東方project if story 今日も少女達はコンビニで 作:ライムα
これ、前編の三日後には出すつもりだったんですよ
「こうして外で声掛けてもらえると私も有名になったんだな〜って改めて実感できますよ。あ、帽子ありがとうございますね〜!」
文と呼ばれた女性に早苗は帽子を手渡しながら尋ねる。
「有名な方なんですね〜。もしかして運動系だったりしませんか?それも走ったりするタイプの。」
早苗がGoProに視線を送りながら尋ねた。文は手に持ったGoProを見せながら答える。
「いや、そんな事ないですよ〜。学生時代は陸上部でそれこそ毎日走ってましたが今はすっかり運動しなくなりましたね。いつもはゲーム実況とかやってるんですけどたまには外でぶらぶらしながらってのも良いかなって思って高校の頃の後輩連れて撮影してたんですよ。そういえばあの子どこに…?」
文はふと気付いたように辺りを見回した。すると先ほど文が走ってきた方向からもう一人リュックサックを背負った走ってくる影が見えた。
「あ、いたいた。お〜い椛〜こっちよ〜!」
文は走ってくる人影に手を振った。その後ろで魔理沙は顎に手を当てて呟く。
「ん?椛ってどっかで聞いたな…。」
魔理沙は空を見上げながら思い出そうとしたがどうしても出てこない。考え込んでる間に椛と呼ばれた女性は文に追いつくと、膝に手を付き息を切らしながら言う。
「はぁ…はぁ…ようやく追いつきましたよ…。帽子追いかけるだけで…はぁ…どこまで行ってるんですか…。」
「あははっごめんごめん。なかなかキャッチ出来なくてね〜どんどん飛ばされてるところをこの人達が取ってくれたのよ。」
文はそう言って早苗達を手で示した。椛はふうっと大きく息を吐きながら顔をあげながら言う。
「あぁそうだったんですか…。文さんがご迷惑おかけしまし…た?」
椛はそう言いながら全員の顔を見回すと魔理沙の顔を見て言葉が途切れた。椛は少し悩んだ表情をした後手を叩いて声をあげる。
「そうだ思い出した!確かそちらのお二人はこの前お会いしましたね!」
椛がそう言うと魔理沙もハッとした表情で返す。
「あ…あぁーそうだ!先週の帰りに職質してきた!!」
「貴女また職質されてたのね…。」
アリスは哀れんだ表情で突っ込んだがそんなことはお構いなしに魔理沙は続ける。
「文さんの連れって事は、もしかして時々動画にモザイクで映ってたのって…?」
魔理沙が尋ねると椛も心なしか楽しそうに返す。
「ええ、私ですよ。文さんは高校時代の先輩で、今も時々こうして撮影を手伝ってるんです。」
椛はそう言いながら自分のGoProを見せた。魔理沙はそれを見ながら感慨深そうに言う。
「ほぇ〜まさかこんな身近に居たなんて全然気が付かなかったなぁ…。」
「ふふっ顔にモザイクかけてますし、動画越しと生声だと絶妙に聞こえ方も違ってきますしね。それに、椛の個人情報が特定されるような事は絶対ないように細心の注意を払って撮影してますからね。後輩の安全は確実に守りますよ〜。」
文はそう言いながら笑った。すると椛が文の服の袖を引っ張りながら提案する。
「そうだ!文さん、この方達が良ければ一緒に動画撮らせてもらったらどうですか?ほら、テレビの街頭インタビューじゃないですけどバーベキューやって楽しんでるところを少し撮らせてもらって。」
椛が言うと文が答える前に早苗が口を開く。
「楽しそうですね!私映ってみたいです〜!皆さん撮ってもらいましょうよ、こんな機会そうそうないですよ!!」
早苗が言うと霊夢は腕を描きながら答える。
「私は良いわよ。確かにこんな機会滅多にないしね。」
霊夢に続いてアリスも答える。
「私も別に構わないわよ。」
「もちろん私も大丈夫だ!まさかこんな日が来るとはな…!」
アリスの隣で魔理沙は興奮を抑えられずに言った。文はその様子を見ながら椛にGoProを渡しながら言う。
「あややー、それなら私は少し準備してきましょうかね。椛、ちょっとこれ持ってて。」
椛はGoProを受け取ると不思議そうな表情で尋ねる。
「文さんどこ行くんですか?GoProのバッテリーもまだありますし…全然このまま撮れますよ?」
椛が言うと文はふっと笑って返す。
「ちっちっち…それだけじゃ足りないわよ。海でバーベキューと言ったら…ビールよ。すぐそこのコンビニまで走って来ますから皆さんちょっとだけ待ってて下さいね〜。もちろん、私の奢りですよ。」
文はそう言いながら風のように走り去った。早苗はその後ろ姿を眺めながら言う。
「おお、すごい速いですね!運動しなくなったって言ってもまだまだ現役みたいじゃないですか〜。」
早苗が感嘆の声を上げる隣で椛が自慢気に語る。
「いやいや、あれでも昔に比べたらだいぶ鈍った方ですよ。なんせあの人は高校の時に短距離で全国大会出場してますからね!」
「はぁ〜どうりであれだけ速いわけですね〜。貴女は…現役で警察やってるだけあって身体つきがしっかりしてますね。どうです?よろしければ私の勤めてるジムに来ませんか?」
「ん〜ちょっと考えておきます。」
早苗達はその後も雑談に花を咲かせた。やがて十分もしないうちに文が両手にビニール袋を下げて戻ってきた。
「はいはーい買ってきましたよ〜。」
文はそう言いながらテーブルの上にビールを並べ始めた。
「一応ビールと言っても色々あるのでいくつかの種類買っておきました〜。アサヒにキリンにサッポロ…どれでも好きなやつ飲んでくださいね〜。」
文が言うと霊夢は早速ビールに手を伸ばした。
「それならお言葉に甘えて…私はアサヒのスーパードライにしようかしら。」
霊夢はそう言いながらカシュッという音を響かせた。プルタブを手前から奥に押し戻すとゴクゴクと口に流し込んだ。
「あ〜沁みるわぁ。外で飲むビールってなんでこんなに美味しいのかしらね!あ、ほら!文さん達もお肉どんどん食べてね!」
霊夢はそう言いながら再びビールを口に流し込む。それを見ながらアリスは呆れたように言う。
「もうちょっと落ち着いて飲みなさいよ…身体壊すわよ。」
「大丈夫大丈夫私巫女だから!神様の加護あるから!」
霊夢はアリスの肩を叩きながら笑った。魔理沙もまたかという表情をしながら苦笑いをしていた。その後も霊夢達は飲んだり食べたりしながらどんちゃん騒ぎを繰り広げた。初めは撮影に専念していた椛や文もお酒が回ってくるとカメラそっちのけで楽しそうに食べ進めていた。
「こう見えても私も昔はあまりの脚の速さに『風神少女』なんて二つ名が付けられてたんですよ〜。顧問に本気で世界陸上目指さないかーなんて言われたりもしましたね〜。断っちゃいましたけど。」
文は片手にビール、片手に串を持ちながら笑って言った。すると早苗が椅子の背もたれに寄りかかりながら尋ねる。
「えー勿体無い!なんで断っちゃったんですか?」
「だって世界目指したらYoutubeなんて出来なかったじゃないですか〜。私、その時にはもうYoutube始めるって決めてましたからね〜。」
文はそう言いながらビールの残りを飲み干した。その隣で椛が笑いながら付け加える。
「文さんが断った時の先生の顔は凄かったですよね〜。お前マジかみたいな。目と口ぽっかり開いちゃって真実の口みたいな顔してましたよ。」
「そりゃあそうでしょうねぇ。なんせ全国大会まで行ってるのにその道捨てるんですもの。」
アリスはパプリカを齧りながら言った。文は空の缶ビールを見つめながら返す。
「まぁ…確かに周りからも勿体無いだの行くべきだのと言われましがね…。それでも私はこの選択を後悔してませんよ。あの時陸上で世界を目指さなかったからこそ今の楽しい生活があるんですから!ただ、たまにですけどあの時陸上を選んでたらな…なんて思うことはありますね。」
文はそう言いながら空き缶をゴミ袋に投げ入れた。魔理沙はテーブルで頬杖をつきながら笑って言う。
「ははっそうかそうか…。これは私の持論だけど、人生の選択には間違いはないと思ってる。文さんに限らずこれまでもこれからも多くの選択をしなくてはならない。だが、どっちを選んだとしても必ずその先には苦しいこともあれば楽しいこともある。要はその選択の先をどれだけ楽しめるかが、大切だと思うぜ!」
魔理沙はそう言いながら文の背中をポンポンと叩いた。文は一瞬下を向いて唇を噛み締めたがすぐに魔理沙へ向き直って返す。
「ふふっありがとうございます!!」
「全く…魔理沙ったらお酒入ったら毎回その手の話を始めるわね。」
霊夢が呆れたように笑いながら言った。魔理沙はゴミ袋を持ち上げながら少し恥ずかしそうに返す。
「うるさいなぁもう…。ほら、そろそろ片し始めちゃうから残ってるやつ全部食べちまえ!」
「はいはい。」
霊夢はにやにやしながらお肉の刺さった串を持ち上げる。その後霊夢達は残った食べ物も全て食べ切り、後片付けを始めた。
「…口もしっかり縛ってっと。よし、これで全部か~?」
魔理沙は辺りを見回しながら叫ぶと早苗が少し遠くの方から叫び返す。
「大丈夫だと思いますよ〜!周り探してみましたけど落ちてるゴミもなさそうですし。」
「そうか!ありがとな〜!」
魔理沙はそう言いながら手を振った。その隣で椛がGoProをリュックにしまいながら言う。
「私達も忘れ物もなさそう…ですね。それじゃあ文さん、そろそろ引き上げましょうか。」
「えぇそうね。いや〜本日は撮影協力ありがとう御座いました!お陰様で良い画が撮れましたよ!」
文はそう言いながら魔理沙の手をしっかり握った。魔理沙は少し照れ笑いをしながら返す。
「いやいや…こっちこそビールごちそうになっちゃったし、良い体験だったのぜ!それじゃ、私達もそろそろ帰るとするか…おーいお前らーホテルに帰るぞ〜!」
魔理沙は霊夢達に呼び掛け、その場を後にした。椛は帰って行く霊夢達を見送りながら言う。
「さて、それじゃ私達も帰りましょうか。」
「そうしましょうか。そうだ、近いうちに新しい企画撮影しない?現役警察官VS一ヶ月間ガチでトレーニングした素人だったらどっちの身体能力が高いのか!?みたいな。」
「え〜仕事以外は出来るだけ運動したく無いですよ〜。」
そんな会話をしながら二人も自分達の車へと戻って行った。
「お帰りなさいませ。楽しめましたか?」
魔理沙達がホテルへ戻ると美鈴がにこやかに尋ねた。
「ええ、最っ高でしたよ!やっぱり海って良いですね〜。」
早苗が楽しそうに笑いながら返すと魔理沙も付け加える。
「本当になぁ。しかも文さんにも会っちゃった上一緒に動画撮らせてもらったしな。」
「え!文さんってあの文々。チャンネルの!?」
魔理沙の言葉に美鈴が食い付くように尋ねた。魔理沙は少し驚いたような表情を見せつつ答える。
「あ、あぁそうですよ。駐車場に停めてある車に戻るって言ってたからもしかしたら走れば追いつける…かも?」
「なるほどなるほど…咲夜さーん私昼休憩行ってきます!!」
美鈴はそう叫ぶやいなや受付のカウンターをひらりと超え、そのまま走り出した。
「ちょっと美鈴いきなりどうしたのよ〜休憩は私と交代って…あら?」
奥から咲夜が眠そうにしながら出て来た時にはもう美鈴の姿はなかった。咲夜は不思議そうな表情で辺りを見回しながら魔理沙達に尋ねる。
「すいません、美鈴どこに行ったかご存知ですか?さっきまで居たはず…何ですけどね。」
「あ〜…実はですね…。」
魔理沙は少し苦笑いしながら咲夜に一部始終を説明した。咲夜は話を聴きながら頭を抱えて言う。
「はぁ…そういう事ですか。お見苦しいところをお見せしてしまったようでどうもすいませんでした。あの人、昔から文々。のファンでしてね、ずっと会いたい会いたい言ってたんですよね…。」
「あぁ〜そうだったんですね。まぁ…気持ちは分からなくも無いですね。」
アリスはそう言いながら微笑むと隣で早苗も頷く。
「美鈴さん嬉しそうでしたもんね〜。にしてもあのカウンター飛び超えは綺麗なフォームだったな…。カンフー映画みたいでしたよ!是非あの人のトレーナーにもなってみたいですねぇ。」
早苗が言うと咲夜は苦笑しながら返す。
「はは…毎朝トレーニングは欠かさずやっているみたいですからね。っと、すっかり引き留めちゃってすいません!皆様どうぞお部屋でごゆっくりお休みください。」
「んあ、そうだな。じゃ、部屋戻るか。」
四人は魔理沙を先頭におしゃべりをしながら部屋へと戻って行った。
「ふぁ〜…なんかお腹いっぱいになったら眠くなって来ちゃったな。」
魔理沙はそう言いながら部屋のドアを開けるとそのままベッドまで歩き、ボフッと寝転んだ。霊夢は窓に手をかけながら言う。
「夜までまだ時間あるしゆっくり休んでなさい。…あら。」
霊夢はそう言いながらふと外に目をやった。すると先ほど霊夢達がバーベキューをしていた場所より少し先に赤髪の女性が黒髪の女性と白髪の女性と話している光景が目に入った。
「あれは文さん達かしら。美鈴さん、無事追い付いたみたいね。ふふ、あんなにはしゃいじゃって。」
「どこどこ〜どこですか?」
霊夢がぼんやり眺めていると冷蔵庫からお茶を取り出していた早苗も窓の外を見下ろしながら尋ねた。
「ほら、あそこよあそこ。ちょっと右の方に。」
「あー居ました居ました!あ、すごい!美鈴さんバク宙してる!」
早苗がお茶に口を付けながら言うと魔理沙ものそのそ起きて来た。
「ダメだ気になって眠れん!私にも見せてくれ〜!」
「あらら、ほらあそこよ。」
「あ〜ほんとだほんとだ!ん?そういえばアリスどこ行った?」
「アリスさんならトイレですよ。」
「そうかそうか見れなくてかわいそうに…。」
「いや、そんな見て楽しいもんでもないでしょ。見つけた私が言うのもあれだけど…。」
その後も霊夢達は美鈴達を眺めてみたりちょっと昼寝をしてみたりそれぞれ思い思いの過ごし方で夜を待った。そして数時間後、霊夢達は食堂で咲夜が運んでくる夕食を楽しんでいた。和洋中全て揃っておりちょっとしたバイキングのようになっていた。
「ふ〜美味しいわね!これ全部咲夜さんが作ったんですか?」
霊夢は口を拭きながらデザートを運んできた咲夜に尋ねた。咲夜は美味しそうなチョコケーキを並べながら答える。
「いえ、私がお作りしたものも勿論御座いますが、お嬢様がお作りになられたものもあるんですよ。」
「え、そうなんですか!?」
早苗が少し驚いて言うと咲夜は頷きながら答える。
「ええ、こちらのケーキや和食全般はお嬢様が担当されていましたね。昔からよくお料理をなされる方だったので、本日もとても張り切ってお作りになられていましたね。ちなみに中華は美鈴が、それ以外は私がご用意させていただきましたわ。」
咲夜はそう言いながら微笑んだ。アリスはケーキを口に運びながら言う。
「へぇ〜レミリアさんが…この味なら、うちで出してるコーヒーにも合いそうね。後で作り方聞いてこようかしら。」
アリスが食べながら呟くと咲夜が思い出したようにポケットを漁りながら言う。
「あぁそれでしたら…お嬢様からケーキのレシピを知りたい方が居るかもしれないとおっしゃられて作り方のメモを書いておられますのでこちらをどうぞ。」
そう言いながら咲夜はポケットから取り出した小さなメモをアリスに渡した。
「良いんですか!?ありがとうございます!帰ったら早速試作してみないと。」
アリスは嬉しそうにメモをポケットにしまった。その後も霊夢達は食堂でひとしきりまったりすると花火をする為に一旦部屋に戻った。
「…っと買ってきたやつはこれで全部…か?あれ、うちら手持ち系の花火買ってないんだな。」
魔理沙は買ってきた花火の袋を眺めながら不思議そうに言った。確かに打ち上げ花火や噴き上げ花火ばかりで手持ち花火はひとつもない。
「あら?普通花火の袋の中身って手持ちと打ち上げの混合じゃなかったかしら?」
「私もそのつもりで買ったんだがな…まあいいや。行くのぜ〜。」
魔理沙達は各々チャッカマンや花火を持って下に降りていった。四人がエレベーターから降りてエントランスに向かうと、そこには金髪の少女がピンクのパーカーを着てソファでだらだらしていた。少女は魔理沙達に気付くと手を振りながら声をかける。
「あ、パチェのお客さんこんばんは〜!」
金髪の少女につられて魔理沙も思わず手を振り替えしながら返す。
「あぁ、こんばんは。えぇと…。」
「私はレミ姉の妹のフランドール。フランで良いわよ。お姉さん達はこれから花火?もう夏も終わりだしいいね〜。」
フランはそう言いながらニカッと笑うと魔理沙も微笑みながら答える。
「ん?あぁ、そうだよ。良かったらフランも来るか?打ち上げしかないけど。」
魔理沙が言うと早苗も頷き言う。
「そうですね!やっぱり人数が多いほうが楽しいですしね~。どうです?フランさん。よろしければご一緒に!」
「良いの!?それじゃあ、お言葉に甘えちゃおっかな〜。」
そう言うとフランはパーカーのチャックを閉めた。五人は外に出ると涼しい潮風を浴びながらビーチへ向かった。
「やっぱこの時期になると夜は少し冷えるね〜。まあ私はこのくらいが好きだけどね。」
フランはポケットに手を突っ込みながら言うとアリスも頷き言う。
「そうねぇ。この時期は夏に比べてだいぶ過ごしやすいし、なにより金木犀の甘い香りも漂ってくるし良い季節よね。」
「だよね~。っとそんな話してたら着いたね〜…んん?あの人影は…。」
フランはそう言いながら目を細めた。その視線の先には長い髪と艶やかな黒い革ジャンをなびかせながら煙草をふかしている女性が立っていた。フランは迷わずその女性に手を振りながら声を掛ける。
「おーいリム姉!またこんなとこで煙草吸ってんのー!?」
フランが叫ぶとリムは煙草を口から外しながら振り返る。
「ん?なんだフランじゃないか。それとお前らは確か…パチュリーの知り合いだったか。」
「あ!傭兵のお姉さんじゃないですか!こんばんは〜。」
早苗がにこやかに挨拶をするとリムも微笑みながら返す。
「はいこんばんは。私が傭兵やってるってよく知ってるな。美鈴あたりから聞いたのか…まあいいや。お前らはなんでここにいるんだ?」
リムが尋ねると魔理沙が花火の袋を見せながら答える。
「今から花火をやるんだよ。打ち上げだけだけどな。良かったらリムさんも一緒にどうだ?」
魔理沙が誘うとリムは足元の砂で煙草の火を消しながら返す。
「リムでいいよ。そうだな…私も暇してたしお言葉に甘えるとするか!」
「そう来なくっちゃ!それじゃあ魔理沙さん、早速始めましょう!」
早苗がそう言いながらチャッカマンのロックを外すと魔理沙も花火の筒を一つ取り出した。
「じゃ、最初は少し派手そうなこいつから行くか。早苗、チャッカマンくれ。」
「はいどーぞ。もうロックは外してありますよ〜。」
魔理沙は早苗からチャッカマンを受け取ると少し離れたところまで走って行った。地面に花火の筒を置くと下の方を砂で押し固めて安定させ、上の花紙をめくって導線を剥き出しにした。
「それじゃあ点けるぞーはい点火!」
そう言いながら導線に火を点けると魔理沙は急いで霊夢達のところまで戻った。魔理沙が振り向くと同時に花火の筒はオレンジの火を噴き出した。それと一緒に周りではパチパチと音を立てながら火薬が弾け、あたりはパッと明るくなった。
「お〜綺麗だね!やっぱり設置系は迫力あるね。」
フランはスマホで写真を撮りながら言った。魔理沙はゴソゴソ花火を漁りながら返す。
「そーだろそーだろ。それじゃどんどん行くぜ!次は一気に三ついくか、霊夢もちょっと点けるの手伝ってくれ。」
「一気にやるの?別に良いけどチャッカマン一個だけじゃん。」
霊夢がそう言いながらチャッカマンを指差すとリムが黒い革ジャンのポケットを漁りながら言う。
「それなら私がさっき煙草吸う時に使ったやつがあるから貸すよ。」
そう言いながらリムは霊夢にポケットから取り出したものを手渡した。
「あら、ありがと…う?」
霊夢は受け取ったものを見て一瞬思考が止まった。彼女の掌の上にあるのはライターでもマッチでもなくなんと火打ち石だった。霊夢は困惑しながらリムに尋ねる。
「えぇと…これで煙草の火を点けているの?」
「ん?あー悪い悪い渡し間違えた。こっちのライターの方渡そうと思ったんだよ。」
リムはそう言いながら火打ち石と交換で霊夢にライターを渡した。
「ライター点かない時はこいつを使ってたからそのままポケットに入れっぱにしちまってたよ。」
「あ〜そう言う事ね。(それでも火打ち石使おうとはならんやろ)じゃ、借りるわね。」
霊夢はそう言って魔理沙の後を追った。その後も霊夢達は持ってきた花火に次々と火を点けていった。色とりどりの火花が噴き乱れ、打ち上がりそれはまるで小さな星空のようだった。
「最後はこれか。」
魔理沙はそう言いながら最後の花火を取り出した。それは掌サイズのボールに細い紐が付いた不思議な形をしていた。
「んーとなになに?紐の先の球に火をまんべんなく点けてから思い切り振り回してください、か。まぁやってみるか!」
魔理沙がそう言いながら花火に火を点け始めるとフランが心配そうに尋ねる。
「これ大丈夫そう…?魔理沙燃えちゃわない?」
「はは!大丈夫大丈夫。最悪引火したら海に入るさ。それじゃ、よく見とけよ〜!」
魔理沙はそう言いながら霊夢達と距離を取ると花火を思い切り振り回した。それは高速回転しながら辺りに七色の火花を撒き散らした。
「お〜凄い綺麗ね。写真撮っときましょう。」
アリスはそう言いながらシャッター音を響かせる。心配そうに見ていたフランもそれに釣られてスマホを構えた。魔理沙は花火を振り回しながら叫ぶ。
「ほらほら〜ファイナルのスパークだぞ〜!撮った写真後で私にも送っといてくれ!」
「わかってるからあんたはそれに集中しなさい。」
やがて火が弱くなると魔理沙は回すのを止めて砂で残った火を消した。リムは霊夢からライターを受け取りながら言う。
「いや〜やっぱ花火は綺麗だな。火薬も使いようによっちゃこんな綺麗になるんだから不思議なもんだよ。」
「でも、終わっちゃうと少し寂しいですね〜。あと一個くらいやりたいですけどね…。」
早苗がそう言うとリムはにやりと笑って言う。
「そうか?なら、もう一つくらい火、点けるか?」
「え!?何か花火持ってるんですか?」
早苗が嬉しそうに言うとリムはにやにや笑って返す。
「あぁ、それも私お手製のな。ほら!」
そう言いながらリムは革ジャンをバッと広げて見せた。
そこには花火と言うには余りにも危険過ぎる爆発物がいっぱい入っていた。
「爆竹に煙玉にミニダイナマイト…リム姉これ部屋で作ったやつでしょ〜!咲夜がリム姉の部屋掃除した時に火薬の匂いがするって言ってたもん!」
「ん?匂い残っちまってたか。一応ファブリーズ撒いたんだけどな。それで、どれがいい?」
リムが楽しそうに聞くと早苗は苦笑いしながら答える。
「流石にこれは…日本じゃアウト、ですかね?」
「あぁそうだな…。爆竹も…規模がな?」
魔理沙も苦笑いしながら付け加えるとリムは少し残念そうに言う。
「そうかぁ…外国でこれ見せると子供とか特に喜んでくれるんだけどなぁ。」
「しょうがないよリム姉、ここ日本だもん。さ、皆帰りましょ。早くしないとホテルの鍵閉められちゃうわ。」
フランの号令で六人はその場を片付けてホテルへ帰って行った。そして皆が寝静まった頃レミリアの部屋では。
「お嬢様、戸締まりなどの諸々の点検作業も全て終わりましたよ。」
そう言いながら咲夜はレミリアのデスクに一杯の紅茶を置いた。
「お疲れ様咲夜。今日は特にね。ふふ、にしてもやっぱりパチェの友人になるだけあるわね。魔理沙って子は。」
「それは、どういう…?」
咲夜が不思議そうに尋ねるとレミリアは紅茶を一口飲みながら答える。
「ん〜なんて言ったら良いかしらね。フレンドリー、という言葉だけでは表せないけれど…要は気さくに話しかけるいつも明るい子ってとこかしらね。あとおそらくいつもはタメ口でパチェに接しているわね。」
「そんな事もわかるんですか?」
咲夜が少し驚いたように言うとレミリアはふふっと笑って答える。
「分かるわよ。あの子の敬語からは敬語を使い慣れない人特有の違和感なんかがあったからね。例えばそうねぇ…細かいところだけれど『こちらは』というところを『こっちは』と言っていたりとかね。」
「あ~確かに言われてみればそうですね。それならパチュリー様よく後輩のタメ口許しましたね。上下関係とかうるさそうなのに。」
咲夜がそう言うとレミリアは頬杖を付きながら返す。
「まぁおそらく始めの方は使ってたのでしょうけど…パチェって同期以下に対して基本タメ口じゃない?だからただでさえ慣れてない敬語だったのに、相手がタメ口使うもんだからいつの間にか釣られてタメ口になっちゃったってとこでしょうね。」
レミリアはそう言いながら紅茶を飲み干して続ける。
「ま、だからこそあの人嫌いのパチェと敬語という心の壁が取っ払われた事によって旅行の面倒見てもらえるくらい仲良くなったんでしょうけど。それに、あの子の性格的に煙たがられてもわりとグイグイいくタイプだろうからそういうところもあるんでしょうね。」
「お嬢様は相変わらず人間観察がお得意ですね。やっぱり接客業の長やってると自然と身に付く感じですか?」
咲夜がレミリアのティーカップを下げながら尋ねるとレミリアは椅子の背もたれに寄りかかりながら答える。
「まあね。この仕事やってると色々な人見てきたから何となく分かるようになったって感じね〜。さてと、もう夜も遅いし貴女ももうおやすみなさい。」
「えーもうちょっとお話しましょうよ〜。ついでに一緒に寝ましょうよ〜。こんなに月も紅いことですし。」
「そういえば今日はストロベリームーンだったわね。さ、一人で寝なさい。夜更かしは不健康への第一歩よ。」
「は~い…。それではおやすみなさいませ、お嬢様。」
咲夜は少し不満そうに頭を下げるとレミリアの部屋をあとにした。レミリアは伸びをしながら呟く。
「ん、ふぅ〜…。あの子はいくつになっても甘えたがりね〜。ま、そこも含めて可愛いんだけど。さて、私も寝るとしますか。」
レミリアは独り言を言いながら立ち上がると部屋の電気を消した。そうして夜は更けていき翌日。
「忘れ物はないか〜?」
魔理沙はそう言いながら自分の荷物を担いだ。霊夢もカバンのチャックを閉めながら言う。
「こっちは大丈夫よ〜。早苗達もオッケーね?」
「私達も大丈夫ですよ〜。」
「んじゃ、チェックアウトして来るか。」
魔理沙はそう言いながらドアを開けて受付に向かった。霊夢達も軽く最終確認をしてから部屋をあとにした。
「すいませーんチェックアウトお願いします。」
魔理沙が奥の方に呼びかけるとスタッフルームから美鈴が顔を出して返す。
「はーい只今!」
美鈴はそう言いながら早歩きで魔理沙の元へ来ると手早くチェックアウトを済ませていく。お会計も終わったところで奥の方から咲夜が小さな箱を持ってやって来た。
「お待ち下さい霧雨様。こちら、パチュリー様から貴女に渡す様にと仰せつかったものです。」
そう言いながら咲夜は小さな箱を魔理沙に手渡す。魔理沙は箱を見ながら不思議そうに思っていると咲夜は小さな紙切れに書かれたメモを読み上げ始めた。
「パチュリー様から伝言も預かっているので読み上げますね。『貴女にお使いを頼むわ。このケーキを私のとこまで持って帰ってきてね。絶対食べるなよ。』との事です。パチュリー様、お嬢様お手製のケーキがとてもお好きなので食べたくなったのでしょう。」
咲夜が笑いながら言うと魔理沙は後頭部を掻きながら言う。
「パチュリーの奴…ちゃっかりしてんなぁ。まいっか。これ、届けときますね。」
「ふふっよろしくお願いします。それでは、またのお越しをスタッフ一同お待ちしております。」
咲夜達はそう言いながら頭を下げた。魔理沙達はホテルをあとにすると車に荷物を積み込んで東京へ向けて出発した。数時間後、魔理沙はいつものコンビニに車を停めた。
「ほい到着したぞ〜早苗もアリスも起きろ〜。」
魔理沙はそう言いながら後ろの二人を突いた。
「んぁ…もう到着ですか?ふぁ~やっぱり車に乗ると私眠くなっちゃいますね~。家よりよく寝ましたよ。」
「そうかそうかそれは良かった。さ、もう暗くなるし今日はもう解散だよ。」
魔理沙はそう言いながら後ろのドアを開けてやった。早苗達は荷物を下ろすとお礼を言って自分の家に帰っていった。
「ふう。さてと、私たちも帰るか。霊夢の神社は通り道だから乗せてってやるよ。」
「あらそう?ありがとね。ああそうそう、忘れる前にこれ渡しておくわね〜。」
霊夢はそう言うとお財布から千円札を何枚か取り出して手渡した。
「ん?なんで私に?」
魔理沙が不思議そうに尋ねると霊夢は呆れたように返す。
「なんでって、ガソリン代よガソリン代。早苗達からも事前に渡すようにって預かってたから。断らず受け取りなさい。」
霊夢はそう言いながら魔理沙のポケットにねじこんだ。
「別に気にしなくていいのに…。まあありがたく受け取っておくよ。じゃ、帰るか。」
魔理沙はそう言うとコンビニを出た。その後霊夢を下ろし、自分も家に帰って行った。そして後日、魔理沙の職場にて。
「おーいパチュリー。咲夜さんから渡されたケーキ持ってきたぞ。」
「あら魔理沙。けい…まあいいわ。ありがとうね。」
魔理沙は白衣のボタンを閉めながら言う。
「別に構わないさ。このケーキ私も食べさせてもらったけどマジで美味いのな。」
「でしょう。私の自慢の友人の自慢の一品よ。」
パチュリーはどこか誇らしげに言うと大切そうにケーキをしまいながら続ける。
「さ、楽しい休みのあとは平凡な日常が待ってるわ。今日もしっかり働きなさい。」
「へいへい。じゃ、今日も一日頑張りますかぁ嫌だけど。」
そう言いながら二人は白衣を羽織って持ち場へと向かって行った。
Next reality
次回は一ヶ月かかるか二ヶ月かかるか…気長に待ってくださると幸いで御座います