ブルアカにドMを生やしただけ 作:ナギサ様の臀部
667:秘密の椅子
流石のイッチも悩んでますわね……。
668:秘密の椅子
そりゃそうですわ。突然テスト範囲も、合格点も変わって、会場もゲヘナに指定されたうえで、時間まで早朝だなんて言われたんですもの。
669:秘密の椅子
しかも会場に着いたかと思えば、温泉開発部がドカーンですものね。
670:秘密の椅子
笑っちまいましたわ。そこまでやりますのね、ナギサ様は。
671:秘密の椅子
違いますの……違いますの、イッチ……違いますの……ワタクシはただ、言われた通りに温泉開発部を誘導しただけで……まさか、まさかそこが試験会場だなんて知らずに……。
672:五席
これはライン超えてますわよね〜?
673:秘密の椅子
いくらイッチが忠誠を誓ったところで、ナギサ様は補習授業部を疑い続けますし、いずれはイッチも排除されかねませんわ。
674:秘密の椅子
CHAIRSはナギサ様の椅子ではなく、イッチの部下でしてよ! あの子を傷つけるのなら、それが例えナギサ様でも容赦しませんわ!!
675:秘密の椅子
このクソッタレのトリニティで、あの子はただ真っ直ぐであり続けましたわ! ただナギサ様の椅子になりたいという夢のために、ひたむきに頑張り続けましたの! その結果がこれですの!?
676:秘密の椅子
目標がナギサ様の椅子でなければ泣けるんですけどね……。
677:次席
点呼を取りますわ。2。
678:三席
唐突ですのね、3……。
679:四席
4……温泉開発部に潜り込めるようにしたのはワタクシ……嘘の情報をそれらしく流したのもワタクシ……あら? こんなところにショットガンが。
680:五席
5! 早まってはいけませんわよ、四席。まずはイッチの無念を晴らして、その後に責任を取ればよろしいのですわ〜!
681:六席
6。ご安心を。ショットガンでダメでも、ワタクシのクルセイダーちゃんがいますわ。最後は内部に詰め込んだ爆薬で、ワタクシもクルセイダーちゃん諸共消えますわ。永遠に。
682:七席
7、こちら医療班。先日の作戦での負傷者多数。人員が足りませんわー。応援頼みますわー。
683:八席
8……あっ、タコ8。
684:九席
9。あらあら、後付けのタコはルール違反でしてよ。
685:十席
10……タコ8やってる場合ではなくてよ、八席。
686:秘密の椅子
コテハン持ちが全員……!
687:秘密の椅子
来ますわ次席!
688:次席
何も来ませんわよ。勝手に行動を起こしてる班がないか確認したかっただけですの。とりあえず七席のところには適当に何人か回しますわ。
689:七席
>>668
感謝ですわー。
690:秘密の椅子
しかし、先生はこれからどうするのでしょうね。
691:秘密の椅子
ナギサ様がガチガチに妨害しに来てますものね。イッチに内緒でワタクシたちまで動員して……。
692:秘密の椅子
どうもこうもありませんわ! 補習授業部には頑張ってもらうしかありませんもの!
693:秘密の椅子
そしてワタクシたちがまた妨害に駆り出されますの?
694:秘密の椅子
はぁー(クソデカため息)やっぱやってられませんわ、こんな仕事。
695:次席
ご安心を。次なんてありませんわ。
696:秘密の椅子
!?
697:秘密の椅子
!?
698:秘密の椅子
>>695
次席……まさか、ヤっちまいますの!? 今、ここで!
699:秘密の椅子
よろしい、ならば戦争ですわ!
700:秘密の椅子
次席から十席まで各数十人回してもスレが動くレベルでCHAIRSに人がいることは判明してますものね! 取れますわよ、天下!
701:次席
落ち着きなさい! まだですわ。とりあえず皆さん、いつでも戦えるように準備をなさっておいてくださいまし。深夜の呼び出しにも出られるように、端末の通知もオンにしておきなさいな。
702:四席
仕事の時間ですの?
703:次席
今回は四席の任務は特にありませんわ。全員待機ですの。どうせ皆さんのうちの大半は家でゴロゴロしてるだけでしょう? 銃の手入れはしっかりしておくように!
704:秘密の椅子
>>703
なぜバレましたの!?
705:秘密の椅子
じ、銃の手入れ……パーツ足りてましたっけ。
706:秘密の椅子
あら? ワタクシの銃はどこですの?
707:秘密の椅子
……この前新調しようと思って売って、それっきり買い忘れてましたわね……。
708:秘密の椅子
キヴォトスに住む人間の姿ですの? これが……。
709:五席
せっかくですから、ワタクシのコレクションを大放出ですわ〜! 火器が必要な方は教えてくださいまし〜!
710:秘密の椅子
五席の銃……ほとんどがミレニアム製のヘンテコなヤツではありませんの?
711:秘密の椅子
サーモバリックはルールで禁止ですわよね?
712:秘密の椅子
特殊部隊はルール無用ですわ!
713:十席
調整が必要な方はワタクシの方へどうぞ。皆さん一人一人に合わせて最適化しますわ。おそらくあまり時間はないでしょうから、一人あたりにかけられる時間は限られてしまいますが。
714:秘密の椅子
あ、ならお願いしますわ。この前直射日光であっためて目玉焼きが焼けるのか試したら白身が取れなくなりまして。
715:秘密の椅子
バカがいますわ。ワタクシはスライムを撃とうとしてひどいことになったのでお願いしますわ。
716:秘密の椅子
バカしかいませんわ!
717:八席
ではワタクシもお仕事ですわ。弾薬、手榴弾、不足してるパーツ、何でもござれですの。これから発注しますから、必要なものがある方は言ってくださいまし。
718:秘密の椅子
ゲーミングチェア!
719:秘密の椅子
最新機種のパソコン!
720:秘密の椅子
>>718>>719
そういうことではありませんのよ?
721:秘密の椅子
忙しくてなってきましたわね! 夏の課題が終わりませんわ!!
皆で協力して、頑張って勉強して、臨んだ第二次学力試験は会場が爆破されて不合格ってことにされちゃいました。
私はその辺の泥水を被って私が私だってバレないようにして温泉開発部と戦ってましたが、一手遅かったようです。
ナギサ様は、どうして……。
「ティーパーティーのお偉いさんが本気で邪魔しようとするなら、どうにもできないでしょ!?」
あの日の晩、コハルが言ったあの言葉は、別に私を指して言ったわけじゃないのは分かります。しかし、私では役に立たなかった。
私にはあそこから逃げ出すことしかできませんでした。コハルの引き止める声は、聞こえないフリをして。
ナギサ様とは会う許可が下りませんし、同じようにミカ様とも会えないままです。
私が門前払いを食らった直後に別の人は部屋に通されてたので、私だけは入れるなと言われてるのでしょうね。
あの日から、補習授業部には顔を出してません。もう6日も経ちました。ご飯と水は最低限摂ってるけど、何のやる気も湧きません。
あと一日で、補習授業部最後の学力試験……最後の1週間なのに、私は何もしていません。コハルはまだ一人でも大丈夫とは言えないはずなのに。先生も教えなきゃなので、ご飯とか洗濯は私が手伝わないといけないのに。
皆が一番忙しい時期に、私は過去の苦しみに向き合うという名目で、いつまでも現実から逃げていました。
そんな苦痛に快楽を感じている自分が、本当に嫌になります。
救いようがない人間というのは、こういうのを指すのでしょうね。
“久しぶり、ムイ”
「……あと3分で鐘が鳴りますよ。先生は体がキヴォトスの人間よりも脆いと聞きました。居座るのは危険かと思われますが」
“それでも、放っておけないよ”
「……はぁ」
夕方のトリニティの鐘楼の、鐘のすぐ横。プールで見た夕日はもっと綺麗だったな、なんて思いながらそこに座っていた私のもとに、先生が現れました。
私がここに来ることを知っているのは、ハスミさんくらいのものです。しかし鐘楼はトリニティの中にいくつもあるはず。かなり汗をかいている様子を見るに、全部見て回ったのでしょう。
流石に先生の耳を壊すわけにはいかないので、建物の中へ退避しました。
「……」
“……”
「…………コハルはどうですか? 勉強、頑張っていますか?」
“うん。いつまでもムイに頼りきりになってちゃいけないって、前にも増して頑張ってるよ”
「そうですか……」
先生はあくまで私の話を聞くという姿勢らしい。この際なので、私は全て話してしまうことにしました。
「私、ナギサ様の椅子になるのが夢なんです」
“……椅子?”
「はい。物理的にも、比喩的にも。ナギサ様が安心して体を、心を預けられる。そんな存在になりたいと、一目見た時から思っていたんです」
あれは、中学生に上がる直前くらいのことでした。
なんということはありません。ただ、たまたま喫茶店で楽しそうに話すナギサ様の姿を見ただけのことです。
それが誰なのか、どんな立場の人なのか、そんなことは知る由もありません。でも、ずっと忘れられずに過ごして、高校生になってから彼女がナギサ様であることを知りました。
「偶然親しくなった行政官の方のツテでフィリウス分派の仲間になって、雑用でも何でも片っ端からこなして能力を見せて、少しずつ立場を上げて、ナギサ様の側まで来たんです」
そこからは、匿名掲示板なるものに希望を見出し、今の私とCHAIRSができたわけです。
今になって思えば、おそらくCHAIRSはナギサ様の指示で試験の妨害に一枚噛んでいたのでしょう……主席だなんて称号も、役に立ちませんね。
「半分くらいは夢が叶ったんです。叶ったはずなんです」
夢の果ての景色は、思い描いていたものとは違いました。でも、確かにここがゴールなんです。
他の全てから目を背ければ、これが理想なんです。
「主人が椅子を選ぶのであって、椅子は主人を選びません。椅子に心は要りませんし、椅子は勝手に動きません。私は椅子です。それなのに……分からないんです」
でも、目を背けることはできない。私は情け深いわけではありませんし、ナギサ様のためなら殺人も厭わないつもりですが、友人を捨てることはできません。
ナギサ様の行動を看過することも、できそうにありません。
「私は、どうすればいいのでしょうか」
でもその感情は、私の目指していたものとは真っ向から反するもの。
どうすればいいのか、私にはもう何も分かりません。
“ムイはどうしたいの?”
「……ある知人は言いました。忠実な臣下とは、時に主人に意見し、主人が道を違えないようにするものである、と」
先生に言われて、ようやく理解できました。
簡単なことです。腹が減っては戦はできぬ。ここ数日まともに食事を摂っていないんですから、そりゃあ頭が回らないはずです。
そんな状態で結論を出せるはずもありませんねそりゃ。バカですか私は。とりあえず持っていたカロリーバーでも食べておきましょう。
ええ、そうですね。はい。これまでだって結局、私がやりたいようにやってきたわけですからね。
それが良い方に転がるとは限りませんが、だから何だと言うのですか。
私にとっては苦しいことも悲しいことも、全部嬉しいことなんですから。
「……先生、今、補習授業部はどうなっていますか?」
“気になるなら、一緒に見に行こう。誰もムイのことを責めたり怒ったりなんてしないから”
遅ればせながら、私、土江ムイ! 戦線復帰でございます! 裏切り者だなんだという話がありますが、おおよそこの後の展開には想像がつきますからね! 楽しくなってきましたよ!
「ムイ姉!」
「ムイさん……!」
「ムイ!」
「戻って来たんですね……!」
「皆さん……何も言わずに勝手にいなくなってしまい、申し訳ございませんでした。皆さんが一番大変な時期だというのに、私は……!」
まずは補習授業部の皆さんに全力で頭を下げ……ようとして、ハナコさんに止められました。
「謝らないでください……ムイさんには、立場上のしがらみがたくさんあったんですから。……無理をさせてしまいました」
「違います! 私は、ただ、怖かっただけなんです!」
下手なことをすれば、私の急拵えの立場はすぐに他のトリカスに掻っ攫われてしまうことだろう。
隙を見せて、向こうも何かができる状態にあれば、何をしてくるのか分からないのが奴らだ。これだからトリニティは……。
「幸せは、しっかり掴んでいないと逃げてしまうんです……だから、今ある幸せが逃げないように他の全てから目を背けて、離さないようにしていただけなんです……! ナギサ様に見捨てられるのが、ただ、怖かった……!」
でもそれはそれとして、今になって色々考えてみれば、「今が幸せな絶頂ならば、突き落とされた落差は最高の
だから、もう何も怖くありません! ナギサ様と……もう、会えないことになってしまっても、この日々は忘れません!
「聞いてください、ムイさん。えっと、まず、アリウス分校というのはご存知ですか?」
「大昔にトリニティから追い出された、あの?」
「はい。アズサちゃんはそこから来た生徒だったんです」
「っ……!」
アリウスについての話は、以前どこかで耳にしたことがあります。
裏切り者……エデン条約……アリウス……なるほど、大体分かりましたよ!
「……私がトリニティの裏切り者だ、ムイ。桐藤ナギサのヘイローを破壊する任務を受け、こうして潜入していた」
「……なるほど、今は二重スパイのような状態にあるということですね」
「い、今ので分かるんですか……!?」
「流石、理解が早いですね」
これでも伊達に短期間で成り上がっていませんからね! このくらい朝飯前というやつです! 朝ごはんどころか、昼も夜も抜いてきちゃいましたけど!
「私も、この楽しい時間を壊したくなかったんだ、ムイ。補習授業部での日々は、知らないことばかりで……まだ、知りたいことがたくさんある」
「……トリニティの名所なら、私もよく知っていますよ。全部片付けて、堂々と青春しましょう? アズサさん」
「しかしムイさん、それは……」
ええ、そうですね。ハナコさん。おそらくハナコさんが私に期待していたのは、これからすることに手出しをしない程度のことでしょう。
あるいは、どこから情報を得たのかは存じませんが、CHAIRSに待機命令を出しておくとか。そんなところですよね。
……ですが黙って見ているだけなんて、耐えられません! この溜まりに溜まったフラストレーション! 全部全部本当の裏切り者と、話を引っ掻き回したアリウスのせいなんでしょう!?
「分かっています。大方、今日か明日にでもアリウスが攻めてくるのでしょう? そしてナギサ様を守るために、まずは攫わないといけない」
「では……」
「ええ、はい。遅くなってしまいましたが、私もようやく決心がつきました」
私は生徒手帳と、CHAIRSのスレ用の端末を机の上に出します。
「ナギサ様を裏切ります。私の夢は、この際どうなっても構いません」
「う、裏切るというほどのことでもありませんよ……?」
「でも、意趣返しくらいするのでしょう? であれば、私は最後の忠誠を尽くすだけです」
あとは筆箱の中から……ああ、ありました。カッター。
「私も同じように苦しまなければ、不平等ですからね」
“ムイ、何を……!?”
私は右手に持ったカッターを左手の手首に突き刺し、流れ出る血液を生徒手帳と端末にそれっぽくかけました。これならナギサ様も、良い感じに勘違いするはずです!
……あっ、リストカットってこうじゃなくて、切るだけでしたっけ。