ブルアカにドMを生やしただけ 作:ナギサ様の臀部
私はトリニティが嫌いです。大っ嫌いです。アリウスにいる皆が同じようにトリニティを憎んでいるでしょうが、私のは特別です。
私は元々トリニティで暮らしていた……はず。多分。そして幼い頃に私の親がなんか……こう……色々争った感じで……えっと、とにかく私は攫われて、スラムに放り出されました。
算数もできないような歳の子供が、一人でスラムに放り出されたんです。当然誰も面倒を見てやろうだなんて思いませんし、関わりたいとも思いません。もしかしたら誘拐の罪をなすりつけられるかも分かりませんから。
そんなわけで私はあちこちを走り回りました。走り回って、走り回って、その末に見つけた廃墟の地下で、謎の通路を見つけました。というか床が抜けて、その地下通路に転がり落ちたんです。
上には戻れそうになくて、私は明かりも持たずに地下通路を歩き回りました。数日はそうしていた気がします。時計とか無かったので分かりませんけど。
その果てにたどり着いたのが、かつてトリニティから追い出された学校、アリウス分校だったわけです。
「ですから、私はトリニティが憎いわけですよ、聖園さん。でもそれ以上に、何も知らないアリウスの子たちにカスの教育を施すあのババアが許せないわけです」
「ご、ごめん、ちょっと話が飛んじゃってよく分かんないかな……?」
「恨みつらみはどうでもいいのであのババアをぶっ飛ばしたいです」
「恨みつらみはどうでもいいんだ!?」
さてさて、私がたどり着いたこのアリウスですが、なんと自分の年齢を考えないババアが生徒会長を名乗り、皆におかしな教育を受けさせていたのです。
そりゃもう、怒りますよ。何が恨みですか。何が憎しみですか。何がばにばにですか。虚しくちゃダメですか。紛争を終わらせた功績以外に、貴女は讃えられるものが何も無いじゃないですか。ぶっ飛ばしていいですか。いいですよね。
アリウスがこうなったのは確かにトリニティに原因があったのかもしれません。確か、大昔にトリニティにたくさんあった学校を一つにしようって話し合いで反発したアリウスを弾圧した結果なわけですから。
でもそれ今のトリニティ関係あります? 私関係あります? というかそんな私を捕まえて「全部トリニティが悪いからな! ばにばに!」って言ってるあのババアは何なんですか? 私そんなにバカじゃありませんよ??
「サオリはまず確実に貴女を利用するでしょうね。大方アズサ辺りでも送り込んで、貴女が百合園さんとやらを脅かすように指示したタイミングで、その任務をその人の殺害に置き換えるはずです」
「……えっ?」
「貴女は利用されるだけされて、その後はポイされますよって言ってるんですよ。バカっぽいというか、事実特に何も考えずにここまで来たでしょう?」
「バ、バカ!?」
「ええそうですよ。『これまでのことは水に流して仲良くしよう!』って言えば、誰でも喜んで『分かった! よろしく!』なんて言うわけがないでしょうに」
私が今話しているこの人は、私と同じように地上から偶然アリウスにたどり着いたトリニティ生、聖園ミカさん。どうやら私たちと仲良くしたいらしいのですが、あのババアがいる限りは無理でしょうね。
きっと聖園さんの思いは踏み躙られ、トリニティは混乱に陥り、ゲヘナも少なく無い被害を受けるでしょう。そこからさらに戦争に発展してしまえば、もう収集がつきません。キヴォトスはおしまいです。
まあ! 私が貴女に気づいた時点で勝ったも同然ですが!!
あのババアは油断しています! 子供が大人を出し抜けるはずがないというか、恐怖があれば押さえつけられる的な、そんな考えを抱いています! バカですね。実にバカです。聖園さんにも負けず劣らずのバカです。
確かにアリウスの自治区にはそこら中にババアの目や耳があるでしょう。しかしそれを潜り抜ける方法が無いとは言っていません!
そして私や私の仲間たちはババア視点では忠実な道具を演じ、他よりも質のいい武器や食料を得ているので、こう言っては何ですが栄養状態も教育も悪い他の皆に比べれば圧倒的優位に立っていると言えます!
「聖園さん。貴女には私が何かをしようとしているという事だけは伝えておきます。作戦には必要に応じて巻き込みますが、基本的には何も考えなくて結構です」
「そ、そんな言い方は無くない!? これでも私、トリニティで一番偉いティーパーティーの一員なんだけど!?」
「存じ上げませんが」
まずは仲間内で情報共有ですね! 口頭での会話はババアに聞かれてしまいますから、手段は考えないと。あとはスクワッドとも話して……アレも準備して……いいですね。楽しくなってきました!
それから聖園さんは、やはりババアの指示を受けたサオリの命令でアズサに百合園さんを殺され、徐々に当初の目的すら見失っていってしまいました。
流石にそれは私の計画に差し支えるので、私の方でフォローしました。死体は見たのかとか、血はあったのかとか、本当に死んだのかとか、そういう適当なことを言って。え? 実際のところ? 知りませんよそんなの。
とりあえずこれで暴走するようなことはない……はず。まあ、暴走しても特に問題はありせんがね。
そんなこんなで私の「ババアぶっころ計画」も大詰めです!
まずは聖園さんをいつものように自治区へ呼び出し、ちょっとお願いして鎖で縛った写真をティーパーティー宛てに郵送!
そしてそれに対して何かしらの解釈をして送り込まれたトリニティの大部隊を、私の仲間がカタコンベへ誘導!
全戦力がカタコンベに突入したころを見計らってカタコンベを爆破! トリニティは大混乱!! ……というのが、表向きの計画ですね。
誘導して爆破するところまでは私の計画と同じです。そこから先は、まるで違いますけども。
まず、爆破するのはカタコンベの要らない道。一本道にしてしまえば、勝手に道が増えるわけではないんですし、案内無しでも迷うわけもありませんからね!
このために、ババアには適当なことを言ってカタコンベの警備をするフリをして、爆弾を設置してきたわけです! 今頃どんな顔をしているのでしょうねえ!
さて、突入してきたトリニティの大部隊はアリウスの自治区まですぐにたどり着いてしまうわけですが、それは当然自治区の皆は私から計画を聞いて──無いので対応できません! あはははは!
スクワッドも聞いてた話と違って、今頃私を探し回っている頃でしょうか? ババアも顔を真っ赤にして……ああ、最初から真っ赤でしたね! わはははは!!
見てください聖園さん! これですよ! これが見たかった! この地獄が! この戦場が! 私の生きる場所なんです!!
「ムイちゃん……?」
「……聖園さんはもう自由にしていただいて大丈夫ですよ。あとは混乱に乗じて、ババアの首を取るだけですから」
「ま、待ってよ! 私、まだ何も分からないんだけど!?」
うるさいですね。最初から私は私のしたいことをしているだけなんですよ。
アリウスは私にとって楽園のような場所でした。しかしそれは、皆にとっては地獄のような場所であるということ。だから、私はこの楽園を壊さなければならない。でもどうせ壊すなら、最後に最高の楽園を作ってからにしたい。
たったそれだけ。それだけのために、状況を理解できないアリウス生は攻撃され、乗り込んできたトリニティ生も怪我をする。あぁ……良い……! これでこそ、生きていると言える……!
私は聖園さんから逃げ、木の人形さんが召喚したよく分からないやつをトリニティに押し付け、バシリカでババアと相対しました。
「……これは、どういうことですか。ムイ」
「それなりに楽しかったですよ! ババアのおままごと!」
「ムイッ……貴様ァ!!」
起爆装置ぽちー、ババアの真上の天井ばーん、ちゃんちゃん。
あまりに呆気ない幕引きに第二形態でもあるのかと警戒する私でしたが、瓦礫の下から気絶したババアを引き摺り出すと、ようやくこれが現実だと理解できました。……そんなぁ!
うろうろと歩き回って調べてみると、どうやら後ろのトゲトゲの木みたいなやつに誰かをくくりつけないと、ババアは本気を出せなかったようです。残念! でも誰かを犠牲にはできませんからね。仕方ありませんね。
そして仕方がないので追ってきた聖園さんと第二ラウンドです!
私は苦しみの中で生きるんです! 貴女たちの隣では、歩けない! ずっとこれを続けるなら、誰も巻き込まない場所でやるしかないんです!!
「でもっ……私たちは、友達だから!」
「うるさい!! 私のこれはマイノリティじゃなく、アブノーマルと言うんですよッ!! ただの少数派なら隣で歩けても、根本的に違う存在が一緒にいられるはずがない!!」
「ティーパーティーの権限でたくさん戦えるようにしてあげられるって言ったら!?」
「降参します!!!」
こうしてアリウスはトリニティに統合され、サオリは生徒会長に就任しました。
私は聖園さんとの約束通り、正義実現委員会に所属できるようになりました。アリウスの決戦兵器だなんて、大層なあだ名も付きました。
……実は、最後は残しておいたヘイロー破壊爆弾を抱えて川に飛び込もうかと考えていたんですけどね……まだ戦いの中で生きられるのであれば、それはそれで構いませんから! 今は死ななくて正解だったと言えます!
「怒涛の勢い過ぎて、結局よく分かんないじゃんね……」
「毎日が楽しければ、あとは皆で協力してボロを修正し続ければいいんですよ。そうすれば、見かけの上では綺麗なわけですから」
「……ムイちゃんのこれまでのことを考えるとこんなことを言うのはアレだけど、能天気で羨ましいね」
「難しいことは分かりませんから! 派閥とかそういうのも!」
派閥と言えば、私はどうやらパテル分派という風に扱われているんですよね。確かに聖園さんとはよく話しますし、今の立場もこの人のおかげですけれど……派閥に入った覚えはありませんよ?
今だってなぜか聖園さんに膝の上で抱えられた状態で座ってお話していますけど、それだって多少親しくさせていただいているというだけですし。
多分、被害者扱いで裁かれなかったことについて、色々と思うところがあるのでしょう。百合園さんの件で精神的に追い詰められていた時期に支えになったというのもあるかもしれませんけど。
あ、そういえば百合園さん生きてたみたいですね。びっくりです。アズサのやつ、殺せないかな? とは思いましたけど、まさか本当に殺せないとは。
「ムイちゃんは、何かしたいこととかってある? アリウスじゃ、こうしてのんびりすることもできなかったんでしょ?」
「そうですね……やりたいこと……目標……夢……あっ、一つありますよ。最近できた夢が」
「え、本当! 私にできることがあれば、何でも協力するよ?」
「……良いんですか?」
「もちろん! 友達でしょ?」
「なら、ナギサ様の椅子になりたいので、フィリウス分派に入れるように取り計らうことってできますか?」
「は??」