静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~ 作:Magical forest
「そもそも、この件は、母様にとっても、私にとっても初めての試みとなる。母様の世界の子であった君の魂を私の世界に迎え入れて、そもそも無事に魂が定着してくれるかも未知数だったからな。」
「その辺は、無事に定着できて良かったです。」
「いや、ダメだった。」
「え?」
「見事にこの世界に産み落とされたら、魂が融合せずに死にそうだった。」
「マジで!? それで、どうなったのですか!」
「私が加護をあげてなんとかしようとしたのだが、私の世界の魂じゃないので、私の加護も受け入れられ無くてな。もうだめかと思ったのだが、お父様はお母様から生み出された子で、君はお父様と同じく魂の本質が黒目黒髪だ。お父様が加護をあげることで、無事にこの世界に生まれて来てくれた。」
「おおう。ゼルナヴァス様本当にありがとうございます!」
僕は生まれて初めて、ゼルナヴァス様に本気で感謝して祈りをささげた。
「うむ。お父様を崇め奉る事は良い事だ。もっとお父様に信仰をささげるのだ。」
「ありがとうございます。ゼルナヴァス様。本当にありがとうございます。」
僕はこの世界を破壊する力を持つ邪神に大変感謝した。
「でも、そんな事をしてゼルナヴァス様は大丈夫だったのですか?」
「今はちょっと疲れて寝ておるぞ。」
「そこまで僕のために・・・。」
僕のために沢山のお力を駆使してくれたゼルナヴァス様に、僕は感謝感激して、邪神教の信者となり、ゼルナヴァス様のために魔王となってこの世界の魔物を率いようかと思った。
「お昼に草刈りして、疲れて昼寝している感じだから、そんなに気にしなくていいぞ。」
「台無しだよ! せっかくゼルナヴァス様のために魔王になって、この世界の人類と大戦争をしようと思ったのに!」
「最悪な事をしようとするな。そんな事をされると、お父様は今度こそ本当に心労でぶっ倒れるぞ。」
「でも、ゼルナヴァス様はオルグレアでは似た事をされていましたよね?」
「オルグレアは星の外に出る前に非常に大きな失敗をして、これ以上の発展を見込めない状況になってしまったらしい。だから、お父様はダメ元で大戦争をしてみたのだが、ダメ元だっただけに本当にダメだったみたいだな。」
「では、今、僕が魔王になって大戦争でもしたら、ゼルナヴァス様は困ると?」
「当たり前だ! そもそも、根本的に食糧問題が解決していないのだから、この状態で争いを増やしても、ただ単にじり貧になって、衰退が加速して行くだけではないか。」
「全くもって正論です。」
「そんな訳で、最近はお父様がお休みなので、私は暇でこの世界を渡り歩いている訳だ。」
「最近、方々で目撃されるのはそう言う訳だったのですね・・・。 つまり暇神だったと・・・。極端に出現する時期もあれば、何十年も姿が見られない時期があるのもそう言う事ですね。」
「暇神は言い得て妙だな。」