どうも、いっ君さんです。
今日は体力測定と言う事でシャトルランをさせられます。
「シャトルランかぁ…疲れるから嫌だなぁ…」
「さっきからそれしか言わないけど、どんだけ嫌なんだよ」
隣を歩く彰人には陸上部で痛め付けられたあの苦痛なんて分からないだろうなぁ…と思いながら体育館に向かっています。
「それ、体育教師か聞いたらお前だけ更に走らされそう」
「え!?マジで嫌な件について!!」
「おい、此処まで来て逃げるんじゃねぇ!?」
俺は咄嗟に逃げようとしたが、彰人に腕を掴まれて逃げたくても逃げられない。
――ヤメロォ!?俺はまだ死にタクナァァイ!!
そんな俺の抗議も虚しく、彰人に引きづられて行くのでした。
※ ※ ※ ※ ※
聖嶺學園に於ける各学年は100名である。
一部の授業では各クラスを半分に分け、前半クラスと後半クラスが別々の授業を受ける事がある。
今回、彼等が向かうのは前半クラスの体育の授業である。
〜体育館〜
無事、強制連行された俺に、先に来ていた朔夜と廣仁は哀れな俺を見て驚いていたが、彰人が説明すると呆れた目に変わった。
……世間が俺に辛いよぉ(泣)
「なぁにしてるんだ樹〜」
「うええん…眞希えもん助けてぇ」
「誰が眞希えもんよ馬鹿!?」
そんな俺に女友達の眞希が近付くと哀れな目を向けられた。
――あれ?俺を助けてくれないの?
そんな俺に彰人が近付き、二人に説明すると二人は俺を見て苦笑し、特に眞希の隣に居た天宮さんが遠慮がちに…
「えっと…遠坂君、諦めて走った方が楽だと思いますよ…」
「いよりっちにそう言われたら、あんたもお終いだよね〜」
はぁ…仕方無いな。
女性陣にそう言われた俺は、諦めて体育に参加する事にした。
無論、内心は今すぐ陸上部の再来を思い出して逃げ出したい気分に駆られているが、これ以上の醜態を晒す訳には行かないのだ。
俺は内心、家族に先立つ不幸をお許し下さいと思いながら準備体操をし、軽いランニングをしてから先頭の人達がシャトルランで遂に走り出した。
俺は舞台の上に避難してシャトルランの光景を見ているが、後で生きてるかなと思っていると…
「……はあ、樹。廣仁を見てみろ」
「ん?我等が天使?」
隣に居た朔夜が見かねて廣仁を見ろと提案して来た。
廣仁が居る方に目を向けると、ぴょんぴょんと跳ねて走る意気込みを感じた。
「“あ”あ’あ”あ”あ”あ”が”わ”あ”あ”い”い”よ”ぉ”ぉ”ぉ”!!」
「……あ、やり過ぎて限界オタクみたいになっちまった」
廣仁を見ていたら急に元気になって来たゾ。
いやぁ!!直ぐに走りたいなぁ!!
いっ君さんは急に元気が湧き、体の奥底から力が漲って来た!
そうして俺の番が来て、いっ君さんも参加する。
俺は近くに居た眞希に記録用紙をお願いすると「え?あ、分かった」と一応承諾して貰ったので、眞希とは言えども女子の声援も受けて頑張るぞ!
最初は歩きで問題無いが、徐々にスピードが早く始める。
――20周目…まだまだ大丈夫だゾ⭐︎
行きは問題無く行き、帰りは少し気分的に早めに帰る。
このペースで行けばまだ問題は…
と、思っていた時期が俺にもありました。
……………………。
87周目になり、いっ君さんはもう限界が近付いていました。
背後から来る声援にも応えられなく、体育教師の周々木から「もっとやれるだろ!」と言われるが、無理に決まってるだろォ!?
俺は最後の抵抗と言わんばかりに廣仁の笑顔を思い出すと尊さを思い出して内なるパワーを覚醒させ――
96周目。
この時、いっ君さんは陸上部にも匹敵する速さで他の生徒達を圧倒させると100週目を迎え、体育教師の周々木の目が変わる。
誰もが覚醒したいっ君さんを見て、いっ君さんが舞台の上で見る廣仁に笑顔を向け…勢い良く倒れた。
「樹ぃぃぃい!!」
そんな倒れたいっ君さんの元に朔夜は駆け出し、いっ君さんは天井に人差し指を上げ、「我が天使の可愛さは世界一ィィ!」と叫ぶと同時に意識を失った。
※ ※ ※ ※ ※
〜藤澤彰人side〜
「何してるんだアイツ…」
何か叫ぶと共に気絶した遠坂樹を見て俺はつい口にした。
因みに俺はトイレから戻って、これから走る事になるのだが…絶対周々木先生の目が変わったからもっと走れとか言われそう。
「遠坂は東雲が保健室に連れて行ったから再開するぞ。
……一応言っとくが無理のし過ぎだけはするなよ」
おや?意外と優しい。
まあ、あんな馬鹿を見たらそう言わざるを得ないか。
えっと…記録用紙を…
「天宮さん、済まないがお願い出来る?」
「えっあ、わ、分かりました?」
「何で疑問系?」
「え…あはは…何故か?」
気になる女子の天宮さんに記録をお願いし、俺はシャトルランに挑む事とした。
――目標は50周辺りで良いか。
間違えても何処かの誰かさんのような目には遭わないと胸に誓って最初の10周を歩きで難なく突破する。
――天宮さんも見ているんだ。無様な格好はしねぇよ。
次の20周目辺りからスピードが上がって行くが、此処までは特に問題無く突破するが、俺は別の意味で緊張していた。
それは天宮さんに少しでも格好良い所を見せたいのと、目標値の50周目までは絶対にリタイアしないと言う誓いを果たす為だ。
そうして次の30周目はよりスピードが上がり、体力の無い人達は徐々にリタイアをして行くが、まだその時では無い。
次の40周目。此処が踏ん張り時だ。
俺は制限していた体力を解放し、何としてでも追い付けるようにスピードを上げて行き、ギリギリ突破する事に成功した。
そして50周目。
もうそろそろ良いかなとも思ったが、身体は勝手に走り続ける。
最早、身体の言う通りにする事にしながらフルで走り続けて――、
62周目で限界が来たのでリタイアした。
俺は舞台の上に上がり、床に倒れると水分補給をして休憩する。
するとタイミング良く、天宮さんが来て記録用紙を渡してくれた。
「えっと…お疲れ様です。頑張ったと思いますよ」
「そう言ってくれたら…少しは頑張った気がするよ」
「あはは…私は体力が無いので羨ましいとは思いますよ」
そうか?いっ君さんの前に天宮さん達が走る瞬間があったのを見たけど、頑張っていたと思うが…
「そう?天宮さんも自分のペースで頑張ったと思うけど?」
「え?そうですか?……有難う御座います///」
何故照れる。まあ、褒めたからな気がするけども。
お互い照れて少し何を言えば良いか分からなくなった件について。
――まあ、今はこれも悪くは無いかな。
そう内心思いつつ、天宮さんと雑談に花を咲かせるのだった。
※ ※ ※ ※ ※
〜遠坂樹side〜
――知らない天井だ。
俺は意識を取り戻すとそこは知らない天井が見えました。
すると俺が起床した事に気付いた若い女性の保険医?が…
「起きました?落ち着いて聞いて下さい。貴方は体育の授業に意識を落として夕方まで寝ていました」
まるで何処かのワンシーンを思い出すかのような事を言われ、窓を見ると確かに夕陽が見えていた。
「……あー何となく状況が把握出来ました。少ししたら帰ります」
「え、ええ。特に問題は無さそうだし、お家の人に連絡はしたからゆっくりして頂戴」
「有難う御座います」
そうして保険医は少し用事が出来たのか、「少し離れるわね」と言って保健室と思われる部屋を出て、俺は静かに寝ようと――
「樹〜起きてる〜?」
「し、失礼します」
そう言って保健室に来たのは朔夜・廣仁・彰人・眞希・天宮さんの5人であった。
「おう、起きてるぞ」
「全く人が記録録ってる時に倒れないでよ。東雲君があんたを保健室に連れて行ってくれたから良かったものを」
「……そうか、皆に色々迷惑掛けたな。悪い」
俺がそう言うと「別に気にするな」と皆に言われたので、これ以上は気にしない事にする。
「神楽坂と颯吾も心配してたから、無事だって伝えといたぞ」
「おう、サンキュー」
仕事が速いのか、L◯NEで関係各所に連絡したらしい。
助かるわ。
「えっと、無理はしないで下さいね?」
「うん、それは本当に」
天宮さんに廣仁に心配されたので「善処します」とだけ伝えた。
「……で、帰れそうなの?」
「あー、多分問題無…」
「大丈夫か我が弟よォォォォォ!!」
眞希にそう言われたので言おうとした途端――保健室の扉が勢い良く開かれると見覚えのある人物が俺の寝るベッドに顔をダイブさせた。
「うるせぇ!?てか何で此処にいるんだよ!?」
「偶然、今日の仕事が早く終わって可愛い弟に会いに行こうとしたら
そう、この人物――
どんな人物かと言われたらブラコンの一言に尽きる。
仕事終わりで直ぐに俺に会いに来るぐらいには…。
「てか、皆が見てるから離れろォ!!」
「おっとこれは失礼…私は樹の兄の遠坂泰貴です。何時も弟が世話になってます」
「「「「い、いえ…」」」」
なーんか恥ずいな、この家族が友達に話している感じ。
因みに付き合いの長い眞希でも姉とは会った事はあるが、兄とはこれが初エンカウントである。
「取り敢えず時間も遅くなりそうだし、君達も送って行こう」
「一応、言っておくと断っても兄貴は泣いてでも送るぞ」
「……何それ怖い」
と、事前に俺が補足を入れた事で全員を送って行く事にした。
こうでもしないとややこしくなるからな…。
※ ※ ※ ※ ※
兄の遠坂泰貴の車で最寄り駅まで送る事となり、全員で車に乗っている。因みに兄の車は高校時代などの友達と遊びに行ったりを考えてワゴン車にしているらしい。
「へぇ〜お兄さんって樹の事を何でも知ってますねぇ」
「そう言う君も姉から少しは聞いてるよ。中学時代から弟と仲良くしてくれて本ッ当に有難う!こう見えて弟は繊細な部分があるから」
「おい、何言ってるんだ!?」
本当に何を言ってくれているんだ。
高校から知り合ったメンバーからは「へぇ…意外」と言う表情をされたじゃないか!?
そんな俺には構わず、兄は言いたいだけ言いまくる。
「確か望月さんだったけ?は少し知ってるかも知れないけど、彼は普段明るく振る舞うけど、昔は八方美人な所があってね。無理をしてでも弟は解決しようとして…時に問題になる事もあったってね。
だから皆も時折で良いから気に掛けてくれると…助かるね」
「……樹には入学初日に助けられたんで、勿論っすよ」
「うん、ボク達に出来る事なら何だってしますよ」
「まあ、同じです」
と、熱く語って来る男性陣。
「勿論です。寧ろ彼に助けられた事があるし、恩返ししたいぐらいっすよ」
「え、えっと…私も頑張ります!」
と、女性陣。
……あーマジで顔が熱いって。
後で馬鹿兄貴、覚えておけって。
走行している間にも高校の最寄駅に到着し、皆から「ゆっくり休めよ」と言われてから解散し、俺は静かになった車内でジト目を兄貴に向ける。
「……良い友達を持ったようで良かったよ」
「何だよ突然」
「いや、こっちの話だ。友達とはお互いに大事にしなさい」
「分かってるよ」
それから暫く静かに自宅に帰ると、心配してるが仏頂面をしている姉貴に「無理はするな」と言われ、その日は大人しく寝る事とした。
――結論、無理は良くないね!
まあ、色んな人から心配を掛けられたから気を付けよう。
そう俺は心に誓うのだった。