静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~   作:Magical forest

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シュウはジャガイモ作りに挑戦する1

 

四風の手は、依頼を出してからわずか2週間ほどでじゃがいもの原種らしきものを見つけて来た。

 

毒芋として誰も見向きもしないだけで、そう珍しい草では無いらしい。

 

じゃがいもはトマトやナスの仲間で、ナス科の植物だ。芋の部分は、茎が変形して養分を蓄えるように進化したナスである。

 

そして、このじゃがいもの原種は、見事に毒がある。

 

食べる前からわかる。芋に茶緑のような皮が付いていて、ソラニンやチャコニンと言った毒性物質が満載である。

 

南アメリカのアンデスの人々は、この毒芋を何百年と品種改良して毒を作らない品種にして行ったのだ。これは頭が下がる偉業だ。

 

僕は再びこのマテリオンの地でその偉業に挑戦する必要があるのだが、僕の代で終わるのだろうか?。

 

庭師に依頼して城外の一角に研究用の農地をこさえると、純粋なじゃがいも、ヤムナス、ジャガイモの草を切り取ってヤムナスを接ぎ木した接ぎ木じゃがいも、逆にヤムナスの根にじゃがいもの茎を接ぎ木した接ぎ木ヤムナスの四種類を植えて農業試験を開始した。

 

僕が畑の面倒を見る訳には行かないので、専業農家を一人雇って畑の面倒を見てもらっている。

 

僕のポケットマネーからお金を出しているので、家族も特に反対は無かった。

 

最初の結果として、ジャガイモの草を切り取ってヤムナスを接ぎ木した、接ぎ木じゃがいもからできたジャガイモは、だいぶ毒性が低い芋となった。対して、逆にヤムナスの根にじゃがいもの茎を接ぎ木した接ぎ木ヤムナスは、根の芋が大きくなる事もなく、繊維質のままで、さらに毒を持つようになっている事から、接ぎ木ヤムナスは除外した。

 

次の工程は、このジャャガイモの草を切り取ってヤムナスを接ぎ木した接ぎ木じゃがいもの花粉をじゃがいもに受粉させて、毒性の低い子孫を選別する作業である。

 

ちなみに、ヤムナスを接ぎ木した接ぎ木じゃがいもは、接ぎ木したからと言って、じゃがいもとヤムナスのDNAが混ざるという事は無い。ただ、物理的にじゃがいもの茎にヤムナスが乗っかって育っているだけである。

 

ソラニンやチャコニンと言った毒性物質は日光に当たる葉や茎などで多くつくられる。だから、ソラニンやチャコニンと言った毒性物質を作らないヤムナスを接ぎ木すれば、葉や茎で毒物が生成されないため、毒性の少ない芋が出来る。しかし、この毒性の無い芋から切り分けて増やした所で、DNAに変化は無いのだから、芽が出て育つと普通に毒芋になる。

 

こんな事をするのは、こうした方が少しでもじゃがいもに近くなって、品種改良が早く進むといいなぁという願望でしかない。

 

「こんな風に根と草を分けてつなぎ合わせる事で、お互いの性質を受けついだ草ができるのですね。驚きました。」

 

エルラ先生が横で驚いている。マテリオンの人から見ると接ぎ木はまるで魔術のように見えるだろう。 ただ、DNAの知識がある人から見れば、この接ぎ木という行為は無駄でしか無いかもしれない。あるいは、遺伝子のエラーを誘発しやすくなって、突然変異が起こりやすくなると論評してくれる人も居るのだろうか?

 

作物として収穫する訳ではないので、ジャガイモは1年に2回植えられた。 そして緑色の薄い毒の少ない芋同士の畑を作って、半分はヤムナスを接ぎ木して品種改良を行う。

 

畑には数百本のじゃがいもとヤムナスが育って壮観である。

 

そして2年ほどの月日が経ち、作業もマンネリ化しはじめた時に、僕は前世と同じ色と形がしたジャガイモを見つける事になる。

 

そういえば、忘れていたけど、僕にはもマテリア様の加護がある。どうやら、こんなに少ない試行回数で宝くじの一等賞を引き当てたようだ。

 

加護なんて忘れていたけど、マテリア様ありがとう! そしてたぶん、なにもしていないだろうけど、マテリア様ありがとう!

 

僕は本当に根拠のない感謝をマテリア様に捧げた。

 

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