何やってるんですか!?飛鳥さん!   作:駒鳥

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第七話・助けて欲しいなんて言ってない

 

 

 

 

 

「なんで……買い物は…………? 財布は……? 飛鳥(あすか)ァァ!!」

 

 

 

「し り ま せ ん」

 

 

 

「はは……はははは…………」

 

 

 

「ついにおかしくなりましたね」

 

 

「おかしいのはお前だァ! 帰ってきたと思えば財布を失くしただどぉ? それに夜だ! 帰ってきたのは夜だぞ!? 俺は日が暮れる前に帰ってこいって言ったよなぁ!! 」

 

 

「言いましたっけ? 」

「すっとぼんけなよ!! 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「時間が経つのは早いな……」

「そうですか? 三年は長いと思いますが」

 

目の前にはいつもと違い、ちゃんとした格好をしている飛鳥。勝炎(しょうえん)は自分の刀を持っている飛鳥に少し寂しさを感じていた。

飛鳥が勝炎の元に来て三年、やっと三年が経ち飛鳥は最終選別に行くことを許可された。

 

「はいこれ。一応持っといて」

「これ……飴玉、ですか? 」

「いろいろと混ぜたやつ、喉にいい飴だよ。栄養もあるから体にもいいんだ」

「なんか……糞みたいな見た目してますけど」

「お前は感謝という言葉を知らないのか? 」

 

勝炎が飛鳥の手に握らせたのは、可愛い巾着に包まれた動物の糞みたいな色をしている丸っこい飴玉だった。

大きさはそれほど大きくはなく、目ん玉くらいの大きさ。数は五つ入っていた。

これは勝炎特製の飴玉。体にいいものと雑草を詰め込んだ甘くも苦くもない飴。でも勝炎が作る物はだいたい糞みたいな味がして不味いので味を気にするのなら食べない方がいい。

飛鳥は飴玉の入った巾着を懐に忍ばせた。

(口にすることはないと思うが、師匠が作ったものだから一応持っておこう)

絶対口にしないと決めて着物を治した。

 

「よしっ、準備できたな。━━━死ぬんじゃねぇぞ、俺の一番弟子よ」

「…………はい。行ってきます、師匠」

「行ってらっしゃい!」

 

勝炎は太陽のような笑顔をで飛鳥を送り出す。

飛鳥の姿が見えなくなるまで、ずっと手を振った。

 

 

 

 

「お願い……死なないでくれ━━━━」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「━━━━しまった」

 

 

飛鳥は自分に呆れた。

 

 

 

「迷子になってしまった…………」

 

 

 

勝炎に地図を渡されたのに地図を逆に見ていてしまい迷子になってしまった。

当たりを見回しても知らない道知らない森。知らないところすぎて、飛鳥の全身は汗だく。

最終選別が行われる藤襲山という場所まで行かなければならないのだが、飛鳥は全く逆方向に進んでいた。

地図を見ても分からない、周りに人はいないし道を聞けない。

飛鳥は詰んだ、と絶望した。

 

 

「終わった……藤襲山に行くまで二日はかかるのに、このままじゃ日が暮れて宿にも泊まれない」

 

飛鳥は道端で頭を抱え蹲った。

傍から見れば、全身黒っぽい色の何かが丸まって、熊とか猪みたいと勘違いされそうだ。真っ黒くろすけに声をかけるやつはきっと誰もいない。

しかも刀を所持しているしめっちゃ怪しい。

 

 

 

 

そんな奴に声をかけるなど、まじで誰一人……

 

 

 

 

「大丈夫か……? 子供……迷子か……」

「え?」

「可哀想に…………」

(……泣いている?? 急に喋りかけてきて、急に泣き出した……は? え? )

 

飛鳥は混乱した。目の前には、めっちゃ背が高く白目を向いて涙を出しながら可哀想に……可哀想にと呟いている男がいるからだ。

何か色々と全部強すぎる。

飛鳥の口はずっと開きっぱ。全身は金縛りにあったように動かなくなっていた。

 

「可哀想に……道を教えてあげよう……」

その言葉を聞いた途端、飛鳥の絶望はどこかへ吹っ飛び希望が芽生えた。

誰もいなかったはずの道に、凄いなんか凄い男の人が突然現れ道を教えてあげようと声を掛けてくれた。

飛鳥は表情には何一つ嬉しそうな顔をしていないが内心では

(神様っているのか。崇めさせてくれ! )

と男の人を神のように扱いめっちゃ嬉しそうであった。

 

「いいのですか? いいのですよね? 」

「あぁ……」

「私、藤襲山というところに行きたいのですが……分かりますか? 」

「それなら……━━━━━━━」

 

男の人は詳しく細かく分かりやすく道を教えてくれた。

見た目なんか関係なく思っていたより優しい人だと飛鳥は思った。

「ありがとうございます。あの、お礼をしたいので名前を聞いてもいいですか? 」

「うむ……私は悲鳴嶼行冥だ。お礼は要らない……」

「ありがとうございます。ですが……」

「大丈夫だ……。ここで道草を食うより……早く藤襲山に向かった方がいいのではないか……?」

「そうですね。悲鳴さん、ありがとうございます。」

「あぁ。道中気をつけるんだ……」

 

飛鳥はお辞儀をして足早にその場を去った。

 

 

 

 

 

 

行冥が教えた道を走っている飛鳥は思う。

 

 

 

(私名前名乗ってない……)

 

行冥にだけ名乗らせておいて自分は名乗らず。

とんだ失礼なことをしてしまった、と飛鳥は深く後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あなたは山を降りた方がいい。足を捻っていては上手く動けないだろう」

 

そう言われた時、頭がガツンとした衝撃が来たと同時に足の痛みがジンジンとさっきよりも痛んだ。

足は青くなっていて、動かす度に呻き声が出そうになる。そんな傷のまま鬼と戦うなんて出来やしない。

これは自業自得なんだ。

挑発に乗ってしまって、呼吸が乱れて頭が真っ白になった。あいつの首を斬りたくて仕方なかった。

私の大切な人を馬鹿にしたあいつが許せない。

殺してやりたい……

 

「嫌だ……絶対に嫌! 山を降りるならあいつを殺してから降りる! こんな怪我どうってことない……だから……」

「やめた方がいい。その怪我で一体何が出来る? あの鬼の餌になる気ですか? 」

「戦えるっ! 私はまだっ……」

「無理ですよ。きっとすぐ死んでしまう」

 

なんでそんな事言うの?

私はあいつに殺されない。あいつを殺すまで死なない。

片足は動かなくてももう片方ちゃんと動くから、刀は握れるから大丈夫……だから、戦える。

首を、斬らないと…………

 

「━━━あなたは強い。だからあんな奴に殺されるより生きて、もっと強くなってから殺しに来ればいい。仇を打つのは今じゃなくてもいいだろう? 」

「……でも、今殺さないと、あいつのせいで鱗滝さんがまた悲しい思いをすることになる…………今じゃないとダメなの」

「無理だ。あなたの今の実力じゃ殺せない。あなたがあいつに殺されて鱗滝という人を悲しませるだけ。わかったなら、ここから離れましょう」

「…………」

「……死にたいと言うなら置いていきますが」

「━━━━わかった、一緒に行く。でも、後で何発か殴らせてね」

「はい……はい?」

 

言うことが全部正直すぎるんだよ。

もっと何か包めなかったの? 優しい言葉をかけられなかったの?

失礼だよ?

 

あーあ。何か馬鹿らしくなってきちゃった。

 

「ねぇ、あなたの名前は? 」

「私は継国飛鳥です」

 

 

 

「私は真菰。ありがとう、飛鳥……」

 

 

継国飛鳥。

馬鹿正直で失礼なやつ。

 

 

後で顔面ボコボコになるまで殴ってやる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貧乏揺すりが止まらない。

さっきからずっと家をウロウロして、落ち着けない。

 

焦るな。なぜ俺が焦っている。

一番焦りたいのはあいつだろう?

 

怖くて恐怖で震えたいのはあいつだ、俺じゃない。

心配し過ぎなんだよ。

 

きっと大丈夫。

 

 

あいつは死なない。

俺が鍛えてやったんだ。死ぬはずがない。

簡単にくたばるようなやつじゃない。

きっと鬼を無表情で葬って、疲れたとかなんも思ってないだろ。

 

あいつは鬼に負けない。

 

だから、大丈夫。

 

 

 

落ち着け。

 

 

 

 

 

 

自分で絶望なんか想像するんじゃねぇ……

 

必ず帰ってくるから………………

 

 

 

 

 

心配要らない。

 

 

 

 





人物紹介〜

継国飛鳥(つぎくに あすか)
主人公
ストレート

一心勝炎(いっしん しょうえん)
育手
七日間震えてる

真菰(まこも)
飛鳥が助けてくれた
右ストレート

特別出演〜

悲鳴嶼行冥
迷子?

明治コソコソ噂話〜

勝炎特製飴玉の中身は勝炎ですら知らないものが入っていたりするらしいですよ。
まじで糞入ってるかもしれませんね。

次回・月の呼吸って何?
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