〜遠坂樹side〜
聖嶺祭の後夜祭が終了し、俺は電車に揺られながら自宅に向けて帰っていたのだが……気になる事があって落ち着かない。
それは──、
(二人から同時に告白されるとはな……)
正直、気持ちは嬉しい。しかし二人には申し訳無いが、今の俺に誰かを幸せにするどころか恋愛する資格する無いと思っている。
何故なら、過去が関係しているから。
(いつまで『過去』に囚われているんだろうな俺は……)
中学時代で時が停滞しているような錯覚さえ覚えてしまう。
しかし、いつまでも過去に囚われていては行けない事も理解はしているつもりだ。だからこそ、如何するべきか悩んでしまう。
(ちゃんとこれからの事を考えて行かないとなぁ……)
と、俺が内心で考えていた時だった。
『LINE!』と着信があり、俺はポケットに忍ばせていたスマホを手に取って確認する。
──おお!我が天使じゃないか!
廣仁から『お疲れ様!聖嶺祭楽しかったね!^_^』という文章が送られて来ていた。可愛い可愛い!
俺は速攻で返事をし、『お疲れ!廣仁のメイド姿は最高だったぜ!』と返信する。
すると、廣仁から『もう!遠坂君の意地悪!』と返って来た。
俺はニチャアと笑みを浮かべながら、廣仁のメイド姿の写真をフォルダから探し、見つめ返していたのだが……
ドクンッ!ドクンッ!
──ヤバイ。廣仁に対する恋心が……女子以上に反応するッ!
やはり俺は廣仁が大好きなのではないか!と思ってしまうが、これは飽くまでも『友達』としての好きなのかが分からなくなって来た。
それ程、廣仁が俺の脳裏に常日頃から思い浮かんで来るのだ。
やはり俺も廣仁に告白するべきなのではないか?
「あはは……」
廣仁の事を考えれば、全部とは言わないが少しだけ『過去』の事が薄く思えて来て、若干楽になった気がする。
──有難う廣仁。君のお陰で俺の闇が浄化しつつあるよ……。
……此処で俺は思った。
『過去』より今の方が楽しいよなぁ、って。
可愛い天使の廣仁、親友の朔夜、友達の彰人、女友達の眞希、か弱いけど最近は自信を付けた天宮さん。
他に神楽坂や葉山、福澤や善積など他クラスとも交流が増え、きっとこれからも楽しい日々が待っているに違い無い。
なら──
(天宮さんと眞希の告白の答えもちゃんと返さないとな……)
結局、流れ着く悩みはそこになるが、廣仁のお陰で少しだけ気持ちが救われたのは事実。
(廣仁……!)
俺はLINEに新たにメッセージを送り、『廣仁、この後時間あるか?少し伝えたいことがあるんだ』と送った。
――さて、思い切って廣仁に告白するか!
これから前を進んで行こうと少しだけ思えた俺であった。
※ ※ ※
〜藤澤彰人side〜
一方、告白する事が出来ずに一日を終えてしまった藤澤彰人は──、
「はぁ……」
俺は聖嶺祭に来ていた親の送迎車に乗り、自宅のある地元に向かって帰路を走っていた。
──結局、天宮さんに告白する事が出来ずに終わってしまった。
これから如何するべきだろうか。
まだ告白はしていないから『友達』としては上手く行ける筈。
しかし、問題は既に天宮さんか遠坂樹の何方かが
確か、望月さんは遠坂に告白するとは言っていたな。
と、なると望月さんは高確率で告白した訳になるが……
(一応、連絡だけはしておくか)
俺はスマホを開き、Instagra◯のメッセージで望月さんと連絡を試してみる。
『お疲れ様。遠坂に告白出来た?』と、送っておく。
これで時間がある時に返信が来る筈だ。
「そう言えば今日、あんたの楽しそうにしている所を見たけど最近は
と、車を運転していた母親からそんな質問が来ていた。
俺は少し面倒臭そうにしながら答える。
「
「青春ねぇ〜。私達の時なんかは先生方が厳しくてね。そんな事を出来る環境では中々無かったわね。特に私達の家系はねぇ〜」
「あー……」
俺達、藤澤家は母方がとある地方の大地主の本家の血筋から分かれた分家である。特に歴史上でも武家だった時代や明治以降も色々歴史を動かした家系であり、その影響力は未だ業界でも名を馳せており、周囲との関わりも色々とあったのだ。
「だから青春が出来る『今』を楽しみなさいよ。大人の事は私達が何とかしてあげるから。子供は子どもらしく成長しなさい」
「はいはい。分かってるって……はぁ〜彼女欲しいわー」
「そう言っている間は出来そうに無さそうね〜。あんたの周囲に良い感じの子とか居ない訳?」
と、今の俺が気にしている事を追求して来た母親だった。
……脳裏に浮かぶのは大輪のような笑顔を浮かべる天宮さん。
「居ない訳では無いが……さっきの友達の恋愛フラグ云々に関係しててさ。友達の方に目が行っている感じかな」
「あらら。三角関係って奴?あんたって面白い状況に居るわね。
え、それでそれで?私に聞かせてよ?」
「うるせぇな……運転ちゃんとしてくれ。またぶつけるぞ」
この母親、以前少しの脇見運転で車のサイドミラーを電柱にぶつけた事故を起こした経験があるので、ちゃんと言って置かないとまた同じような事をしでかさないんだよな。
「うっ……わ、分かってるわよ」
「はぁ……」
俺は目を閉じ、自分の世界に入った。
何方にせよこの淡い恋情を早いうちに如何にかしないと行けないと思い、俺は最悪自分の感情を