〜遠坂樹side〜
――8月7日。
俺達は渋谷駅のハチ公前で集合していた。
「やあ!少し待たせてしまったかな?」
本日の俺の格好はネイビーのポロシャツにベージュのテーパードチノ、黒の防水スニーカーと言ったシンプルだけど洗練されたもので来ていた。
「ううん!私達も比較的さっき来たばっかりだから大丈夫だよ!」
「まあ、女の子を待たせるよりかはまだ少しマシかな?」
天宮さんは透け感があるパフスリーブの真っ白いブラウスに、ライラックのフレアスカート、足元は涼しげなサンダルと言った姿でとても可愛らしかった。
そして眞希は白×水色のストライプ柄シャツワンピースに、クリア素材のショルダーバッグと言う爽やかな装いであった。
……因みに彰人はペールブルーのTシャツに、インディゴブルーのデニムジョガーパンツ。靴は白スニーカーで、黒のサコッシュを斜め掛けにしていた。
「よっす。そんじゃいっ君さんも来た事だし、行こっか!」
「おう」「うん」「りょ〜」
俺達は四人揃って駅を出て、少し雑談を交わす。
「ゲーセンに行くけど…何したい?」
彰人が俺達に聞いて来たので、俺は『リズムゲームとかしてみたい』と言ってみて、他に要望も無かったみたいで近くのゲームセンターに入って筐体の音ゲーで眞希と俺が対戦中したのだが…
「ちょっ眞希…お前マジかよ…流石に下手過ぎん?」
「う、うるさーい!!こっちは真剣に…って!?あ、またミスった!?今ウチに話しかけるなー!!」
眞希が下手くそ過ぎて余裕で勝てる件について。
いや、何か俺が煽ってやったら眞希が何をとち狂ったのか難易度『master』を選び、見事に死んでいました(笑)
……初心者が背伸びして高難易度をするもんじゃありません!
因みに天宮さんと彰人は後ろのベンチに座って眺めていた。
「いやぁ〜やってるねぇ〜」
「そうだねぇ〜」
彰人と天宮さんは呑気にそう言っていた。
俺達とえらい空気の差やな()
△ △ △
次にやって来たのは一階フロアを占めている沢山のプライスゲームの筐体と、プリントシール機のエリア。
俺達は空いているプリントシール機を適当に見繕って、その中に男女全員が入り、カーテンを閉めた。
「へぇ〜中ってこんな感じになってるんだな」
「まあ、男共ってこんな所には来ないよね〜」
眞希がパネルを操作し、全員の身体がぴったりとくっつき合うようにして──
『それでは一枚目、撮りま〜す。とっておきの決めポーズしてねっ!もう決まったかな?』
機械の間延びした音声に、俺は緊張していた。
「いつ撮るんだ!?今か!今なのか!?」
「タイミング良く来るから待ってなよ」
そうして俺達は、機械に言われた通りそれぞれの決めポーズを決めた訳だが…
「樹!あんたの緊張した顔でおっかしいって笑」
「う、うるせぇいやい」
俺達はそう言いつつ其々ペンを使い、沢山のプリント前の画像をデコったりした。
――意外と楽しいなこれ。
内心そう思ったいっ君さんなのであった。
※ ※ ※
〜東雲朔夜side〜
……どうも、東雲朔夜です。
8月10日。本日、俺は知り合いの善積恭將から『カラオケに行かね?あ、俺の友達を呼んでも大丈夫そう?』と色々と来たので、暇だし問題無いと送り、今日を迎えた訳だが…
「イエーイ!盛り上がってるか?」
「「「オーイエーイ!」」」
――完全に陽キャのカラオケ会場な件について。
「東雲ぇ〜?お前も盛り上がってるか〜?」
「……お、おう!」
「ハハッ!悪りぃな!こーゆー場は慣れないタイプだろ?」
「……まぁ。けど悪くは無いぞ」
俺がそう言うと善積恭將は『なら良かった。楽しんで行ってくれよ?』と言ってくれて、俺としても少し助かった。
「さあ、早速行くぜぇ!only my railgun!」
善積恭將はタブレットに曲を入力し、予約を入れるとマイクを手に握り締め、リズムに乗って歌い始める。
「放て!心に刻んだ夢を 未来さえ置き去りにして〜!」
善積恭將は大変気持ち良さそうに熱唱しながら、手を動かしながら更に勢い付ける。
「限界など知らない!意味無い!この
その先に遥かな想いを〜♪」
最初の所を歌い終え、直ぐに静かな感じに歌い出す善積恭將。
「歩いて来た〜この道を…振り返る事しか〜」
――あれ?普通にイケボなんですが…。
善積恭將が歌い終わった後に歌う俺とかどうしろと言うんだ…
「〜〜〜♪ 掴め!望むものなら残さず輝ける自分らしさで〜!
信じてるよ あの日の誓いを この瞳に光る涙 それさえも強さになるから〜♪」
そこまで歌い切った善積恭將はテンションを上げたのか、更に歌っていた。
…………………………。
さて、善積恭將が歌い終わり、何人かの順番の後に俺の順番となった訳で…
「……余り期待するなよ?」
「大丈夫だって!歌って楽しめれば何でもオーケーだしな!」
「「「気にするな!」」」
意外と良い人達なようで、俺は自分のボイスを気にしないようにしながら『リバイバル・ゼロ』を入力し、歌い出す。
「嗚呼 心がカラカラだって知った くらくら廻りルールスペース〜♪」
「「「「“え“!?普通にイケボ!?」」」」
……?何か言っていたが良く聞こえないな。
まあ、良い。俺は歌いたいように歌うだけだ。
「クルクルと廻る記憶その愛の証明してた〜♪善も悪もままならない程、忘れていた〜」
「普通にカッケェし…」
……やっぱりこの曲はカッコ良くて俺は好きだな。
「……ゆらゆらと揺れる愛情解剖『show me』dirty〜♪」
「コイツが歌う『リバイバル・ゼロ』だったか?最高じゃねぇか」
〜〜〜♪イイねぇ…最高に乗って来たわ!
「確かめたそれは愛癌治療抗癌剤だ〜♪
――過ぎる程淀む灰のまま排他衝動 さあ?なんてさ赫纏う」
曲が終わると同時に善積恭將達から盛大な拍手をされた。
……え?普通に歌っていただけなんだが……?
「ブラボー!超絶カッケェよお前!」
「……お、おう。褒めて頂いて光栄っす」
俺は少し戸惑いながらも善積恭將にそう返した。
……え?え?何がそんなに良かったんだろう?
良く分かっていない東雲朔夜であった。
※ ※ ※
〜草薙廣仁side〜
えっとこんにちは草薙廣仁です。
8月14日、今日は遠坂君と一緒に横浜にある六景島シーパラダイスに来ています。
「やっほぉぉ!!我が愛しの廣仁と水族館デートだぁ!!」
「あはは…気持ち悪いから辞めてね?」
「ガァン!?」
さて、そんな茶番は置いといてボク達は受付を済ませて中に。
ボク達は水族館に入って水槽の中を泳ぐ数多の魚達を見た。
「わぁ!?見て!お魚さん達が泳いでいるよ!」
「うっ!?な、なんて可愛い笑顔なんだ…!」
相変わらず様子が変な遠坂君だけど今更気にしなら負けだよね。
それよりも、青く澄んだ水の中はとても美しく、涼しげで、見ているだけで心が洗われて行くようだ。
この中で泳いたら、どけだけ気持ちが良いのだろうか。この夏の猛暑に無関心な魚達が少しだけ羨ましく思った。
「あ!綺麗なトンネルだよ!」
「おお!?何て綺麗な…まるでいっ君さんの心の中のように美しい!!」
「は?」
少なくとも遠坂君は何処かボクを見る目は穢れているよね?
まあ、そんな事はさて置き。
この青いトンネルはボク達の足元以外、全てが水槽であり、まるで自分達が水の中に居るような、そんな錯覚すら覚える。
その時、ボク達の頭上を何かが通る。
それはイルカさんだった。水槽の中を泳ぎ回るその姿は空を飛んでいるかのように優雅であり、自由だった。
近くの看板には、イルカさんについて解説が書かれてあった。
知能指数が高い為、人懐っこく、好奇心旺盛で、御褒美があれば芸も覚える。それでこんなに可愛らしい見た目をしているのだから、人気者になるのも当然だった。
イルカさんは頭上に空いている穴を使って肺呼吸をしているらしい。泳いでいる所ばかりだと想像していたから、てっきり
「へぇ〜イルカさんってそうだったんだ」
「廣仁の言うイルカ“さん”の言い方が可愛い!!」
……もうこの人、完全に放置でも良いかな?
ボクは遠坂君に呆れた目を向け、そんなボクのジト目に興奮する遠坂君に『助けて東雲君!』と内心で思うのだった。