東方恋愛伝   作:ターメリック

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無限の可能性

叢が萃香に殴られてから早くも数日が経っていた。

少しおかしいと思ったのはここ数日の間に何度も宴会が開かれたのだ。まるで人が萃められているように。しかしそんなことがあっても叢は一向に目を覚ます気配が感じられない。このまま目を覚まさなかったら……。

俺はなにかを失ったような気持ちになっていた。フランもここ数日ずっと元気がない。紅魔館には不穏な空気が漂っていた。

「はぁ、このままじゃ埒が明かないな。仕方ない。とりあえず流鬼を呼んで話し合うしかないか」

俺はすぐに出かける準備を始める。そんなところにレミリアが部屋に来た。

「ねぇ…出かけるの?」

「ちょっとな。まぁ心配するな、叢は大丈夫だし、俺は流鬼のところへ行ってくるだけだからさ」

「私もついていく」

「わかった」

俺はレミリアと一緒に冥界へ向かった。

白玉楼につくと流鬼と妖夢が待っていた。

「ふたりともよく来たな、中へ入ってくれ」

「どうぞ」

「悪いんだが今はそんなことをしてる暇はないんだ。実は次の異変が動き始めてる」

「本当か⁉︎じゃあ今すぐ解決に…」

「それは出来ない」

「なんでだよ」

「数日前に首謀者に会ってるんだ。で、その時に叢がやられた」

「なんだって⁉︎」

「本当なんですか⁉︎」

ふたりともかなり驚いていた。それもそうだよな。だって叢ものすごい強かったし。負けるなんて考えられないよな。いや、今はそれよりも早く二人を連れて行って先のことを考えなくちゃ。

「百聞は一見にしかずだ。紅魔館へ行くぞ」

「わかった」

「テレポ‼︎」

魔法を唱えて紅魔館へ移動する。すぐに叢の寝ている部屋へ連れて行く。

「本当に叢が…」

「こんなボロボロになるなんて…」

「いったいどれだけの攻撃を受けたんだよ」

「一撃だ」

「え…」

二人は黙り込んでしまった。やはり状況が飲み込めないとこうなるよな。しばらく沈黙が続いた。すると急に叢が魘され始めた。

 

 

「私が本当の力ってのを見せてあげるよ」

俺の意識の中には萃香に殴られるシーンだけがリピートされる。どう足掻いても決して届かないであろうまさに月とすっぽんのようにはっきりとした力の差、まじまじと見せつけられた挙げ句の果てに喪失感をおぼえた。

「やめろ…やめろ…やめろぉ‼︎」

無意識に言いながら勢いよく起き上がる。息は激しく切れ滝のように流れる汗。殴られたところからくる激しい痛み。今なにが起きているのかわからなくなっていた。

「はぁ……はぁ……はぁ………」

「叢大丈夫か?」

「しょーや…」

「翔哉さん」

「苦しくないか?叢」

横を見るとみんながじっと俺を見ていた。

「みんな、どうしたんだ?そんな深刻な顔をしてちょっと意識を失ってただけだよ」

「ちょっとじゃないよしょーや、数日も目を覚まさなかったんだよ」

「面白くない冗談だなフラン」

「冗談とかじゃないよ。本当なの」

「…本当に言ってるのか?」

「うん」

俺はいったい何をやってたんだろ、まさかあの鬼にやられてからずっと目を覚まさなかったのか?くそっ‼︎次にあったら絶対ぶちのめす。

「行かなくちゃ…」

「おい、無茶するな」

「あの鬼をぶちのめす…」

「馬鹿言うな‼︎たった一撃でこの有様だぞ‼︎次にやり合ってみろ今度は確実に死ぬ‼︎」

「そんなことない‼︎絶対負けない‼︎」

剣は珍しくきつく反対してきた。普段はこんながっつり否定するようなことしないのに。

「ひとつ言わせてもらうわ。お前を殴った後に萃香に言われたよ。さっき言ったことを取り消して欲しかったらして欲しかったら死に物狂いで特訓をして私と同等に戦えるまでに鍛え上げてこい。後仲間を連れてきてもいいって言ってたんだ」

「舐めやがって、絶対ぶち殺してやる」

「とにかく今は時間が惜しい。急いで鍛え上げるぞ。もちろん萃香と戦う時は3人だ。俺と流鬼と叢で行く。はっきり言えば人間が1人で鬼に勝てるわけない。なら三本の矢のようにまとめてかかればいいんだよ」

「そうだぜ。昔っから3人でいろいろ解決してきたじゃねぇか。今回も同じだろ」

そうか、そうだよな。別に異変解決に人数なんて関係ないし、ましてやあの鬼本人が言ってたんだから。

「そうだな…2人のお陰で頭が冷えたよ」

「じゃあ早速特訓始めようぜ」

こうして打倒萃香を目標にみんなで協力して地獄の特訓をすることに決まった。

 

 

特訓の内容としてはまずそれぞれの彼女に相手をしてもらうことにした。

俺はフラン、流鬼は妖夢、剣はレミリア、もちろんフラン達には本気で殺しに来るように言ってある。何故か、答えはひとつ相手は本気モードの鬼だ。生半可なフィジカルじゃ話にならない。だから極限まで追い込むようにするために殺気むき出しでやりあうように頼んだ。

もちろんフランとレミリアは昼間できないのを考えて冥界でやることに決まった。幽々子には後でしっかりお礼のご飯をご馳走することで承諾してもらった。

「じゃあ始めようか」

「本当にいいの?」

レミリアが俺たち3人に問いかけてきた。

「もちろん」

「当たり前さ」

「いいぜ」

「俺たちはみんな覚悟の上でやる。準備なら問題ない‼︎」

「じゃあ…」

レミリアがそう言うと、

「行くよ‼︎」

「行きます‼︎」

「行くわよ‼︎」

息を揃えて動き始めた。

 

 

レミリアとやり合うことになるとは正直気がひけるが、萃香と戦うにはこれしかない‼︎

「最初から本気で行くわよ‼︎神槍スピア・ザ・グングニル‼︎」

「本気じゃなくちゃ特訓にならないさ‼︎土符アースクエイク‼︎」

俺はグングニルをアースクエイクにより防ぎつつも攻撃をする。レミリアは避けてから接近戦に持ち込んできた。

「はぁあああ‼︎」

「もっとも最善の策はこれでしょ‼︎」

地上に大きな魔法陣が展開する。レミリアは驚いて一瞬動きが止まった。だけど打つタイミングはまだここじゃない。もう少し、もう少しだ。

「この程度どうってことない‼︎」

瞬間移動したかのように目の前にレミリアが現れた。

しまったまさかここで不意を突かれるとは、だがまだまだ‼︎

「くっ‼︎防符マルチウォール」

俺は目の前に壁を作り防ごうとするがレミリアは瞬間的に後ろに回り込み俺を鋭い爪で切り裂く勢いで腕を振り抜いた。

「ぐあっ‼︎」

俺の受けた傷は意外にも深くかなり深傷を負った。

 

 

再び妖夢と一戦交えるのか。だけどそう簡単にはやられない。俺だって前の俺とは全く違うんだ。

「先手必勝‼︎グラディウスボルト‼︎」

俺は拳に電気を貯め一気に突き出す。突き出した拳にたまっていた電気はレーザーとなり一直線に妖夢に向かって放たれる。

妖夢はすぐに反応して左に避ける。しかし俺はそのまま手首を左に曲げるとレーザーも左に曲がり妖夢を追尾する。そしてレーザーは妖夢を呑み込んだ。

「ふぅ、とりあえず一撃か、まだまだ…」

「油断してますよ‼︎」

妖夢の声が聞こえた瞬間に体を半身にするが右腕に激痛が走る。

「なっ⁉︎」

俺はその時すぐにわかった。目の前を飛ぶ俺の右腕、俺の体から離れて地面に落ちた。避けるのが遅かったのが原因で右腕を切り落とされた。

 

 

「フランやっぱりしょーやと戦えない‼︎」

「何言ってんだよ、殺す気で来いよ‼︎」

「だってそうしたら手加減できなくなっちゃう」

「何のための特訓だよ、死ぬくらいの努力がなくちゃ萃香には勝てないんだ‼︎異変解決するためなんだ‼︎いいからやれ‼︎」

「ごめんねしょーや…」

するとフランの眼つきが一変する。その目はまさに真紅の目だ。少しでも油断したら確実に死ぬ、一瞬の迷いも許されない戦いを迫られていた。

「簡単に壊れないでよ?」

「そう簡単に壊れるかよ‼︎」

「ふふふ、あははは‼︎禁忌フォーオブアカインド」

やっぱり来たか。完全にやる気になったな。

「はぁあああ‼︎ダークエナジー‼︎」

一瞬でエネルギー球を無数に作り出す。そしてそれを音速を超えるスピードで打ち出す。

「遅いね」

「なっ⁉︎いつの間に…ぐふっ‼︎」

フォーオブアカインドで現れたフランの分身に後ろから蹴り飛ばされもう一人の分身に向かって飛んでいった。

まずい、このままじゃ完全にハメ技決められる。なんとかしないと…、痛みに支配された体を無理やり動かしてなんとかハメ技から抜け出したと思ったが現実はそんなに優しくはなかった。

「よくハメ技から抜け出せたね、でも逃がさないよ、レーヴァテイン‼︎」

こんなあっさりやられるんだな…

俺はそのまま意識を失った。

 

 

地獄の特訓初日、俺たちは3人に歯が全く立たずにいとも簡単にやられた。そして人間と妖怪達の本当の力の差というものを認めざるを得なかった。

すぐに治療してもらったが永琳にはこっ酷く叱られた。

「大馬鹿者‼︎生身の人間がどう足掻いてもあの3人が本気を出せばこんなことになるなんてわかっていただろう‼︎あの3人に限らず幻想郷で名の知れてる妖怪はみんなそうだ‼︎本気を出せば滅せる奴だっている。そんなことをしたら自分たちもタダじゃ済まないからみんなある程度の加減ってものを知ってるんだ。分かったらもうこんなことはするな」

「待ってくれ…いくら妖怪が強くてもな…俺たち人間だって無限の可能性を秘めてるんだ。100年も生きられない俺たちには今しかこの可能性に賭けるチャンスはない‼︎だから頼む‼︎これから先何回何十回何百回こんな傷を負ってもかけてみたいんだ‼︎頼む‼︎」

俺は痛みの残る体を動かし土下座をして永琳に頼み込んだ。

「俺からも頼む‼︎」

「お願いだ永琳、俺たちに協力してくれ‼︎」

流鬼と剣も土下座をして頼んでくれた。

「永琳、この3人の頼みを聞いてあげたらどう?」

「姫様…」

すると部屋に姫様と呼ばれる女性が現れた。彼女は俺たちの頼みを聞くように永琳を説得してくれた。

「あなたは?」

「私は蓬莱山輝夜よよろしくね」

「よろしく」

「ねぇ永琳私からも頼むわ。なんかこの子たちの話を聞いていて心にくるものがあったのだからお願い。この子たちに協力してあげて」

「…姫様もそう仰るのなら、わかったわ。あなたたちのその無限の可能性、信じるわよ」

「ありがとう‼︎」

俺たちは永琳と姫様と呼ばれる彼女、蓬莱山輝夜に感謝した。

そして俺たちは再び地獄のような特訓に打ち込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

地獄の特訓を始めてから早くも2ヶ月が経っていた。それぞれ見違えるようなフィジカルになり並大抵の攻撃なら食らっても全然大丈夫なまでに成長した。

「随分変わったんじゃないか?」

「前よりも充分強くなってるし」

「あとは3人でどれだけ連携できるかが勝敗を分けるな」

3人で話をしているとみんなが集まってきた。

「ねぇしょーやごめんね、あんなに傷つけちゃって…」

「気にすんなよフラン、フランのおかげでここまで来れたんだからさ」

俺はフランの頭を撫でながら言った。

「流鬼哉さん…あのなんと言ったらいいのか…」

「なに、心配しなくても大丈夫さ。それに無理させて悪かったな」

流鬼はそう言いながら妖夢をそっと抱きしめた。

「剣、無理だけはしないでね」

「大丈夫だ。それにしてもレミリアには苦労かけたな。わざわざ特訓にもつき合わせちゃったし。異変解決したらちゃんと苦労労うからもう少しだけ待っててくれ」

剣はレミリアに宣言をして3人覚悟は決まった。

「さて、そろそろ行くか」

俺たちは萃香のところへ向かうことにした。しかしここでひとつ問題が発生した。

「なぁ剣、萃香ってどこに居るの?」

「俺もそう思った」

「え?そんなの知るわけないだろ」

「居場所わからないんじゃ元も子もないじゃねぇか‼︎」

さっきの会話はどうなるんだよ全く、まぁいいさ。紫にでも頼むか。

「なぁ紫なら知ってるんじゃね?」

「あぁ確かにそうだな」

「呼んだかしら」

「うぉっ‼︎いきなり来るなよ」

「マジびびったわ」

笑いながら話していると剣が話を持ち出した。

「紫、単刀直入に言うわ。萃香のところへ連れて行ってくれ」

「もう準備はいいのかしら?」

「「「当たり前‼︎」」」

俺たち3人息ぴったりに言うと納得したのかスキマを開いた。

「彼女はこの先に居るわ。それとあの子は弾幕とか好まないからおそらく肉弾戦になるわ。それでもいいの?」

「あぁ、もちろんさこっちも殺すくらいやらないといけないし」

「ならいいわ」

「ありがとう紫」

そう言い残して俺たち3人はスキマの中へと入っていった。

 

スキマを抜けると平野に出た。そして出てきたところから10mほど離れたところに萃香が立っていた。

「この前の借りを返させてもらうぜ‼︎」

「いいよ、その代わりこの前みたいに手加減とかしないよ」

「手加減なんか要らないよ」

「話もここまでだ。さぁやろうじゃないか‼︎」

各自臨戦態勢に入る。そして今人間と鬼の戦争が始まる。




次回肉弾戦の萃夢想始まります。
今回だいぶ長くなったと思います。
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