〜東雲朔夜side〜
「それじゃ俺は天宮さん家に行って来るから」
「し、失礼します!」
「「く、くっそ!主人公補正の力が俺/ウチにもあればぁ!!」」
遠坂樹は天宮と共に天宮家へと向かって行った。
藤澤彰人と望月は諦めてトボトボ帰って行ったのだが…
「あはは…何か色々と有り過ぎて何から突っ込めば良いのか…」
「……確かにな。藤澤が言っていた通りアイツって凄い漫画とかの主人公補正が凄いあるよな」
『性癖が狂った主人公』として、だけどな。
俺がそう言うと廣仁は『性癖が狂った主人公』に反応して苦笑していた。
「……さて、俺達も帰るか」
「うん。ボクも暫くは同じ方向だから一緒に帰ろう?」
「……ああ」
俺がそう言うと廣仁は満面の笑みを浮かべ、同じ方向に向かって帰路を歩む。
……今更だが、廣仁って神に愛されているかのような銀髪に可愛らしく整った中性的な顔立ちに小柄な体型と、神自体が性癖狂っているんじゃないかって思えて来るかのようなヒロインに匹敵する完璧な可愛さだよなと思った。
っと、廣仁に視線を送り過ぎていたのか、廣仁が首を傾げた。
ぐっ…可愛い…が俺は樹とは違って男の娘に性癖を狂わされたりはしない!!
「???如何したの?」
「……いや、何でも無い。ただ顔立ちが整ってる奴は狡いなと思っただけだ」
「……え、何それ?朔夜だって元は良いんだから髪型を変えれば意外とイメチェンするんじゃないの?」
「……そうか?」
今度は俺が首を傾げる番だった。
廣仁が『うん』とすぐ肯定してくれたが……俺に似合う髪型とかってあるのか?
「例えば眼鏡をコンタクトに変え、髪型を……今の若者風に言えばウルフカットとかにして見るとか?あ、ウルフカットってこれね」
そう言って廣仁がネット検索し、見せてくれた。
……成る程。大体は分かったが、これ俺に似合うのか?
「……コンタクトはまだ分かるが、髪型一つで変わるものなのか?正直、イメージが湧かないのだが」
「ボクも想像だけで答えている所があるからアレだけど……多分、朔夜の場合は大丈夫だと思うよ!」
「……そうか。他の人の意見も聞いて見る事にしようかな」
そうこうしている間に駅前に到着し、俺と廣仁は方向が違うので改札を潜って別れた。
「……じゃあ、またな」
「うん、またね!」
最後まで輝かしい満面の笑みに俺は目を瞑ってしまった。
ぐっ…これを無意識にやっているんだから樹の奴は大変だな……と俺はつい思ってしまった。
「……そうだ。こんな時には妹と諷歌ちゃんがいるじゃないか」
困った時は家族と頼れる後輩に相談するのが一番だろう。
俺はメッセージアプリを開き、妹の咲希とその親友の諷歌ちゃんにそれぞれ『髪型で相談なんだが…』と送り、『ウルフカット?って友達にオススメされたんだが…』と送った所で返信があった。
咲希からは『お兄ちゃんがイメチェンするの!?』と驚かれ、諷歌ちゃんからは『そのままのお兄さんでも良いと思いますけど…』と何処か名残惜しそうなメッセージを頂いた訳なのだが…。
「……ん?諷歌ちゃんからメッセージが続けて来てるな」
諷歌ちゃんから『今のお兄さんの髪型も悪くは無いですよ。然しイメチェンして見るのも有りなんじゃないかなと私は思います』と送信されていた。
「……いっそ、イメチェンしてみようかな」
取り敢えず咲希にも相談してみて決めるか〜と俺は軽く考えて帰りの電車に揺られるのだった。
△ △ △
〜遠坂樹side〜
さて、天宮さんに連れられてやって来た天宮家。
天宮さんは如何やら地元の地主さん家らしく、それなりに大きい神社を経営していたようで、天宮神社の鳥居を潜って参拝してから中にお邪魔させて頂いた。
「天宮さん巫女さんやってるの?」
「家の手伝いでたまに…ね」
「へぇ〜」
そんな会話をしつつ、天宮家の裏側にある御自宅にお邪魔すると40代くらいのイケイケな見た目の女性が立っていた。
「あら、いより。お帰りなさい……それとお友達さん。ようこそ遥々此処までお越し頂き有難う御座います」
「いえ。えっといよりさんと仲良くさせて頂いている遠坂樹です」
俺が礼儀正しく答えると、恐らく天宮さんのお母さんと思われる女性は『そこまで畏まらなくて良いわよ』と言ってから、
「初めましていよりの母です。いつも娘がお世話になってます。あ、こんな見た目だけど巫女をしてるわ。此処の神社は神さんとか結構緩くてね。……っと取り敢えず上がって頂戴」
「失礼します」
そうして俺は居間に通されると、そこにご家族の方々がいた。恐らく父親と思われる男性と以前あった妹さんの姿があった。
妹さんは俺の姿を見て『あっ!』と言う視線を送られる。
「お茶で良いかしら?て言うかそれしか無いけど」
「すいません。それでお願いします」
そうして天宮家ファミリーと対面しながら居間に座り、お茶を頂いてから天宮いよりさんが口を出した。
「えっと、ママにパパ。後いさな。紹介するね?私のお友達だよ」
天宮いよりさんのご紹介に預かった事で俺は口を開く。
「はい。初めまして遠坂樹と申します。いよりさんとはお友達をさせて頂いております。それとこの度はこのような機会を頂きまして誠に有難う御座います」
俺が自己紹介をし、天宮さんファミリーが口を開く。
「ふむ。君が良くうちの娘が話しているお友達の方々か。初めまして、私はいよりの父の天宮義嗣です」
「母の天宮いのりです。何時も娘がお世話になっています」
「……天宮いさな。貴方とは一度会った事があるけど、お姉ちゃんは渡さない」
「もうっ!いさな!遠坂君とはそんなんじゃないから!?」
如何やら妹さんには何故か敵視されているようだけど…別に俺は貴女のお姉さんと付き合っている訳じゃ無いからね?
「まぁ、堅苦しい事は無しにして……えっと、いよりのメッセージから聞いてはいるが……高校の文化祭でバンドをするって?」
そう切り出して来たのは父親の雨宮義嗣さん。
早速本題に入るようだな。話が早くて助かると言うか……。
「はい。いよりさんには素晴らしい歌唱力や声が綺麗に透き通っていて俺達のバンドに絶対に必要な人材なんです。大事な娘さんを文化祭までの期間で良いので頂けませんか!少し帰りは遅くなりますが絶対に御自宅まで送らせて頂きますし、何かあればご家族の方には連絡をします!」
俺は必死に本音を天宮家の方々に言って頭を下げた。
「ねぇママにパパ、いさな。私からもお願いします。身勝手な事なのは分かってるけど、私ももう高校生だから少しぐらい自分の為に生きて見たいの!どうかお願い!」
と、いよりさんもご家族に向けて頭を下げた。
そんな俺達を見て天宮家の方々は困惑の声を出した。
「え、えっと……別にいよりの意思や送り迎えをしてくれるのなら全然構わないのだけど……」
「うん……別にいよりが安心してしたい事を出来るのなら私はとやかくは言わないわよ?」
「「あれ?」」
あれ?てっきり反対されるものだとばっかり思っていたのだが…意外と柔軟な方々なのかな?
「私は……何処の骨かも分からない男に大事なお姉ちゃんを渡したくは無い!」
「い、いさな!?」
「だけど……お姉ちゃんの意思を大事にはしたい…だからお前!」
「は、はい!?」
お、お前って……。
「ちゃんとお姉ちゃんを毎日家まで送る事を条件になら許す!だから絶対に約束を守るって誓って!」
「は、はい!妹様!この命に誓ってでもお姉さんを守ります!」
「なら特別に許してやらん事も無い!」
「いさな!?」
いよりさんが妹様に向けてぷんぷんと頬を膨らませ、向かった。一方で残ったご両親からは……
「「いよりの事、如何か宜しくお願いします」」
「は、はい!」
俺とそう返事するのだった。