東方project if story 今日も少女達はコンビニで 作:ライムα
さまざまなお店がシャッターを降ろすくらいの深夜、閑静な住宅街に灯る「24h」の文字と小さなコンビニ。その店の駐車場に置いてある車止めに腰掛けながら一人の少女がフランクフルトを食べていた。少女は黒無地の被るタイプのパーカーに身を包み、頭は紅白の髪留めクリップで長くサラサラな髪をまとめている。下はショートパンツを履き、足元はサンダルを履いている。誰がどう見ても「寝られないから適当にそのへんブラブラ」と思えるラフな格好だった。少女は最後の一口を飲み込むと一息ついて傍らに置いてあるコーラの蓋を開けながら呟く。
「ふぅ…。やっぱ寝られない夜は近所の散歩に限るわね。そして小腹がすいた頃にコンビニでフランクフルトを食べながらコーラをこう、くいっと…。」
少女はそう言いながらコーラを一口飲み、口元を拭った。少女が小さくゲップをしながらぼんやりとおぼろ月を眺めていると道路の方からバイクの音が響いてきた。それはだんだんとコンビニに近づいて来ると思ったらバイクは駐車場に入り、少女の前で止めた。
「あら、魔理沙じゃないの。こんな時間に何やってるのよ。」
魔理沙と呼ばれたバイカーが黒いバイクメットを脱ぐと中で束ねられていた長い金髪がバサッと宙に投げ出された。上には黒のレザージャケットを魔理沙は軽く頭を掻きながら髪をほぐす様に首を振るとメットを小脇に抱えて言った。
「私はちょっと遠くのゲーセンに行ってたんだよ。クレーンゲームの新しい景品に私の推しのフィギュアが入るって情報ゲットしたからな。霊夢こそそんな格好でなにやってるんだよ。」
霊夢と呼ばれた少女はフランクフルトの串を包み紙に入れながら返す。
「私は、ちょっと眠れないから近所を散歩がてらここでちょっとした夜食を食べようと思ってね。」
そう言いながら霊夢はフランクフルトの串が入った包み紙を見せると魔理沙は苦笑しながら言った。
「ははっ霊夢はここのフランクフルト昔から好きだもんなぁ。でも、こんな時間に食ったら太るだろ…。しかもご丁寧にコーラまで買っちゃって。」
魔理沙の言葉に霊夢は眉間にしわを寄せて言い返す。
「余計なお世話よ。巫女の仕事はハードだからその分カロリーを消費するの!だからこの時間に食べても多少は平気なのよ。」
「そうかそうか〜…。なんか話してたら私も何か食べたくなってきたなぁ、金まだ余裕あるか…?」
魔理沙はそう言いながら黄色い長財布の中をごそごそ漁りだした。霊夢はその様子を見ながらコーラをまた一口飲むと不思議そうな表情で尋ねた。
「あんた食べ物目当てでここ来たんじゃないの?」
霊夢が聞くと魔理沙はお札をペラペラめくりながら答る。
「いや、プリペ買うつもりで寄っただけなのぜ。そしたら霊夢が美味そうなもん食ってたもんだから腹減ってきちまったんだよ。ほら、人があくびしたら自分もあくびしちゃうだろ?それと同じ原理だよ。」
「まぁ…分からなくはないわね。」
霊夢が苦笑いしながら言うと魔理沙は財布をポケットにしながらバイクを前に進めた。
「んじゃ、ちょっとバイク置いて買うもの買ってくるのぜ~。」
魔理沙はそう言いながらバイクを駐輪場横のバイク置き場に駐めるとコンビニの中へ入っていくと霊夢もゴミ捨てついでに魔理沙の後ろをついて行った。魔理沙はコンビニに入るなり迷いなくプリペイドカードコーナーの前まで行くと首筋に手を当てながら選び始めた。
「ん〜どうしよっかなぁ…。今月周年来てだいぶ使い込んだしここは少し抑えめにすべきか…。」
魔理沙が唸りながらプリペとにらめっこしていると後ろから霊夢が顔を覗かせて尋ねる。
「あんたまた課金する気?この前も周年だからって給料の大半溶かしたばっかじゃないの。」
「それでいいんだよ。人生は一度きりなんだから推しを引き当てるために金を惜しみなく使うのは当然なんだぜ!」
魔理沙はそう言いながら二万円分のプリペを手に取り言葉を続けた。
「そ〜れ〜に〜…。お前だってパチスロに競馬に宝くじ…いろんなギャンブルに手を出して散財しまくってんじゃねーか!」
魔理沙が霊夢の頬を拳でグリグリしながら言うと霊夢は手を払いのけながら返した。
「ギャンブルは良いのよ。戻ってくる可能性があるんだから!当たったお金握りしめて飲む日本酒は最高よ〜!」
「…とても神に仕える者の言葉とは思えねーな。ま、使い道は違えど私らは似た者同士ってことだ。」
魔理沙は少し呆れ顔で言いながら酒コーナーの前まで行きビール缶を二本取り出すとにやりと微笑み続けた。
「どうせこの後は家に帰るだろ?そこで一本飲もうぜ。」
魔理沙がそう言うと霊夢は財布の中身をチラリと見て返す。
「…奢りなら良いわよ。」
「じゃ、決まりだな。つまみは唐揚げで良いか…。」
魔理沙は満足そうに笑うと缶ビールに加え唐揚げを一セット購入するとコンビニのイートインに並べて二人は席に着いた。軽く乾杯してからちびちび飲み始め、しばらくは他愛のない話で盛り上がっていた。やがて会話が途切れた頃に魔理沙が何かを思い付いたように言った。
「なぁ霊夢。お前来週の日曜空いてるか?」
「特に予定はないけど…どうして?」
霊夢が不思議そうに聞き返すと魔理沙は微笑みながら返す。
「空いてるなら、来週の日曜にドライブ女子会でもしないか?車出すからさ!」
魔理沙が楽しそうに言うと霊夢はビールの残りを飲み干して返した。
「別に良いけど女子会って…私達だけで?」
霊夢が怪訝そうな表情で聞き返すと魔理沙は顔の前で手を振りながら笑った。
「違う違う。もちろん他の奴も誘ってみるさ。今からな。」
魔理沙はそう言いながらスマホを指差して続けた。
「さてと、問題は誰を誘うかだが…誰がいい?」
魔理沙はニヤリと笑いながら尋ねると霊夢は間髪入れずに答えた。
「やっぱり集まると言ったらアリスと早苗でしょ!」
「…決まりだな!」
霊夢達はグータッチをすると早速二人に電話を掛けた。するとどちらも二つ返事で了解してくれたためトントン拍子でドライブが決定した。
「…それじゃあ土曜の朝8時前にはいつものコンビニ集合な。それじゃ、おやすみ〜。」
魔理沙はそう言って通話を切ると椅子の背もたれに寄りかかって一息ついて言った。
「これでメンバーは集まったな。それは良いんだが…肝心な事を一つ決め忘れちまったのぜ。」
魔理沙がそう言いながらビールを飲み干すと霊夢はまた怪訝そうな表情で尋ねた。
「何よ肝心な事って…。」
唐揚げを一つ口に運びながらそう聞くと魔理沙は手を橋のように組みその上に顎を乗せて答えた。
「ズバリ、目的地さ。」
「…はぁ!?」
魔理沙が少しドヤった顔で答えると霊夢は目を丸くした。当然目的地は決まった上でドライブに誘ってきたからだと思っていたからだ。もちろん電話口の早苗とアリスもそのつもりだ。霊夢は額に手を当てながら言った。
「あんたのそういう計画性の無いところは昔から変わんないわねぇ…。で、どうする?目的地。」
霊夢が頭を抱えながら聞くと魔理沙は少し考えてから答えた。
「ん~~。とりあえず職場の人にいい場所ないか聞いてみるよ。」
「あなたの職場の人って言うと…薬品とか作ってる人?」
「そうそう、化学技術者。丁度私の先輩でこの前友人達とよく旅行に行くんだとか言ってる人居るからその人に聞いてくるよ。」
魔理沙はそう言うと最後の唐揚げを口に放り込んだ。霊夢はそれを見ながら小さくため息をついた。
「本当に何も決めてなかったのね…。まあその人からいい場所教えてもらえるといいわね。」
「ああ、そうだな。んじゃそろそろ帰るか。」
魔理沙達はイートインを離れ、近くのゴミ箱にゴミを捨てるとそのままコンビニを後にした。帰り道は途中まで同じなので魔理沙はバイクを押しながら霊夢と肩を並べて歩いていると背後から声をかけられた。
「すいません、ちょっとだけお時間いいですか?」
振り返るとそこにはお巡りさんが二人立っていた。一人は長く艶やかな赤みがかった茶髪、もう一人は短く揃え少しモコモコした白髪だった。霊夢達は少し戸惑いながらも了承すると白髪のお巡りさんがスマホのメモ欄を開きながら続けた。
「ご協力感謝します。最近未成年の方が深夜帯に出歩いてトラブルや犯罪に巻き込まれてしまう…なんていう事件も増えてきているので一応年齢確認の出来るものを拝見してもいいですか?どちらかお一人で大丈夫ですので。」
白髪のお巡りさんが鋭い視線で言うと隣に立っていた茶髪のお巡りさんが苦笑いしながら言った。
「椛〜…。もうちょっとにこやかにやりなさいよ。ただでさえ警察ってだけで怯えさせちゃってるんだから。貴女達ごめんなさいねぇ。もう少しだけ付き合ってちょうだい。」
茶髪のお巡りさんがそう言いながら優しい表情で魔理沙達を見た。すると椛と呼ばれた白髪のお巡りさんは少し顔を赤くしながら返した。
「影狼はいつもうるさいわね〜。私だって前に比べたらだいぶにこやかになったでしょ。…!お、お見苦しいところ見せちゃってすいません…。」
椛は顔を真っ赤にして言いながら魔理沙から二輪免許証を見せてもらうと軽く頷き返しながら言った。
「はい、ありがとうございます。それじゃ少し質問させてもらいますね。」
その後霊夢達は軽く世間話を交えながら数個の質問に答えた。おどおどしている霊夢とは裏腹に魔理沙は手慣れた様子で椛からの質問を捌いていった。
「…バイクのナンバープレートと車台番号の照合も取れましたのでおかえりいただいて大丈夫です。ご協力ありがとうございました。」
椛と影狼は敬礼をするとコンビニの方へと帰っていった。霊夢はその後ろ姿を見送りながらほっと胸を撫で下ろして言った。
「あ゙〜いきなり声かけられたからびっくりしちゃったわよ…。にしても魔理沙はよく平然と答えられてたわね。警察に声かけられた時に、すぐ免許出せるよう財布準備してたし。」
「ん?あぁ、まあな…。」
魔理沙は歯切れの悪い返事をしながらバイクを再び前進させた。霊夢は魔理沙の様子を少し不思議に思いながらその後をトコトコついていった。
その後、神社の前で霊夢と別れた魔理沙は一人職質された事を思い出しながら呟いた。
「これで人生四回目の職質だなぁ…。私って、端から見たらそんな怪しく見えるのか…?」
そう言いながらため息をつくとトボトボと帰路についた。
翌日、魔理沙は出勤するとその足で長く紫の髪をまとめている人に声をかけた。
「おはよーさん、パチュリー。」
魔理沙がそう言いながら近づくとパチュリーと呼ばれた人が口にヘアゴムをくわえながらこちらを向いた。パチュリーはヘアゴムで髪を結わえながら返す。
「あら魔理沙、百歩譲って先輩にタメ口なのは良いけどせめて敬称なり先輩なりを付ける気はないかしら?」
「いや、無いな。ところでパチュリー、ちょっと聞きたいことがあるんだけどさ…。」
魔理沙はパチュリーに事の顛末を説明し、どこか良い旅先はないか尋ねた。
「また貴女は何も計画を立てずに…。はぁ、仕方ないわね。」
パチュリーは小さくため息をつくとスマホを取り出しながら目だけを魔理沙に向けて続ける。
「魔理沙、海は好きかしら?」
「え、まぁ…好きだぜ?」
突然の質問に魔理沙は少し戸惑いながらも答えるとパチュリーは少し微笑みながら言う。
「なら私の友人で海沿いのリゾートホテルを経営してる人が居るから話つけてあげるわ。丁度お盆も終わったばっかでお客も少ないって言ってたしね。」
「マジか!?」
魔理沙は嬉しそうに言うとパチュリーの手を取って続ける。
「ありがとうな~!いやーほんとパチュリーに相談してよかったぜ、お土産期待してくれよな!」
魔理沙はそう言いながらパチュリーの片手をしっかり握り何度も上下に動かした。パチュリーはやれやれと言う様な表情で返す。
「別にいいわよ。それじゃ、仕事終わりに電話してみるから人数教えてちょうだい。…安くしてくれるかもしれないけど、くれぐれも安く泊まれるとかは期待しないでよね。」
「もっちろん!海かぁ…そういや今年まだ行ってなかったな。」
その後パチュリーを通してリゾートホテルの予約が取れた魔理沙は早速メンバーにその旨を伝えた。皆は出発の日を心待ちにしながら各々旅行の準備を始めた。
一方その頃、宿泊先のホテルの事務室では怪し気な雰囲気をかもし出す三人が居た。一人はメイドのような服に身を包み、短く揃えた銀髪をなびかせている。もう一人は鮮やかな赤く長い髪をなびかせ、黒いスーツを着ている。
そして部屋の奥に置かれた一際大きなデスクには薄ピンクのドレスをまとい、短く揃えた青紫の髪の女性が座っていた。もちろん羽もキバも生えていない。デスクに座っている女性がおもむろに口を開く。
「…いいわね。今度パチェの紹介で四名様が宿泊に来るわ。あの人嫌いのパチェがここを紹介するくらいなのだから相当仲の良い方のはずよ。だから、いつも以上に気張って対応してちょうだい!」
「お任せくださいお嬢様。」「お任せくださいお嬢様!」
そう言ってスーツの女性とメイド服の女性は頭を下げた。その様子にお嬢様と呼ばれた女性は満足気に頷き返す。
「頼りにしてるわよ!咲夜に美鈴。」
Next Reality
続きはだらだら待ってもらえれば幸いです