ここは何処だろう。
私は……確かスネジンカと戦って……負けて……そうだ、撃たれたんだ。
そのはずなのに……どうして私は……
こんな見たことがないほど明るい都市にいるんだ?
空には不思議な輪が浮かんでおり、建物も見たことのない様式だ。建物に画面がついており映像が流れている。
そして何よりも、その町の住民の様子がおかしい。人形の機械兵のようなもの、二足歩行する動物、天使の輪のようなものを頭の上に浮かべた人。カゾルミアという同じところなんて人が皆銃を携行しているところぐらいだ。
……私は、死んだんだろうか。現実離れした光景にそんなことを考える。ここは天国というやつなのだろうか?と。……そんなわけないか。
現実逃避は辞めにして、取り敢えずそこらにいる人……人?に話を聞こう。
「あの、すみません」
と、近くにいた天使の輪を持つ青髪の女の子に話しかける。
「なんですか?って、包帯!?大丈夫なんですかそれ?!」
「これは……気にしないでください。ここは何処ですか?」
「……?ミレニア自治区の春葉原ですけど」
「ミレニア……?」
「ミレニアを知らないの?!ミレニアサイエンススクールよ!!三大校の!!」
(三大校という枠組みも、ミレニアムサイエンススクールという名前にも聞き覚えはないな…)
「ありがとうございます。もう一ついいですか?」
「え、ええ」
「【溶鉄】という名前か、カゾルミアという国名を聞いたことはありますか?」
「……知らないわね。というか本当に大丈……」
「ありがとうございます。では」
「えっ?ちょっと?!」
教えてくれた彼女に頭を下げ、背を向けて歩き出す。聞いたことのない地名と、溶鉄と祖国を知らない、ということから導き出せるのは、祖国から遠く離れた国か、はたまた別世界か。
前者ではない……と思う。私は戦場の英雄だ。
……ここは異世界、ということになる。一気に現実味がなくなるな。因みに武器や装備はスネジンカと戦った時のままだ。左手の調子はいいが右目は相変わらずほとんど見えない。
……少し歩こう。何か手がかりが見つかるかも知れないし。
宛もなく歩き続け、河川敷にたどり着く。少し離れた場所には橋が架かっており、そこを渡る人(ということにしておく)が見える。
その場に腰掛け、私は川を眺める。歩いてみて分かったことは、ここは戦争
「また銃声……」
恐ろしく治安が悪いということ。ここに来るまでに一体何度銃声を聞いただろうか。そして驚くべきことに、ここの人達……天使の輪を持った人は中に撃たれても平気な顔をしているのだ。半分冗談だった異世界説がどんどんと補強されていってる。
……なぜ私なんだろうか。私はスネジンカを止められなかったのに。何故、目的を一つも果たせなかった私なんかがここにいるんだ?かつての仲間達ではなく、私が。……もはや生きる意味もない、私が。
目の前の川に近づく。水面に映った私を見る。包帯の巻かれた頭に変色した右目。そして…何故か私の頭にはこの世界の人達と同じように天使の輪が浮かんでいた。…一体これはなんなんだろう。まあ、どうでもいいか。
そう思い、足に力を入れ、飛び込もうとしたその瞬間。
「お姉ちゃん!」
そんな声が聞こえた。声のした方、橋の上を思わず見るすると緑色の少女が、転んでいる桃色の少女に手を差し伸べているのが、橋の柵越しに見えた。
「転んだら不味いから走らないようにって言ったのに!」
「だってさミドリ、チャーハン味のポテチだよ!早く食べたいでしょ!?」
「それで中身ボロボロになったらどうするのさ。私たちだけのものならまだしも、ユズとアリスも食べるんだよ?」
「うっ……」
そんな微笑ましい光景が、私には酷く眩しかった。ただの柵が檻のように感じられる。私は、私達はきっともう、ああはなれない。
でも、そうだと分かっていても、どうしても期待してしまう。この世界なら多少の銃撃戦はあれど、戦争とは無関係な人生を送れる。きっと、パンを作ってのんびり……かどうかは分からないが、少なくとも徴兵されることなく生活できるだろう。
だが、私にはそんな資格があるとは思えない。どんなに悩んでも、行き着く答えは同じだ。
一つため息をついて、もう一度川の方を見る。
「ごめんね、スネジンカ」
そう言って、再び足に力を込めたところで
「お姉さん、そんなとこで何やってるの?」
先程の桃色の少女が後ろに立っていた。その背後には緑色の少女もいる。
……さて、なんて答えよう。
「少し途方に暮れてたんだ。これからどうしようかなと思って」
「お姉さん、行く宛ないの?」
「まあ、そんなところ」
そう答える。流石に気がついたらここにいた、とは言えない。
少女は後ろの緑色の少女と少し話した後、こちらへ振り返り、
「お姉さん、私ミレニアのセミナーに知り合いがいるから、住む場所提供してあげられるかも!」
「セミナーって?」
「あっ、セミナーは生徒会みたいなものだよ!」
「生徒会……そうなんだ」
それだけ言って、先の提案をどうしようか考える。私は、そうまでしてもらって生きたいだろうか。……いや、そんなことはないな。やっぱり断ろう。
そうして口を開いて、固まる。待て、私はスネジンカに撃たれて死んだ……としよう。そして今ここにいる。ならば、
その考えと共にかつての七人の仲間の顔がよぎる。
それに、可能性が低そうとはいえ、ここが異世界でも何でもないカゾルミアから遠く離れた国だったとしたら。私は何としてでもカゾルミアに戻らないといけない。戻って、戦わないと。証明するために。
「お願いしていい?」
「分かった!えっと、お姉さんの名前は?」
「……ライカ」
「ライカさん!よろしくね、私は才羽モモイ。あっちは妹のミドリ」
「才羽ミドリです。よろしくお願いします、ライカさん」
「モモイさんとミドリさんね。よろしく」
本名を名乗っても良かっただろうか。でも私のことを知っている人がいたら変に警戒されるかもしれないし、最悪捕縛されるかもしれない。
「じゃあ、私達に付いてきてね」
姉妹に付いていく。道中少し話していて分かったのは、モモイよりも妹のミドリのほうがしっかりしているということ、彼女たちはゲーム開発部?とやらに所属していること、そしてその部活にはアリスという子とユズという子がいるということだ。
私のことについても聞かれたが適当に濁して答える。元軍人(現在は特殊部隊所属なだけで嘘は言ってない)と答えたり、(動機はともかく)国のために戦っていたと答えたりしていると、気を使われたのか踏み込んでこなくなった。少し申し訳ない。
そんなこんなでミレニアムサイエンススクールに着いた。
そんな事を考えながら校内を案内してもらった先には、
「あっ!!あなたさっきの!!」
「……どうも」
「あら、お知り合いですか?ユウカちゃん」
先程声をかけた青髪の女の子(ユウカと言うらしい)、そしてその隣には白く長い髪をもった子がいた。何気なく声をかけたがかなりの重役だったようだ。
「このお姉さんはライカさん!行く場所がないみたいだからここに止めてあげたいんだけど良いよね?」
「ちょ、ちょっと待ちなさいモモイ!そんな簡単に許可出せるわけないでしょう!?それに自己紹介は本人にやらせなさいよ!!」
ぐうの音も出ない正論である。というか普通に自分でお願いしようと思っていたのだが、モモイに先を越されてしまった。
「私はライカ。住む場所がないから泊めてもらいたいんですけど」
「ですけどって言われても……」
「なんで住む場所がいのか話していただくことはできないんですか?」
「それはちょっと……」
今の私は多分とても怪しい。でも下手なことを話すと後が怖いし、かといって本当のことをいって信じてもらえるとも思えない。
どうしようか、そう考えていると、部屋がノックされる。青髪の子と白髪の子が扉の方とこちらを見比べている。どうぞ、と促すとユウカさん?が扉に向かって歩いていく。その間に白髪の子が話掛けてくる。
「そういえば自己紹介をしてませんでしたね。私はセミナーの書記、生塩ノア、あっちは会計の早瀬ユウカです」
「……よろしく」
「フフッ、よろしくお願いします。ライカさん?」
「ちょっとこっち来てください!!」
「いきなりなんだい?」
白髪の子……生塩さんに自己紹介をしてもらっていると、入り口から早瀬さんが紫髪の少女を引っ張って来た。
「あ、ウタハ先輩だ!」
「こんにちは、ウタハ先輩」
「どうかしたんですか、ユウカちゃん?」
「む、君とは初めましてだね、私はエンジニア部の……」
「ちょっと待ってください、ウタハ先輩!」
「だが自己紹介は大事だろう?」
「そうですけど、今はそうじゃないんですって!」
そんな会話をぼーっと見ていると、ウタハさん?の持っている機械を指さしながら、
「エンジニア部の作成したウソ発見器を使って彼女の話を聞かない?」
と言った。
「……えっ」
「あら、それは良いかも知れませんね。ライカさんが嘘を言っていない、というのが分かれば私達としても安心して場所を提供できますし」
「おや、そういうことだったか。なら好きに使うといい。テストは終わらせてあるから問題なく使えるはずだ。あ、あと下の凹みについているボタンは自爆ボタンだから触らないようにね」
「えっ?」
「確かにそうだね!それなら危険がないことを証明できるし、言いたくないことは言わなくてもいいじゃん!」
「あっ、う、うん」
「起動するぞ」
「あっちょっ」
とてもまずい流れになってきた。ウソ発見器に自爆ボタンがついているという聞き捨てならない発言も聞こえたが問題はそこじゃない。今私はライカと名乗っている。それはつまり……
「それじゃ、あなたの名前は?」
「…………ライカ」
「……赤く光ってるけど?」
「ああ、これは嘘をついてる時の反応だね」
「「「「えっ?」」」」
ああ、どうしよこれ……そんなことを考えながら、私のほう向けられる視線から逃れるように顔を逸らすのだった。
なんとなーくのストーリーは考えてるのでちまちま書いていきたいなと思っております。