が埋め尽くして住む場所が無くなって、新天地の宇宙へ旅立つ寸前ではないか。エルデザル母様が羨ましい。」

 

「え゛っ。地球ってエルデザル様が創ったの!? あとエルデザル様って女性だったの!?」

 

「そうだぞ。やはり母様はすごい。私は人類が一億人にも全く届かないし、日々の暮らしに精一杯で宇宙を目指してすらいない。私も母様のように世界を発展させてみたい。」

 

「でもっ、でもっ、自然が全部潰れちゃって、石だらけになって、マテリオンの資源を人類が全部喰い尽くしちゃったら、マテリア様も悲しむのでは?」

 

「別に? 人類が自然を全部潰したら、人類が滅びるだろうし、資源を喰いつくすとか言っても、ただ人類が使えない形に資源が変化するだけだろう? 失敗したらまたお父様にお願いして砂に戻してもらえば良い。文明が発展せずに立ち枯れしても、思いっきり発展して消滅しても結果は一緒だろう? だったら発展する夢を見ても良いではないか。」

 

「確かに。失敗したら砂になるまでリセットするなら、どんな状態でも一緒なのか・・・。神様恐るべし! でも、そうなるとなぜエルデザル様はこの星を捨てたのですか?」

 

「それは、やっぱり父様がやりすぎて当分回復不能になるぐらいに徹底的にやっちゃったから、それだったら、条件を変えた新天地に行ったみたいだな。それで、父様は罰としてもう一度星を作れるぐらいまで徹底的に分解する役目だな。そして分解が終わっても、星と共に永遠とさまよい続けて、本当に絶望の日々だったらしい。」

 

「それは辛そう・・・。 ・・・ん? ちょっと待って! と言う事は、実はマテリア様って地球生まれなの!?」

 

「そうだぞ。記憶は全くないが地球生まれらしい。だから君と同郷という事になる。」

 

「どうして僕がこの星に来たのですか?」

 

「それは、この星が立ち枯れしそうだから、そのまま放置してやり直すか、テコ入れをするかという判断になってな。それで、母様に相談したら、どうせこのまま枯れてしまうなら、地球の深い知識と経験を持った人材を一人貸してあげるから、そこから変化するかをやって見たらどうだって提案してくれたんだ。」

 

「で、僕に白羽の矢が立ったって事なんだ。・・・ちなみに、エルデザル様はあちらの世界で僕を殺していないよね?」

 

「その辺は心配要らないぞ。母様からは普通に死んだ魂から条件に合った物を選んだと聞いている。君は実体化した母様に殺されたかい? 母様でも過労を蓄積させるとかそういう回りくどい事はできないぞ。母様に刺されたとか、魔法で焼き殺されたとかなら話は別だが。」

 

「・・・前の死因は心臓麻痺だったと思うので、流石に違いそうですね。ちなみに、集団転移とか沢山の魂を一斉に転生させた方が効率が良さそうなのですが。例えば万人規模で。」

 

「それで、現地の人類を差別して、ヴァレンツリァの石畳事件を繰り返すのかい? 私は自分達の子が殺し合うのではなくて、平和的に発展する様子を見たいのだけど。」

 

どうもこの神様は、戦争シミュレーションを好むタイプではなくて、都市発展ゲームや牧場ゲームなどの箱庭ゲーが好きなタイプのようだ。性格が善神のようで助かる。どうも僕は、行き詰った箱庭ゲーにおけるお助けアイテムのような物らしい。

 

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