――どうも、東雲朔夜だ。
今日は樹から家で遊ぼうとの誘われたので廣仁と共に遠坂家に行く予定をしている。
現在は待ち合わせの最寄り駅に到着していた所、遠くから樹が駆け出して来るのが見えたが…
――あ、転けた。
「あ、大丈夫かな」
「……アイツなら多分、大丈夫だろう」
俺達は出会って一ヶ月になろうとしているが、何となくそれぞれの人となりが分かりつつあった。
その為、慌てて来たんだろうなと直感で分かってしまった。
「――いや、悪い悪い。少し寝坊してしまったわ」
そう言う樹は急いで来たのか、少し寝癖があってボサボサな所が見えたがこの際気にしない事にした。
「……いや、俺達も比較的着いたばかりだったしな」
「うん。だから心配する事は無いよ!」
そう言って廣仁は満面の笑みを浮かべた。
ゴールデンウィークは其々の都合で会う事は無かった分、今日は一緒に遊べるから楽しみだって言っていた。
それ故に笑顔なのだろう、と俺は思った。
「それじゃあ我が家に御招待しよう!さあ、着いて来い!」
「おー!」「……おー」
廣仁は楽しげに、俺は少し控えめに掛け声をしながら樹の後を追い掛けて行く。
駅を出てバス停に着き、暫くバスが来るのを待ちながら俺達は軽い雑談を交わす。
「……そう言えばゴールデンウィークはどうだった?」
「ボクはね〜家族とバーベキューしに行ったよ!」
俺が話を振ると廣仁は先ず楽しげに答えた。
「ほう、バーベキューか。何処に行ったんだ?」
樹は興味津々に廣仁に質問を繰り広げ、廣仁は「えっとね…」と少し思い出しながら答える。
「青梅の方にある所なんだけど、自然豊かで川もあるしで…」
そう言って廣仁は熱弁でトークを展開していた。
どうやら想像以上に楽しんだみたいで、スマホの写真フォルダから写真を見せてくれたが、満面の笑顔で映る草薙ファミリーの姿があった。
「……仲良さげで良いな」
「でしょ?それに少し暇だったから河原から綺麗な石を持って帰ったんだよね。あ、家に大切に保管してるから写真で見せるね!」
スマホの画面をスライドさせ、綺麗な形の石の写真を見せてくれた。
俺には良く分からないが、本人曰く「他の石も良かったけどこの石は特別綺麗で気に入った」との事だった。
「次はいっ君さんだな!俺はだな――」
そう言っている間にバスが来た為、話を中断して定期で乗車して後ろの座席に座り、小声で樹が話を再開させた。
「大まかに言うとゴールデンウィーク期間中は親戚が遊びに来ていてな。その親戚の子…渚って言うんが、渚の相手をしていたな!」
そう言って樹はゴールデンウィーク期間中の思い出を振り返りながら聞かせてくれた。
話が長いので要約すると、先ず樹の実家が親戚の家らしく、その繋がりで幼い頃から仲の良い渚って子との思い出を中心に話が展開されていた。
最後に会ったのが、中学三年の受験前に息抜きで遊びに行ったきりで、今回は最終日の午前中までいるらしい。
「あれ?もしかして今日も居る感じなの?」
廣仁が気付いたようで、質問をしていた。
今日はまだゴールデンウィーク。その親戚が帰るにはまだ少し早いのでは無いかと思い、俺も聞いていた。
「そうだな。それで良ければ紹介させて欲しいなと思っていたんだが大丈夫そうか?」
「……俺は大丈夫だ」「ボクも全然良いよ!」
俺達がそう返し、樹は「なら大丈夫だな」と言いながら、
「実は渚にも問題無ければ一緒に遊ぼうって確認はしていたんだ。まあ、今は俺の部屋に居るだろうから問題があったら別々にするつもりだったが…大丈夫ならこのまま俺の部屋に直行だな」
と、言う訳で親戚の渚って子を交えて遊ぶ事になるらしい。
まあ、どうにかなるだろうと思いつつ、話の順番的に俺になる。
「そう言えば話がアレだったな。朔夜は何をしてたんだ?」
「…基本は家に居たな。良く妹と遊んで過ごしてた」
「へぇ〜朔夜君って妹さん居たんだ」
喋る事は少なかったが、それとなく喋ればどうにかなった。
……俺ももう少し出掛けるべきだっただろうか。
――まあ、今日出掛けてるし良いか(適当)
「……ああ。それで樹達の事を教えろってうるさかったから教えられる部分だけ教えた感じだな」
「妹さんか〜きっと可愛いんだろうね」
廣仁が妹の事に興味があるのか知らんが、アイツは見た目だけは可愛いが、ウザったい所は可愛らしく無いと思った。
さて。
そんな話をしながらもバスは目的地周辺に到着したみたいで、バスから降り、住宅街の中を樹を先頭に徒歩で向かう。
何処にでもある住宅街で、特に目立った所は無かったが、この辺に樹が住んでいるんだなと内心思いながら歩き続けること15分。
とある一軒家の前に着くと樹は鍵を開け、扉を開けてくれた。
「至って普通の一軒家だが、ようこそ」
「……お邪魔します」「お邪魔します!」
俺達は玄関に入るや否や、上の階からドタドタと足音が聞こえると同時に一人の少女が飛び込んで来た。
――この子は一体…?
「おい、お客さんの前だぞ渚」
「別に良いじゃん〜あ、初めまして!私は遠峰渚です!」
と、軽く自己紹介をしてくれた。
成る程。彼女が先程言っていた親戚の渚って娘か。
黒髪のポニーテールで幼さを残す美少女って言う第一印象だな。
これなら見た目だけは可愛い俺の妹と良い勝負な気がするな。
「取り敢えずお客さんの邪魔になるから先に行ってくれ」
「はーい。皆さんごゆっくりして行って下さいねー!」
と、だけ言って上の部屋に先に行ったようだ。
俺たちは靴を脱ぎ、手洗いをしてから上の部屋に通された。
如何やら奥の部屋は樹の部屋のようで、中はオタク部屋だった。
名前だけは知っている東方プロのアクスタやフィギュア、ポスターが壁に貼られ、趣味全開をイメージさせるものだった。
「ようこそ、いっ君さんのオタク部屋へ!」
「……これは凄いな。完全に趣味の部屋じゃねぇか」
「これは東方プロだよね!?凄いよ!?理那とかあるかな!?」
如何やら廣仁は東方プロのファンらしく、興味津々に見ていた。
周囲を見渡すとパソコンがあり、その横に『人形演舞』と書かれたゲームソフトが置いてあった。
「……思った以上にオタク部屋だな」
「ハハッ、最近イベントにも行ったから増えているんだけどな」
俺達がそんな事を話していると、先に部屋に来ていた遠峰渚は樹のベッドに座ってライトノベルを読んでいた。
「兄貴は部屋に来れば何かしら面白い物があるよね〜あ、借りてるよ」
「おう。それじゃ何して遊ぶよ?◯witch2とか色々完備してるぞ」
部屋の一角にはS◯itch2や様々なゲーム機が揃えてあった。
……正直、持っていないからどれも魅力的なんだよな。
俺が悩んでいると、廣仁が目を輝かせながら「◯リオパーティ」がしたいと言う事で、早速遊ぶ事にした。
遠坂家は家族一覧で遊ぶと言う事もあり、人数分のジョイコンがあったので、それを借りてパーティゲームを始める事になった。
「あ、一番最初だ」
「…俺は2番目か」
廣仁・俺・樹・遠峰渚の順番でパーティゲームを開始した。
因みにゲームのルールはサイコロを転がしてマス目に応じて進み、スターをより多く保有したプレイヤーが勝利となる。
最初のスターは右奥に配置され、廣仁が5マス進む。
次に俺がサイコロを振る事になるのだが…
「あ、少し振り過ぎたか?」
ジョイコンを振り過ぎた事で逆に2マス進む事になった。
「フハハハ!家族で最弱のいっ君さんの出番だな!」
「……兄貴、誇れないと思うんだけど」
いっ君さんは運良く8マス進む事となり、遠峰渚は4マス進む。
そうして一番最初のミニゲームが始まる事となった。
「えっと…ロープで形合わせ?」
如何やら画面の上にお題が出るので、ロープでお題と同じ形になるようにするらしい。
キャラクターを動かし、紐を出っ張りに引っ掛けるようだ。
「俺は…樹と一緒か」
「宜しく〜」
俺は樹、対戦相手は廣仁と遠峰渚となった。
「俺は右に行くから左側は任せたぞ」「おう」
「うわわ!?」「ちょっ引っ掛けってヤバば!?」
俺と樹ペアは比較的順調に、廣仁と渚ペアは苦戦しながらミニゲームをして行く。
「良し、こっちは行ったぞ!」
「兄貴達に追い付けてやる!」
廣仁と渚ペアは徐々に追い付けて来て緊張して手汗がヤバい。
だが、それでも俺と樹ペアは一歩有利で勝負を制して行く。
そうして…
「よっしゃ!!」「……ふう」
「えええええ!?」「負けちゃった…」
最初のミニゲームは俺と樹ペアの勝利となった。
良し、この調子でスターを勝ち取って行きたいものだな。
※ ※ ※ ※ ※
〜草薙廣仁side〜
こんにちは、ボクです。
最初のミニゲームで負けてしまったけど、負けてはいられない。
こう言ってはなんだけど、ボクって負けず嫌いなんだ。
だから此処から巻き返してスターを勝ち取って行くよ!
ボクはサイコロで9マス進み、一歩有利になって行く。
朔夜君は7マス、樹君は6マス、渚ちゃんは5マスと中々接戦。
次のミニゲームは“ピントを合わせて”。
ルールはジョイコンを傾けて虫眼鏡を動かし、一番早くピントを合わせたプレイヤーの勝利となるようだ。
さて、早速勝負が開始してジョイコンを縦持ちでピントを合わせて行くが…中々上手く合わせ辛い。
うーん…此処かな?
すると、ピントが合ったらしく一番最初になった。
「うわ…変に合わせ辛いな」
「…………(此処だな)」
「よっしゃ!!貰った!」
2番目に渚ちゃん、次に朔夜に樹君。
その後も何回か繰り返し、ボクが勝利を勝ち取った!!
「やった!!」
「……勝負には負けたけど廣仁の笑顔を見れたから良いや」
何か樹君が変な笑顔になってるけど…どうしたんだろう?
まあ、いつもの事だから余り気にしない方が良いのかな?
「うわ…兄貴が変な笑顔になってるんだけど」
「……何時もの事だ。気にしないでくれ」
「ええ…(困惑)」
※ ※ ※ ※ ※
〜遠峰渚side〜
やあやあ初めまして、私だよ!
兄貴が男の娘に興奮する変態だって事が明かされて正直ドン引きなんですけど…
けど、あの廣仁先輩って確かに可愛いから兄貴がそっちの道に進んでしまうのは分かってしまう私がいる件について。
しかし、私だって負けていられる訳には行かないのだ。
早くスターを取って少しでも有利になってやるんだから!
ミニゲームが終了し、廣仁先輩が3マス進む。
うーん、まだスターまでは距離はあるけどどうなるかな…
次に東雲先輩が2マス進んでハプニングマスでスターを購入するのに必要なコインを幾つか奪われて痛そうだった。
次に兄貴は5マス進み、問題無くコインを幾つか増やした。
んで次に私なんだけど…運悪く1マスになってしまった。
そして肝心のミニゲームは…“後出しクイズ”。
1対3のミニゲームで、ルールは1人側が選択した問題を、3人側が回答するって行った感じだね。
それで、私が一人側に立ち、先輩方が解答する感じか〜。
くくっ…なら私が少し難しい問題を選んで困らせてやろうかな〜?
何も知らない先輩方は私の方を見て来るが…
さあ、困らせて反応を楽しんでやろう!
――スタート!
さて、ミニゲームが始まると同時に可愛いキ◯ピオと戯れたり寝ている◯リボーを見て癒されつつ、私は問題を出す。
くふふ〜此処は“寝ていたクリちゃんの数”を出してやる!
「はあ!?寝ていたクリ◯ーの数!?」
「えっと…キノピ◯しか見て無かったよ…」
「……確か」
兄貴と廣仁先輩はキノちゃんしか見て居なかったようだけど、東雲先輩は全体を見て居たのか比較的記憶の要領が良く、少し危ないかなと感じていた。
実際、ほぼ正確に当てて来た所を見るに良いのだろう。
――へぇ、流石に頭が良さそうなだけはあるね東雲先輩。
兄貴って性格は明るく、理系に賢い所はあるけど肝心な所で抜けているから東雲先輩みたいな人が居るとカバー出来そうだな。
……このミニゲームとか1対3だから協力戦だし、厄介だな。
因みに寝ていたクリちゃんの数は3体だったよ。
――嗚呼、寝ているクリちゃん可愛いかったよぉぉぉ!!
※ ※ ※ ※ ※
〜遠坂樹side〜
おはこんばんにちは、いっ君さんだゾ。
さあ、ミニゲームが終わって何回かターンを稼いで廣仁と朔夜はそれぞれ5マスと2マス進んだ所でいっ君さんの出番となったが…
――此処で道中に拾ったアイテムを使用!
これを使う事でサイコロ数を増加させ、スターまで一気に進む!
いっ君さんは5+αで15となり、一気に突き進んで行く!
「うわ!?ヤバいっ!?」
「……やられた」
朔夜と渚を追い抜かし、更には先頭にいる廣仁に追い付く。
「あ、追い付かれちゃった…」
「やっと二人きりになれたね…(ねっとりボイス)」
「きっも…(ドン引き)」
思わず廣仁に抱き着いてしまいそうになったが、我慢した。
だって横にいる渚の目がマジで兄貴としての威厳を失いそうなんだもん。
さて、渚のターンを終えてミニゲームのお時間だな!
――ミニゲームは“ドキドキバクダン回し”!
ルールはランダムな時間で爆発するボ◯兵を、爆発時に持っていたプレイヤーが敗北すると言ったものだな。
――スタート!
「おっしゃ!直ぐにパスしてやるよ!」
「ふふっ…馬鹿だな兄貴?ギリギリを攻めてパスするんだよ」
俺と渚はボム兵を送り合い、馬鹿な身内勝負をしていた。
一方の廣仁と朔夜は適当なタイミングで◯ム兵を送り付けて来るので此方も上手く対処しないと負けてしまうから注意しなければ!
――パス!パス!少ししてからパス!!
お互いに様々な戦術を駆使してボム◯が爆発するのを見計らっていたが、最初に廣仁と渚が脱落してしまった。
「うわぁ…兄貴を落としてやろうと思ったのに…」
「負けちゃったか…残念」
一方、巧妙な戦術を駆使して来た朔夜にギリギリな俺。
「くっそ…セコイ真似をして来やがって…!」
「……悪いが勝たせて貰うぞ」
俺は攻め、朔夜はギリギリを攻めて手合わして来たが…
……3・2・1――
「……今だ!」
「ウギャアアアアアアアアア!!(断末魔)」
見事に朔夜の戦術に敗北して俺は悔しげの叫びを上げてしまう。
すると思ったより煩かったのか、俺以外の全員が耳を塞いでしまった。
――あれ?俺の叫びってそこまでうるさいものなの?
「「「う、うるさい…」」」
「あ、はい御免なさい…」
だが、勝負で負けてしまっても試合には勝ってやる!
ミニゲームが終了し、廣仁はスターのギリギリで止まり、朔夜も追い付いて来たが…無駄だ!!
俺はアイテムを使用し、確実に安全策を取って行く!!
サイコロで16を引き、一気に花道を駆けて行き、ゲットする!
「あ、目の前で取られた!?」
「済まんな廣仁、スターは頂くぞ!」
主人公補正を活用してコインで支払ってスターをゲット!
――もうこれで何も怖く無い!(フラグ)
こうしてパーティゲームで楽しく遊んでいた俺達だった。
※ ※ ※ ※ ※
パーティゲームがひと段落終え、休憩時間を取る事になった。
遠坂樹は順番にトイレに行った東雲朔夜と草薙廣仁を見送りつつ、おやつを食べている遠峰渚と雑談を交わしていた。
「いやぁ〜楽しかった楽しかった。あの人達良い人達で良かった」
「そりゃ、俺が友達になりたいと思った奴等だからな。……だけどアイツらと上手く仲良くなってくれたみたいだし、良かったよ」
遠坂樹は「正直」と、言いながら…
「アイツらは少し奥手と言うか、積極的な渚と上手く遊べるか不安な所もあったけど…大丈夫そうだったな」
「正直な話、兄貴が居てくれるお陰で私もあの先輩達も安心して遊べる所はあるんじゃないかな?」
「俺が?」
遠坂樹は「?」を浮かべるが、遠峰渚は笑みを浮かべながら…
「多分、私達は兄貴がいつも通りに笑ってくれてくれるから、私達も安心して心を通わせられたんじゃないかなって思ってるんだ。
兄貴が笑っているって事は、先輩達も悪い人じゃ無いんだって私も心から安心して居られるって言うか…」
遠峰渚の話を聞いた遠坂樹は「俺も案外、役に立ててるんだな」と内心思いながら話を聞いていた。
「そうか…なら良かったよ。俺としても皆が楽しんでくれているならそれで充分だからな!」
「兄貴…うん!」
遠坂樹は思う。
やはり自分の大事な人達が笑顔で居てくれる方が良いのだと。
それに俺が少しでも役に立てているのなら生きている意味もあるのだと感じられた。
「あ、それであの先輩達って眞希姉さんとどうなの?」
「眞希とアイツら?うーん…俺と同じく廣仁を狙ってる感じかな」
「あー…眞希姉さんも可愛い物には弱いからね…」
多分、廣仁先輩は苦労してるんだろうなと遠峰渚は内心思った。
だけど同時に楽しい学生生活なんだろうなと期待もしていた。
――何せ、目の前に楽しんでいる人が居るのだから。
「私も頑張らないとな…」
「どうしたんだ?」
「いや、私の独り言だよ」
――私も絶対に聖嶺學園に通って楽しい学生生活を送るぞ!
遠峰渚は漠然として居た高校進学に向けての目標を確固たるものとしたのだった。