異世界パラド   作:ヒャル

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教育と地価

 そういうわけで、現在ヨハンボルグでは産業の重点を農業に置いている。

 

 だが、これはあくまで労働市場に溢れる学歴なしの労働者たちを吸収できるというだけで学歴持ち労働者を増やせるわけではない。教育を受けていない労働者を常に20%しか求めない鉱業・石油産業をはじめとする様々な分野に手を付けられないのは変わらないのだ。

 ついでに言うと学歴が低い住人ほど電気や水を浪費しゴミを多く出すので、インフラの面でも住人に学を持ってもらった方が望ましい。

 

 学歴持ち労働者を育てるのに時間がかかり過ぎるならどうすれば良いか?…簡単だ。学歴持ち労働者に引っ越してきてもらえればそれで済む。

 

 先ほど述べたように、1レベルの家には教育を受けていない住人しか引っ越してこない。逆に言えば、家のレベルを上げれば教育を受けた住人が引っ越してくるようになるのだ。

 ひとまずは農場や牧場を広げて雇用を支えつつ、住宅区画の家々をレベルアップさせて高学歴の住人にポップしてもらう。これが市長としてとりあえず進むべき道だろう。

 

 

 家をレベルアップさせる要因になるのが住人の学歴上昇と地価の上昇だ。

 前者はそれができないから困っているので無視するとして、後者はその家がどれだけ住みやすい環境にあるか…つまりは、公共サービスにどれだけ恵まれているかで決まる。

 

 消防・警察サービスは消防本部や警察本部を建ててあり、警官たちがパトロールしてくれているので問題ない。教育サービスもこれを見越して住宅区画の中に小学校を建てた。後は需要に応じて高校や大学も住宅区画の中に立てていけば良いだろう。

 

 続く健康サービスも病院を建てているからそれでいい……というわけではない。治療を行う治療系施設の他にも健康増進系の施設があるし、更に言うと死後の対応を行うデスケアもまた健康サービスの一種だからだ。

 

 健康増進系は種類が多く、子供とティーンが対象の『小児医療センター』とシニアが対象の『高齢者福祉施設』の他に、誰もが利用できる施設として『サウナ』『市民プール』『ヨガ公園』『運動ホールとジム』の4種類がある。

 この中で特に利用しやすいのがサウナで、低コストな上に小さくて設置しやすく、それでいて効果範囲は他の施設に劣らないという神施設だ。

 それ以外の特徴を挙げると、市民プールはサウナ以外では一番低コスト、ヨガ公園はコストが高めなのにこれだけ効果範囲が狭いという残念施設、運動ホールとジムは一番コストが高いがその分効果も一番高いという立ち位置だ。

 

 基本的にはサウナをばら撒き、スペースと相談しつつ市民プールや運動ホールとジムも少しずつ設置していくことになるだろう。……ヨガ公園はまあ、一つくらいなら設置してやらんこともないかな。

 

 デスケアは地価を上昇させる以外にも、死体が放置され続けると周辺の健康度にダメージを与える上に最悪その建物が潰れて廃墟になるリスクがあるので必須のインフラだ。

 ……じゃあ何で最初に作らなかったのかって?忘れてたんだよゲームだと墓地が開放されるまで死体を放置しても問題起きないんだよ(

 デスケア施設は『墓地』と『火葬場』の2種類があり、死体が発生すると霊柩車が出発して現地に向かい死体を回収して帰還する。墓地は安いのがメリットだが、広い土地が必要になる上に収容限界に達するとそれ以上死体を受け入れられなくなってしまう。

 火葬場は小さいので設置しやすいのがメリットだが、建設費が墓地の3倍以上、維持費に至っては4倍以上とコスト面で大きく劣っている。

 

 墓地のみではいずれ土地の限界が来るのでゲームでは併用するか火葬場一本に絞るところだが…土葬か火葬かは宗教的な問題もあるし、両方設置しておくことにする。

 ゲームでは墓地に収容した遺体を火葬場送りにしてスペースを開けるという機能もあったが……現実となったこの世界では使いたくないし、使うべきではないだろう。

 

 

「…それで、ヘルスケア施設の設置について私の意見を聞きたい、と」

 

「ええ、折角医療従事者の知人がいるのですから、ご意見を伺おうかと」

 

 すっかり病院における俺との窓口と化したシンシア先生の前で地図を広げながら尋ねる。

 ゲームでは施設から同心円状に広がる範囲に入っていれば有効だが、アレは他の施設と違って繋がっていない川の向こうとかでも有効だから現実的ではないし…プロに聞いておくのが安牌だろう。

 

「サウナをヘルスケア施設に含めるかは議論の余地があると思うけれど…頼られたからには協力させてもらうわ」

 

 地図を前にシンシア先生が俺の隣に立ち、いつもの香水の香りがふわりと立ち昇る。

 ちなみに俺との交渉役をやらされるのは大変じゃないかと聞いたら、『市長とお茶をしているだけで仕事している扱いになるんだから役得というものよ』と笑われた。

 

「市民が訪れやすい場所というのは当然だけれど、これからも住宅街は広がっていくでしょう?どのあたりに広げていくか予定はあるのかしら?」

 

「それでしたら、この辺りに産業区画やリサイクルセンターを建てる予定なのでそれを避けてこのラインに……」

 

「それなら……」

 

 今後の都市開発の話も交えながら、建設予定地を決めていく。

 

「…本格的なヘルスケア施設も大事だけど、個人的にはもっと気軽に運動できるスペースも必要なんじゃないかと思うわ。子供の頃から運動する習慣をつけることは大切だし」

 

「ええ、本格的な施設の他にも公園や、ドッグランのような気軽に運動できる場所も用意するつもりです」

 

 家の近くにある娯楽施設も地価を上げてくれる存在だ。

 娯楽施設というと高級そうな印象を与えてしまうが、小さな公園だって立派な娯楽施設。公園や広場、レジャー施設等は種類がたくさんあるので住人を喜ばせる為にも街のあちこちに娯楽施設を散りばめていく。

 ゲームでは4×4マスの日本庭園と片面が8マスの植物園は区画の中に嵌め込むのにサイズが都合よく、お世話になったものである。

 

「でも、それらの施設の駐車場はあまり広くないわよね。近くに新しい駐車場を建てるのかしら?それなら駐車場の需要が高そうな場所にした方が良さそうだけれど」

 

「いえ、これを機に公共交通機関を整備しようかと。そろそろそういったものを導入しても良い時期でしょうし」

 

 街中に置く施設はこんなものだが…残る地価上昇要素に公共交通機関がある。

 公共交通機関はとにかく種類が多く、バス・トロリーバス・電車・路面電車・地下鉄・フェリー・飛行船・ヘリコプター・モノレール・ロープウェイと10種類もある。…あ、タクシーも一応似たようなものか。

 

 この中に導入しやすいものはどれかと言えば、駅も専用道も必要ないバスがぶっちぎりだ。拠点となるバス車庫を建設し、後は走らせたい路線に沿ってバス停を置いていくだけで済む。

 バス停を置くと周囲の住人が喜びそこの地価が上がるので、住宅区画に万遍なくバスを走らせていこう。バス車庫は多数のバスが出入りする為か周囲に騒音公害を発生させるので、これだけは住宅から離すのがベターだ。

 

「公共バスについてはバイオディーゼルエンジンのものを導入しようかと」

 

「そういうところでも市民の健康に気を使っているアピールをするわけね。きっと好評だと思うわ」

 

 バスには普通のバスとバイオディーゼルバスの二種類があり、どちらの車庫を建てるかで運行されるバスが変わる。性能的にはバス車庫は水と電気の消費が多くサイズも大きいが、金銭的コストでは勝る。

 バイオディーゼルバス車庫は水や電気の消費が少なく騒音公害も控え目で、バス走行時の騒音も少ないらしい。欠点は建設費と維持費の高さだ。ただバスの定員や運行速度といった輸送力は変わらないので、最終的には個人の好みで良いと思う。

 

 ここでは産業が農業優先で石油産業開拓は後回しになりそうなので、バイオ燃料の方が入手しやすいだろうとバイオディーゼルバスにしておいた。石油が安定して手に入るようになったら普通のバスに切り替えるかもしれない。

 …トロリーバス?アレはバスというより路面電車の仲間だ。

 

 

 地価を上げる為に行う開発はこんなところだ。

 

 逆に地価を下げる原因としては騒音公害・高い犯罪率・火災・廃墟の存在といったものがあるが、騒音については芝生付き道路の導入で住宅街を走る車の騒音は抑え込んでいるし、どうしてもうるさくなる高速道路付近には家を建てないようにしている。

 犯罪と火災も警察と消防サービスを欠かしていないので問題なし。廃墟についても、まだ目が行き届かなくなる規模の街ではないので、店などが倒産して廃墟化したらすぐ撤去すれば問題ないだろう。

 

 後はじっくり構えて、街が発展していくのを待つのみだ。

 

 

「…ところで市長?私は度々市長に助力させてもらっているけれど…それに対して一切お返しをしないほど、市長は心が狭い方ではないわよね?」

 

「え、ええ。はい。勿論、何かさせていただきたいと思っておりますが…」

 

「市長って、今はスパリゾートにお住まいと聞いているのだけど……」

 

「ぇぁ……まぁ、はい……」

 

 それは、家がないことに気づいてホテルを作ろうと決めた頃のこと……

 

 

―――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ホテルと一口に言っても、結構種類があるんだよなぁ」

 

 ホテルはそれをテーマにしたDLCがあることもあって15種類もあり(クリエイターパック除く)、かつそれぞれに“観光”“ショッピング”“ビジネス”“自然観光”の四分野への適性パラメータが割り振られている。

 要するに、観光名所の近くには“観光”、商業区画の近くには“ショッピング”、オフィス街の近くには“ビジネス”、自然豊かな場所には“自然観光”のステータスが高いホテルを建てればよい、ということだ。

 

「まあ、現状では重視するものは一択だけど」

 

 まだ観光業に割くリソースはないので観光名所なんてものはない、インテリ労働者が足りないからオフィス街も建てられない、自然豊かな場所は開発しない田舎になるから利便性が悪い、ということで家を兼ねるならショッピング型のホテル一択だ。

 

(キッチンバス共用の宿泊所とかは嫌だけど、街の規模に不釣り合いなホテルを建てて使うのもイメージ悪くなりそうで嫌だな。ここは謙虚にミニホテルかロードサイドモーテルでも――ッ!)

 

 控え目なホテルにしておこうと思いつつホテルのリストを流し見していると、

 

「お、温泉リゾート……!?」

 

 温泉リゾート。あるいはスパホテル。

 複数のプール・マッサージサービス・広い屋外エリアを備え、ステータス的には観光とショッピングに高い適性を持つ。

 

 Cities: Skylinesの建物は基本欧米のものであるから、入浴に関しては基本シャワー、例え湯舟があっても毎日浸かることは想定されていない程度の水道設備しかない可能性が高い。

 だが温泉をメインにしている高級宿泊施設なら、毎日思う存分風呂に浸かれるのでは――?

 

「これは投資だから……財布無限だし、俺の驕りで住人を泊まらせてあげたりもできるから……」

 

 

――――――――――――――――――――――――

 

 

「ああ、別にそのことを非難しているわけではないのよ?市長があまりみすぼらしい場所に住んでいては、街の品格が下がるというものでしょうし」

 

「アッハイ」

 

「でも、あそこは色々と健康に良い施設もあるでしょう?市民の健康を考える為にも、私もよく知っておきたいなと思っていて」

 

「アッハイ」

 

「どうせなら市長がどんな部屋でどんな生活をしているのかも確認させてもらいたいわね。市長の健康は街の存続に関わるのだし」

 

「アッハイ」

 

 さりげなく絡ませられる腕に、蛇が獲物に巻き付き締め上げる姿を幻視する。

 …そろそろ街の開発に、俺一人で飛び回るのはやめた方がいいのかもしれない。身の安全の為にも。

 




“市長”
 特性
 ・順応性
 ・遊牧性
 ・浪費
 ・多産
 ・カリスマ
 ・社交フェロモン
 ・限定的な再生機能
 ・不老長寿(リーダー特性)


 被造物としての造物主への本能的好意+多産(意味深)+社交フェロモン(意味深)に肉食系女子をひとつまみ
 後は分かるな?(
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