異世界パラド   作:ヒャル

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救世主はCities: Skylines?

 Cities: Skylines。

 Paradox Interactive販売のゲームの中でもこれは他とは毛色が違い、無人の土地に一から街を作っていく都市開発ゲームだ。

 裸一貫の状態だし生きる為にまずは家と、安全な街が欲しい。軍隊を編成して戦争なんて始めるのはその後だ。

 

「初期設定は……難易度縛る意味もないしチート全部振りでええやろ。こっちは命が懸かってるし」

 

 建物を建てたり公共サービスの運営に使ったりする資金は無限。山を削ったり土地を埋め立てたりするので増減する土砂も無限。ノーマルでは掘ったら2年と保たずに枯渇する現実では役立たず過ぎる鉱石や石油も無限。

 あとマイルストーン……ゲームでは街の人口が一定数に達するごとに建てられる建物が増えたり使える機能が増えたりするのだが、これも最初から全マイルストーン解放状態にしておく。ついでにDLC要素もあるようなので、DLCにある自然災害発生もオフだ。

 

「これでよし。まずはニューゲームでマップを…あれ?」

 

 Cities: Skylinesのニューゲームは用意されているマップの中から一つ選び、街の名前と車の通行方向を設定してゲームが開始される。しかし、何故か全DLC分が揃ったたくさんのマップのほとんどが選択できなくなっていた。

 

「使えるマップは…1、2の……19個か。何が条件だ……?」

 

 出身DLCは…バラバラ。基本テーマも……温帯だったり亜寒帯だったりで統一性はない。

 

「……あ、海か。ここ内陸だもんな」

 

 あーだこーだ言いながら調べた末に、今使用できるマップの共通点が『外部との接続に海路がない』ことに気づく。

 

 Cities: Skylinesのマップにおいて、人の移動や輸出入などで街への出入り口になるのは、高速道路・線路・海路・空路の4種類。しかし、“デザートオアシス”など一部のマップは内陸扱いなのか海路が最初から存在しないことになっている。

 

「山は削れるし谷は埋められるけど、水辺はゼロから作れないんだよなこのゲーム……だとすると、水関係は現実に近いマップを選んだ方がいいのか」

 

 マップでは川でしたが現実の水源と繋がっていないのでただの細長い湖です。供給がないので水が干上がりました、なんて事態は御免被る。

 

「となると、川の近くにポップしたのは幸運だったのか。結構太くて水量のありそうな川だし…」

 

 選ぶべきは海に面していない内陸。それでいて大河が通っている土地。あと、輸出入ができるかわからないので、四種類ある天然資源がすべて豊富な土地だと尚良い。

 

「……“マーブルキャニオン”にするか」

 

 太い川で土地が大きく三つに分断されているマップを選択する。

 

「道路は欧米式だと俺が事故起こしそうだから、日英式の左側通行にして……都市名も入れないと」

 

 ゲームではただ画面の片隅に表示されるだけで、住人がその名を呼ぶこともない都市の名前。

 故にプレイ時には適当にデフォルトネームそのままにしたりコンセプトをそのまま入れたりしていたが、今や現実となったからにはきちんとした名前をつけなければ。

 

「って言ってもネーミングセンスなんてないんだよなぁ。パラドゲーの創造主たるJohan神ことヨハン・アンダーソンにちなんでAndeborg(アンデボリ)……言い辛いな。ドイツ風にすればアンデボルグ……うーん、面倒臭いからヨハンボルグでいいや」

 

 ヨハンの街って意味だからご利益ありそう。

 名前を入れて『スタート』を選択すると、一瞬視界が真っ白になった後に周囲の光景が一変する。

 

「…どうなるかは確信がなかったけど、マップが元々の地形を上書きする形になるのか」

 

 草木もまばらな荒地は青々とした生命力を感じさせる大地となり、川も幾分か太くなったように思える。

 脳内に表示されるゲーム画面では俯瞰視点で、地上にいる俺とそれを中心にマップ地形に塗り替えられた土地が見えている。地形的な辻褄合わせは自動でやってくれるのか、マップにある川の両端が既存の川と繋がるような向きだ。。

 

 さて、Cities: Skylines のマップだが、2km×2kmの正方形のタイルが5×5の25枚並ぶ形で配置され、マップごとに決まった初期タイルの1枚が開発可能、必要に応じて隣のタイルを購入して領域を広げていく、という仕組みだ。

 正確にはマップは5×5のタイルより外にも広がっているのだが、そちらは購入不可能で開発できない土地になっている。現実となるにあたってその外延部が辻褄合わせの緩衝地帯になっているようで、マップ内の川と現地の川を自然に繋げたり、マップの土地と元々の土地の標高の違いをなだらかにして断崖絶壁を作らないようにしたりしてくれているようだ。

 

 ではさっそく街づくりを始めていく。“マーブルキャニオン”は5×5の中央が初期タイルで、高速道路の終点があるので基本的にはそこから道路を伸ばし街を作っていくのだが…

 

「でもこのマップの初期タイル、陸地はほぼ肥沃な大地だから勿体ないんだよな」

 

 初期タイルを使わず、東隣のタイルを購入。初期タイルへと続く高速道路を三叉路のインターチェンジに差し替え、そこから一般道路を伸ばしていく。

 

「どうせ資金無限だし、豪華に芝生付き6車線道路を使っちゃおう!」

 

 一般道路は2車線・4車線・6車線の三種類が基本になるが、広くて一番渋滞が起こりにくい6車線を選択。

 後から車線を拡大することもできるが、その場合道路沿いの建物を取り潰して再開発することになるので最初から最大車線にしておいた方が楽だ。

 

 そして芝生や街路樹は道路の維持費を増大させるものの、代わりに車の走行音に対するクッションとなって家々への騒音被害を減少させる。騒音被害は住人の健康度に打撃を与えるだけでなく、健康度の低い住人は捨て鉢になるのか犯罪に走りやすくなるので犯罪率の上昇にすら繋がってしまう。

 元から不健康な産業区画などはともかく、住宅区画に使うには芝生や街路樹付きの道路を使っておくのが病院予算や警察予算の高騰を防ぐ為にも望ましいと個人的に考えている。

 

「建物を建てられるのは原則道路沿いだけだから、電気や水道は道路周辺に通っていればいい、と」

 

 発電設備は『石炭発電所』など色々と選択肢があるが、そもそも石炭ってどこから輸入するんだよという話なので出来る限り再生可能エネルギーを利用していきたい。

 幸いこのマップは全体的に強風地帯なので、風力発電が大活躍する。燃料不要で大気汚染も発生しない代わりに騒音が問題になるが、水上に設置できる『先進型風力発電所』があるのでこれをマップ中央を貫く大河の真ん中に立てていこう。

 水上発電地帯が出来上がったら街になる予定のエリアに電線を伸ばして電力供給体制を整える。

 

 水道の方も、やはり大河を活用して水を汲み上げる『ポンプ場』と下水を流す『排水管』を設置し、それらを始点と終点として町全体に水道管を張り巡らせていく。

 水源が無くても『給水塔』を建てれば地下水を汲み上げて水は確保できるのだが、現実でそれをやると地下水の枯渇や地盤沈下の原因になりそうなので自然の恵みに存分に頼っていくスタイルだ。

 

「こんなものかな。じゃあ、いよいよメインの区画整備をしていこう」

 

 街の基本となるのが住宅区画・商業区画・産業区画の三区画。

 住宅区画はその名の通り住民の家が並ぶ区画で、商業区画は住人の職場になると共に休日に買い物に出かける場所にもなる区画。産業区画も住人の職場になると同時に、商業区画で扱う商品を生産する区画であるが、排煙など汚染物質を撒き散らすので住人が病気にならないよう住宅区画と隣接しないように心がける必要がある。

 街の発展には、各区画を求める住人の需要を見つつバランスよく三区画を開発していくのが基本となる。

 

「資金無限だから、パーク関所システムを使わずに開発できるのは助かるな~」

 

 資金繰りに苦労させられるこのゲームにおいて、増税や借金に頼ることなく纏まった収入を得る為のテクニックが遊園地や動物園などのパークエリアを悪y……活用した通行料徴収だ。

 街を住宅区画があるエリアと商業区画・産業区画があるエリアの2つに分け、エリア同士の接続は最低限の道路のみにして開発。そして人口が増えてパークエリアが開放されたタイミングで接続道路を破壊し、代わりに両エリアの間にパークエリアを設置して両エリアを繋ぐゲートと通路を置くことでパークエリアを通らないとエリア間を移動できない仕組みにしてしまうのだ。

 こうなると住人は出勤や買い物の度に入場料を払って商業・産業エリアに出かけていき、そしてまた入場料を払って住宅エリアに帰っていく。アトラクションが一個もないのに入場料だけは上限一杯支払わせるパーク(笑)であっても利用者数と入場料収入は激増していき、税金ではないので住人の幸福度も下がらないというボロ儲けシステムだ。

 

 ――遊園地の中なんて経由させられたらそこから徒歩を強要されて通勤が大変にならないかって?シティスカ星人は道路に出たらポケットから自家用車を取り出して乗り込むからモーマンタイ。

 

 まあ特異な開発を行う以上色々と問題も発生するのだが……ゲームではない現実となった以上どんな挙動になるか予想できないという問題も含め、実行することにならずに済んで良かったという思いがある。

 

「住宅に汚染が届かないように、産業区画は商業区画をクッションにするように配置して…いや、現実なんだから商業区画にも騒音や汚染は届かせない方がいいのか?」

 

 とりあえず高速道路に近すぎる場所は渋滞の原因になるので区画開発は避け、それ以外の碁盤のように広げた道路網に住宅・商業・産業の三区画を塗り絵していく。

 

「……これ、住人が居付いたら大工が組み立てていく方式に変わるのかなぁ?」

 

 住民がいないのでまだ需要がない商業区画と産業区画には変化がないが、住宅区画には早速住宅街が生まれ始める。

 住宅区画の緑色に塗られたマスに、ニョキニョキと民家が生えていくのは何とも不思議な光景だ。

 

 

「あ、通常プレイなら徐々に追加する公共サービスも最初から用意しておかないと駄目だよな?街が発展するまでゴミを亜空間に捨ててくれるゲーム仕様じゃないだろうし」

 

 ゲームでは徐々に建てられる施設が開放されていく仕組みなのもあり、対応する施設が立てられる程度に街が発展してからごみ処理施設や病院、警察に消防などの需要が発生する。

 だが現実になった以上、住人1人の状態でもゴミは出るし火事も起こるだろう。

 

 サービス対象外の地区が出ないように注意しつつ、『病院』『警察本部』『消防本部』を追加していく。

 ゴミ処理は処理能力が高く発電も行える代わりに広範囲に汚染と騒音を撒き散らす『ゴミ焼却場』と処理能力は劣るが周囲への悪影響が少ない『リサイクルセンター』の二択だが……ゲームでは好んで使っていた『リサイクルセンター』にしておこう。

 

「さて、改めて住人が引っ越してくるのを待とうっと」

 

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