異世界パラド   作:ヒャル

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 最初に簡単な世界観の説明を。
 パラドゲーマーはこういう淡々とした戦記描写も楽しめる生き物だよね(


プロローグ
ヨルデン世界の滅亡


 ――この世界には不幸が溢れている。

 

 多くの人間が父を、夫を、息子を失った。

 人権は失われた。安定した生活も失われた。家を失う者、糧を失う者、絆を失う者。そして、明日への希望さえも失おうとしている。

 

 亜人たちも悲惨だ。美しいエルフはマンハントや個人所有を含む人間動物園の標的となり、手先の器用なドワーフは工廠で過酷なノルマを課され、身体能力に優れる獣人は鉱山などでこき使われる。

 

 笑うのは、この世界の住人ではない邪悪な支配者たち。

 

 

 

 

 

 

 近年では宇宙に浮かぶ惑星であることが知識として一般市民にも浸透してきたヨルデン世界。

 創造神ヴァラドが作りたもうたこの世界で人類は西大陸クシデンと東大陸リエンタに根を下ろし、時に争い時に協調しながら数千年にわたって繁栄を謳歌してきた。

 自国の利益を求める国家間の対立、人間とエルフ・ドワーフ・獣人等の諸種族間の価値観の相違など、細々とした問題はいくらでもあったが、それでもこの世界は決定的な破滅を迎えるようなことはなくいつまでも続いていくのだろうと誰もが思っていた……“あの日”までは。

 

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

 新ヴァラド歴2299年、東西大陸の間に存在する“魔の海”に突如として現れた大陸にヨルデン諸国は騒然となった。

 

 国家間の対立を抱えつつも複雑な外交関係と勢力均衡によって平和を維持していた各国は、この騒動がパワーバランスを破壊し大規模な戦争へと繋がることを恐れ、“魔大陸”と仮称した新大陸の調査と現地勢力との穏便な接触を試みる。

 しかし魔大陸の勢力は転移による混乱から立ち直ると強圧的な態度で応じ、交渉を試みた国々に実質的な従属要求を突きつける。その果てに新ヴァラド歴2300年春、立地的に一番近いズィーラト王国とルクス帝国に電撃侵攻するという暴挙に出た。

 

 

 不意を突かれた上に軍事的に弱体なズィーラト王国は圧倒され、アヴァーナ精霊連邦の援軍も虚しく瞬く間に全領土を制圧されてしまう。

 

 

 一方のルクス帝国は世界有数の大国であったが、このような時に共に戦ってくれる同盟国がいなかった。

 事態を重く見た隣のカルマル聖王国が戦争協力を打診したものの、ルクス帝国は西大陸一の陸軍大国であるという驕りと、それを背景に高圧的な外交を繰り返してきた歴史から弱みを見せることを良しとせず権高に振舞い、カルマル側に一方的に援助しろと迫って交渉を破綻させてしまう。

 

 元々交渉の手札として大規模な陸軍を動員していたルクス帝国は上陸してきた魔大陸の軍勢に会戦を挑み、これに勝利して侵略者を海に叩き落とすことを狙ったが、魔大陸軍の兵器はルクス軍のものより遥かに先進的で惨敗してしまう。

 このビルゲル会戦の敗北でルクス側は現地及び周辺地域の軍勢が大打撃を受け、陸軍の保護を失った帝国領東部は為すすべなく蹂躙された。

 

 

 こうして魔大陸軍は両大陸に確固たる橋頭保を確保し、続々と後続部隊を上陸させて本格的な侵攻に取り掛かった。

 この事態の急転に、ヨルデン世界も無策だったわけではない。カルマル聖王国はルクス帝国との交渉が破綻した後も手を取り合うよう世界に呼びかけ、諸国の心ある人々もこれに応じ、その想いは有史以来初めてとなる両大陸の全国家が加盟する勢力『ヨルデン大同盟』結成として花開いた。

 

 これによってヨルデン世界の反撃が始まる……ことはなかった。

 まずもってリアルタイムで国家間の交渉ができるような便利な手段がない以上、互いに外交官を送ってのやり取りとなりどうしても時間がかかる。ヨルデン大同盟が結成された時点で既に東大陸ではズィーラトに続いてアヴァーナ精霊連邦が崩壊、西大陸でもルクス帝国が帝国中枢である西部に追い詰められ、首都圏の東隣にあるリミン山脈を要塞化して最後の抵抗を試みる段階にまで戦況が悪化していた。

 そもそもの問題として東西大陸の交流は主にヴェネティ共和国とズィーラト王国が窓口となって行われていたのだが、その片割れであるズィーラトが早々に滅亡してしまった以上東西大陸の連携など絵に描いた餅でしかなかった。

 

 

 それでも、協力を説いた人々は諦めなかった。ヨルデン大同盟を提唱したカルマル聖王国は諸国結束の先駆けとなるべく、女王カタリーナⅦ世の決断により軍の総力を挙げたルクスへの派兵を決行。大規模な援軍と地の利によりルクス軍の敗走はリミン要塞で止まり、魔大陸軍の進撃を押し留める。

 東大陸でも魔大陸軍によるシーシュオ帝国とバル・ディクス連邦共和国への攻撃が始まったが、シーシュオ帝国は国全体が峻嶮な山岳地帯に囲まれた天然の要塞であり、バル・ディクス連邦共和国も自前の戦力こそ小規模なもののアマテ皇国とドンフウ帝国と軍事同盟を締結しており両国からの援軍が既に到着済み。進撃に不向きな熱帯雨林の広がる地形もあって三ヶ国連合軍は国境線に築いた野戦陣地群“ノーンブア線”を死守、シーシュオ帝国も国内への侵入を阻止し続け東大陸でも魔大陸軍の進撃は止まった。

 

 

 人類は勝てるかもしれない――その希望が毒となったのか、それとも対立し合っていた国々が手を取り合うなど所詮は叶わぬ夢だったのか。

 

 ルクス帝国で革命勢力による反乱が勃発。リミニ要塞に持てる全てを注ぎ込んできたルクス帝国政府の対応は遅れ、皇帝アレクセイⅣ世の暗殺によってルクス帝国は崩壊する。後方からの補給が途絶したリミニ要塞は絶望的な抵抗の末に陥落し、西大陸の魔大陸軍は一斉にリミニ山脈を越えた。

 なお悪かったのはカルマル聖王国軍主力がルクス帝国崩壊の巻き添えを受ける形で壊滅したことで、カルマル領防衛には友好国のブレイス連合王国が派兵を行ったもののカルマル軍の末路を見た西大陸諸国は他国への派兵に及び腰になってしまい、カタリーナⅦ世の想いは完全に裏目に出ることとなってしまった。

 

 この事態を引き起こした、祖国を敗戦へ導くことでその混乱に乗じて武力闘争を行い国家を刷新しようとする“革命的祖国敗北主義者”たちが何を考えていたのかは不明だ。確かなことは、ルクスの新たな支配者となろうとした彼らは魔大陸軍に引き潰されて屍を晒すことになったということだけである。

 

 

 一方の東大陸でも、シーシュオとバル・ディクスで激戦が続く中東大陸一の大国であるベイゴウ帝国もシーシュオに援軍を送るよう諸国に求められるが、千年来の宿敵であるシーシュオを救援することは国内からの猛反発を受けて対応が進まず、そんな姿にやはりベイゴウは信用できないとシーシュオ側も一部の兵をベイゴウとの国境に貼り付け続けるという醜態を晒した。

 援軍を得られず、部隊を集中することも敵わなかったシーシュオ帝国は軍の消耗が限界に達し、国境線の突破を許してしまった。国土の外延部こそ山岳だがその内側には豊かな盆地が広がるシーシュオ領にはもう防戦に適した土地がなく、防衛線の再構築もままならないままシーシュオ帝国は東大陸から消滅する。

 シーシュオ帝国を滅ぼした魔大陸軍の部隊は自国内で責任を追及し合うベイゴウ帝国を横目に、主力が留守のドンフウ帝国へ殺到。本国の危機にドンフウのバル・ディクス派遣軍は大混乱となり、それを突かれる形でノーンブア線は破られた。

 

 

 ここに至っては、この戦争の結末を予想することは難しくないだろう。

 ヴェネティ共和国の沿岸諸都市に魔大陸海軍の艦砲射撃が降り注ぎアルガルヴェ王国軍が支援に走り回る中、並行して行われた魔大陸陸軍の大規模侵攻に人類最後の希望となったスペリオル帝国・ルフェイム妖精連邦・ヴェルク大公国の連合軍が立ち向かい、アルトベッケルの戦いで勇者の如く倒れた他にはもはや大規模な会戦もなく次々と国が滅びていく。

 

 そして最後まで抵抗したアマテ皇国の臨時首都ホクシンの陥落を以ってヨルデン大同盟は崩壊、人類は魔大陸からやってきた“魔族”の被支配階層へと堕ちた。

 

 

 魔族の支配から逃れようと、聖地としていずれの国も領有を禁じられる不可侵領域とされてきた、南方のヴァラド大陸へと島づたいに逃亡した者もいたが…元々侵入者を拒むかのような姿をしている聖地に救いはなく。

 僅かに上陸に適した北端部で細々と開拓を行おうとしたものの、魔族の海賊染みた勢力に襲撃されてその奴隷にされるという末路を辿った。

 

 

 

 だが、絶望の中でも人々は救いを求める。ヨルデン世界に滅びをもたらす存在が突然現れたのだから、逆にヨルデン世界を救う存在が突然現れない道理があろうか。

 そして祈るのだ。創造神ヴァラドに……古代においては“パラド”とも呼ばれていたという、万物の創造主に。

 




ヨルデン
大陸型惑星

惑星規模:18
惑星許容量:10100

伝統的他種族社会
職業からの社会学研究:+15%
統治志向の魅力:-5%
 この惑星の社会は伝統的に複数の種族が上下関係を作ることなく形成されてきた。
 独特の社会構造は研究の機会を与える一方で、住人同士の価値観の相違を生み出している。
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