――アレはいつの日の事だったか。
母さんと父さん、妹の咲希と一緒に何処かに出掛けた時だったか。
『母さん、父さん。今日は何処に出掛けるの!?』
『ふふっ。それは着いてからのお楽しみよ』
『ハハッ。まあ、着くまでの間色々考えておいたら良いんじゃないのか?』
俺の質問に微笑みながらはぐらかし、車の運転をする父親。
助手席に座る母親が後ろに振り返り、幼い咲希と俺を見て微笑む。
そんなありきたりな幸せな家族の一時だった。
『ねえねぇお兄ちゃん!一緒にゲームしよう!』
『ゲーム?何するの?』
『ええっと…◯リオカート!』
俺と咲希は3DSを開いてマ◯オカートで対戦して遊んだ。
ステージはレインボーロードでかなり高難易度の場所だった。
『咲希!何処からでも掛かって来い!』
『ふふ〜ん!なら卑怯な手を使ってでもお兄ちゃんをぶっ倒す!』
『あら〜咲希ちゃん?そんな物騒な言葉を何処で覚えたの?』
俺と咲希の会話にお母さんが時折、突っ込んで来たが、特に気にせずに対戦をし、結果的に俺が1位で咲希が2位だった。
『もうお兄ちゃん強過ぎるよ〜!』
『ふはは!妹が兄にそう簡単に勝てると思うなよ?』
『はぁ!?お兄ちゃんの癖に生意気なんですけど!?』
お互いに口喧嘩をし、時に手を出したりしていたが…
『二人共!醜い喧嘩は良しなさい!』
と、言う母さんの一言で俺と咲希は静かになった。
『全く…お母さんは二人は兄妹なのだから仲良くして欲しいの。喧嘩ばっかりなのならゲームを取り上げますよ?』
『『そ、それだけは嫌だ!!』』
『なら仲良く出来る?』
『『は、はい…』』
お母さんの怒っている時の笑顔は目が笑っていないから怖い。
それにゲームを取り上げられるのだけは嫌だった俺達は反省して仲良くゲームを再開させるのだった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
……目を覚ました俺は懐かしい夢を見ていたと感じた。
あれは確か小学生時代の頃の夢だっただろうか。
あの時は夢の国に行く事になって家族全員で行ける楽しい日だった覚えがある。
遊園地に行ってからはジェットコースターに乗って家族全員で、つい叫んでしまったり、お化け屋敷で突然襲って来る化け物に俺と咲希が泣き喚いてしまった事などがあったよなと思い出した。
――嗚呼、全てが懐かしいな。
だからこそ、出来れば思い出したくても思い出したくないのだ。
あの時は毎日が光り輝いて見え、何もかもが楽しかった日々だったから。
それに比べて今の俺は昔と何が違って、成長したのだろうか…
「……はぁ。全てが馬鹿馬鹿しい何で“あの時”に全てが――」
と、俺が感情的になりそうな時だった。
「お兄ちゃん〜」と言う声が扉越しに聞こえた。
「今日は起きるの遅くない?もう朝御飯の時間だけど…」
「……え?あ!?済まん。今行くから!」
「もうしっかりしてよ〜」
そう言って咲希の足音が下に遠ざかって行くのを感じ、俺は急いで準備をしてリビングに向かった。
俺は咲希と一緒に朝食を食べ、色々と準備をし、私服姿で玄関に集合する事となった。
「……今日も咲希は似合ってるぞ」
「えぇ〜?そうかなぁ〜でも有り難う♪」
俺と咲希の私服は至って落ち着いた感じの服装にしている。
「……そんじゃ行くか」
「うん♪お母さんに会いに行こう!」
こうして俺と咲希は少し行った先にある寺に向かう事にした。
道中は京王バスを利用し、最寄り駅から何駅かを京王線で往復。
そうして少し歩いた先にある寺に着き、お寺の本堂や本尊に一礼し、墓地に着いたらお墓を手桶で水を汲み、清掃する。
次にお花・お線香・お供え物をしてその後、墓石に水をかけ、合掌して母さんの冥福を祈った。
それから俺と咲希は母さんの墓石に挨拶をした。
「……母さん。俺と咲希はそれぞれ上手くやってるよ」
「……母さん。あのね、私はちゃんとお兄ちゃんとやってるから心配しないで大丈夫だよ」
俺達は近況報告をし、お墓参りが終わるとお供え物は持ち帰り、お寺の指示に従って後片付けをした。
「……さて、この後はどうする?俺は少し寄りたい所があるから出掛けて来るけど」
「う〜ん。私も暇だし、お兄ちゃんに付いて行こっと」
「……そうか」
そうして俺達は暫く電車に揺られ、新宿に到着し、更に複雑な地下通路を通って山手線の電車に乗り、秋葉原へと向かった。
〜秋葉原〜
秋葉原に到着した俺達は様々な店に入り、主にアニメグッズなどを見て回った。
「わぁ〜!!見てお兄ちゃん!!おうじょシリーズだよ!」
「……あー若い女性の層で人気な恋愛作品だったけ」
「そうそう!わぁ〜推しの◯◯様のグッズまであるよぉ〜!!」
「うひょぉ〜!」と言う我が妹の奇声が目立ち、恥ずかしいので咲希を連れて色々他にも見て回った。
「……やはり『俺の青春は間違っている』シリーズは面白いな」
「お兄ちゃんの好きなキャラって後輩キャラだったけ?」
「……ああ。一色は俺達の嫁である。異論は認める」
「俺“達”ってファンを総称してるんだ…」
だって一人だけより皆のアイドル的な意味で言った方が良いじゃんか。
あ、同担拒否の方は別です。俺は皆と共有したい派なんで。
その後、俺達はオタクの理解が広い妹様と共にライトノベルや様々なゲームを見て回り、気付けば昼間になっていた。
「……何処かで昼飯でも食べるか」
「う〜ん…出来れば安く済む所にしたいよねー」
我が妹様のリクエストを受けてなるべく安く済むような店をスマホで調べた結果、駅から近い定食メニューを提供している店があると言う事でそちらに向かう事にした。
メニューは焼魚定食で、咲希も同じメニューで注文した。
少しするとライス・味噌汁・香の物・出汁巻玉子が運ばれて来た。
鯖の味噌煮は、平皿に煮汁かかった感じで出てくるかと思ったら丼サイズの器にゴロッとあり、鯖はそこそこ大きかった。
大根はオバケサイズ、ゆで卵もうずらに見える。
鯖は出汁がしっかり染みていて、骨はしっかり処理されていて食べやすい。
大根、ゆで卵は、それ以上に出汁がしっかり染み込み、しゅん出て美味しい。味付けバッチリ食べ応えあり、お腹いっぱいである。
――満足度高めのランチだった。
「ふぅ…美味しかった」
「意外と旨かったね」
俺達は店を後にし、駅付近に戻ると意外な人物と出会った。
「あれ?もしかして…東雲君では?」
「……は?……ってお前は」
其処には最近勉強会をし合った仲である神楽坂雅紀が居た。
「……偶然だな」
「本当にそうだね。……所で其方にいるのは妹さんかな?」
「……ああ。妹の咲希だ。咲希、この人は學園の知り合いだ」
俺が紹介をすると、咲希は目を輝かせて「この人がお兄ちゃんの友達なの!?」と聞いて来た。
「友達だと僕は思っていますけどね…それで俺はお兄さんと仲良くさせて貰っている神楽坂雅紀です。宜しくね」
「お兄ちゃんがお世話になっております。妹の咲希です!宜しくお願い致します!」
ビシッと咲希は自己紹介するもんだから、俺は少し恥ずかしそうになるも、咲希が主導で神楽坂雅紀と話し込んでいた。
「それで神楽坂さんは秋葉原に何か買い物か何かですか!」
「ええっと…そうだね。少し趣味で東方プロをしてるからそれのグッズを買いに来た感じかな」
「へぇ〜東方プロって若い男性の層で人気ですもんね」
俺抜きで話すもんだがら、特に咲希が変な事を言わないかヒヤヒヤしていたが特に問題は無く会話は終了したようだ。
「……悪いな。咲希が迷惑掛けたようで」
「いやいや。寧ろこっちが休日なのに兄妹の時間を邪魔して申し訳無いって言うか…」
まあ、たまにはこうやって知り合いと出会って話すのも悪くは無いかなと内心で思った俺であった。
※ ※ ※ ※ ※
さて、日曜日の今日は樹と廣仁と彰人の四人で遊ぶ事になっているが、天候は生憎の小雨であった。
「……生憎の天候だな」
「だよなぁ〜」
と、隣に居るのは私服姿の遠坂樹である。
白のTシャツと紺色の薄手のシャツを着ており、下は黒色のズボンを履いていた。
「後は廣仁だけだけど電車が遅れてるのか遅いなぁ〜」
「……仕方無いだろ。人身事故の影響で遅れてるんだから」
「それは分かってるんだけどさ?何か俺が電車を使う度に人身事故が相次いで起こってるから呪われてるじゃ無いかって思うんだよ」
「……それは……分からんな」
と、オカルトチックな事に恐怖を覚えているのは彰人である。
さて、そんな事を言っている間にも廣仁から連絡が来て『今着いたから降りるね』と着信があったのでそろそろ来る筈だろう。
すると――
「皆!お待たせしてごめん!」
そう言いながら人混みの中から現れたのは廣仁だった。
黒のバケットハットを被り、白のTシャツの上にジャケットを羽織って、首元には十字架模様のネックレスを首からぶら下げ、下はデニム素材のズボンのファッションで現れた。
「おお〜!?中々似合ってるぞ廣仁!」
「えへへ〜褒められちゃった!」
俺と彰人も普段とは違った廣仁を見れて変な扉を開けそうになったが、辛うじて正気を保つ事で開けずに済んだ。
――にしても可愛いなコイツ。
「うわぉ…廣仁。格好良くて可愛い感じじゃん」
「え?何で?こう見えてもお姉ちゃんにコーデして貰ったから可愛くは無いと思うんだけど?」
コテっと首を傾げる廣仁だったが、その顔のビジュアルの良さでカッコいいと可愛いが両立しちゃってるんだよなぁ〜と思った。
「これがカッコ可愛いと言う奴か…男の娘って最高だぜ!」
「ちょ!?ちょっと!?他の人達も見ているんだからさ!!」
廣仁は周囲の目線が気になって恥ずかしそうに樹の口元を手で押さえているが、そんな慌てた姿に周囲は「可愛い〜」と癒されたような表情になっていた。
「ぐへへぇ〜……はっ!?こんな事をしているんじゃなかった!?急いで鬼◯の刃を観に行かなくては!!」
「……そうだな。なるべく早く行こうぜ」
こうして四人は映画を見に映画館へと向かうのだった。
〜移動中〜
映画館の受付でチケットを購入した俺達は列に並んで中に入り、中央から少し右側の座席にそれぞれ座った。
「……確か映画の前にアニメでラスボスが本拠点を襲撃した直後の話で良いんだっけか?」
「うん!個人的にはそれから敵である鬼達の過去がどう明かされるかが気になってる所なんだよね!」
俺と廣仁がそう話す横で樹は彰人と何か話していた。
少し其方に意識を割く事にしよう。
「ぐへへ…廣仁ちゃんは今日も随分と可愛いなぁ〜」
「うわぁ…いつまで引き摺ってるんだよお前…気色悪りぃぞ」
……うん。マジでどうでも良い会話だったね()
暫く俺達はコーラを飲んだり、購入したポップコーンを食べたりしながら時間を潰していると、5分程で上映が始まった。
「わぁ〜!始まるよ」小声
「……さてさて。どんな始まり方になるのやら」
そうして始まった映画だったが、主人公達が敵の根城に落とされた所から始まり、ヒロインや様々な主役級の人間達が如何にかして落下を止め、根城の鬼達と対峙する描写が映し出されていた。
(……成る程。個人的に雑魚敵達も下弦程度の実力を宿しているのは原作を読んで知ってるからどんな感じに出るかと思ったが……。見た感じ百鬼夜行のまんまだな)
俺は出て来る雑魚敵達がどのように描写されるのかが密かに気になっていたので、恐竜みたいな鬼だったり、人型では無い化け物が相次いで出て来るので少し楽しかった。
多分見る所が違うとは思うが、個人的には原作を読んでいる人の意外な楽しみ方の一つなのではないかと思った。
それから上弦の鬼と言う他作品で言う所の敵組織の幹部クラスの敵達が登場し、主要人物達と対峙する描写が映し出され、激闘を繰り広げていた。
(……相変わらず力の入れどころが凄まじいようで)
それから3時間程(体感時間的には満足する程度)の時間を映画に集中し、気になる所で映画は終了したのだった。
(……上弦のトップがどう戦闘描写をするのかが気になる所だな)
映画は終了し、周囲は敵幹部の作中トップクラスで悲劇的な過去を見せられた事で号泣している人達で溢れ、俺達の中でも俺や彰人は原作を知っているので少し貰い泣きを受けたが、それ以上に樹と廣仁の泣きようは凄まじかった。
「アイツ…あんな過去を持っているなんて…ひぐっ……」
「せめて幸せになってくれたら…救いはあったのに…」
そんな二人を見て、俺と彰人は苦笑するのだった。
※ ※ ※ ※ ※
〜遠坂樹side〜
映画を見終わり、昼食をマックスドナルドで済ませた俺達。
これから何をするか話し合っていた。
「これからどうする?」
俺が皆に聞くと朔夜がスマホを取り出し、何かを調べていた。
画面を横から見させて貰うと天気アプリのこの後の予報だった。
「……見ての通り夕方からは天候も悪化するようだし、少し遊んだたら早めに帰る感じが良さそうでは?」
「そうだね…ボクとしてもそれが良いと思う」
「ん〜特に反論はなぁ〜し。後はいっ君さんの判断に任せる」
そう言われたので、俺も首を頷いた。
「それじゃあ少し離れた所にゲームセンターがあるから行かね?」
「「「オッケー」」」
そう言う訳で俺達はゲームセンターで暫く遊ぶ事にした。
今回こそはカッコ可愛い廣仁の前で良い所を見せてやらなければ!
俺は弱いアームで有名な台の前に来るとチャレンジした。
……………………。
そうして弱過ぎるアームにイラつきながら、新たに5000円目を迎えようとした所で、流石に廣仁に止められた。
「これ以上は駄目だって!?樹君の財布が終わっちゃうよ!!」
「いやまだだ!?まだ終わらんよ!!俺のターンは…」
「……樹。廣仁の顔を見ろ」
「え?」
俺は廣仁の顔を向くと今にも泣きそうな廣仁がいた。
なっ!?一体誰が廣仁を泣かせたんだ!?
「いっ君さん…これ以上は無理しないで…ね?」
「うひぃ!?ひゃひゃい!分かりました!」
俺がこれ以上の無謀な戦いを諦めた事で廣仁は朔夜と目を合わせるとテヘッと舌を出していた。
なっ!?この廣仁!まさか俺を騙していたのか!?……まあ、可愛良いから許しちゃう!(おい)
そんなこんなでゲームセンターを暫く遊んだ俺達は少し強い雨が降る中、14半と言う中途半端な時間帯にどうするか考えていた時だった。
バタッと言う音と共に誰かが倒れた音が背後から聞こえた。
俺達が振り返ると――痙攣して倒れている東雲朔夜の姿があった。
「「「朔夜っ!?」」」
俺達は急いで駆け寄った所、目が白く全身が痙攣していた。
俺と廣仁は未知の体験にどうすれば良いのか分からず、焦っていた時だった。
突然、彰人が言った。
「取り敢えず朔夜の顔などに雨が当たらないようにしておけ!俺は近くの交番に行って警察官を呼んでくるから誰か救急車を呼べ!」
「「わ、分かった!!」」
そう言って彰人は付近の交番へと傘も刺さずに走って行った。
残った俺達は言われた通り、朔夜に雨が当たらないように傘の中に彼が入るように入れ、俺は救急車を呼んだ。
「すいません!救急車をお願いします!――はい!友達が突然痙攣を起こして倒れてしまって…えっと場所はですね…」
俺は必要な事を伝え、救急車の手配を済ませた。
暫くすると彰人が警察官を連れて来たようで、詳しい事情聴取を受けるように言われ、聞かれた事を素直に答えて行った。
ふと俺が周囲に意識を向けると野次馬共が興味深くスマホを此方に向けていたり、我先に見ようとする人達しか居なかった。
……本当に他人の事ならどうでも良いんだなコイツら。
「詳しい事情は分かりました。では連れ添いの方をお一人救急車に同行を願いたいのですが…」
「それなら俺が行きます!」
俺は咄嗟に名乗り上げた。
恐らくこの後、救急車に運ばれて少し離れた病院に行くだろうし、場合によっては家族の人や色んな人に事情を聞かれるかも知れないから俺が側に居た方が良いだろう。
「廣仁と彰人は悪いが、此処で解散にする。
――後の事は俺に任せろ!」
「う、うん。お願い」
「…済まないが頼んだ」
そう言った後、俺は暫くして来た救急車の同伴者と言う形で病院へと向かうのだった。
――どうか神様。朔夜を助けて下さい!!