静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~   作:Magical forest

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女神マテリア様はわりと暇神4

 

「この世界が食糧問題に直面している事はわかりました。しかし、マテリア様のお力をもってすれば、食糧問題は解決可能なのでは?」

 

「ほう。どのように私の力を使う事で解決が出来るのだ?」

 

「例えば、一粒で10日分の飢えを凌ぎ、怪我や疲労を瞬時に回復させる豆などを生み出したらどうでしょうか?」

 

「すごい豆だな。そんな豆があれば、食糧問題は解決だろう。ところで、その豆は何から栄養を取って育って、どういう原理でそんな小さい豆が10日分のエネルギーになるのだ?」

 

「そこは神様パワーで、ご都合主義を駆使すればなんとかなるのでは?」

 

「勘違いしているようだが、そもそも私は地上の生物を思い通りに進化させたりはできないぞ?」

 

「え?そうなんですか? でもこの世界の生物はマテリア様が生み出したのですよね?」

 

「そうだが、別に私が意図して作り出した物では無いぞ。私が降臨する事で生まれてきたが、私の中のそう言った生物に対する情報が転写されて生まれて来た感じだな。・・・そうだな。例えば、子供が出来たとして、親は子供の性別や性格、才能などを子供がお腹に居るうちに選べるか?」

 

「えっ? もしかして、この世界の生き物ってマテリア様が意図して生み出した生物じゃないのですか?」

 

ちなみに地球では、実は技術的にこういう事は可能になりつつはあるのだけど、倫理的な面で禁止されている事は話の本質ではないので、触れないことにした。

 

「私が居ると生まれて来るだけで、子が親を選べないように、親も生まれて来る子供を意図して変えることは出来ない。私は、エルデザル母様の血を引くのでその情報が強く色づいている。」

 

「では、人類を四つの種族に分けたのも意図したものではないのですか?」

 

「そうだな。母様は1種族だけらしいから、私の個性だな。ただ、父様はこの種族が協力して多様性を得る事で、オルグレアと違って、人類が星の外まで行くのではないかと考えているようだ。」

 

予想は半分当たって、半分外れたね。僕は意図して四種族を生み出したと思ったけど、四種族は自然発生だった訳だ。 でもゼルナヴァス様は四種族の調和を願っている事は当たったね。

 

「話をまとめると、今の状況はマテリア様が意図したものではなくて、このままではマテリオンの人類は緩やかに絶滅する方向にあると。僕はダメ元のテコ入れ要員で、上手く行けば御の字。人類を争わせて技術を発展させるとか論議をする以前に、今は食糧が足りないと。こんな所ですか。」

 

「大体そんな所だな。」

 

「結局、食糧なんですね。」

 

「食糧問題が解決したら、また別の問題が出て来るとは思うが、目下の悩みは食糧問題だな。こればっかりは、仲良くしろとか人類に言った所で、解決する問題ではない。」

 

「そもそもマテリア様は神様なのですよね?ここまで自由意志を持っているのですから、もうちょっと色々な事ができても良いのでは?」

 

「私は神様だと言われているが、実際の所、私はどんな存在だと思う?」

 

「え? 全知全能の慈愛深い創造神様では?」

 

「違うぞ。遥か昔の人類が自分達の子孫や生態系を宇宙に進出させるためのテラフォーミングの仕組みだ。」

 

「は?」

 

神様と会話するファンタジーから突然発生したSF要素に僕は混乱した。

 

「遥か昔の人類は、結局星間航海をする技術まで持てなかったようだ。その結果、直接移動するのではなく、似た環境を形成して人類とその子供達の社会を別の星で生み出すための情報エネルギー体を作り出して、宇宙にばら撒いたようだ。結果的に人類と同じ存在が別の星に発生すれば、それは人類の星間進出とも言えるからな。私はその枝葉のうちの一柱だな。こう考えると、私にできない事が沢山あって当然だと思わないか?」

 

「確かに。マテリア様の意思で勝手に生物の改変とかできてしまうと、それは太古の人類の子孫ではなくて、何の由来も無いただの別な生命体という訳ですか。だから、マテリア様の意思では生命体の操作は出来ないし、生み出された人類社会が失敗すると、それはマテリア様のミッション失敗と同義という訳ですね。・・・その割にはこの地で人類が四種族に分かれて増えている点は不可解ですが・・・。」

 

「やはり君は賢いな。この世界で私をここまで正確に把握してくれたのは君が初めてだ。がんばったお父様もお喜びになる事だろう。」

 

「この世界の環境や生態系が地球と非常に多くの類似点がある点が腑に落ちました。でも、そもそも何でこんなに食糧不足なのかという事です。」

 

「なぜだろうな?」

 

「まずは、この世界の人々は魔法が使えます。それによって食糧増産の余地はできましたが、同時に燃費が大幅に悪化しています。この世界の人々は地球の1.5倍~3倍は食べます。その代わり、女性でも男性とそう変わらない力を出せますが、燃費が悪い事には変わりませんね。」

 

「それはある。バルグレイア帝国が内戦を繰り返してもなかなか消滅しないのは、魔法を使わないために、そんなに食べないからな。」

 

「それから、マテリア様のせいでもあります。」

 

「私のせい? どういう事だ?」

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