路上ライブから暫く経過したある日。
九月も徐々に終わりに差し掛かり、秋の訪れが来ようとしていた。
〜遠坂樹side〜
さて、10月3日はいっ君さんの誕生日だ。
そんな訳で我が遠坂家の少し広い庭でバーベキューでいっ君さんの誕生日をお祝いする事になっていた。
「やあやあ!よく来てくれた!」
「……今日はお前の誕生日だからな。祝いに来るのは当然だ」
そう言ってくれたのは最近髪型をウルフカットにしてコンタクトにした事でイケメンに変貌を遂げた親友の東雲朔夜。
そしてその背後に草薙廣仁・藤澤彰人の他に天宮さんと眞希、更に忙しい中、神楽坂雅紀と葉山颯吾、福澤泰晴と
「取り敢えず入ってくれ。今、肉の準備をしているからな!」
実際に会場である我が庭に皆を連れて行くと、丁度火を準備している最中なのか、仄かに炭の焼ける匂いが漂って来る。
「おおー!兄貴の友達がこんなに居るなんて思わなかった!」
リビングから顔を覗かせるのは、久し振りの出番である従妹の遠峰渚が此方に顔を出していた。
「知らない奴も居るから紹介しておくよ。俺の従妹に当たる遠峰渚って奴だ。俺の妹分に当たるゾ」
「兄貴に紹介されました〜遠峰渚です!宜しくお願いしまーす!」
そう言って遠峰渚は屈託の無い笑顔を皆に向けた。
「ああ、これはどうも──」
男性陣の殆どが初対面なので、朔夜と廣仁を除いた男性陣が軽く紹介した後……
「あ、えと……少しお会いした程度だったよね?改めて天宮いよりです。宜しくね?」
「天宮さんですよね?わぁ〜!眞希ちゃんからお噂は
「でしょ?ウチのいよりっちは可愛いんだから〜!」
と、女性陣が既に仲良さげなのは良い事だな。
それはそれとして俺の誕生日パーティーなのは忘れて無いよな?
「あ、そうだ。まだまだ準備してるからリビングでジュース飲みながら待っててって
「おう、そうか。そんな訳でゆっくりリビングで寛いでくれ」
「分かった。けどご家族にご挨拶だけさせてくれ」
藤澤彰人からそう言われ、俺は皆を家族の元に連れて行った。
「兄貴、姉貴。皆が来たゾ」
「ああ、うん。──こんにちは、皆。こんな格好で申し訳無いけど」
「いらっしゃい〜楽しんで行ってねー」
兄貴と姉貴が俺の背後に居た皆に向かってそう言った。
因みに兄貴である
「あ、手伝いますよ」
「あ、僕も手伝います」
「! 有難う!御免ね。バーベキューはウチでもたまにするんだけど、やる度に腕が初心者に戻っちゃってさ」
神楽坂雅紀と葉山颯吾は兄貴の手伝いに向かって行った。
女性陣は姉貴の元に行き、色々と手伝いをしていた。
「
「あ、私も手伝います!あ、天宮いよりと申します!」
「あらあら〜眞希ちゃんに……いよりちゃんね!それじゃ──」
そうして残された俺と朔夜・廣仁・彰人・福澤泰晴・
「いや、事前に来る事は分かっていたけどさ。まさか福澤と善積も来てくれるとは正直驚いたゾ」
「最近はバンドで一緒だし、誕生日ならお祝いさせてくれよ?」
「俺は最近お前と話せて無かったし、お前の誕生日バーベキューって訳で福澤だっけ?と同じくお祝いも兼ねて食べて来たかったんだよ」
福澤泰晴は兎も角、善積……お前はただ食欲を満たしに来ただけじゃ無いか?まあ、祝ってくれるのは嬉しいけどさ……。
俺達は遠峰渚も交えて暫く雑談で花を咲かせていると、兄貴達の健闘のお陰で如何やら炭全体に火が行き届き、丁度タイミング良く様々な部位のお肉が盛られた大きな皿が女性陣の手によって運び込まれて行き。
「さあて。予定より少し早いけど、お腹も空いたし、じゃんじゃん焼いて行くわよ。泰貴、悪いけどもうちょっとだけ頑張って」
「人使いが荒いなぁ〜まあ、若者二人におんぶに抱っこだったし、元気は有り余っているけども……ほら、皆。こっちおいで!」
「「「お〜!!」」」
そんな訳で俺達は庭に集まり、豪華な誕生日会が幕を開ける。
バーベキューは夏の海水浴でもしたが、個人的には涼しく過ごし易くなって来た今の方が好きかも知れない。
暑さで余計な体力を削られずに済むので、より食欲が増している感じがする。食欲の秋だ。
「おうおう、いっ君さんよ?この俺、
「おっ!焼いてくれるのか?それじゃ見るからに高そうな牛タンを宜しく頼むよ」
「……俺も最初は牛タンにしようか」
「あ、ボクも!」
隣にある野菜盛りの皿には目もくれず、男性陣は網の上でじゅうじゅうと美味しそうな音を立てて焼ける肉に、勢い良く齧り付いて行く。
牛タン・カルビ・ロース・ハラミに、パチパチと油を弾けさせるホルモン。そしてこう言う機会でしか中々食べない大きなフランクフルトと、もう片方の手には白飯。
野菜も後でしっかり食べるつもりだけど、先ず男と言ったら肉の脂質と棒松岡修造氏の言う『お米食べろ!』の糖質で腹を満たして行く。
「男性陣は肉が好きだよねぇ〜ねぇ?いよりっち?」
「そうだね…野菜も胡麻サラダとかにすれば美味しいのに♪」
女性陣は野菜を中心に食べながら男性陣を見ていた。
特に姉貴とか渚とかは美味しそうにお肉を頬張る廣仁を見て、微笑ましそうな表情で眺めているのに気付いた。
「あ、廣仁。悪りぃけどこの牛タンは俺が貰ったぜ!」
「〜〜〜!!絶対許さない!!」
「うわ!?廣仁!?俺の肉を狙って来るなよ!?」
何やら悪戯心に彰人の奴が廣仁の狙っていた肉を奪ったが、直ぐ廣仁の反撃を喰らって、肉の奪い合いを行っていた。
……一体、何をしてるんだあの二人は。
「何を争っているんだい?その肉はいっ君さんのだゾ⭐︎」
「「あ…」」
そう言って二人が狙っていた牛タンを俺の口の中含んだ。
……んん〜〜!!うっまい!!テーレテレ!!
「「絶対に許さない……!!」」
「へ?いや、本日の主役な訳でして……」
「「食べ物の恨みは怖いって事を思い知らせてやる!!」」
い、いやあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?
〜閑話休題〜
食事が始まって一時間程が経過した。
勢い良く焼き、勢い良く食べてを繰り返していた俺達だったが、徐々にその勢いも落ち着いて行き、まったりとした時間を過ごしていた。
バーベキュー開始当初はまだ明るさが残っていた空もすっかりと暗くなり、リビングからの明かりと揺らめく炭火の炎のみが、庭に居る俺達を照らしていた。
「おうおう本日の主役さんや?箸のスピードが落ちてるぞ?もう限界が来たのか?ならこっからは俺が頂いても良い訳だな!」
「何を言ってるんだチミは。まだまだいっ君さんも食べますわ!」
と、善積恭將は目の前の肉を掻っ攫って美味しそうに食べた。
“あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”俺の肉がぁぁぁぁ!!(発狂)
「あはは……皆、肉には本能が逆らえないんだね」
「そう言う神楽坂君だって美味しそうなのを食べてるじゃないか」
「そう言う葉山君だって……」
俺の隣で神楽坂雅紀と葉山颯吾が美味しそうに肉を食べている…じゅるり。
「「あ、肉を狙う遠坂君にはあげないからね?」」
「ガァァァァン!?」
お、俺…本日の主役なのに……!
※この人は色んな人から肉を既に沢山貰っています。
俺はお肉を食べたい衝動に駆られるが、そろそろ味に飽きて来たので何か無いかなとクーラーボックスや追加用の炭が置かれた場所をゴソゴソと探すと、お
勝手に食べるのも如何かなと思ったので、一応姉貴に確認を取って見た。
「あっ姉貴。これ食べても良い奴?」
「ん?あーマシュマロね。どーぞ勝手に。串もそこにある肉用の奴を使っちゃって良いから」
「どーも」
俺が見つけたのは、こーゆー時に向いているマシュマロ君だ。
「……お、マシュマロか。そろそろ食べるには良い頃合いかもな」
「ま、マシュマロ!?ボクも食べるから少しは残してよね!」
「おや?フラグ……へぶら!?」
ははっ……また彰人が余計な事を言うから廣仁に腹パンされてるじゃねぇか(笑)
あ、てか今腹パンしたら食べた物とか大丈夫かなー(他人事)
「わぁ!?マシュマロ君だ!!私も食べたいな!」
「皆で食べよう!」
人数分用意し、軽く炙るように炭火へと近付いて行く。
砂糖の香ばしい甘い香りと、とろりと溶けて更に丸みを帯びて行くマシュマロ。
良い感じに火が通った所で齧り付く。味は想像通りのマシュマロだが、そのままの状態で食べるよりも美味しい気がする。
「ん〜あまっい♪」
「折角ですし、他にも色々試して見ませんか?こっちにお菓子が色々あるみたいですし……」
「もう皆して子供じゃ無いんだから……けどそうだな。ウチは……」
と、主に女性陣が満面の笑みを浮かべて食べていた。
「普通の誕生日パーティーならケーキなんだろうけど……案外、これでも悪くねぇな。まあ、いっ君さんの底無し袋の前ではまだまだ食えるけどな!」
「本当、遠坂は何でも腹に入れるねぇ〜」
「福澤ァ〜俺はまだまだ入るゾ。お前はもう限界だろ?」
「は?まだまだ行けるし。舐めるじゃねぇぞ!」
童心に戻ってははしゃぎつつ、一方では食事に戻りつつ。
俺達は各々の時間を皆で共有し、最高のバースデーバーベキューを満喫するのだった。