何やってるんですか!?飛鳥さん! 作:駒鳥
飛鳥の過去の話
「その反応……知ってるってことか!? 」
「いや知らねぇ」
「んだよお前!! その反応は知ってるやつだろ普通! 」
▼
「
「わかりました。文字ですね…………文字ってなんですか? 」
「文字は━━━━」
飛鳥は私の主人が突然連れてきた幼子だった。
その見た目はとても汚らしく、着ているものもボロボロで所々はだけていた。
ずっと俯いていて何も喋らない。ただ主人に手を引かれて歩いているだけだった。
主人が突然連れていたので私は大変焦った。
ここは孤児院じゃない、猫じゃないんだから、元に戻してきなさい。と何度も主人を叱った。
主人は言い訳ばかりで私の話を聞こうとしなくて怒鳴り声が大きくなるばかりだった。
「元に戻してきなさい! 」
「……っこの子はもう帰る場所がないんだ。だから連れてきた!!」
「!?」
その一言で私の頭は吹っ飛んだ。
私はその場で足が崩れ落ち、せっせっと忙しそうな使用人達の足は止まり全員その場で立ち尽くしていた。
主人はその光景にポカーンと口を開けている。
幼子はというと、正座をして俯いていた。
幼子は━━━━━正座をして寝ていたのだ。
すぅすぅと規則正しい寝息が静まり返った空間に溶けていった。
(この子いつから寝てたの!? )
(…………)
(うっそぉ! こんな状況で寝てるなんて……)
(最近の子はすごいのぉ…………)
(くっふふっ、笑っちゃダメ笑っちゃダメ。旦那様も奥様も見たことないほど面白いけどここで笑ったら……ふふっ)
(あら、よく見たら━━━━━━)
上から奥様、旦那様、使用人歴三年目、家令、見習い使用人でございます。
そして最後は私、使用人歴6年目の
「東! 今すぐ風呂の水を温めて。おじぃは新しい服を、ミナちゃんは布団を温めて。あなたは……そこで呆けていなさい!! 」
「「「御意」」
「はぁいぃ」
おや呼ばれてしまいましたね。
幼子に丁度いい温度のお湯を沸かしましょう。
▼
それからというもの、使用人達はいつもの何倍もバタバタと忙しくして、”継国”夫妻は第十三回目の家族会議を行っていた。
継国夫によると少し遠くまで散歩をしていたら血の匂いがしてそこまで走って行ったら、村の人達は女以外全員死亡していて見てもいられない惨状だったと。
女達は気絶しておりまともに話ができる人はいなかった。そんな中、ひとつの家だけ血の匂いがしなかったからそっとお邪魔すると、子供が父親らしき人の手を握って呆けていたと。
継国夫が近づいても反応せず動かなかった。
父親らしき人は血は流していないものの、痩せ細って見るに耐えなかった。
息はしておらず冷たかった。
子供はずっと動かないので継国夫は女達を起こし、村の人達を埋葬した。
その後にそこの子供のことについて聞くと、父親は病気でもおかしくないと言われていたそう。子供は五、六歳ぐらいの歳の子と言われたがそうは見えなかった。
━━━━━継国夫はふと思った。
なぜあの子供は生きているのだろうか、 あの子以外の子供達は全員殺されていた。
家の間が離れている訳でもない。
何故か女は殺されていない。
でもあの子は女の子ではなかったはず。
なら何故…………
継国夫が襲撃されていない家に戻っても子供はまだ父親の手を握っており、1ミリも動いていなかった。
「もう大丈夫……埋葬しよう。僕も、手伝ってあげるから……」
継国夫は子供の肩に手を置いて優しい声で囁いた。
触れた肩は五、六歳とは思えないほど痩せていて、酷く震えていた。
継国夫が肩から手を離そうとした時、鼻の啜る音と嗚咽が聞こえた。
その子はやっと子供らしく泣いたのだろう。
▼
「━━━━うあぁぁぁぁぁぁ…ぅっ……うぅあぁぁぁ……」
「━━置いていかないでよ……っ私はまだ一緒に居たかったのに…………」
「━━━━━前までは元気だったじゃないかっ…………なんでこんなにも手が冷たいのっ」
「━━━━━━━━私はっ、これからどうしたらいいのっ……」
声が枯れて上手く声が出せない。
涙で前が見えない。
▲
そして幼子が泣き終わった後、一緒に父親を埋葬して家を掃除した。
幼子は金銭や大事そうにしているものだけを布に包んで何処かへ行こうとしていた。
これに継国夫はうーんと頭を捻りだして、おずおずと幼子に配慮しながら提案した…………
『一緒に来ない? 』
「なんでそうなるのぉっ!! 」
「━━━ゴフッ…いたい…………」
何処にも行く場所がないだろうし……こんな小さい子が一人で生きていくのは難しいだろうし…………━━━あ! そうだ。連れてこ!! となったから悪気は無いのだ。
その言葉を聞いた途端幼子は涙をホロホロと流すし継国夫は大慌て。継国夫には子供はいないしあまり関わってこなかった。だから、どう接すればいいか分からない。
継国夫がオロオロしていると突然幼子が喋りだした。
『━━━お願い……します…………』
(はっ! この子可愛い! 絶対養う!! )
継国夫は幼子を抱え、寄り道せず帰路を突っ走った。
『姉さん……変な人いる……』
『しのぶ見ちゃダメよ』
「猫に一目惚れしたから連れて帰りました、と言ってること同じじゃないの。ちゃんと育てられるの? 命の重みを理解してるの? 」
「……スミマセン」
「はぁ、全く。そういうことはちゃんと相談してからするのよ。じゃないと皆困るでしょ? 私は別に……悪いとは言ってない」
「ならっ!」
「もう一度あの子が起きたら伝えるの。本当にいいのか……父親が死んですぐのことだったから色々と不安なこともあるだろうし」
「うん。ありがとう……」
そうして飛鳥は継国の名を背負うことになったのだ。
継国飛鳥。
▼
「飛鳥は覚えるのがとても得意ね。それに集中力もある」
「ありがとうございます」
「あ、そうだわ。今日から日記をつけてみない?」
「日記……とはなんですか? 」
「私が書いたのを見せてあげる。難しい文字も読めるようになったから大丈夫なはずよ」
継国
指で文字をなぞり日付の順番に音読する。
百合の文字は凄く丁寧で、形もお手本のようで飛鳥は目を光らせ惚れ惚れとしていた。
ふと、飛鳥が声をあげる。
「あ……」
「どうしたの? 飛鳥。なにか気になる文字でもあった? 」
「これって母様の夢の内容ですか?」
「うーん、そうねぇ…………これは記憶よ。私じゃない誰かの記憶」
百合は目を細め微笑む。
飛鳥はずっと日記を見ていて百合の方を見向きもしない。
何か日記に思い当たることがあるのだろうか。そう聞こうとしたが飛鳥の声によって遮られてしまった。
「でもここに継国と書いてありますよ?あと……これはなんて読むのですか?」
「━━━━
「先祖…………え? 」
思ったより図太い声が出てしまった飛鳥は、すぐ口を抑えつけ百合を見た。
百合の表情は変わらず微笑みを続けていた。
(やっぱり母様の目は赤くて綺麗!)
心の中で飛鳥は親指を立てた。
それから百合は先祖様について語った。
これはもう何百年前の話…………
百合が見たものは少なかった。
でも、少ない中での記憶は結構濃かった。
弟が巌勝の剣術を稽古していた者を打ち負かしそれで急に喋りだしたり、急に母が身ごもったと弟に言われその弟は寺に行ったと思いきや行方不明。
再開した時は鬼に襲われていたところを弟に助けてもらい巌勝は妻子を捨て鬼殺隊に入った。
鬼殺隊に入った後は月の呼吸を使って鬼を倒しまくった……そこで記憶が終わってしまったらしい。
「……?」
百合の話を聞かされた時飛鳥の頭は
弟怖い。
鬼とは。
……でもなんか凄いんだなと何となくわかった。
「これはね記憶の遺伝と言って。記憶がその人の末裔に遺伝するのよ。わかる、なんかなるのよ、うん」
「そうなんですね、母様」
「うん、わかってないわね」
▼
「飛鳥、そろそろ次の紙面に行かなくていいの? さっきから何を眺めているの? 」
「母様……私、━━━鬼殺しをしたいです! 」
「!?」
初めてやりたいと言ったことがまさかの鬼狩り…………百合は驚愕して白目を剥いた。
我儘も言ったこと無かった子が、まさかの鬼を殺したいなど聞けば百人中百人は白目を剥くだろう。
狩りたいではなく殺したい、という言葉に百合は引っかかった。
「いいけど、殺すはやめましょう!物騒よ!!」
「良くないっ!絶対良くない!違う違うそうじゃない!! 」
さっきまで百合と飛鳥を和むなぁ……と襖の近くで座って見ていた見習い使用人のミナは思わず突っ込んでしまった。
(物騒だけど! 違う、そこじゃない…………)
人物紹介〜
継国飛鳥(つぎくに あすか)
主人公
子供
継国百合(つぎくに ゆり)
飛鳥の母
記憶の遺伝
継国夫
飛鳥の父
親切
友情出演〜
東(あずま)
おじぃ
ミナ
明治コソコソ噂話〜
飛鳥は継国夫が来るまでずっと父親の手を握っていたらしいよ。
飛鳥が腕いっぱいに食べ物を抱えて帰ってきたのは丁度日が落ちていた時、それから翌日の朝までずっと握っていたという。
一睡もして無かったから、継国家に行った後二日程寝ていて継国夫妻は心配して医者を呼んだらしい。
次回・飛鳥はもっと笑ってもいいのよ?