望月眞希の誕生日パーティーから一週間後。
本日…以前から俺を苦しめて来た例の球技大会が来 や が っ た。
〜校門前〜
「――行きたく無いで御座る」
はい。
いっ君さんは現在、死んだ目をして震えながら立っております。
来たくは無いけど、出席しないと行けないんでどうしようも無かったんだ。
「……諦めてもらってどうぞ」
「慈悲はねぇのかよ!?」
「素直に諦めた方が良いと思うよ?」
と、朔夜と廣仁に両手を掴まれ、俺は校舎に入って行く。
――まだ死にたくなぁぁぁい!!
しかし、俺は二人に引きづられながら中に入って行く頃には俺は全てを諦め、球技大会に出場する為に体育着に着替える事にした。
「……せめて避けられるようにはしよう」
「哀愁が漂ってて草」
「お前は良いよな、運動能力があってよぉ!?」
俺は隣にいた彰人に肩を掴んでぐわんぐわん揺らしながら言った。
クソッ!これだから能力がある奴等は良いよな!?
俺なんてボール投げる以前に色々終わってる人間なんだゾ!?
「うぅ…吐きそう…」
「そもそもいっ君さんは球技大会に参加したく無かったんだゾ」
「……樹、そろそろやめて差し上げろ」
「うぅぇぇぇ…」チーン
朔夜の注意で意識を取り戻す俺。いつの間にか熱くなってしまっていたようだ。
てか、激しく揺らし過ぎて彰人がダウンしてしまった。やべ…
……あ!因みに言っておくが、俺は悪くねぇからな!!
※ ※ ※ ※ ※
さて、とうとう来てしまった
この球技大会では全学年が参加する行事で、年年かなり盛り上がるイベントの一つらしい。
午前中に予選を行い、午後に勝ち上がったクラスがトーナメント式で優勝を決めるルールになっている。
「ボク、球技系は苦手だけど…少しでもクラスに貢献出来るように精一杯頑張って見るよ!」
「嗚呼、癒される…後は球技じゃ無ければ最高だったんだけど」
「……どんだけ球技系に恐怖を持っているんだお前は」
俺・朔夜・廣仁・彰人はクラスの一角で集まっていた。
片やドッチボールにやる気を見せる廣仁、片や死んだ魚のような目をしてグラウンドを眺めている俺氏。
本当は痛い目に遭いたくは無いが、可愛い廣仁がやる気を見せているので少しは頑張って見る事にしてみた。
「…けどまあ、可愛い廣仁がやる子を出してるんだし?俺だって良い所を見せて褒められたいから?やってやんよ!」
「……本音駄々もねですよ樹さん」
――はっ!?思わず本音が漏れてしまった!?
けどやるからには廣仁に良い所を見せ付けてやらぁ!!
こうして
※ ※ ※ ※ ※
さあさあ、まずは我等が1年C組の出番であります。
対する対戦クラスは――
「げっ…まさか最初からC組と当たるなんてな…」
「そう言う君達は…1年E組で合ってるな?」
「あー…そうだな。俺達は1年E組の後半クラスだ。そんで俺はリーダーを務める
そう言って1年E組の
対する俺達も手を差し出して挨拶をしたが、ふと思った。
1年E組って問題児ばかりが集まってると思ったが、意外と話が通じる奴も居るもんだなと思った。
やっぱり決めつけてばっかりなのも良く無いな。
――さて。
10対10の勝負で上手く連携して行かないとな。
「これより1年C組VS1年E組の試合を開始します」
「「「「宜しくお願いします」」」」
両チームはコートの中に入ってばらける。
一応、1年C組の前半クラスのリーダーの指揮に従いつつも独自で頑張らないとな…但し、動けるとは言っていない()
「試合開始っ!!」
ピィッと言う笛の合図と共に試合が開始し、最初のボールは此方となったので、勢い良く身長の高いクラスメイトが投擲した。
辛うじて当たりはしなかったが、相手チームを混乱させる事には成功したので、リーダー君が指示を出した。
「外野と内野で上手く連携して相手チームを崩すぞ!」
「「「応っ!!」」」
ボールが外野から内野にパスされる際、相手チームの肩に接触した事で数を減らす事に成功し、相手ボールになる。
「動きが鈍い奴から攻めて行けっ!!強い奴は外野に行かれると面倒になるっ!!」
「「「了解っ!!」」」
そう言って1年E組は動きが鈍いと認識された人物――何故か俺にボールを投擲して来た。
――ふぁ!?
「あでしっ!?」
「「「樹ぃぃぃ!?」」」
――ボールは俺の顔面を当て、俺は痛みで倒れてしまった。
……ドッチボールのルール上、顔面や頭部はセーフである。
と言うか普通は偶然とは言え、故意的に当てるのは禁止である。
当ててしまった場合、此方のボールになってしまうからね。
「うぅ…痛い目にあった…」
「……ドンマイ。アウトにならなかっただけマシだろ」
「……うん」
ボールは俺の足元にあり、俺が投げる事になったのだが――
――ぴゅーん…
俺の握力が弱過ぎて前方に少し行った所で転がってしまった。
えぇ……俺って弱過ぎね?(困惑)
両チームともに俺の弱過ぎるボールに呆然となってしまい、そのまま善積恭將が手に取り、笛の合図と共に相手ボールになる。
そのまま善積恭將は勢い良く彰人の方向に目掛けて投擲した。
「うぉ!?危ねぇ!?」
「チッ…不意の一撃なら当たるかと思ったんだがな…?」
ボールはそのまま相手の外野に渡された。
相手チームは外野と内野で上手く連携して此方の廣仁にボールが当たるように執拗に投擲を繰り返す。
「うわっ!?」
「廣仁っ!!」
廣仁が回避するのに精一杯で、ふとした時に転倒してしまった。
相手チームはそこを逃さず、ボールを廣仁に投擲したのだが…
咄嗟に俺が盾になり、ボールは俺の頭にぶつかって転がった。
「痛ってぇ…けど廣仁を守れたからヨシ!」
「ええっと…助けてくれて有難う…だけど本当に大丈夫?」
「だ、だだだだだだ大丈夫だ問題無い」
「……大問題しかねぇんだけど」
朔夜はそう突っ込みながらも、ボールを回収すると笛の合図と共に凄まじい速さで投擲し、相手チームの二人をダブルキルした。
――わお、朔夜って実は凄い能力の持ち主だったんだ…
この時点で外野を除くと9対6と言った所か。
味方チームと相手チームがせめぎ合って、攻めては守りに入る。相手のボームで味方が落ちては、その逆に攻めで相手を落とす。
そうして試合時間は残り1分を切って5対3となっていた。
「ぐぬぬ…少ししか落とせないとは流石に格上には敵わないか…」
「逆にいっ君さんからしたらほぼ互角なんだから凄いとしか思わない件について」
「ほう?いっ君さんと言ったか…格上のクラスにも関わらず、俺を褒めるとは…気分が良いからお前は最後に取ってやらぁ!!」
そう言いつつ、善積恭將はボールを1年C組のリーダー君に目掛けて投擲し、ボールを拾い損ねたリーダー君がダウンしてしまう。
「なっ!?」
「よっしゃ!!このままのペースで引き分けに持って行く!!」
残り30秒で熱が入った善積恭將は覚醒し、残った俺達を狙おうとしていた。
「ぐっ…僕が落ちたのは不味い…君達、時間まで避けてくれ!」
リーダー君がそう言うが、俺達は緊張してそれどころでは無かった。
――避けるか、攻めるか。
気が弱い俺や廣仁はただひたすらに避ける方に専念し、逆に運動能力があるが慎重になっている朔夜と彰人は相手を警戒していた。
そして…ボールが投擲されたが、そのボールはこれまでと段違いで凄まじいスピードで攻めて来た。
まるでそのボールは目の前にある障害を破壊するが如く、強い風を纏っているかに錯覚させた。
流石にこれを回収できるとは思わず、俺達4人は一斉にボールを避ける事で精一杯となり、微かに俺の耳を掠ってボールは飛んで行った。
「うおおおおおお!?耳を掠ったって!?やっばぁい!?」
そうしてボールが返って来る頃になって試合時間が0秒となる。
試合が終了し、俺達は生存した人数を数えられる為、体育座りになって先生の確認作業が終了するまで待機する。
そうして――
「ええ、4対3で1年C組の勝利とする!」
外野から勝利の雄叫びが聞こえ、俺達は漸く勝利したのだと実感して少し力が抜ける感覚がした。
両チームはコートの中央に集合し、
「「「有り難う御座いました!!」」」
互いにスポーツマンシップに則って手を握り合ってから別れた。
別れ際、善積恭將から声を掛けられ…
「いっ君さんだったか?お互いに良い試合が出来て光栄だった」
「おう。お前さんの最後のボールが凄かったのが印象に残ったゾ」
「ハハハ!!褒めてくれる奴なんて高校ではお前が初だわ!気に入ったわ!運動音痴のようだが、この後の試合も頑張れよ!」
「はは…最初の試合でもう疲れて帰りたい()」
善積恭將との試合で疲れたんで、もう帰っても良いっすか?
……え?駄目なの?許してヒヤシンス。
※ ※ ※ ※ ※
一方、別の試合では…
1年A組VS1年D組の試合が時間差で行われていた。
「試合開始っ!!」
スタートと同時にリーダーを務める神楽坂雅紀がボールを取った事で先制は1年A組になった。
「が、外野は右に移動!前衛は前に、中衛と後衛は敵の外野に注意しつつ連携を取れるようにして下さい!」
「「「了解!」」」
神楽坂雅紀の指揮の下、上手く連携して相手チームを乱す。
相手チームもそれなりの連携で巧みに動く所為でAチームの外野が投擲したボールが中々当たらず、敵チームの外野に取られた。
「うわわ!?どうしようボール取っちゃったけど…」
「焦らんでええよ!此処は的確に相手を落とす事に専念するんや!大丈夫!何が合ってもあたしがカバーするから平気や!」
「瑠莉ちゃん…」
――確かあの女子は…
1年D組を取り纏める元関西出身のリーダー格だったな。
1年の中でも有名人の一人で良く覚えている。
明るいノリが良い性格で男女問わず交流関係が広く、学力はイマイチらしいが、コミュニケーションと運動能力で言えば俺よりも上である。
また見ている限り、人をよく見ており、ボールが得意な人にはなるべく前衛に行かせつつ、慎重に守りに入らせたりもしている。
逆に運動が苦手な人には後方に行かせつつ、タイミングを見ては上手く声を掛けて鼓舞しているように見える。
……そして何より本人の運動能力が凄まじい所だろうか。
――厄介な相手にぶつかったようだな。
俺も文武両道ではある方だが、どちらかと言えば勉学の方を得意とする一方、運動面では努力でカバーしている節がある。
その為、元々運動が得意な人と比べると体力に自信は無いので、長期戦に突入されると疲弊で動きが鈍くなる為、短期決戦に持ち越したいのが実情である。
「ええ…と葉山君!外野の方は任せた!」
「おう!任された!」
因みに1年A組の外野は葉山颯吾君に任せている。
身長が178㎝あり、身体能力も高い彼になら任せられる筈だ。
「み、皆さん!相手の動きに警戒しつつ、出来る限り攻めて行きますよ!攻撃は最大の防御!時に守備に移行しつつゴーゴーです!」
「「「了解!」」」
このようにして神楽坂雅紀率いる1年A組と倉橋瑠莉率いる1年D組の試合は行われるのであった。
※ ※ ※ ※ ※
さて、画面をいっ君さんに戻しまして。
現在、我々は眞希と天宮さんが参加する試合を観戦しています。
グラウンドの右側に移動し、二人を応援しながら俺は見ていた。
「眞希!天宮さん!頑張るのじゃゾ!」
「あんたはお爺ちゃんか何かか!」
「あはは…」
俺のボケに対して眞希のツッコミが響き、1年B組の二人の緊張が少し解れたように見えた。
そうして二人は先生の召集に応じてコートの中に入って行った。
「それでは試合を開始します!」
審判を務めるのは我等が担任の前園先生らしかった。
試合が開始し、天宮さんは後ろに下がり、眞希が天宮さんを守るように前に出ている体勢だった。
「ヨシ、先制点はB組が獲ったな!攻めてけぇ!」
「お前はB組の関係者か何かかよ…」
いつの間にか俺の隣に来た彰人に呆れられたように言われた。
そう言うお前こそC組では無く、B組を応援に来ているじゃないか!
「俺は天宮さんを応援しに来たんだ。別に…良いだろ」
「男のデレは需要は無いぞ!」
「うるせぇな!!」
野郎二人、観戦をしているにも関わらず言い争いでうるさいぞ。
と言う声が聞こえそうだが、本人達には関係無かった。
「と言うか天宮さんを応援しに来たって…好きなのか?」
「はぁ!?……そ、そそそそそうですけど何か!?悪いかよ!?」
「……マジか。いや確かに隠れ美少女だし、分かるがマジか…」
俺は段々とニヤニヤしながら、彰人の方を見ていた。
彰人は頬を赤くして色々暴露してくれそうな気がした。
「へぇ〜何処で好きになったんだよ〜」
「……はあ。バレてしまったし、言うけど…ひ、一目惚れだよ」
「へぇ〜“へぇ”〜!!」
「な、何だよ気持ち悪い笑みを浮かべて…」
いやはや、人の恋情を聞くのはかなり興味深いしなぁ〜?
まさか友達と恋バナをする時が来ようとは思わなかったな。
「いやぁ〜人の恋愛を聞くのは楽しいですなぁ〜?」
「そ、そう言うお前こそ…好きな奴はいるのかよ」
と、聞かれてしまい、俺は少し悩んでしまった。
うーん…好きな子?と、考えた末に出て来たのは…
「うーん…あ〜…廣仁しか出て来なかった」
「うわぁ…相変わらず廣仁が好きだなぁ〜」
だって仕方無かろう?天然男の娘の廣仁だゾ?
笑顔が可愛くて、男同士の下ネタに対して赤面するような子だぞ。可愛いだろ。
〜1年C組〜
「く、くしゅん!!」
「……大丈夫か?」
遠坂樹と藤澤彰人が居ない1年C組では、廣仁がくしゃみし、朔夜が少し心配していた。
「う、うん。誰か噂とかしてるのかな…」
「……居るとしたら此処に居ない樹じゃないか?」
「あー…うん。しそうだね」
何となく可愛いとか可愛いとか言いそうだな…と思ってしまった二人であった。