ギャルゲ主人公が俺ばっかり選んだ結果   作:のんびりスイミー

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第6話 クラブ?

 

 

 

「結構アングラな感じなんだな」

 

 二度の人生初めて訪れるクラブという場所は、駅から十五分ほど歩いた先にある楽器屋さんの地下1階に看板を掲げていた。壁際には薄く光るランタンが二つ。

 まだ日は出ているが、建物の陰で辺りは薄暗く、ゆえに階段の先に見えるイルミで店名を掲げた看板がはっきりと光って見えた。

 

GRooooVE(グルーヴ)』という店名らしい。

 そのうちGRo4VEとかに改名しないかと一度目の人生を少し思い出す。

 

「ユエはこういう場所来ることあるか?」

「いや、ボクも初めてだ。でも、こういうダークな雰囲気は嫌いじゃないよ」

「行ってみるか」

「うん」

 

 と頷いて俺が前。すれ違うのも大変そうな幅の狭い階段を下っていく。

 しかし、重いドアを開いた瞬間、中にはさらにもう一枚遮音の扉があるにも関わらず、すでに中からは大音量の音楽が流れていた。

 思わずユエと目を合わせるが今更引き返すわけにもいかない。

 

 内扉を開けると真正面にカウンター。

 音の洪水。軽快なEDM。

 七色に切り替わるスポットライトがステージとフロアを眩く照らしている。ステージの上にはミキサーを操るDJとマイクを持った三人の男が洋々と観客に向けて音楽とともにラップを披露している。

 観客はそれに合わせてサイリウムを回す者、ダンスするもの様々でステージから少し離れた場所にはバーカウンターやテーブルもありそこでお酒などを嗜んでいる人も多くいた。案外自由に楽しむ場のようで、そこまで固い形式がある雰囲気でもない。

 

 しかし、確かに周りは男半分に女半分。

 奇抜なユエの格好が悪目立ちしない程度にはきんきらきんに髪を染めたり、派手なドレスを纏う女性に髪を逆立てた男やスーツで軽快にフロアで勝手に踊っている真面目そうな男などなかなか店内はカオスな状況。

 

 確かに男一人で突っ立って居ようものなら逆に居心地が悪そうだ。

 ある意味、女連れ必須というのは、男側にとっても女側にとっても初心者のお守りに、とのことだったのかもしれない。

 

 もうこのノリノリな空間に相まって最高なテンションで今すぐ帰りたいぜ!

 と思っていたが、カウンターには見知った男。

 バーテン姿のアオは髪をオールバックに固めいつもの黒眼鏡。なかなかいかつい格好だが、目が合うとこっちだと軽く手を挙げた。

 

「来たか」

 

 それなりに声を張ってくれているがなかなか聞こえづらい。

 

「なんだこの場所は。ふざけんな、うるさすぎるだろ」

 

 そういうとアオは軽く笑ってカウンターから身を乗り出す。

 

「俺だって趣味じゃねぇよ。けど、ま、金を貰った以上はやることやんねぇとな。そっちの子が相方さんか。ちっちぇー子選んだな」

 

 選んだわけじゃねぇよ。

 と、この大音量の空間でつっこむのもめんどくさい。

 

「ちょっと待っててくれ」

 

 そういってアオはカウンターの奥へと入って行ってしまった。

 ユエを見ると俺の腕の後ろにぴったりとくっつきながら、ステージの方を見ていた。

 彼女は声が小さいのであんまり喋れなそうだった。

 

 すぐにアオは戻ってくる。

 後ろにはドレッドヘアーの少し恰幅(かっぷく)のいい男。

 ジーパンに黄色い長袖シャツ。口には火の付いていない煙草が咥えられていた。年齢は30前後だろうか。いかつい髪型とは裏腹に陽気そうな顔つきだった。

 

「こっち。今回の依頼主。DJVeriher(ベリハー)

 

 アオが一言紹介してくれる。

 ベリハーは頭を左右にゆらゆら揺らしたかと思ったらバッとカウンターの向こうからこちらに体を近づけてくる。

 

「やははー。アオっちの友達のナっちーね。聞いてるよ~。今日は来てくれてありがとね~」

 

 アオっちだナっちーだたまごっちかってのと心でつっこむ。

 それと、なんか彼からは嗅いだことのない匂いが漂ってくる。

 

「……ヤクやってる?」

「ぷはっ! もー。あはははは!!」

 

 大爆笑された。

 

「そっちの子は彼女? きゃぁわいい~!」

 

 DJベリハーに視線を向けられたユエは固くなってこくりと一つ頷いただけだ。

 

「あっ、ごめんごめん。あと十分くらいしたら俺の舞台だからさ。せっかくの晴れ舞台。たくさんの人に見てもらいたいじゃん? だから、一人くらい友達呼んでよーってアオっちに」

「アオ、アオ」

 

 俺はアオをちょいちょいと手招きした。

 ん、と顔を近づけてきたので。

 

「切った方がいい」

 

 そういうとアオはアオで楽しそうに笑った。

 

「道理だ」

「もー、二人とも酷いよー。合法合法まだ合法! でも、罵声は力になっちゃう。はい、これ」

 

 そういってベリハーは少しこっそりと俺に何かを握られせた。

 そこには、今日のバイト代と思しきくしゃくしゃに丸められた一万円と白い紙吹雪の入ったポケットサイズの透明な袋。

 

「これ、いい感じのタイミングになったら頼むよー。俺っちの一世一代の晴れ舞台。はい、彼女さんにも」

「多いですよ」

 

 バイト代は前金5千円。成功報酬5千円のはずだったのでそういうが。

 

「おっけーおっけー。百パー成功するから、帰りに美味いもんでも買って帰りな。じゃ、よろしく~」

 

 そういってベリハーはフラフラと店の奥へと戻っていった。

 まあ、そういうのならと貰っておく。

 

「飲み物どうする?」

 

 アオに聞かれる。

 

「俺はコーラで。ユエはどうする?」

「あっ、ボクも同じの……」

 

 ユエはこの空間がアウェー中のアウェーのせいかギリギリボクっ子は保てているが、大人しくなってしまっていた。

 

 俺はアオが準備してくれている間に財布に万札をしまうとちょうどいいかと五千円を取り出す。

 

「はい、彼女代金」

「あっ、うん……嫌なお金の流れを感じるよ」

「大丈夫だ。負の万札。健全な五千円札だ」

「健全なところどこだい?」

 

 ちょっと冗談をいうと小さく笑って返してくれた。

 そんな話を互いの耳元でしながら、俺たちはベリハーの時間を待つのだった。

 

 

 

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