静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~ 作:Magical forest
僕の毎週のパイプオルガンの演奏はとても順調だった。
毎週僕の演奏を楽しみに沢山の人が訪れてくれる。 結果、公都アルヴェリオンで僕はこちらの方面でもかなりの有名人となっていた。
前世を参考にパイプオルガンのレパートリーも増えて、練習にも余念がない。
今日もソフィア先生が練習を見てくれる。
ちなみに、ソフィア先生は3年前にルミエール公爵領の侯爵さんの家に嫁入りをして、侯爵夫人になっていて、頻度は減ったけどこうして僕のパイプオルガンを今でも聞いてくれている。
それから、僕の弾いた曲を楽譜にまとめて編纂して作品目録として発行してくれている。
僕としても地球の偉人の曲がこの世界に足跡を残すのは重要な事だ。侯爵夫人となったソフィア先生に僕の曲を残してもらえるのはとても助かる。
もちろん、ルミエール公爵領で上げられたソフィア先生の結婚式は、とても盛大な物となり、僕も結婚式の際には、結婚行進曲を弾いてお祝いした。
もちろん、メンデルスゾーン『真夏の夜の夢』の第9曲だ。原作はシェイクスピアの喜劇をメンデルスゾーンが劇付随音楽とした物だけど、『真夏の夜の夢』のワードだけにピクッと反応してしまった人は、某動画サイトの影響を受けすぎている可能性があるね。
もちろん、サプライズで用意したその曲にソフィア先生は大感激。そしてじゃがいもフェスティバルと共に、経済が上向きまくっているルミエール公爵領では、僕のパイプオルガンの先生としての実績もあって、それはそれは大切にされているそうで、結婚後の生活も非常に良好だそうだ。
そんな子ネタはともかくとして、この日の僕はオルガリンで『G線上のアリア』を練習していて、その曲をソフィア先生に聞いてもらっていた。
オルガリンは木琴の音でしか無いので、パイプオルガンの音を想像で補いながら弾いて行く。
今日はなんだか調子が良い。オルガリンなのに、まるでパイプオルガンの音が本当になっているような脳内再生状況である。
気分は、カラオケショップでエアギターを弾くエアギタリストだ。 盛り上がって来たぞ!
僕は演奏に熱中した。
「あのっ、シュウ様? パイプオルガンの音が聞こえるのですが・・・。」
「えっ?この音、本当に聞こえているの?」
どうも、僕の脳内の音が直接ソフィア先生に聞こえているようだ。
脳内の音がソフィア先生に伝わっているのだろうか?
僕は実験してみる事にした。
(ファミチキください。)
「ファミチキくださいって聞こえます。ファミチキって何ですか?」
ギャー――――っ僕の脳内の声が直接聞こえているよっ~~!
「今の聞こえた?」
「何か言ったのですか?」
どうも僕の思考の音は聞こえないみたいで、僕が伝えたいと考えた時だけ反応するみたいだ。
試しに、僕はショパンの子犬のワルツを脳内で弾いてみる事にした。この世界には存在しないピアノの曲だ。
「わっ、わっ、わっ。とても素敵な曲ですね! なんて言う曲なのですか!?」
僕の脳内再生曲が音となって実際に再生されるようだ。 僕が音を伝える概念属性魔法に目覚めた瞬間だった。