何やってるんですか!?飛鳥さん! 作:駒鳥
父親はいるが病気を患っていてまともに働くことも出来なかった。だから、飛鳥は父親の分の食料とお金を稼ぐことが必要だった。
でも、飛鳥のこの時の年齢は五歳になったばかりで幼すぎた。
指を使いながらでしか数を数えられずまとも箸は持てないし、感情の制御が聞かず癇癪を起こすこともある。
何より、周りの子供達と違って普通の食事を摂っていないから村の中では一際やせ細っていて背が低かった。
そんな幼子が働いてお金を稼ぐことは出来ない。
働きたいと言えば店を追い出され残飯を投げられたり黒鼠と悪口を言われる。
飛鳥は父親の病気を治したいだけだった。
飛鳥は普通に生きたいだけだった。
ただそれだけなのに。
「ごめんな、こんな父さんで…………ごめん」
「……」
飛鳥はやせ細った手をぎゅっと優しく握ることしか出来ない。
父親は毎日謝る。
「辛いよな……ごめん」「何も出来なくてごめん」
「ごめんなさい……」と飛鳥が聞いていなくても謝るのだ。
飛鳥はどうして謝るのか分からない。
別に何も思わないのに。辛くない。
一番辛いのは貴方でしょ?
父親の病気は仕方の無いことで普通に生きられないのも仕方ない。
世界中を見れば貧困は多い。
飛鳥達だけじゃない。
これは飛鳥達にとっての普通だ。
だから…………。
父親が健康ならば飛鳥はそれで良かったはず。
「……私は……もうだめかもしれない……死ぬんじゃねぇぞ私の大事な息子よ…………」
「……」
飛鳥が塵漁りから帰ったと同時に父親の息が細くなっていた。
突然のことで飛鳥の頭は限界に達していた。
家に帰ったら父親は虫の息で遺言を告げている。
沢山の食料を沢山抱えた飛鳥の腕はそれを見た途端ぶらんと力が入らず垂れ下がり腕に抱えた物は全て床にぶちまけた。
今日は豊作でこれなら父親も満足にご飯が食えると、そう思って昨日より表情を豊かにして家に戻ったらこの有様だ。
空は黒くなって星が見える。
今から医者を呼んでも間に合わない。
飛鳥は父親の細すぎる手をぎゅっと両手で力強く握ることしか出来なかった。
飛鳥の父が息を引き取った日は、いつもより異常に村が静かで人一人の呼吸も聞こえないほどだった。
その日は村の中で飛鳥以外、誰も息をしていなかった。
━━━なんだこれは。なぜ体が動かない。
子供なんて何回も殺したことがあるだろう。何回も食ったことがあるだろう。
……なぜ。
━━村の者達は女以外全員殺して食った。
そこにはこいつくらいの年の子供が二、三人はいた。そいつらも全員殺した。
━━━━殺せ……殺せ………………もう時期朝が来る……。
━━━━━今にも死にそうな子供が生きていたって別に俺に害が出るわけじゃない。
━━俺が殺さなくても直ぐに死ぬだろう。
━━━━━━━だから
▼
飛鳥は知らない。
飛鳥と女以外の村民は全員殺されたこと。
村民を殺したやつは飛鳥を殺せなかったこと。
飛鳥が父親を看取ってしまったところを、化け物は動けず見ていたことも。
▲
「炎柱様。少しだけでいいので私と一戦お願いします」
「……ちゃんと立てるようになってから言えよ」
立っているだけでも足がプルプルと震える飛鳥に槇寿郎は手を差し伸べて言う。
正座で眠る代償がこれまでに大きいとは飛鳥は思ってもみなかった。
「ちょっとちょっと! 俺のこと忘れてねぇよな!? 何いい感じの体制になってるの!! 」
「黙ってください。うるさいです」
「辛辣ッ!! 」
「……」
(いつもこうなのか? 愉快な師弟だな……)
「私、足をちゃんと伸ばして普通に寝てきます。おやすみなさい」
「そうしろ。修行は明日でも出来るから体を休ませろよ。槇寿郎も後二日くらいいるし」
「━━━柱とは?」
「……」
「…」
「まぁいいです。おやすみなさい」
それでは……と飛鳥は寝所の襖を開け中に入り襖を閉めという一連の動作を終え布団にもぐりこんだ音が聞こえた。
勝炎が寝所の襖に耳をつけて耳を澄ますとすぅすぅと寝息が聞こえる。
「寝るの早くね?」
「お前に似たんだろ」
「……そうかな」
「「……」」
沈黙が起き、勝炎はもじもじと体を動かした。
勝炎は黙るより喋る方が向いていて沈黙もあまり好きではないのでどうしたらいいのかと体を幼虫みたいに動かすのだ。
槇寿郎はそんな勝炎を見てため息をついた。
「はぁ……言いたいことがあるのなら言えばいい。お前自身のことか、それとも飛鳥か? 」
「うん。相談したいんだ飛鳥のことで」
勝炎はもじもじした動きをやめピシッと綺麗な姿勢になって、俺は凄く真剣な話をしますというような雰囲気を出した。
(急に止まるなよ。きもっ)
勝炎の動きも、雰囲気の温度差も槇寿郎にとってクソほどキモかった。
でも、勝炎がこんなに改まって話をするのは珍しいことなので槇寿郎は耳を貸すことにした。
「飛鳥はね凄く努力家で真面目なんだ。だからどんなに辛い修行でもちゃんとやるし逃げようとしているところは見た事がない。だから言いにくいんだ…………飛鳥は鬼狩りには向いていないって。」
「……」
「鬼殺隊の皆は全集中の呼吸を使って鬼退治するでしょ? でも飛鳥は呼吸を上手く使えていないんだ。飛鳥がそういう出来ない体質なのかそれともただ努力が足りないだけなのか……」
「お前は飛鳥を最終選別に行かせないのか? 呼吸を使っていない剣士はそこそこいるんだ」
「行って欲しいと思う。飛鳥が憧れの存在に近づくためにも…………でもあいつ直ぐに無茶するから、俺の知らない間に死んでるかもしれない。呼吸を上手く使えなくて肺を破裂させるかもしれない」
「……そうか」
「死んで欲しくないんだ。俺の初めての弟子だから」
「そんなんじゃ、次の弟子を育てる時にもそうやって死んで欲しくないと喚いて、お前は弟子を止めるのか? 」
「違う。でも、怖いんだよ死んじゃうのが……もし死んだら、俺の手で殺したようなもんじゃないか」
勝炎のいつもの威勢は無くなってこいつ誰だっけと思うほど縮こまっていた。
槇寿郎だって息子達には死んで欲しくないし、普通に暮らして欲しいと思う。
もしかしたら槇寿郎より早く死んでしまうかもしれない。でも、いつまでこう思っているわけにもいかないのだ。
死んで欲しくないのなら死ぬほど強くして自分の身だけじゃなく人を助けられるほど強くしてやる。
「死ぬか死なないかは飛鳥次第だ。覚悟があるかないか。その覚悟がお前になくてどうする。まさか、鬼殺隊を辞めたのも覚悟が足りなかったからか? 」
「飛鳥には覚悟がある……俺には越えられないほどの」
パチンっ!!と空間を引き裂く程の大きな破裂音が槇寿郎の鼓膜を振動させた。
勝炎の両頬は真っ赤になっていて、自分で頬をぶっ叩いたとわかった。
突然ぶっ叩くので槇寿郎はびっくりした。
「よしっ!あいつ死ぬほど鍛えて死なないようにしてやろ!! 」
(!?)
頬を叩いたと思えば突然両手の拳を空に向け叫び出した。
「鬼に殺される前に俺が殺してやる!! 」
(?!??!!?)
勝炎がこんなに人を思うのは久しぶりで槇寿郎は感動していたのに……涙を返せっ!!と心の中で槇寿郎は叫ぶのだった。
今ここに飛鳥がいたら勝炎をうるさいですと言って軽くぶっ飛ばすだろう。
飛鳥はそれくらい辛辣だ。
「あ!一番相談したいこと忘れてた〜」
「月の呼吸って知ってるー?」
「早く言え!!」
飛鳥がもし起きていて、この話を聞いていたとしたらどうなるのだろうか。
今もこうやって聞き耳を立てて最初から最後までしっかりと聞いて…………
━━━━るわけはなかった。
ぐっすりとめっちゃくちゃ気持ちよさそうに眠っている。
人物紹介〜
継国飛鳥(つぎくに あすか)
主人公
辛辣
一心勝炎(いっしん しょうえん)
飛鳥の育手
温度差
煉獄槇寿郎(れんごく しんじゅろう)
勝炎の友達
家族愛
飛鳥の父親
謝罪
特別出演〜
上弦の参
明治コソコソ噂話〜
飛鳥の好きな食べ物はツツジやサツキなどの蜜が吸える花が好物だそうですよ。
ですが、誤ってレンゲツツジというツツジの一種だけど毒がある蜜を吸ってしまい、嘔吐や目眩を起こして死にそうになったことがあるとかないとか。
次回・・飛鳥様!良くないですからね!?