何やってるんですか!?飛鳥さん! 作:駒鳥
すみません次回予告詐欺しました。
「えっ!
口に手を当てて目をくりくりと大きく開けた真菰は、マジのマジで吃驚したような声と顔をして飛鳥を愕然とさせた。
さっきまで最終選別の事など忘れたいと思うように楽しく会話していたのに、年齢の話をした途端飛鳥は心の中だけでなく肉体を使って萎えを表した。何故、飛鳥が萎えたのか……それは、肉体と年齢があってないのを気にしていたからである。
この時代ならば背が低いのは仕方ないし、飛鳥の過去を見れば上手く発育が出来なかったのも仕方ない。
でも、飛鳥は気にしてた。
「違う……違う違う……私は身長が低いか? いや低くない」
どこぞの部下をいじめる上司のように飛鳥は否定する。
「そこまで気にしてるとは……━━━飛鳥って身長も低いし、筋肉もあまり付いてないよね。だから子供みたいだなって」
「ぐはっ…………」
追い討ちをかけるんじゃない……。飛鳥で遊ぶんじゃない……もういいじゃないか、さっきのことは。許してやれよ、真菰。
蹲っていた飛鳥がさらに団子虫のように背が丸まって、ガチ傷ついてますということがわかるほどだった。飛鳥は顔に表すことができないから体で表す。真顔でぐはっ、とか攻撃食らってて真菰はきもいな……と思ったのはここだけの話。
「十二か……そういえば私の弟弟子と同じ年齢だよ。」
うん、錆兎と義勇の方が身長高い。と一言付け足して真菰は悪気無さそうに言う。
それを聞いた飛鳥は伏していた顔を上げ、真菰を見て率直に言った。
「弟弟子が可哀想だ……」
なんと、真菰の弟弟子に情けをかけやがったのだ。
「は?それどういう意味?? 」
「そのままだが」
真菰は飛鳥を今にも胸倉を掴んで殴りそうな勢いだった。にこにこと人良さそうに笑っているのに、その笑みには眉間に皺が寄って口角もぴくぴくと震えて……もう一言飛鳥がなにか言えばきっと真菰の顔面は般若になってしまうだろう。
だから飛鳥は何も喋らず黙っていれば真菰を怒らせることは無いのだが━━
「姉弟子がこのような怖い人で弟弟子は可哀想だな、と思ったんだ」
飛鳥は黙った方がいいだろう。その口にチャックをしてあげた方が飛鳥のためにもなるし、周りの人のためにもなる。だから黙れ。
真菰が拳を強く握り締め、飛鳥に向けて拳を振り上げた。
「危ないな。何するんだ、さっきといい今も」
「飛鳥。黙ろっか」
まじで素直に殴られやがれ。避けるんじゃない。どうしてそんなに言わなくていいことまで言うの? 私の事怒らせたいよね。殴殺されたいの??
真菰は額に血管を浮かばせながら軽々と避ける飛鳥に拳を振るった。
▼
「飛鳥……あなたって鬼に嫌われてるの?」
「……」
真菰がそういうのも仕方ない。だって飛鳥が月の呼吸を見せてやるという話をしてから、何時間も経ったのに鬼は一向に現れず、二人は森の中で空中将棋をしたくらいだ。普通であれば鬼は人間の気配を見つけた途端それを探り、近くに来たら襲ってくるはずなのに誰一人として二人に襲いかかるものはいなかった。
まだ真菰と飛鳥があっていない頃、手がいっぱいキモキモ鬼に遭遇する前は真菰は三、四匹の鬼と遭遇して出会った鬼を全員滅殺していたが、飛鳥と出会い一緒に行動してみたらびっくり仰天なんと鬼と会わないし人とも会わなかった。しかも虫とか生き物とかにも会わないし、嫌われてる??となった。
だから鬼に嫌われてるんじゃないって言っちゃうのもしょうがなかったのだ。
飛鳥は真菰の問に一度は無視をして無言を貫いた。
(無言は肯定と捉えるけど……)
「もう一度聞くね。……飛鳥って動物に嫌われてるの? 」
今度は鬼だけでなく動物に嫌われてるのかと幅を広げて聞く。なぜ幅を広げたか、真菰は飛鳥に意地悪をしたいのだ。にっこりとした可愛い少女はさっきのことを恨んでいるから、あと気に入った男の子には意地悪をしたいと言うだろう。
「嫌われては、ないと思う。……私も少しよく分からないんだ」
「嫌われてないってどうしてそう思うの? 」
「その……」
飛鳥はごにょごにょと口を動かして、私は嫌われてませんという理由を話す。嫌われてないことについて飛鳥は断言出来るつもりだ。きっと真菰は何も口出しできまいな。
「藤襲山に来る前は動物に囲まれるくらい好かれていたはずなんだ。何もしなくても勝手によってきたり……食に困れば自分を食べろと言う眼差しを向けてきたり…………」
「えっと、うん。うん……最後のって、え?ど、え? もしかして飛鳥って姫とかそういう人物だったの? 」
「本当なんだ。それで私は鼠を食べてしまったという事実がある。……姫、とかはもしかしたらそうなのかもしれんな」
「全部否定して欲しかった」
今言ったことは全て事実である。真菰がどれだけ信用しなくてもこれは紛れもない事実。飛鳥自身も信じられないけど、本当にあったのだ。
飛鳥がまだボロっちい布切れを着ていた頃は、姫とかそういう可愛らしいものではないが汚い動物なら周りにたくさんいた。鼠、蚯蚓、蝿、烏、雀、栗鼠、蟻……などまだまだ沢山いるがごく一部を挙げるとしたらこの動物達だ。こいつらは何故かわからんが飛鳥の周わりによく居た。寝ている時も父の看病をしている時もお金広いをしている時も傍にいて、飛鳥に気味悪さを教えてしまった。害もないし、なにかする訳でもない。飛鳥が困れば助けた……ちょっとだけ頭のネジが外れているような行動をしてだが。
これは飛鳥が拾われてからも、
まるで、汚姫様。可愛い姫とは言ない。絶対に。
「でも、藤襲山に来たら動物達は全く来ない……なんでだろうね? 藤襲山が呪われてるとか、そういうのかな。」
「それは流石にないだろう。最終選別が行われていない時、鬼達は動物を食って腹を満たすはずだ。だから、全く姿が見えないのはおかしい」
「うん。飛鳥と一緒だね」
「…………私は人は喰わない」
「あ、そういえば。あの手がいっぱい生えた鬼……手鬼は何人喰ったんだろう。人型をしている鬼はせいぜい二、三人ってとこだし」
「あれは五十人以上喰ってるだろうな。他の鬼より匂いが凄いし大きさもだ。手鬼はずっと隠れて生きてきたんだろうな、じゃなきゃここを管理している人に見つかっている。」
「管理……ちゃんとして欲しいな。私達はあんな奴を殺せる程の力を持っていないのに、戦って死ぬかもしれない」
もし、管理をしている人があいつの存在を知って殺していれば、鱗滝さんの今までの弟子達は死ななくても良かったのに。鱗滝さんは後悔せずに最終選別に行く私を見送ってくれたのかもしれない。
あの時も今も真菰の感情は渦巻いてぐちゃぐちゃになりそうだった。
「あぁ。真菰、私達が生き残ってあいつの存在を知らせよう。あいつが知られていないのはあいつと会った人が全員殺されているからだろう。だから━━━━━」
「飛鳥! 後ろっ!!!!」
▼
気づいた時には遅かった。飛鳥に掛けた声も、痛くて動かしたくない足を必死に伸ばして避けようとしても、遅かった。
会いたくないと思っていた恨めしい存在するが私を助けてくれた人を、気持ち悪くて見たくもない手を伸ばして……掴んで、地面に叩きつけて……。あぁ、いやだ。さっきまで楽しく話してたのに、こんなことしてる場合じゃないってわかってたのに。少し気持ちが軽くなって楽になってたから、油断して、馬鹿をしてしまった。
飛鳥は頭を打って気を失っている。頭から血が出ていて危ない、きっと背中も折れているかもしれない。
なんで、ここにいるの。最終選別が終わるまであと少しって言うのに、なんでこんな所でまた会うの。
そんなに殺したいの? 私のこと。
そんなに恨んでるの? 鱗滝さんのこと。
飛鳥。ごめん、私はやれるだけやるから頑張って。
▼
「飛鳥!起きて、立って、刀を持って!!月の呼吸見せてくれるんじゃなかったの?! 」
必死に何度も叫ぶ。疲れても、手鬼に攻撃されても何とか避けて飛鳥に気がつけと声を掛ける。
「さっきは動きがガタガタですぐ捕まえたが、やっぱりすばしっこいなァ。でも力がない。そんなんじゃ首は斬れない」
「うるさい!黙れっ!!」
(お願い起きて。このままじゃカッコ悪く死んじゃうよ? さっきみたいに手をシュバって斬ってよ。私だけじゃ……無理だよ)
真菰の全身は汗だらけ。肩で息をしているし、動きも遅くなってきている。刀を握る手は震えていてまともに刀を振れる状態ではなかった。
足は怪我したところがジンジンと痛み出して悲鳴を上げている。もう動かすのも無理なはずなのに何とか引きずって技を出したり、避けたりしていた。
━━━━水の呼吸 弐ノ型 水車
━━━━ 陸ノ型 ねじれ渦
━━━━ 漆ノ型 雫波
「ぁがッ」
引きずった足でいくつかの技を出した。死にそうだと思いながらも死にたくないから足を無理にでも動かした。でももう限界が来てしまった。
手鬼に怪我を負っている方の足だけを掴まれ、頭を地面に向けてぶらんと揺れている。腕や手に力は入らず地面に向けて伸びているし、刀も落としてしまった。
もう終わりだ。
だんだんと掴まれている気色の悪い手が力を入れてきて足がボキと鳴らしている。
(飛鳥……)
飛鳥の足が少しだけ見えた。身体の方は手鬼に隠れて見えない。血で地面が濡れているのはわかるが飛鳥が起きているかは分からなかった。
ビクリともしない。まるで死んでいるかのようだ。
「飛鳥…………」
糞馬鹿野郎め。
━━━━飛鳥……。いつまで寝ているんだ? そんなんじゃ、大きくなれないぞ。
━━あの子のこと気にしてたじゃないか。飛鳥ならきっとこれ以上に仲良くなれる。だから起きて刀を握れ。
━━━━━━月なんてものにはなれなくていいんだ。偽物でもいいから
━━━困ってる人を助けてやれ。
温かい。温かすぎる手が懐かしく思う。声なんて、姿なんてもうあまり覚えていないのに。
寝ているんじゃない。気絶してるんだ。頭が痛くて立てないんだ。……私は小さくない。
助けてやりたいよ。でも身体中が悲鳴をあげてるんだ。怖くて無理だ、あいつに刀を向けるなんて手が震えてできない。
私はきっと、月には届かないのだろうな。
継国巌勝様みたいな人にはなれない。
何故、私は━━━━━
「飛鳥!! 起きろよっ! いい加減にしてっ! いつまで眠りの姫やってるの、あの話やっぱ嘘だね。動物……いや、世界に嫌われてるんじゃない?! 」
「噂をすればやって来るって、本当だっ、たね。おね、がいっだから!起きてっ、も、もう無理。足が、ちぎれっ」
───大丈夫じゃ。貴方ならきっとやれるぞ。
一人じゃ……ないからな。
「はぁっ、はぁはぁ!! 」
頭が痛い。ぐわんぐわんして目が回っている。立て、立て。呼吸を……。あいつの手を斬って、斬って。刀。手が増えているが大丈夫。早く動け。息を大きく吸って。足を動かして
軽く、素早く。
━━━ 月の呼吸 参ノ型
▼
「飛鳥……良かった。声届いたんだ」
「真菰…………」
「何? 一緒に、戦う? あいつの首を斬るの? 」
「━━━逃げるぞ!!!! 」
「え?」
「アァアアアアアァ!!! またお前かァ黒小僧!!!! 」
まだ追ってきてるのか? もう駄目だ。目が、上手く回らない。身体中痛くて溶けそうだ。血が止まらないし失血死するかもしれない。
真菰の方は足を引きずりながらも何とか着いてきている。途中で木の枝を拾ってよかった。
あぁ、足が嫌な方向に……すまない早く助けてやれなくて。
息が持たない。喉が渇いている。唾液が少ない。
汗がとまらない……
「飛鳥こっち! 」
もう駄目…………
「飛鳥……起きてぇ……私も眠いの交代で見張りしよ。だから、起きて…」
瞼が重い。疲労のせいで眠たくなってきてしまった。
何とか小さな洞窟を見つけて中に入ったけど、もしかしたら手鬼じゃなくて違う鬼に襲われるかもしれない。
交代で見張りをしようにも、飛鳥はさっきからずっと息浅く眠っているし起こせない。止血はしたし大丈夫だと思うけど。
眠い。
なにか目が覚めるもの……あ。
ゴソゴソと飛鳥の懐を漁って取り出したのは、まさかの糞みたいな飴玉だった。じゃーんと巾着から出した一粒の飴玉は相変わらず糞みたいな色をしていて、不味そうだった。匂いも近づいて嗅ぐと糞臭いし、これならと真菰は喉を動かした。
正直言って口に入れるのも気が引ける。だがこれを食べなければ死ぬと思えばいける。真菰は私はいける、いける逝けると決意して舌に飴玉を転がした。
すると……
「〜〜〜!!!!おぇっ…本当の糞みたい……」
真菰の目は一気に覚めた。飴玉は本当に糞のように不味いし、のたうち回って吐いてしまいそうだった。必死に吐き出さないように口を抑えて飴玉を舌で転がす。
なんだか足の痛みが無くなった気がした。
そうだ、飛鳥にも食べさせてあげよう、と真菰は一粒巾着から取りだして糞を飛鳥の口に放り込む。
わぁすごい!
「げほっげほっ!ぅ、おえっ、うぁ……」
あんなにぐっすりと寝ていた飛鳥が飛び起きるように眠りから覚めた。
目が覚めたと同時に糞玉を少ない唾液と共に吐き出して口を抑えてしまった。なんだかさっきよりも顔色が悪くなったような気がするが、見てないふりをした方がいいだろう。
「これは、なんだ。糞か? 糞しかありえないだろ……おえ」
「飛鳥が持ってた飴玉だよ。本当に糞みたいな味がする」
「嘘だ。真菰凄いな……まだ飴を舐めてるのか」
「うん。眠気覚ましだよ」
「……」
信じられないと言ったような目で飛鳥は真菰を見つめた。
人物紹介〜
継国飛鳥(つぎくに あすか)
主人公
逃げようぜ!!
真菰(まこも)
友達??
ガチの糞を食べてるみたいです。これは拷問ですか????
一心勝炎(いっしん しょうえん)
育手
糞玉を作った人
明治コソコソ噂話〜
飛鳥は真菰より弱いです。剣術も呼吸も真菰の方が上。それに真菰は飛鳥よりだいぶ覚悟が強く勇気があります。飛鳥は表にはあまり暗いところを出さないけど裏ではめっちゃ怖がってたり後悔してたりするんですよ。
どこかの誰かにお前は男だろう!と怒られそうですね。
まぁ飛鳥は普通の子なので仕方ないです。
次回・見なよ…私の鱗滝さんを……
次はちゃんとこれです。すみません。