ブルアカにドMを生やしただけ   作:ナギサ様の臀部

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エピローグ

「……」

「……あの、別世界のムイさん? そろそろいいですか?」

「……」

「ナギサ様の命令ですよ! そろそろ満足したらどうなんですか!」

「あっ、いえ、きっと疲れているでしょうし、しばらくこのままでも大丈夫ですよ?」

 

 ははは何をおっしゃいますかナギサ様。お疲れになっているのはナギサ様も同じですし、その原因はそいつなんですよ? とりあえず叩き起こしてテラスから投げ捨てますから一度離してくださいミカ様!

 

「ミカ、絶対に離すんじゃないよ。離したらまずいと、私の勘が告げている」

「ムイちゃん一回落ち着こっか!」

 

 はい。色々ありましたが、私たちは無事トリニティに帰ってくることができました。「私」についてはまだ話し合わなければいけないことが多々ありますが、とりあえずサンクトゥムタワーや破壊された街の復旧が終わるまでは、私の方で預かることになりました。

 

 虚妄のサンクトゥムの騒動から始まった全ての元凶たる「私」ですが、トリニティに帰るなりすぐさまナギサ様のもとへ走って行ってしまいました。

 

 それ自体は構わないんですよ? 「私」なら悪いことはしないでしょうし、もう死のうとは思わないはずですから。問題なのは、ナギサ様に飛びついて無言で泣き始めてからぴくりとも動かなくなってしまったことです。

 

 ……これはナギサ様に迷惑をかけるこいつをうざったく思っているだけで、全然羨ましいとかそういうのじゃないんですからねっ! ミカ様に止められていなければ、私は「私」をテラスから適当な手榴弾と一緒に投げ捨ててましたけど!

 

「……バカだの、おバカだの、大バカだのと言っておいても、結局はその程度ですか、『私』……」

「むっ、何が言いたいんです?」

「『ナギサ様がそこにいる』ということは、当たり前のことではないと言っているんですよ。……あなたはこれまでに一度でも、こうして自発的にナギサ様に甘えたことがありますか? 無いでしょう?」

「ぐむむっ……!」

 

 「私」は私ですから、多少言葉が足りずとも言いたいことは伝わります。ナギサ様に……いえ、しかし私は……ううっ、でもナギサ様……!

 

「……ミカさん、ムイさんをこちらにお願いします」

「はーい☆」

 

 ミカ様にひょいっと持ち上げられて、足が地面につかない以上は抵抗のしようもない私は、ナギサ様のそばまであっさりと連行されました。

 

 そしてミカ様は、ナギサ様のふとももに顔をうずめてメソメソ泣いている「私」の上に私を重ねました。

 

 ……ひょえ?

 

「よく頑張りましたね、ムイさん。ムイさんは、もっと欲張りになってもいいんですよ? ムイさんの頼みなら、私にできることは可能な限り叶えて見せますから」

 

 あたたかい。やわらかい。いいにおいもする。脳が溶けるような、魂が弾け飛ぶような、そんな感覚の中で私が理解したのは、今私がナギサ様に抱きしめられているということでした。

 

 あ゜っ゜……し、しかし! これは以前にも経験がありますっ! まだ耐えられますっ! それに、ナギサ様に抱きしめられながら意識をどこかへ飛ばしてしまうなんて、そんな無礼な真似が許されるわけがありません!! 

 

 ……あっ、おまけに、ほっぺにちゅーまでされちゃいました。

 

 えっ、あっ、あっ、ナギサ様──

 

 

 

 

「……おや、眠ってしまいましたか……ミカさん、すみませんが、ムイさんたちを余っている椅子に座らせてあげてくれませんか? このままだと動けませんし、足も痺れてきていまして……」

 

「あの、セイアさん? どうして布団を持って来させて……えっ、ちょっ、ミカさん!? どうして私ごと……!?」

 

「あのっ、確かに私も寝不足ですけど、まだ終わらせないといけない仕事が──」

 

 

 

 


 

 

 

 

 別世界の先生とシロコ*テラーさんについては、暴走した私を止めるために頑張っていたということで特に処罰される理由も無かったので、今では普通に生活しています。

 

 しかし先生は先生ですから、ただ穏やかに日常を過ごすだけというのは性に合わなかったようで、シャーレの支部をアビドスとゲヘナとブラックマーケットの近くに建てて、そこで二人目の先生として活動しているようです。

 

「お久しぶりです、先生。調子はいかがですか?」

“久しぶり。変わりはないよ”

「それは良かったです! 『私』が色彩の力で無理やり復活させたらしいですから、何かの拍子に塩の塊にでもなってしまうのかと心配していたんですよ?」

“それはちょっとジョークにならないかな……”

 

 この先生、なんと「私」が色彩の力で強引に延命していただけで、本来は瀕死かつ回復の見込みのない怪我を負っていたとのことです。しかしアトラ・ハシースの中で色彩の力を浴び続けているうちに肉体が変化して、奇跡の復活を遂げたのでした。

 

 病院で受けた精密検査の結果は、とりあえず健康とのことでした。ヒトなのかどうかは怪しいところだそうですが……まあ、元気なら何でもいいですよね!

 

“色彩はどうなったの?”

「色彩は『私』の中に封じられたまま出て来れそうにない……というか『私』自身が引き出し方を分かっていないようで、とりあえず無害だそうです!」

“それは安心……なのかな?”

「常に神秘が反転されるやつも最近はなくなったみたいで、いつも物足りない物足りないと呟いているくらいですね」

“そ、そっか”

 

 そんなに物足りないならCHAIRSの十二席にでもなればいいと私は思いましたが、まだ彼女の処遇を巡る議論は終わっていませんからね。それまではおあずけです。それもまた心地よいものでしょう?

 

 あっ、そういえばアトラ・ハシースの箱舟ですが、アビドス砂漠に不時着したので、解体してアビドスの資金源にしてほしかったところに、カイザーが首を突っ込んできたんですよね。

 

 面倒だったので、頑張ってカイザーは土江グループの一部とさせてもらいました! いやあ、次席と四席と協力してカイザーの機密情報を盗み出すのは、なかなかスリリングでした!

 

 そうしたら、今度はアビドスの土地の大半をトリニティの行政官の実家が経営する会社のものになるという、政治的に厄介な問題が生じてしまったので、とりあえず適正価格でアビドスに買い取ってもらいました。

 

 すると今度はアビドスに元々あった借金がかさ増しされてしまったので、砂漠の緑地化や砂漠を利用したビジネスなどで経済支援をして……でもそこにさらにちょっかいをかけてくる人たちもいて……。

 

 政治と経済の話は苦手なんですが!? 私には荷が重すぎます! 八つ当たりとしてビナー! あなたは近いうちにスクラップになってもらいますよ! 砂漠をこれ以上広げられるのも面倒なんです!!

 

 あと連邦生徒会の防衛室長! 逃げようったって無駄ですよ! あなたのカイザーとの取引は全て把握しています! 大人しく投降しなさい!

 

“……ムイ、改めて、本当にありがとう”

「どうしたしまして!」

“ずいぶん軽く流しちゃうね!?”

「アトラ・ハシースの箱舟の攻略の時よりもここ最近の方が忙しくて、あまり細かいことを考えたくないんです!」

“そ、そっか……何か助けになれることがあったら遠慮なく言ってね。ムイは何でも一人で抱え込もうとする所があるから”

「あー、あー、聞こえません! 耳の調子が悪いかもしれないので、アビドスに立ち寄ってから帰ります! それでは!」

“あっ、ちょっとムイ!”

 

 たまには頭を空っぽにして遊んでいたいのに、立場と環境がそれを許してくれません。私は先生が引き止めようとするのも気にせず、すれ違ったテラーの方のシロコさんに挨拶をして、シャーレの建物を飛び出しました。

 

 

 

 

“……あれ? アビドスって今、砂嵐が吹き荒れてなかったっけ?”

「ん、過去最大級」

“……えっ”

 

 

 

 


 

 

 

 

「探しましたよ。また家出なんてして……まだ納得できないんですか?」

「……だって私、アトラ・ハシースと色彩の力で好き勝手したんですよ?」

「誰もあなたを裁きませんでした。これで話はおしまいです」

 

 悪いのは世界、原因は色彩ということで、「私」は何の罪に問われることも無く、土江ムイとしてトリニティに通えるようになりました。もちろん同姓同名の別人ですよ!

 

 しかし本人はまだ納得できないようで、たびたび家出してはまだ砂漠に残っているアトラ・ハシースの箱舟の残骸を眺めています。

 

 この世界のシロコさんも反転させてアヌビスコンビになってもらおうとしていたこと、そんなに気にしてるんでしょうか? それとも自殺手段を作ってもらうためにゴルコンダさんを誘拐したこと? 許してもらったんですから、吹っ切れてもいいと思うんですけど、そう簡単な話でもないのでしょうか?

 

 来る場所が決まっているのは探す手間が省けて楽なのですが、まず逃げないで欲しいものですね。次席とは前の世界での別れ方が別れ方だったものですから、顔を合わせずらいのは理解しますが。

 

 前なんて一人称が「小生」の変な大人に絡まれてたんですよ? ちなみにその人は一目で悪い人と分かったのでボコボコにして追い返しました。

 

「まさか、ナギサ様の最後の命令は忘れていないでしょうね?」

「……『生きてください』でしょう?」

「ただご飯を食べて、息を吸って、心臓を動かすだけ。それは果たして生きていると言えますか?」

「……」

 

 なら生きるとはどういうことか、なんて質問はやめてくださいね? そんなの私だって知りませんから! でも、「私」と違って私は生きていると胸を張って言えます! 理由はよく分かりません!

 

「じゃあ、どうしろと?」

「……私の好きな言葉……『私』も好きな言葉にあるじゃないですか」

 

 

 

 

『どんな時でも下を向くな』

『顔を上げろ。空を見ろ』

『じゃなきゃ見下されることもできない』

 

 

 

 

「忘れたとは言わせませんよ?」

「……」

 

 それに、何もないとは言いませんが、アビドスはまだまだ発展途上です。こんな場所には人もいませんし、生きることがどういうことか考えるにはどう考えても不適です!

 

 何より、この世界にはまだ帰るべき場所が帰るべき場所として残っています! というかナギサ様のトリニティですよ? 死後数千年は残るようにしてやりますとも!

 

「とにかく帰りますよ! 私たちの帰るべき場所、トリニティに……そして、あまねく私たち(ドM)の始発点に!」

「あまねく、私たち……」

「ええ! アリウスの私も、アビドスの私も、ミレニアムの私も、生まれ育ったのはトリニティですから!」

 

 ぐずる「私」の手を無理やり引っ張って、私は帰路につきます。……もう終電無くなっちゃいましたけど、ここからなら一晩中歩けばトリニティまで着けますかね?

 

 

 

 


 

 

 

 

1:名無しの犬志望

先輩の犬にして下さいと言ったら泣かれてしまいました! 私はただ先輩の忠実な犬になりたかっただけなのに!

 

2:名無しのトリニティ生

時代は廻りますのね……。

 

3:名無しのトリニティ生

ああ、「また」ですわね。

 

4:名無しのトリニティ生

いるんですのよこういう方が。世代を経ても、いつの時代も。

 

5:名無しのトリニティ生

イレギュラー……実在したんですのね。

 

6:名無しの犬志望

このスレならトリニティのOBの方や有識者の方に意見を頂けると聞きました! どうすればいいですか?

 

7:名無しのトリニティ生

うーん、とりあえず無理やりは良くありませんわね。

 

8:名無しのトリニティ生

イッチの立場にもよりますわね。家柄とかコネとか、椅子……もとい犬になるために考えるべきことは結構多いんですのよ?

 

9:名無しのトリニティ生

何はともあれ、認めますわ。今この瞬間から、あなたはCHAIRSですわ。

 

10:名無しのトリニティ生

とりあえず空席の首席にでも据えましょうか。きっと似合いますわよ!

 

 

 

 








 これにて完結です。長い間ありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。

(追記)
 入れたかったセリフを忘れていたことに気づき、今更ですがちょっとだけ書き足しました。
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