とあるタクシードライバーの日々   作:サビサビボンプ

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爺二人×妄想エンジェルとか考えてたりもしてます。
あと、シャーレのミフネ先生とかも考えましたが、この爺に先生適性は無いですな。




「まさか、ここで来ますか」

 

迷いなくこちらの首を断とうとする白刃を避けながら、アラガキは感嘆した。

 

「人質の安全確保を最優先! 機械人技師資格者は緊急診断!」

 

あれは隠れ蓑にしていた赤牙組事務所に来た治安官、機械人の診断を指示するとは、やはり今の時代は変わりつつある。

だが、

 

「森君、君も理解はしているのでしょう?」

「狂人の理論など、論じるにも値せん」

 

強化した腕部装甲で森の白刃を受け、アラガキは語り続ける。

 

「いえ、論じるべきです。我ら機械人の怒りを、悲しみを、憎しみを!! 未来永劫、我らの憎悪と怨嗟は世界に刻み付けられると!!」

「そんなものは、私の様な老兵が墓場に持っていくものだ。未来にお前達の居場所は無い」

 

アラガキの右腕を断ち、返す刃で再び首を狙う。

胴を斬れば動きを制限出来るが、アラガキは胴体に燃料タンクを詰め込んでいる。

タンクを避け、バイタルパートを貫く事は可能だが、森の記憶にあるタンクの配置のままか判らない以上、胴体より首の指示系統を断つ。

そのつもりで刃を滑り込ませる。

だが、森の太刀はアラガキの首の装甲を走るだけで、断ち斬る事は出来なかった。

 

「これは……!」

「驚きましたか? ミフネ君と同じという訳ではありませんが、同系統の装甲材です」

「相変わらず素体拡張に抵抗が無いな」

「我が天命の為なら、この苦行も甘美なるものですよ」

 

しかし厄介だ。

ミフネと同系統の装甲材なら力任せに断つのはまず不可能だ。

普段なら無理矢理にでも斬るが、今回は背後で行われる人質の救出がある上、機械人達の診断も同時進行している。

 

「頼む! 親友なんだ!」

「安心せよ。我らが助ける。そこ、外部アクセスを遮断せよ」

 

青衣によるスキャンと機械人技師資格者による救護を尻目に、上階へと視線を向ける。

 

 

――ミフネ……

 

 

上階ではイオを支えながら、アイリが治安官と合流してこちらへ降り始め、全身から蒸気を吹き出したミフネがゲンジョウと対峙している。

 

「あちらが気になりますかな?」

「過去の亡霊が喧しいのでな」

 

それにあの背中、嫌な予感がする。背部や腰部は神経系や伝達系が近く、アタッチメントによる拡張がしやすい。

だが、拡張がしやすいからと簡単に出来るものではない。

拡張すればそれだけ電脳や神経系に対する負荷と負担が増え、行き過ぎればフレデリックの様になる。

個人の素質もあるが、アラガキはどうなのかは目を見れば判る。

 

「随分と無茶をしてるな」

「これは天啓ですよ。何故、こうしなかったのか不思議でなりません」

 

元からイカれていたが、今はそれ処ではない。

この救護が行われている最中に、爆弾を起動しないのが証拠だ。

確実に電脳に掛かる負荷で正常な判断は下せていない。

その癖、こちらの刃は強化した装甲で受けてくる。

本当に厄介だ。

 

「そうです。そうなのです。これは天啓なのです! そうでしょう?! 〝アイン〟!!」

「……っ! お前……」

 

誰かの名を叫び、森が歯を軋らせるとアラガキは一瞬痙攣し、森の太刀の範囲から身を翻し離れた。

今まで回避をしなかったアラガキの変化に、森は警戒しつつ背後の救助の状況とミフネの様子にも気を配る。

 

「アイリちゃん! イオさん!」

「朱鷺さん、イオさんが……」

「私ハ大丈ブです……」

 

どうやら、アイリ達は朱鷺と合流した様だ。

イオの反応が鈍いが、恐らくダメージを受けて自己診断状態だと見える。

そして、ミフネはゲンジョウの剣戟を受けつつ、こちらから引き離している。

人質の救出が終わるまで、作戦通りと言える状況だが何か妙だ。

アラガキもゲンジョウも異常者だが、頭はキレる。

それなのに、すんなりと突入が完了し、分断まで成功しているこの状況。

何かおかしい。

 

「……失礼。つい、気が昂っていた様です。何か無礼を口にしませんでしたかな?」

「お前の口から出る全てがそうだ」

「手厳しいですな。しかし、今の我輩を見れば〝アイン〟もそう……、〝アイン〟?」

「アラガキ……」

 

懐かしい名を呟き、頭を押さえるアラガキに森はせめてもの慈悲と、三度頸椎ユニットに狙いを定める。

当初は何時もの思想の発作かと思ったが、この様子はそうではない。

もっと別の何かだ。

 

「アラガキ……。さらばだ」

 

頸椎ユニットを断てば、如何に軍用機械人と言えど動けなくなる。

嘗ての友であった男の手向けと、森はセス達が止める間も迷いも無く、アラガキの装甲の隙間へと白刃を走らせた。

そして、瞠目した。

 

「これは……?!」

「森さん、離れて!」

 

森の太刀は真っ直ぐにアラガキの頸椎に向けて走った。

だが、寸での処で太刀が弾かれた。

 

「……セス君、避難を急がせろ」

「いえ、加勢します」

「いや、急げ。私の記憶が確かなら、あれはヤバい」

 

頭を抱え丸めたアラガキの背から各部閉鎖用のボルトが、厚いコートを突き破り飛び出す。

 

「〝アイン〟、そうだ〝アイン〟! 我輩は、我輩らは君の献身に報いる為に……!!」

 

誰かの名を叫び、アラガキの背から四角い柱の様なユニットが突出する。

そして、それと同時にミフネが上階より飛び降り、ゲンジョウがそれに続いた。

 

「てめえら、なんてもん引っ張り出してきやがった!?」

「お前も解るだろう。あれは我らの罪禍にして狼煙。我らの始まりだ」

「イカれ野郎が……。よりによってあれをアラガキに積みやがって……!!」

 

外道が……

拳を握り直すミフネだが、正直戦況は芳しくない。

堅牢な拳と前腕の装甲は既に幾つもの裂傷が走っている。

通常ならまず斬れない筈の装甲、それに深い傷が刻み付けられている。

 

「森、今すぐそれの起動止めろ!!」

「言われずとも!」

 

森はセスに撤退を命じ、幾重にも折り重なった柱の様な機械の群れを断とうと太刀を振るう。

これだけは起動させてはならない。

これが起動すれば、自分達が死ぬだけでは済まない。

ミフネもゲンジョウに背を向け走り、アラガキの背の機械群を破壊しようと飛び掛かる。

 

「もう遅い」

 

森の太刀がアラガキの首筋に届き、ミフネの拳が機械群を砕く一瞬、ゲンジョウがほくそ笑んだ。

 

「そう、君に報いる。その為に我輩は……!!」

 

破壊の一撃が、辺りを砕いた。




〝アイン〟
嘗ての昔、何処かに居た少女。

◯◯年後のミフネさん家

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