静筆の魔術師 ~音と秩序の辺境譚~   作:Magical forest

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建国王カイル・アリディアの生涯2

 

「実際、ログス様が前衛を引きうけて、カイル様が必殺の一撃を放つ戦法は、冒険者時代から独立戦争に至るまで、必勝パターンでした。ザリャ様はカイル様の護衛ですね。 そんな感じで魔獣を倒すうちに、カイル様は冒険者として名を上げていきます。」

 

「メイリア様はどうなったの?」

 

「カイル様がログス様などと共に稼げるようになると、冒険者を引退して、カイル様やログス様などが住むクランハウスの管理をされていたみたいですね。」

 

「さらにクランの鍛冶メンバーであったドワーフのグランナ様と、エルフ族の王女であったハイエルフのセレフィス様と親交を深めていきます。」

 

「セレフィス様は僕達ルミエール公爵家の御先祖様だよね。」

 

「はい。そうです。」

 

「セレフィス様側で戦ったのがアルディア独立戦争に繋がっていくのだよね? 一介の冒険者がエルフ族の王女とどうして知り合いになれたの?」

 

「その当時、ノアの大森林に住むエルフは、亜人の中でもある程度独立を保っていたのですが、次第にバルグレイア帝国の亜人差別と亜人狩りが酷くなりまして、それでついに、森の外郭まで監視に来ていたセレフィス様がルグレイア帝国に捕まって、檻に入れられた所を、エルフからの依頼でカイル様が助け出したのが縁のようです。それでお互いに恋に落ちて、亜人側で戦うようになる流れみたいです。」

 

「でも、セレフィス様にとって、普人族は自分を捕らえた宿敵みたいなものだよ。いくら助けられたって、カイル様に恋なんてするの?」

 

「これが不思議な事に、各史書や歴史的な記録を見ても、お互いに恋をしていたとしか言いようがないです。もし、そうで無ければ、セレフィス様がエルフの部族をまとめ切って、カイル様の旗の元に集う理由にならないからです。普通は規模から言って、初期の反乱軍はカイル反乱軍ではなく、エルフ主体のセレフィス反乱軍になっていたはずです。もしくは、カイル様とログス様が指揮を取る、獣人の反乱軍とエルフの反乱軍が別々に動いていて、最初から統一された指揮の元に反乱軍は動かなかったはずですが、カイル様が獣人の反乱軍の指揮官になった時点で、すぐにセレフィス様がエルフを率いて参加されておりますので、史実の解釈通りに恋していたという解釈でいいと思います。」

 

「本当?」

 

「本当です。私が王立総合学院の史学編纂科時代に見た資料では、バルグレイア帝国のセレフィス様の指名手配書があって、そこには、反乱軍リーダーであるカイル様の恋人と書かれていました。敵にすらこう書かれるぐらいなのですから、疑いの余地は無いと思います。」

 

「うーむ。事実は小説よりも奇なのかもしれない。」

 

「シュウ様は本当に上手い事言いますね。そうでなくても、アルディア建国の前後でシュウ様とセレフィス様は3人のお子様をもうけられております。それだけでも二人を愛を証明できるのでは?」

 

「そう言われると、反論の余地が無いね。 それで獣人族の方は、単純に強い人に従ったって感じなんだよね。」

 

「そうですね。ノアの大森林よりも手前に広がる、ソル平原に住まう獣人族たちも過酷な亜人狩りに合い、バルグレイア帝国に怒りをたぎらせて、ログス様の元に集い、カイル様の指揮の元で反乱を起こすようになったみたいですね。そこに、エルフとドワーフ、そして女神教会の騎士団が加わります。」

 

「いよいよ、アルディア独立戦争の開幕だね。一瞬でこんな大軍団を結成できるなんて、流石はカイル様だよ。」

 

「シュウ様はすでに、アルディア独立演義を読んでいたのでしたよね。」

 

「そうだよ。3歳の頃に読んで、この決戦シーンはドキドキだったよ。」

 

「あっちは、物語用に脚色が入っていて、史記とは違うのですよね。」

 

「えっ?違うの?」

 

「はい。演義の方は、カイル様が軍を起こされてから、すぐにヴァレンツリァの石畳事件が起こる流れだと思うのですが、史記の方は、カイル様が反乱を起こしてから、ヴァレンツリァの石畳事件まで5年かかっています。」

 

「その5年間は何をしていたの?」

 

「毎年討伐軍が派兵されたようなのですが、ノアの大森林の中に逃げ回って、追いかけて来た討伐軍を兵糧攻めにしてダラダラと殲滅していました。」

 

「何かすごい戦術とか使っていたの?」

 

「単純に、ノアの大森林の奥に誘い込んで、孤立させて個別に叩いていたみたいで、非常に地味ですが効果的な戦術だったみたいですね。結果的には、バルグレイア帝国から、毎年討伐軍が派兵されてきましたが、ほとんど被害を受けずに撃退できていました。むしろ、ノルダ山脈の向こう側のサリディオン平原での魔物討伐の方が被害が出ていたぐらいです。」

 

「と言う事は、ノルダ山脈を貫くカイル大隧道(ずいどう:トンネルの事)はこの時点ですでに完成していたの?」

 

「はい。そこが演義と史記の大きな違いです。演義での、優柔不断ながらも周りに流されて英雄的な行動をするカイル様と違って、実際のカイル様は非常に現実主義者で、反乱軍の家族を守りながらバルグレイア帝国と戦うのは無理と考えて、ノルダ山脈に巨大トンネルを彫り、ノルダ山脈の反対側に拠点を作って、民間人や戦えない人達をそちらに避難させました。これがアルディア王国の原点となります。」

 

「バルグレイア帝国を降伏させる前に、アルディア王国の原型がすでにあったんだ!」

 

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