序章 7月の聖嶺學園
真夏が本格的に迫ろうとしていた7月のある日。
俺達は今日も教室で眠気が出そうな授業を聞きつつ、考え事をしていた。
(……眠っいなぁ〜)
俺こといっ君さんは机の上でノートに落書きをする事で眠気を辛うじて敗北せず、耐え凌いでいた。
因みに落書きで書いているのは自分の妄想世界で戦う自分を主役とした謎の物語であった。
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【秋津皇國記】
俺の名前は
この次元世界《
この世界には嘗て神柱と人類が共存していたが、軈て人の時代が到来すると、神々は消失し、人類が世界を支配していた。
――フランス共和國。
自由を求め、王政を転覆した民主主義の國家。
三色旗翻るこの國では、数多の犠牲の上に仮初の平和を築き上げていた。
――アルビオン聯合王國。
女王陛下が頂点に君臨し、数多の貴族が支配する國家。
七つの海を支配する大英帝國は今、栄光の輝きを失いかけている。
――神聖イタリア王國。
嘗て神聖ローマ帝國として繁栄を築いた歴史ある國家。
我等が海を欲さんとする帝國は、遂にその一歩を踏み締めた。
――ヴィンランド合衆國。
アルビオン聯合王國から「自由」を勝ち取った國家。
自由の擁護者たるこの國は眠れる巨人として世界に君臨している。
――秋津洲皇國。
皇主陛下を国家元首とし、公家と武家が支配する海洋國家。
東洋唯一の帝國は明日を見ている、例え全てを犠牲にしてでも。
――ソヴィエト社会主義共和國聯邦。
ロマノフ王朝を打破し、指導者が民衆を導く國家。
理想への道は未だ遠く、世界開放の日を待っている。
――ゲルドニア聯邦帝國。
数多の國家を統一した帝政主義の國家。
永遠に死せるこの帝國は、千年王國の夢を見ている。
この十字が示すのはただ一つ、二度と凋落はせず。
七つの列強が犇めくこの終末世界で、救世主は現れるのか。
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前の歴史の授業で少しイメージが湧いたので書いていたが、予想より個人的には良いものが書けたと思える。
(いや〜何か世界史って数多の人達の築き上げた上で今があるって思うとカッコいいじゃん?特に帝國主義の時代とかって色々激動な時代なのは承知の上で、タイムリープで大正浪漫とか味わいたい。
まあ、徴兵制とかあるし、現代の方がまだマシな気がするが…)
結局、俺は歴史に憧れはあれど、今を生きる人間でしか無い。
後の時代の人間として、人間らしく生きて死にたいものだ。
「それで此処は――」
現在は古文の問題だが、少ししか分からないのでノートに書くだけ書いて後は聞いてしまおう。
△ △ △
「って感じで授業中に描いた訳だけど、どうよ?」
「……授業中に何を描いてるんだお前は」
昼休み──昼食を終えた俺達は自由時間を各々過ごしていた。
俺は東雲朔夜こと朔夜と草薙廣仁こと廣仁と教室で集まっていた。
「……まあ、少しカッコ良いとは思うが…」
「だろ?まあ、これは出だしの部分なだけで続くかは未定だが」
俺達がそう話している間、廣仁はスマホで何かを見ていた。
すると『可愛い〜』と呟いていたのが、気になり俺は廣仁の肩を優しく叩いて聞いてみた。
「何見てるんだ?」
「あ、これ?取り敢えず見てみてよ」
と、廣仁からスマホの画面を向けられ、動画を見てみた。
ティッシュ箱から勢い良くティッシュを掻き出すネッコ。それが飼い主に見られている事に気付いた途端にしれっと座って知らん顔をしていた。
「ふは!この太々しい感じが好きだわ」
「でしょ?私は何も知りません〜みたいな感じが」
なんて言い合いながら俺達は笑い合う。
そんな中、1年C組に聞き覚えのある声と共に誰かがやって来た。
廊下の方を見ると彰人の他に眞希と天宮さんが立っていた。
「樹〜ちょっと良い〜?」
「ん?眞希達か。済まん二人共!少し行って来る」
「おう。行って来い」「うん。行ってらっしゃい」
俺は二人に言ってから廊下に出ると、彰人・眞希・天宮さんの方に身体を向け、話し始める。
「それで何か要件か?」
「ああ。夏休みに何処か行かねえかって話でお前にも一応意見を聞いておきたいから呼び出したんだ」
「あー成る程。了解したわ」
そこから俺は彰人達から色々と夏休みに向けての事を聞き、俺の予定も照らし合わせる事である程度の日程が決まった。
「そんじゃ準備とかも必要だし、近々買いに行っちゃうか?」
「賛成〜ウチも水着だとかサイズが合うか心配だし〜」
「うん。私もそれで良いと思うよ」
「んじゃ、近々行っちゃうか〜笑」
そんな感じで俺達は昼休みを過ごしたのだった。
△ △ △
「なーんで水泳の授業が存在するんですかねー」
六校時目──更衣室の一角で水着に着替える彰人は言った。
そんな彰人に対し、俺は呆れた表情をしながらも言った。
「確かにいっ君さんも及ぶのは苦手だが、こんな蒸し暑い中でのプールで泳ぐ事自体は気持ちが良いし、何より何やかんや言ってお前も楽しむ癖に」
「……俺を子供のように言うのは辞めて頂きたい」
「え?実際にプール嫌いな子供だろ?」
「は?そう言うお前だって俺と同じ子供だろうが?」
「「……………」」
急に無言になって取っ組み合いになる俺達。
いつもは仲が良い俺達だが、付き合いが長くなってくるとこう言った感じに軽口を言い合えるのだが…今回は少しキレてしまった。
「……何、馬鹿な事をしてるんだお前ら」
「そうだよ!こんな所で喧嘩なんかしちゃ駄目だよ!」
呆れる朔夜。慌てて止めに入ろうとする廣仁。
そんな俺達を横目に同じく着替えていた1年E組の善積恭將は『何してるんだコイツら…』と呆れつつ、しかしそれ以上に期待するようにニヤニヤとしながら言った。
「馬鹿な事をしてないでさっさと着替えようぜ?着替えた先には――スク水姿の女子達が待っているんだから!」
善積恭將の言葉に同じ1年E組の連中は同調する。
「そうだぜ!大小様々なおっ◯いをスク水越しとは言え、見れるんだからな!」
「誰が一番おっぱ◯がデカいか競争しようぜ!」
そう言った前半クラスの野郎共は性欲を隠さず、股間に生えた息子達を大きくしながら意気揚々にしながら更衣室を出て行った。
「……俺達も馬鹿な事をしてないで着替えるか」
「……そうするか」
女友達を持つ俺達は複雑な気持ちになりつつ、さっさと着替えて更衣室を出て、屋内プールに出た。
するとほぼ同じタイミングで出て来た眞希と天宮さんと鉢合わせした。
「あれ?樹達じゃん」
「おう。同じタイミングで来たんだ――!?」
眞希に視線を移した俺は、思わず見入ってしまった。
プールに入るのだから当然の事だが、眞希達は既にスクール水着に着替えていた。
いつもは制服で見れない部分の、白くて綺麗な肌が惜しみなく晒され、思わず俺は目を奪われてしまう。
そんな俺の様子を見た天宮さんは俺の視線に気付き、恥ずかしがって持っていたバスタオルで身体を隠したのだが…
「樹〜?今何処を見ていたのかな〜?」
眞希はニヤニヤと言いながら上目遣いに俺を見つめて来た。
「は、はぁ!?何処って…お前達の顔を見ていたに決まってるだろう!?」
「へぇ〜?本当かなぁ〜?ウチの気の所為じゃ無かったら随分と下の方を見ていたような気がするんだけどなぁ〜?」
「な、そんな訳がねぇだろ!?」
俺は顔を赤くしながら反論した。
だが、そんな反論は眞希には効かなかった。
「ふぅ〜ん?それにしてはウチやいよりっちの胸だとか太腿に熱っぽい視線を感じた気がしたんだけどなぁ〜?」
「え、えっと…///」
眞希やニヤニヤと、天宮さんは恥ずかしがってバスタオルで身体を隠して俺を見つめて来る。
どうやら俺の嘘は既に見抜けられ、眞希は俺に何処を見ていたのか言わせたいようだった。
「ま、眞希!いっ君さんを意地悪するのにだって限度があると思います!」
俺は羞恥心の限界が訪れ、眞希を遠ざけようとしたのだが…
「あ」
「なっなぁ!?///」
払う仕草をした俺の手が、彼氏以外は絶対に触れては行けない領域──つまりは眞希の柔らかな胸に、触れてしまった。
眞希の推定Cカップは胸は俺の手によってムニュッと形を変えてしまった。
「「「「……………」」」」
その光景はその場にいた全員が目撃しており、沈黙がこの空間を支配した。
沈黙を破ったのは、顔を真っ赤にしてプルプルと震えていた眞希だった。
「〜〜〜っ!!こんの、ばっかぁ!!」
「ひげぶっ!?」
眞希の渾身の一撃が俺の腹部に炸裂し、そのまま俺は痛みから後ろに下がってしまうが、女子の肌に触れてしまった事で俺の股間にある息子が大きく反応した。
「「「………………」」」
完全に俺の息子が勃◯した。
それを見ていた俺・眞希・天宮さんの顔は今まで以上に真っ赤になった。
「……えーと…その…マジですいません…」
「……殴った事はごめん。だけど嫁に行けれなくなったんだけど…責任取ってよ」
「え、えっと…その…大きいね///」
俺は何も言えずに黙ってしまう。
まさか天宮さんがその気が無いとは言え、下ネタを言うとは思いもしなかった。
そして何も言えずにいると、背後からポンッと誰かが手を置く。
恐る恐る振り返ると──そこには近くで一部始終を見ていた女子達が素敵な笑みを浮かべていた。
「責任……取るよね?遠坂君?」
「ヒエッ!?」
笑みを浮かべながら異様な雰囲気を醸し出す女子達に迫られ、俺は暫く女性に恐怖を感じるのだった。
△ △ △
それから俺は眞希の胸の感触を思い出しながら、モゾモゾさせて息子の暴走をトイレで抑え、赤面しながら戻ると…
向こう側にいた眞希と目が合い、互いに目を逸らしてしまう。
……気まずい。
俺はふとその隣の天宮さんの方に視線を向けると…
小柄な体格に控えめな胸だがそれとなく主張する素晴らしいものが見え、思わず俺はまた視線を逸らした。
一体俺は何をやってるんだ!?彼女達は女友達なんだゾ!?
それをこの屋内プールを『嶺のプール』とイメージするなんて最悪過ぎるだろうが!?
俺はそんな事を思いつつ、体育教師の周々木の号令に招集されて列を成して待機する。
「よーし。全員揃っているな?今日から水泳の授業をする訳だが――」
そこから水泳の授業について色々説明が入り、俺達はバディを組んだり、準備体操をする訳だが…
ふと、背後にいる1年E組(前半クラス)の善積恭將の鍛えられた肉体を見て、俺は自分の体を見比べて愕然としてしまう。
やはり普通に鍛える俺と、陸上部で鍛え抜かれているアイツとでは筋肉が違い過ぎるのか…!
俺は善積恭將の肉体に目を奪われたが、今は授業中だった事を思い出すと視線を前に戻して準備体操をしっかりとする。
そうして準備体操を終え、再度バディの確認をした後に実際にプールの中に入って泳いだ訳なのだが…
「あわわわわわわわわ!?」
「遠坂!大丈夫か!」
俺はカナヅチで、ピ◯ミンのように溺れかけるのだった。
……俺って運動全般が如何やら駄目なようです。
〜閑話休題〜
「……遠坂。心配だから先生の元で授業を受けてくれ頼むから」
「ア、ハイ」
如何やら普段から先生に心配を掛けられ、水泳の授業に関しては割とマジで心配されてしまった俺は周々木の元で受ける事にした。
「先生。俺、カナヅチなんでまともに泳げませんよ?」
「取り敢えず先ずは水に慣れる所からだな。良いか?水に浮かぶ際に怖がってしまい、身体に余分な力が入って溺れてしまう訳だ。
だからその際に怖いかも知れないが、全身の力を抜くイメージをするんだ。そうすれば浮ける筈だ」
俺は周々木の説明をちゃんと聞き、こう言った。
「ヌくんですね!先生!」
「あ、ああ…イントネーションが違った気がするが気の所為か?」
「うっ!!で、出る!」
「……遠坂。ふざけているんじゃなく、ちゃんとしてくれ」
「ア、ハイ」
今度こそ俺はちゃんと意識を全集中させ、鬼◯の刃の水の呼吸をイメージし、辛うじて浮く事には成功した。
「や、やったぞ!俺は浮けたん…ぶくぶくぶく……」
それも束の間、俺は力を入れてしまって水の底に沈むのだった。
※この後、周々木が人工呼吸として口を付けたのだが、その際に俺が起き、目の前の光景を見て初めての