──季節は冬。
凍える空気が肌を刺し、誰かの体温を欲してしまう弱虫達の季節。
そんな冬の季節でも彼等の日常は変わらなかった。
その背後にはイツメンの姿もちらほらと見えた。
それを見た遠坂樹は主に廣仁を見て頬を赤くしながらもニヤニヤと笑みを浮かべて口を開けた。
「やあやあ、今日も天使様は美しいな」
「もう!会って早々に揶揄わないでよ!」
「……いつも通り気持ち悪い笑みを浮かべるな樹」
遠坂樹は可愛らしくぷんぷん怒る
それを見ていた
「あはは…遠坂君はいつもと変わらないよね」
「はぁ〜全く変わらないなアイツは……」
しかし、
「何だよ〜俺が廣仁の事が好きなのは知ってるだろ?まあ、聖嶺祭の時にやんわりと振られている訳ですが」
「話を聞いた時は流石に笑ったわ。お前、限度を知らねーのかって思ってしまったわ」
あれは十月中旬に行われた聖嶺祭と言う文化祭の終わった後に、遠坂樹が廣仁に対してLINE通話で告白をした珍事件があった。
廣仁からやんわりと断られ、遠坂樹は暫く暫く立ち直る事が出来ずにいた訳だが、最近になって二度目の告白をしていた。
「……樹さ。ウチの告白はちゃんと考えてくれてるよね?」
「遠坂君……」
「うっ……ちゃ、ちゃんと考えてるよ。ただ心の中にある廣仁に対する運命の出会いから芽生えた恋情を如何にかしたいんだ」
因みにこの出来事は既に廣仁がグループへと共有されており、遠坂樹にとって密かに葛藤の日々を送っていた。
廣仁に対する想い、女性陣からの好意、そしてグループ内で密かに想いを殺そうとする彰人の葛藤……。
知らず知らずのうちに遠坂樹は問題を抱え、問題を先送りにして今日も
「そ、それより今日は皆と遊びたいんだ」
「……逃げたな。まあ良いけど」
唯一、無関係な朔夜はグループの空気を何となく察しが付いていたが、余り言う事無く遠坂樹の味方に回る事にした。
「……それで今日は何するつもりだ?」
「日中は色々見て回り、夜は楽しみにしている事があるんだ。それに付き合ってくれると嬉しいな」
「……分かった」
そうして少年少女達の一日が始まるのだった。
△ △ △
〜遠坂樹side〜
そんな訳で皆と遊びにゲームセンターに来た。
いつも通り男性陣は
因みに現在が彰人が眞希に何かを奢る勝負で煽り、負けず嫌いな眞希はまんまとその勝負に乗って二人で対戦していた。
一方、廣仁と朔夜は付近にあったエアホッケーで遊んでおり、皆それぞれ好きなゲームをやり始めて。各々自由行動みたいな雰囲気になっていた。
俺は天宮さんと雑談を交わしていた。
「そう言えばさっき思っていた事があったんだけど、遠坂君ってコートを着ていると急に大人っぽく見えるよね。あ、普段からイケメンだとは思うんだけど……って私、何を言っているんだろうね……あはは」
「有難う。そう言う天宮さんもいつも可愛いけど、今日はいつも以上に可愛いと思うゾ」
「ふぇ!?あ、有難う///」
あれ、照れている天宮さんはちょっと可愛いかも知れない。
「あ、そうだ。少し二人で行って見たい所があるんだけど……」
「ん?どうした。俺で良ければ付き合うゾ?」
「うん。有難う♪じゃあ付いて来て?」
俺は天宮さんに手を引かれ、二人だけでゲームセンターの別の階に連れて行かれた。
その場所とはプリントシール機で、俺は天宮さんと中に入った。
「え!?ちょ…天宮さん!?何で此処に……」
「ねぇ。遠坂君。確認なんだけどさ……」
そう言って天宮さんは頬を赤くしながら上目遣いで尋ねて来た。
「聖嶺祭の時の事……覚えてる?」
「聖嶺祭?えっと……」
そこで俺は聖嶺祭の時に天宮さんから『大好き♪』と言われた事を思い出し、少し頬を赤く染めた。
「うん……あれって異性として好きって事だよな?」
「……うん。私は遠坂君の事、意外と良いなって思っててさ。もし良ければ付き合って頂ければな〜って…」
「!?!?!?!?」
いやー気持ちは嬉しいんですけどね?
然し俺には廣仁の恋だって、皆と一緒に居たい思いもあって……恋愛絡みには避けたい傾向にあったのに……。
「でも眞希ちゃんも告白している事は知ってるよ。だけど……私だってそう簡単にこの想いを諦め切れる訳には行かないんだ」
「な、何で……俺の事を好きになってくれたんだよ?」
俺がそう聞くと天宮さんは恥ずかしそうにしながらも、芯の籠った目で俺を見つめて来た。
「実は私にも良く分かんないんだよね。気付いたら好きになっていた感じって言うか……私が聖嶺祭のライブに対して緊張で如何にかなっていた時に遠坂君が路上ライブを提案してくれて。一緒に演奏してくれた事が意外と嬉しかったんだ。それから遠坂君の事が気になって仕方が無くて。目で追い掛けていたら遠坂君に対して恋に落ちちゃった感じかな」
「…………俺は大した事はしていない。ただ天宮さんの助けになりたくてしただけだぞ?」
「うん。遠坂君は何気ない行動だったと思う。だけど助けられた側からすれば、助けてくれた人を気にしない訳が無いじゃん。私にとって遠坂君は特別な人なの。それに私、恋に落ちたらその人の為なら何だって尽くすタイプだと思うの。だから私の事を見て?」
そう言って天宮さんは密室空間で俺の目の前に迫った。
「え!?あ、天宮しゃん!?」
「えっと…本には男性の人は草食系が多いから押せば行けるって書いてあったし……こうで良いのかな?」
本って何!?恋愛系の本かな?
てか天宮さんって大人しそうに見えるけど、恋に落ちると意外とグイグイ積極的になるタイプなんだな……。
天宮さんの事は4月生まれのB型な事と大人しい性格な事以外は余り知っているようで知らなかったが…このままだとヤバい。
「あ、天宮さん……これは流石にヤバいって……誰かに見つかったら……」
「うん。不味いよね。だけど意識して貰う為には……私だって遠慮はしていられないと覚悟を決めたんだ。だから……ごめんね?」
「んんっ!?」
その狭い密室の中で俺は唇に。
天宮さんの唇を押し付けられてしまった。
「あ、天宮しゃん!?ほ、本気か!?」
「……うん。私は本気だよ?これで少しは私の気持ち、分かってくれたかな?」
「……本気、なんだな。だけど俺は──」
「廣仁君が良いんだよね?」
「………………………」
……沈黙は肯定。
俺は素直に首を縦に振った。
「……それもそうだが、俺は昔、好きな人に裏切られた事が怖くて、皆とは友達として居たい。恋愛は友情を破綻させるものだって分かっているから関わりたくは無い……だけど眞希や天宮さんの気持ちを無碍にはしたくない。だから俺は──誰とも友達以上の関係を作りたく無いんだ」
「遠坂君……」
「……だけど天宮さんの気持ちは素直に嬉しい。だけど今の俺は廣仁以外に興味は無いんだ。悪いけど今は返事を保留にして欲しいと言うか」
「うん。でのその代わりに……もし良ければなんだけど……下の名前で呼んでも良いかな?」
「あー……確かに俺達、苗字で呼び合う事に慣れていたしな。良いよ。──いよりさん」
「えへへ///何だか少し恥ずかしいけど……有難う──樹君♪」
そう言って天宮……いよりさんは照れ臭そうに笑みを浮かべるのだった。