青春の楽園   作:鷹と暁

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第3話 勉強会

 それから数日が経過し、金曜日の朝を迎えた。

俺は布団の中で目を覚まして、ふと天井に意識を向けた。

 

(――見覚えのあり過ぎる天井だ)

 

 覚醒し切れていない脳が起きるまで、暫く無意味に天井と目を合わせ、それからやる気を身体に注入させてから起き上がった。

 

「……よし、行くか」

 

 俺は制服に着替え、洗面所で顔を洗い、朝飯の用意をしてから、妹の咲希を起こしに行った。

 

「……咲希、朝だぞ」

「ううん……後5分だけ……」

「はぁ〜…遅刻しても知らねぇからな?」

 

 すると「遅刻したら怒られる…」と言いながら咲希が起きる気配がしたので、俺は「朝飯出来てるからな」と言って下に降りた。

 暫くして咲希が下に降りて来て、一緒に朝食を食べる。

 

「「頂きます」」

 

 今日は父親が仕事で既に出ており、兄妹だけの食事である。

朝飯はいつも通りの苺ジャムを乗せた食パンと牛乳パックである。

 

「……そう言えば今日は勉強会があるから少し帰りが遅くなる」

「了解〜。にしても勉強会?…もしかして遠坂さんって人達と?」

「ああ。樹達と少し何処か寄ってから帰るつもりだ」

 

 咲希が興味深そうに「青春だね〜」と言うが、俺は「そうだな」とだけ返して食パンと牛乳を飲み干して食器を洗う。

 後から咲希が食べ終わって皿を投入したので一緒に洗い、咲希と共に出る用意をしてから鍵を締め、通学路に出る。

 

「今日も諷歌ちゃんと遊んで来るぞ〜!」

「……イチャつくのは良いが、程々にしなさい」

「はーい」

 

 そうして俺達は別れるまで暫くの間、雑談を交わすのだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

〜藤澤彰人side〜

 

 おはようございます、藤澤彰人でございまーす。

現在、俺は1時間45分かけて聖嶺學園に通学しております。

 

 今日も早速、中央線の遅延が発生して忙しいなと思いつつ、スマホの時間を見て通学時間を逆算して「これは無理だな…」と内心で判断すると迷う事無く、學園側に連絡を入れた。

 

 暫くコールが続き、學園側から「◯◯です」と来たので答える。

 

「あ、おはよう御座います。聖嶺學園1年C組の藤澤彰人と申しますが…」

『えー……はい。藤澤君ですね。今日はどうされましたか?』

 

 俺はいつも電話する際に何故か緊張してしまうのが悪い癖なので長くなってしまわないか気を付けつつ、受け答えをしっかりする。

 

「學園まで来る道中で中央線を利用しているんですが、遅延が発生して登校時間までに時間が掛かりそうなので連絡を入れました」

『成る程…因みに現在は何処にいらっしゃいますか?』

「◯◯駅です」

 

 と答え、『では担任の前園先生にお伝えします』と言うと電話が終了し、俺はゆっくり運命に身を任せる事にした。

 

(あ〜後はどうにでもなれ)

 

 俺は迂回路をスマホ検索で調べ、それに従って移動した。

バスで多摩方面に少しでも近付く為に京王バスに乗り、調布駅まで向かって行く。

 そうして調布駅から京王相模原線に乗って多摩方面に向かう。

 

 電車内はそれなりの人で溢れ、辛うじて座れる席があったので、周囲を確認してから俺は席に着いた。

 

(ふぅ〜何とか席に着けて良かった…これで暫くは大丈夫かな)

 

 俺はスマホを取り、画面を見るとLI◯Eメッセージが来ていた。

発信者を見ると《天宮さん》からであり、俺は内心少し興奮しながらも返信をした。

 

 ――いよっしゃ!天宮さんと朝からメッセージで話せたぞ!

 

 と、していた時だった。

 

「あれ?こんな所で偶然だな?」

「マジそれ。やっほー」

「はい?」

 

 其処には美男美女の遠坂樹と望月眞希が電車に乗って来ていた。

 

「……ま、マジで偶然だね?二人はこっちの電車なんだ?」

「おう!そう言うお前は反対側の路線じゃ無かったけ?」

「あー…中央線が人身事故で遅延が発生しててさ。迂回路でこっちに来た感じ」

 

 俺がそう言うと「遅延か〜それは大変だったな」と遠坂樹が言っていたが、女子の望月さんが居る事を思い出した俺は咄嗟に席を立って望月さんに席を譲ろうとしたのだが…

 

「え?良いって…さっきまで藤澤君が座っていたんだからさ。席を奪うような感じがして悪いって」

 

 と、言われてしまったので再度座り直して二人が前に立って、手に吊り革に掴まって話し掛けて来た。

 

「それでこっちに来るのが珍しい彰人に聞きたい事があってな?お前って…天宮さんの事が好きじゃん?」

「「はぁ!?」」

 

 こ、コイツ…何て事を望月さんの前で言ってくれたんだ!?

望月さんは天宮さんガチ恋勢だから敵に回したら容赦が無い!?

 

「へ、へぇ…やっぱりあんたもいよりっちの事をそんな目で見てたんだ…へぇ〜」

「あ、あの望月さん!違くは無いけど…天宮さんにはもっと望月さんみたいに素敵な人が似合うと思っているんです!!ですから勘違いだけはして欲しく無いって言うか!」

 

 俺が焦って色々言ってしまったが、望月さんは俺の言葉を聞いて意外と思ったのか、「へぇ〜」と興味深そうに聞いて来た。

 

「それは何で?ウチがいよりっちと仲が良いから?それともウチがいよりっちの事を本気で好きで狙ってるのを感じたから?」

 

 望月さんの目が怖い…

此処で解答を間違えたら二度と相手して貰えなくなる気がする。

 

「そ、それは…二人の仲が凄く良くて見ているこっちまで気恥ずかしくなるぐらいには羨ましいと思ったからです!」

 

 と、俺が少し大声で言ってしまったのか周囲の目線が俺達に向けられてしまい、俺達は恥ずかしくなって少し黙ってしまった。

 

 ――周囲の方々、本当に申し訳御座いません…。

 

「へ、へぇ…飽くまでウチといよりっちの仲を取り持つんだ…」

「何すか…聞いて来たのはそっちだった癖に…」

「い、いやぁ…そうなんだ…周囲から見ると認めてくれるくらいには羨ましいんだって…つい思ってしまうと感情が複雑になって…」

 

 何だこの人。普段は気が強そうに見えてデレると可愛いな…

 

「……話のきっかけを作った俺が言うのもアレなんだけどさ。何か悪いな…」

「……いや、もう良いよ。周囲にバレてしまった方が逆に清々して来たわ」

「……う、うん。何かウチもごめん」

 

 と、遠坂樹の悪ノリから始まった一連の下りは全員が謝罪し合う事で終わり、暫く三人全員が黙ってしまった。

 

「……まあさ。この際だから聞くけど。樹も天宮さんの事を好きとか思ってないのか?」

「あ、それはウチも思った。樹?あんたはいよりっちの事をどう思っているのさ?」

 

 俺と望月さんは共通の話題を見つけ、視線で頷き合うと遠坂樹に問い糺した。

 

「な、何で二人して俺にそんな事を聞いて来るんだ…?べ、別に俺は関係無いだろ…」

「「いや、天宮さんの事を好きかどうかを聞くまでは絶対に逃しはさせない!!」」

 

 俺と望月さんは遠坂樹に圧を掛け、絶対に聞かせてやると思って手足をそれぞれ捕まえ、逃げさせなくした。

 それを見た遠坂樹は俺と望月さんのにっこりとした表情を見て恐怖を覚え、逃げようとしたが逃げられなかった。

 

「「さあ、お前の本音を聞かせろ」」

「ひ、ひぃ……か、可愛いとは思ってるけど…ライクかラブかと言われると正直…分からないのが本音です」

「「へぇ〜」」

「な、何だよ…もう良いだろ!俺は言ったぞ!!」

 

 絶対にまだ秘密にしている事があるのは何と無く分かった…が、これ以上は少し可哀想なので今はこの辺にしてあげた。

 

「全く怖かったぞお前ら…」

「「まあ、今はこの辺にしといてあげる」」

「息がぴったりだなお前ら…」

 

 と、遠坂樹を弄った所で降りる駅に着いたので、俺達は駅のホームに降り、そのまま改札を潜って聖嶺學園へと向かった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

〜1年A組side〜

 

 ほぼ同時刻…

既に教室に居た1年A組の神楽坂雅紀はスマホゲームの東方プロで今日のガチャを引き、神引きだった事で表情がニヤついていた。

 

 ――ふ、ふふ…漸く出てくれたぞ!?

 

「よお、委員長おはよう!」

「やあ、おはよう葉山君」

 

 クラスの中心人物である「王子様」こと葉山颯吾君。

やっぱりイギリスと日本人のハーフである為、整った容姿に明るい性格の前には誰であろうと惹かれるんだろうなと感じた。

 まあ、かく言う俺も彼のお陰で周囲に馴染めているから助けられている所はあるんだけどね。

 

「あ、そう言えば委員長。今日だっけ例の勉強会って」

「そうだね。遠坂君の話によると今日の放課後に1年C組に集合するって話らしいし」

「分かった。じゃあその時になったら一緒に行こうぜ!」

「了解しましたよ。王子様」

 

 俺は葉山君と話をしつつ、ふとある事を思った。

 

 ――そう言えば葉山君にガチャを引かせたらどうなるんだろう。

 

 と、気になった俺は葉山君にお願いをして見た。

 

「あ、葉山君。もし良ければゲームのガチャを引いてくれない?」

「おん?良いよ!ガチャを引けば良いんだね!」

 

 そう言ってガチャを引いた葉山君――

 さあ、果たして何が出て来るって……はぁ!?

 

「SSSランクじゃねぇか!?」

「え?僕、何かしちゃった?」

 

 いや、某なろう系主人公じゃないんよ。

……にしても葉山君、君って豪運の持ち主だったんだね…。

 

 それに対して俺は昨日の270連目しても出て来ず。

葉山君が引いたら一発で出て来るなんて…

 

 俺は葉山君の何かに負けた気がしたのだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

〜遠坂樹side〜

 

 やあやあ、いっ君さんだゾ。

朝から色々とあったが、漸く落ち着けて教室にいるぞい。

 

「……よお、おはよ」

「おはようサンクス!」

「……今日も朝から元気だな」

 

 教室に居た朔夜と挨拶を交わし、俺は廣仁の元に飛び込んで行くが、廣仁は俺が近付いた事に気付くと自衛の構えを見せた。

 

「な、何でだ!?俺は抱き着こうとしただけじゃないか!?」

「は、恥ずかしいから今は辞めて…ね?」

 

 気恥ずかしそうに俯く廣仁を見て俺は興奮しそうになったが、周囲の目があるので我慢して普通に挨拶を交わした。

 周囲からは「アイツって我慢が出来たんだ」って言う視線を感じたが、失礼だな?俺だって我慢ぐらいは出来るゾ。

 

「他の奴も言ってた通りだが、本当に元気だけはあるよなお前」

「元気と明るさがいっ君さんの取り柄だからな!」

 

 だって元気が無ければ明るくも成れないし、暗いままだからな。

それなら明るく元気な方が何より良いだろう?

 

「あーそれで朔夜に廣仁。今日の放課後なんだが――」

「……了解した」「うん、分かった」

 

 俺の話を聞いた二人は頷いて肯定してくれた。

ふぅ…これなら問題無く放課後になったら行けるな。

 

 では、放課後まで特に無ければ――カァァット!!

 

 

 

 ――キング・クリムゾンッ!!

 

 

 

〜放課後〜

 

 さて、放課後になったし、少し待ったら全員来るかな?

 

「……それで何と無く予想は出来てるが、誰が来るんだ?そろそろ教えて貰っても良いだろ」

「ハハッ!一度会った事はある人達だから心配しなくても良いぞ。それにほら、あちらさんも来たようだしな?」

 

 俺が視線を向けた方向に朔夜達が顔を向けた先。

其処には帰りのホールルームが終わったばかりの1年B組が終了して女性陣が教室に入って来た。

 

「失礼しまーす。どもども何時も樹がお世話になってます」

「え…えと初めまして…今日は宜しくお願い致します」

「「「「「宜しく」」」」」

 

 そして最後に1年A組の神楽坂雅紀達がやって来た。

 

「おお!皆揃ってるな!」

「どうも…お待たせしてすいません…」

 

 俺が「良いって事よ」と言い、全員が揃った事を確認する。

すると俺は今度こそ「ええ〜では自己紹介の時間とする」と言うとそれぞれが順番に自己紹介をし合った。

 

「じゃあ先ずは俺から行くか!全員の共通の友達である遠坂樹だ!今日の勉強会は仲良く行こうぜ!んじゃ宜しく!」

 

 俺の次に1年C組の面々が続けて言った。

 

「……俺は1年C組の東雲朔夜。今日は宜しく」

「えっとボクは草薙廣仁です。今日は宜しくお願い致します!」

「どーも。藤澤彰人です。宜しく頼むっす」

 

 パチパチパチパチ…

 

「んじゃ次はウチらが行かせて貰うわ〜。ウチは1年B組の望月眞希でぇ〜す。マッキーとかって呼んでくれて良いからね?」

「えーえっと!私は1年B組の天宮いよりです。本日はこのような機会を頂きまして有り難う御座います。それと今日は宜しくお願い致します」

 

 ギャル系の望月眞希と大人しい系の天宮さんが言った事で男性陣は「希少な女性陣だ…」と言う視線を感じた気がする。

 

「では1年A組の神楽坂雅紀です。宜しくお願いします」

「同じく1年A組の葉山颯吾だよ!イギリス人の母親と日本人の父親と間に生まれたから向こうだとオスカー・トンプソンと名乗っているよ。宜しくね」

 

 そう言って全員が自己紹介が済んだので、俺が司会を務める。

 

「よし、それじゃあファミレスに行こうか」

 

 そうして俺達は付近のファミレスに向かう事となった。

 

〜移動中〜

 

 付近にあるファミレスに入った俺達は四人ずつに分かれた。

俺・廣仁・眞希・天宮さんと、朔夜・彰人・葉山・神楽坂と言った感じに二つの席に分かれ、注文をしながら勉強会を始めた。

 基本的に上位クラスのA・B組が下のC組を教える感じになる。

 

「あのすいません…英語のこの部分なんですけど」

「あ、はい。此処はですね…」

 

 廣仁は天宮さんに教わり、俺と眞希は可愛い生物達を満面の笑みで見守りながら運ばれて来たポテトなどを食べ、教え合った。

 

「つ〜か、樹の場合は数学は出来るけど文系になったら難しく考え過ぎちゃって駄目になるのよね〜」

「し、仕方ないだろ…どの科目だって得意不得意はあるんだから。寧ろ努力している分だけ褒めて欲しいものだな!例えばほら!此処とか出来てるだろ!」

「はいはい…えっと……うん。やり直し」

 

 俺は100%正解だと思った国語の問題が間違えていて、眞希によってはやり直しを言われた。

 な、何だと…この問題の何処が違うと言うのだ…!?

 

 と、俺はふと隣のA組とC組の方が気になって視線を向けると、皆でポテトを分けて食べていた。

 

「……まあ、勉強ばかりしても気分が良くないとな」

「そうそう。向こうはしっかり勉強会をしてるけどこっちは食事メインでおまけ程度に勉強会を兼ねるぐらいが良いんだよ」

 

 そんな朔夜と彰人の様子に葉山達は笑いつつ、同じく注文した品を食べながら、時折勉強を教え合っていた。

 

「それでさ〜?此処の問題ってどうやって覚えたら良い?」

「えっとイギリスの歴史が絡んでるから…此処はだね」

 

 彰人と葉山の幼馴染コンビは仲良く勉強を教え合い、朔夜と神楽坂雅紀は静かに教え合っているのが見えた。

 

「ちょっと余所見し過ぎじゃない〜?」

「おっと悪い悪い。隣が気になったものでな」

 

 ……っと此処でジュースを飲み切ってしまったので、ドリンクバーに少し行って来るか。

 

「廣仁。悪い少しドリンクバーに行って来るわ」

「あ、うん。分かった」

 

 俺は廣仁から席を移動して貰い、通路側に出るとそのままドリンクバーに移動して、コーラを選択してドリンクが注がれるのを待つ。

 

 すると、朔夜がドリンクバーに来てお茶を選択していた。

 

「あれ?ジュースとかにしなくて良かったのか?」

「……今はお茶の気分でな。そっちはどうだ?」

「理系は分かるが、文系などになるとさっぱり分からんわ」

 

 朔夜が「まあ、お前ならそうだろうな」と言われた。

実は朔夜には度々勉強を見て貰っているが、彼はどの教科も得意も不得意も無い所謂オールラウンダーなタイプで、ある程度の勉強は分かりやすく教えて貰っている。

 特に文系は俺の課題であるので、良く見て貰っているのだが、いつも何故か国語などで胸を張って答えた問題が間違えで、朔夜が頭を抱えてしまった事もあるので、このような評価であったのだ。

 

「……まあ、でも上のクラスの人達から教わるのもあったな。俺がケアレスミスした所を分かりやすく指摘してくれたりくれてな。流石はA組なだけはあるわ」

「それな。マジで有能な人達と友達になれて良かったと思うわ」

 

 基本的に聖嶺學園は各生徒の総合評価を基準に振り分けられている訳だが、どのクラスにも優秀な人と馬鹿な人は何処にもいる。

 そんな中で優秀な人達と友達になれる可能性はそれなりだったが運良く有能で良い人達と出会えて俺は恵まれている方だなと実感した。

 

「まあ、取り敢えずもどって定期試験に備えないとな」

「……もう直ぐだしな。はぁ〜早く終わってくれないものか」

 

 お互いに「それな」と言い合って元の座席に座り直した。

 

「さぁ〜て此処から本気を出して頭の中に習得してやらぁ!」

「うん、一緒に頑張ろうね!」

 

 と、隣に座る廣仁に言われた俺は本気を出すのだった。

 

 

 

※ ※ ※ ※ ※

 

 

 

〜東雲朔夜side〜

 

 さて、座席に戻った俺は彰人と共にファミレスのメニューにあるハンバーグを注文しつつ、勉強を再開する。

 

 ……えっと此処の問題ってどう解くんだ?

 

 俺が首を傾げた事に気付いた神楽坂雅紀は「どうしたの?」と聞いて来てくれたので、素直に分からない所を質問した。

 

「……此処の問題が分からなくて」

「あー世界史ね。此処の大航海時代はね――」

 

 そう言って分からなかった所をすらすらと分かりやすく説明をしてくれたが、どうして同じ人間なのにこうも頭の出来が違うんだろうと思ってしまった。

 

「……成る程。海賊と国家間の問題って訳か」

「そんな感じだね。それで此処と彼処が現代に繋がる――」

 

 そうして神楽坂先生による世界史の授業が始まったが…

少し長くなるので省くが、様々な時代背景とかの要所を押さえてくれた事で少しずつ解き易くなって来た。

 

「……ほう。分かり易くて助かる」

「俺なんてまだまだですよ…常に向上し続ける必要がある訳で」

「……何故、そんなに勉強をし続けたいと思えるんだ?」

 

 これは俺の素直な疑問だった。

何故、学年主席と言われる彼が此処まで勉強をし続けられるのか。

 

「うーん…簡単に言ってしまうと“好き”でしてるからですかね?」

「……好きだから?」

「ええ。教師から強制でされる授業より、その後の復習で自分なりの方法で覚えるのに快感を覚えてしまうと言うか…様々な知識がちゃんと頭の中に入って来た時の満足感に満たされたいからみたいな感じですかね。少し変な事を言っている自覚はありますが…」

 

 ははっと苦笑した神楽坂雅紀を見て俺はそんな考え方の人間も居るんだなと感じた。

 とてもじゃないが、俺には理解し難い事を彼は「満足する為」にやっているんだからある意味で凄い人間なんだかと感じた。

 

「まあ、後は趣味でしている歴史モノのゲームとかが好きなので、その舞台背景を勉強する際にも使えますからね」

「……何て言うか羨ましいな。何かに熱中出来る人ってのは」

「まあ、俺に合ったのがそれな訳だったのでね。東雲君も何かに熱中出来るものがあれば分かってくれるかも知れませんね」

 

 ――俺にも果たして“何か”に熱中する事はあるのだろうか。

 

 俺は一瞬、そんな事を考えつつも意識を現実に戻す。

……俺の事なんて後で良い。今はこっちの事を集中しないと。

 

  店内には店の音楽や人々の声などが響き、その一角でシャーペンでノートを刻む音が聞こえて来るだけだったが、暫くすると注文したハンバーグが来たので俺は一時中断して食べる事にした。

 

 ――これは旨いな。

 

 歯応えのあるハンバーグと、口の中いっぱいに濃厚な肉汁が広がって美味しい。

 

 俺は美味しいハンバーグが食べられた事に幸せを感じ、満面の笑みを浮かべながら食べるのだった。

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