異世界パラド   作:ヒャル

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そして、再び街を築く

 Cities: Skylinesの教育と世代の仕組みを見て疑問を抱いた人もいるのではないだろうか?

 

 小学校には初等教育を受けていない子供が通う。

 高校には初等教育を受けたティーンが通う。

 若者は労働に出るか高等教育を受けていれば大学に通うこともある。

 

 ――では、初等教育を受けていない状態で引っ越してきたティーンはどうなるのか?

 

「…何?市長」

 

「いえ、何でもありません」

 

 答え:ニートになる。

 グレード家のホームパーティーを夜遅くまで楽しみ一泊させてもらった翌日。ケントさんたちが出勤した後、家には末っ子のエイミーちゃんが残りダラダラとしていた。

 

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「…また勉強しろって言いたいの?市長」

 

「…ええ、出来れば勉強して、可能なら高校や大学に行ってくれればと思っていますよ」

 

 グレード家の人間は知っての通り全員学歴がない。

 ケントさんたちもそれを気にしているのか、まだ労働年齢に達していないエイミーちゃんに学を身に付けさせたいと思っているのだが…肝心の本人があまりやる気がないのだ。

 

「…別に私は、パパたちみたいに農家をやるのでも構わないし。市長だって、相手がどんな職に就いてるかで差別なんてしないでしょ?」

 

「それはそうですが…」

 

「じゃあいいじゃん」

 

 ぐぬぬ……

 反対者は弾丸で説得するパラドプレイヤーが気難しい思春期女子を説得できるわけないだろいい加減にしろ!(

 

「…でもケントさんたちは貴女の世界を広げてあげたいんですよ。勉学を身につければ就職先も広がって、将来の選択肢も増えますし」

 

「それってパパたちの意見だよね?私の意見を変えたいなら市長自身の言葉で語って欲しいんだけど」

 

「ぇぁ……その、農作業って重労働ですし、折角綺麗な手なのにひび割れたりマメだらけになったら勿体ないなって……」

 

「……そう」

 

 まともに説得できないばかりか、ついにはテンパってキモいことまで言ってしまった。

 諦め気味だったとはいえ、これではケントさんに合わせる顔がないぞ……

 

「…何ボーっとしてるの?」

 

「…はい?」

 

 嫌われたかと思っていたエイミーちゃんが、怪訝そうに声をかけてくる。

 

「連れて行くんでしょ?私を、勉強会に」

 

「え、ええ……」

 

「部屋で支度してくるから。待ってて、市長」

 

 状況が呑み込めない俺を残して、エイミーちゃんは階段を上がっていく。

 …よくわからん内に説得に成功していたようだけど、やっぱり思春期女子の心は俺には理解できそうにない。

 

 

 公立図書館。

 教育施設に分類されるこれは、娯楽施設として機能すると共に利用者の教育レベルを一段階引き上げるという効力を持つ。

 とはいえその効果が発生する確率は非常に低く、ゲームではほぼ娯楽のオマケ程度にしかならなかったが…現実となったこの世界では、俺はそれを必然にする。

 

「…賑わっているようですね」

 

「…そうだね」

 

 エイミーちゃんを連れて公立図書館に入ると、既にこの街に住むティーンの市民たちが集まっているようだった。

 

「あっ、エイミーじゃん!」

 

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「あんたも来てたんだ、キャシー。勉強会なんて来るキャラじゃないのに」

 

「ガッコー行こうとするのにキャラとか関係ないっしょ?そういうエイミーこそ来るの渋ってたクセに~。やっぱり市長直々の説得には抗えなかったか~」

 

「キャシー、うるさい」

 

「…そういうエイミーこそ大声を出している。やはりこの3人で一番賢いのは私」

 

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「私らの中で一番おバカなのはあんたでしょ、ダルシー!」

 

 やって来ていた友人たちとじゃれ合い始めたエイミーちゃんを残して、俺は慌ただしく動き回っている職員に声をかけに行く。

 

「どうも。何かお手伝いすることはありませんか」

 

「これは市長!…いえ、もう粗方準備は終わっていますので。強いて言うなら、市長が見守ってくださっていれば参加者たちもやる気になるかと!」

 

「そうでしょうか…継続的に来るのは難しいですが、今回くらいは見守らせていただきましょうか」

 

 図書館で自発的に本を読む程度で学歴アップが難しいなら、本格的な勉強会を開いてしまえば良い。

 シンシア先生が医者という高学歴職業であるように、ゲームでは人口にカウントされなかった施設に付属している労働者はそれに相応しい教養を持ってポップしてくる。

 ゲームではそういった労働者を他の場所に使うことはできないが、ここは現実だ。生徒数不足で暇している小学校教師など、手の空いている高級労働者を集めて教師役を揃えることができた。

 

 

「1+8×7-9、分かる人はいますか?」

 

「はい」

 

「ダルシーさん、どうぞ」

 

「54」

 

「惜しいですが、違いますね」

 

「何……だと……」

 

 

「……市長が見守ってくださることもあって、皆さんとても熱心に勉強されていますね」

 

 後ろの方で勉強会を見守っていると、職員の人にそっと声を掛けられる。

 

「できれば、毎回市長にはご参加いただきたいところですが…」

 

「はは…そうできればいいのですが、暫くは難しいと思います」

 

「そんなに予定が詰まっていらっしゃるのですか?」

 

「予定といいますか…暫く、この街を離れるんですよ」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「……ふわぁ」

 

 浮上する意識に伝わってくるのは、車のエンジン音。

 背中には柔らかいベッドの感触の向こうにガタガタと揺れる感覚が伝わってくる。

 

「…元々は不眠症だったけど、この身体がどこでも眠れる仕様で助かったわ」

 

 眼を開ければ、そこにはここ数日で見慣れた車内の光景が広がっていた。

 

 俺は今、ヨハンボルグを出て南西へと進むキャンピングカーに乗っている。

 こんな世界で車一台だけで街を出るなど危険と思われるかもしれないが、これにも理由があるのだ。

 

 まず、俺はCities: Skylines CS版の車に乗って街を見て回るモードの応用で、車を出すことができる。

 この車はCities: Skylinesに出てくる車なら何でもよく、セダンやピックアップトラックのような市民が使う車からパトカーや石油トレーラーのような業務用、果てはホットドッグ販売車というネタ染みたものすら出すことができた。

 次に、このパラドゲーパワーで出した車は燃料が不要で、かつ街の外でも問題なく活動できる。車が通れる地形でさえあれば、大陸の南の方まで行けるはずだ。

 最後に、俺はゲーム画面で“マップをロード”することで作った街へワープできる。能力で作った車に乗っていれば、車ごとで。

 

 つまり、下手に随伴車をつけずに一台だけでの移動なら、俺は好きな場所まで行って一瞬でヨハンボルグに帰ってくることが可能なのだ。

 

「あ、おはようございます市長!紅茶でもお入れしましょうか、コーヒーはお嫌いなんですもんね!」

 

「ええ、よろしくお願いします。キャロラインさん」

 

「キャロルです!」

 

「…キャロル」

 

「はい!」

 

 俺が目覚めたことに気づいたキャロライン・ジュール巡査が目覚めの紅茶の支度を始めてくれる。

 

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 事前に警察ヘリで航空偵察はしてもらっているのだが、一人で出かけるのはあまりに危険だから護衛の一人でも連れて行ってくれと懇願されて連れてきた警官だ。

 捜査関係の手腕は微妙だが、銃の扱いや格闘術など護衛任務に就かせるにはとても優秀らしい。

 

「出来ました!」

 

 眼を擦って意識をはっきりさせていると、目の前にティーカップが置かれる。

 

「ありがとうございます。……キャロル?」

 

 早速いただこうとカップを手に取るが、すぐ傍からじーっと見つめられている視線が気になって手が止まる。

 

「あっ、私のことはお気になさらず!ささ、ぐいっと!」

 

「紅茶はぐいっと飲むものじゃないと思いますが……」

 

 苦笑いしつつ、紅茶を一口。

 

「……うん、美味しい」

 

 そう呟くと、キャロルは花が綻ぶように満面の笑みを浮かべる。

 

「では、ご用があればいつでも呼んでくださいね!」

 

 ブンブン振られる大型犬の尻尾を幻視させつつ、キャロルが部屋を出ていったので身支度を整える。

 

「やっぱり大型のキャンピングカーで来て正解だったなぁ」

 

 未整備の荒野を移動するということでジープを使うことも考えたのだが、何日も何もない場所を移動する以上居住性も大事だろうと結局キャンピングカーを選んだ。おかげで快適な車内生活を過ごせている。

 

「…俺も仕事らしいことをするか」

 

 寝ぐせを整え、運転席方面へと向かう。

 

「…あら、お目覚めですか市長。間もなく目的地です」

 

 ハンドルを握るのは最近俺の秘書にしたクリスティーナ・ヴァーサ。

 

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 出自が特殊なこともあり、パラドゲーパワー以外の市長としての執務は彼女に丸投げした方がうまく回るんじゃないかというくらい優秀だ。

 

「何か異常はありませんか?」

 

「特には。事前の航空偵察通り障害となるものはありません。市長のお言葉通り、川沿いに移動することで道に迷うこともありませんし」

 

「それは何よりです」

 

 クリスティーナと会話を交わす間にも、徐々に目的地である砂漠の入り口が近づいて来ていた。

 

 

 何故こんな場所に来たかと言えば、新しい街を作る為だ。

 

 …ヨハンボルグに不満があるというわけではない。だが、一勢力を築くにはヨハンボルグだけでは成長速度が遅すぎるのだ。

 

 Cities: SkylinesのDLCにあるシナリオ、“鉄道、鉄道、鉄道!”のシナリオ失敗条件は資金が尽きる他に“20週間プレイして人口が1000人未満”“150週間プレイして人口が12000人未満”となっており、これが現実的な数字になるくらいCities: Skylinesの街の人口増加速度は遅いのだ。

 

 ゲームの方で資金無限、公共サービスマシマシで人口がどのくらい増えるか実験プレイをしてみたこともあるが、あらゆる公共サービスを採算度外視で設置して三ヶ月で1000人強、一年で4300人ほどが限界だった。

 1年待ってゲームのように人口が4300人まで増えたとして、志願兵のみなら集まる兵士は64人。デバフがかからない中で最大動員が可能な徴兵法である限定的徴兵にしても100人を超えるのがせいぜいだ。これでは北のシレーヌ王国に対抗できる兵力が揃うまで何年かかるかわかったものではない。北の諸大陸解放など夢のまた夢だ。

 となれば複数街を作り、並行して育てていくしかない。

 

 そして何故砂漠を選んだのかだが…俺のパラドゲーパワーに見つかった制限が関係している。

 どうも、既に使用したマップは別の場所で再利用できないようなのだ。現在使用しているマップは“マーブルキャニオン”だけだが、姿を隠す為に海沿いのマップは使えないとなると残りの内陸マップは18種類。元々の土地との相性も必要になることを考えると、野放図な使用ははばかられる。

 

 そして内陸マップの在庫を見た時、目についたのが砂漠マップの多さだ。“デザートオアシス”“デザートパス”“肥沃な砂漠”“デザートバレー”“レッドクリフリザーバー”。マップの下流側 1/3ほどが砂漠になっている“バイオームバレー”を含めれば18枚中6枚と1/3を占めている。

 この世界にある砂漠は目の前のもの以外は北半球東大陸のズィーラト王国、アヴァーナ精霊連邦に広がっているものだけで、そこへのワープポイント用として残すにしても海沿い砂漠マップの“移りゆく砂漠”があるので残しておく意義は薄い。

 

 身も蓋もないことを言うと、どれから使うか迷うので使いどころのないマップから使っていってしまおうというわけである。

 

 

 車を停めると、クリスティーナが望遠鏡で遠方を見回し、キャロルが油断なく周囲を警戒する中で俺がゲーム画面を展開する。

 選択するのは平地と砂漠の境界線に相応しいマップ“バイオームバレー”だ。

 

「とりあえず、この砂漠の入り口の場所に砂漠開拓の起点になる街を作ります。そして川沿いに間隔を空けて更に4つ街を作り、川から離れたエリアにも開拓の中核となる街を作る、といった感じですね」

 

 砂漠とはいえここには太い川が一本通っており、内陸砂漠マップも1つを覗いて川があるマップなので水に困ることはないだろう。

 “デザートオアシス”だけは川がないマップだが、このマップには砂漠の川から離れたエリアの中核になってもらう。水は地下水を汲み上げるしか自給手段がないが、他の街から送ればなんとかなるだろう。

 

「そして、それぞれの街とヨハンボルグを鉄道で繋ぐ、ですね?」

 

「ええ」

 

 本来は部隊の補給用だが、HOI4のシステムなら遠く離れた都市同士を繋ぐ鉄道が作れる。Cities: Skylinesも外部との接続に鉄道があるから、Cities: Skylinesのシステムで作った街同士を直接繋げることも可能なはずだ。

 

「最低限の砂漠開発が終わったら、今度は東に移動してこの大陸最大の湖のほとりに街を作ります。あの湖は色々と使い道がありますからね」

 

 これがクリスティーナたちと相談して決めた第一次国土拡張計画だ。

 そして国土拡張計画を第二次、第三次と続けて、この大陸の内陸部全域に領域を広げるのだ!

 




 第一章はここまで。
 これからはCities: Skylines以外のゲームシステムもどんどん使っていきます。

 そう、お待ちかねの戦争だ!


 …女性キャラクターばかり出していることについては、パラドプレイヤー諸兄にはご理解いただけるものと思う。
 パラドゲーって…基本おっさんしか出てこないからオリキャラは女ばかりしないと男女比が崩壊するということを!(
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