日本本土決戦 1998年8月、BETA皇土へ侵攻す   作:岡本めばち

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急【明日の君と逢うために】

 

【鉄牛】

 

糸島に向け進む装甲集団は総計して戦車280近く、装甲車や自走砲等が合わせて800近くで機動している。

35mmの大火力を有する89式装甲歩兵戦闘車、87式偵察警戒車に87式自走高射砲のみならず、50年代60年代貸与品のM42ダスターまで持ち出している。

敵主力たるC群を戦術機が時間稼ぎし、打撃戦力全てで内線作戦してA群を抹殺する。

その計画はある意味「それしかない」手だった、死守に意味がない場合は機動戦、というか普通は機動戦してから死守するのである。

強化歩兵装備のおかげでMk40を手持ちで発砲できる帝国軍歩兵部隊は、大戦以前からの火力ジャンキーをモロに発揮していた、陸軍は擲弾筒を心から愛している。

そんな陸軍がここ随一に愛しているアメリカからの買い物のATACMS、すなわち陸軍戦術弾道弾はある意味帝国軍の欲しいものを概ね詰めていた、精密打撃戦能力である、おかげで陸軍は後継にHIMARSちょーだいと政府に強請っている。

だが現状、弾道弾はあまり使えていない、長崎に上がった要塞級が光線級を乗せて山に布陣し、防空圏を貼っている。

おかげで弾道弾が落着フェーズあたりで撃墜されるから、支援攻撃が少し減った、だが攻撃続行は変わらずだ。

西部方面戦車集団の第四戦車大隊長がつぶやいた。

 

「くそっ、雨天の夜戦でFCS精度が悪い!」

 

戦車長が憤懣して叫んだ、突撃級の正中線を逸れて半矢になったからだ。

90式戦車は悪い戦車ではない、いや、むしろかなり高性能であった。

多少撃たれ弱い点はあるが、レートの良い高精度の120mmは貫通の良い徹甲弾のおかげで、最高の効率で突撃級を削り殺すのだ。

命中率も実戦においては奇跡的な70%を下回ったケースが殆どない、撃てば大概の敵が死ぬ、速度も揃っていたが、航続距離には劣る以外には大東亜連合軍も好んでいる。

74式のほとんどがERAや40mm擲弾銃を積んだG型に更新されたが旧式化を否定できず、戦線から退役している間に調達価格も下がった。

だが気象条件は最悪だ、レーザー測距儀がFCSの要だが雨のせいでずれてる、雨天で暗視装置も見辛い!

 

「目標!突撃級!弾種徹甲!小隊行進射!撃て!」

 

何度目かの砲声、次々と撃ち倒される突撃級、105mm徹甲弾になんとか半死半生だが、120mm55口径の帝国軍主力戦車は格段の差がある。

最も105mmも悪いものではない、韓国軍のK-1も105mmだが弾薬改良で初期の90くらい貫通力を持ってる、95年以降55口径にされたのは山から山向こうで撃ちまくるケースが半島で続出したせいだ。

噂では、2010年にはこれまでの陸軍主力戦車全てを過去にする新型戦車が作られて採用される計画があると聞くが、戦車長は信じていない。

 

「全弾命中、動目標無し!」

「ふゥ」

 

砲手の言葉に戦車長は一息ついた。

豪雨の夜間であるから、ライトをガンガン焚いて、韓国軍ラウンデルンと日本軍のラウンデルンが描かれたCH-47が何機も押し寄せる。

弾薬と燃料輸送任務に必死に何度も飛ばされて、彼ら自身クタクタだが休む暇はない。

攻撃衝力、それを保持するにはこうした犠牲をつきものとする。

米軍がHEMMT、つまり重装輪輸送車を何度も走らせて燃料や弾薬を維持して兵站線を繋げているが彼らも手一杯、ヘリも手一杯だ。

自然と糸島への攻撃は、0115時を境に、0445時まで停止された。

戦果は大きかった、鉄牛の突入はA群の58%を16時間の間に削り殺している。

上陸24時間、BETAは広範の進撃に詰まり始めた。

 

 

 

【憎しみの光】

 

山陰への上陸、それに対する日本側のカードは簡単な解決法だった。

横田から無理矢理に引き摺り出されたアメリカ戦略空軍から借り上げたB-1ランサーに戦略核を搭載させたのである、なるほど鳥取や島根県の海岸線が一部クレーターになる、だからなんだ!

全くの戦争のための合理性はそれを容認した、さらに最大の理由は「汚染の量も将来問題にならない、台風で海に洗い流される」*1と結果がわかっているからだ。

そして穴埋めのために動員されたのは、ある種最も都合が良い部隊だ。

 

「やれやれ出番かと思ったら出雲大社詣でて終わりかな?」

 

近衛第16大隊である。

今次出撃に際して彼は恭子ら最強のパイロットに、最高のカスタムをした武御雷を配備させた。

赤と深い青の武御雷は、帝国軍の教導師団ですら思わず心服しかねないほどの技量のパイロットにだけ許されたのだ。

なお双方の戦術機で性能の差はない、もとより大量配備しないし大半がターキーの近衛軍では論外だ、黒い武御雷ですら志願兵パイロット以下が出る事になりかねない。*2

 

「大隊長!不遜ですよ、不遜」

「怒るなよ恭子、兵が見ている」

 

大隊長はやはり、軽々しげにそう笑った。

内心では沸々たる思いがある、惰弱な近衛軍、聖域への敵侵入、国土への核攻撃、それらを許すまでに何も出来なかった自分への怒り。

唯一の偽善たる学徒兵を民衆防衛に後方へ下げた事への自嘲もある。

 

「時間だ」

 

低空飛行しながら敵集団へ戦略核をぶち込んだB-1ランサーによって、巨大な閃光と熱線と衝撃波が生まれた。

雷の音、大型核兵器特有の雷*3、きのこ雲。

敵上陸B群はやはり分散していたが、人類は戦略核を使うこともするのだ。

ただ何より大きかったのは、たまたま救援に向かっていた第四艦隊の先遣の中に核爆雷の投射を即断するだけの駆逐隊指揮官が居たことだ。

おかげで海中衝撃波が後続段列をズタズタにした。

 

「総員天佑を確信し突撃せよ!」

 

彼は突入を開始した。

核の熱線と岩石の豪雨でほとんどの小型は壊滅、突撃級が熱線で狂ってBETA同士でラミングし、要撃級は自慢の両腕を溶かされてよたよた歩くだけだ。

要塞級は流石のタフネスというべきか、表面が赤熱化してもまだ動いていたがすぐに力尽きた、内部の硫酸が体内を沸騰させて滅茶苦茶にしていた。

後世、天照皇大神の加護と呼ばれた近衛による敵B群への斬り込み攻撃は全軍の連携と協力による人類史反撃の一つとなる。

この戦闘に後方待機を命じられた学徒兵の1人、山城氏の著書は、後世日本のベストセラーとなったが、ある意味当時の人類の核兵器に対する本音が書かれていた。

曰く

 

「あれは憎しみの光だ」

 

そう評した学徒兵の戦友の言葉は、世界に残っている。

 

 

 

【回天】

 

出雲での阻止作戦成功は、広島の第二総軍司令部を大いに勢いづかせた。

敵の第二戦線製作の野望は、佐渡ヶ島と出雲の二つが失敗した。

明確なる勝利は戦線全てを沸き立たせる、第二総軍は兵力機動の終わり次第、決戦機動兵団を即時投入することに決めた。

すでに佐賀市で遅滞戦闘中の友軍の損害は拡大しつつある、戦術機68機を失い、戦線は市街戦という敵を小分けに切り分けやすい環境であるが故に維持されている。

しかも突撃級の光線デサントが進出して、巡航ミサイル攻撃が防がれ出した。

何より唐津から進出してきた敵が新鳥栖まで一部浸透、国鉄博多本線のラインを脅かし九州分断に入らんと進出している。

鳥栖貨物ターミナルは現在、糸島総反攻を支える補給拠点の一部であり、後方待機の学徒兵が銃剣戦闘を行い、国鉄職員の一部も小銃を以て抵抗している。

だがそこが進出最大限界点となりつつある、敵の攻勢限界点が近づき始めたのである。

 

「いける、いけるぞ!」

 

第52方面軍も熱に浮かされたような顔になり出した、確かに伊万里・唐津の後退戦闘ですでに2万人近い将兵が死に、糸島反撃で1万近い戦死が出ている。

だが明確にそれに釣り合う損害を相手に押し出している。

孫子に曰く、平時は兵を赤子の如く慈しみ、有事になれば塵芥の如くに使うべしとある。

まさにそうだった、死すべき時は今なるぞ、花散れ勇め時は今。

帝国軍はその役目を愚直なまでにはたさんと奮戦し、佐賀市の街路に、長崎の海辺に、博多の港に、戦い、死んでいる。

第六艦隊が全弾射耗し、舞鶴へ後退したが到着した第四艦隊は「むしろ蛇口の根幹ちょん切ったる!」と果敢に朝鮮に突っ込んだ。

これが大層に相手に効いた、海軍艦艇に対する光線級の打率は極めて悪い。

水蒸気のせいであっという間に漸減するし、戦艦は実弾だから水平線の向こうから撃てる。

 

「ソロモンの海戦、対馬沖、トラファルガ、ミッドウェイ、散々教科書で見てきたが、俺たちも世界海軍戦史の仲間入りだァ!」

 

よりにもよって、<紀伊>が飛び込んだ。

舞鶴鎮守府の第四艦隊から飛び出した大型戦艦は、今慌てて横須賀や呉から出ている国連海軍にも米軍にも譲るつもりはなかった。

後衛の重光線級狩り放題だ。

彼女らはその弾庫にあるだけのミサイルと砲弾を撃ち尽くし、火制範囲から去っていった。

損失はほぼない、何せ僚艦が当てずっぽうでミサイル撃って、迎撃地点を記録したら山なり射撃して、同時に巡航核ミサイルを撃ち込んだのである。

迎撃してもしなくてもどれかで死ぬようにした、行軍隊列を崩してないBETAに責任がある。

この結果、一時期であるが極東戦線で重光線級の数は激減した。

貴重な対軌道射撃能力を有する重光線級の壊滅は、全く預かり知らないアメリカ東海岸の国連軍を深く感謝され、第四艦隊将兵は何故か知らない間に世界の戦史を変えた事を気付く事はなかった。

 

数ヶ月して、彼らは理由を知り爆笑した。

 

 

 

【水上特攻】

 

志布志湾に遊弋する人民解放軍の艦隊に、ある使者が来た。

その使者は国連軍の派遣武官の中国軍の軍人にして政治員だった。

会っている相手は玄徳、人民解放軍の南海艦隊司令員であり、人民解放軍海軍の創設初期から今まで残っている古兵も古兵であり、金門島など数々の歴戦を経験している。

文化大革命による粛清が彼を閑職へ追いやったが、歴戦の海軍軍人を遊ばせるほど中国軍に人間の余裕はない。

旗艦たるソヴレメンヌイ級<杭州>、その艦隊司令室につくなり、国連派遣の政治員はそっと封緘命令を渡すと、「ただ、何も言わずに実行してください」と深く頭を下げた。

 

「青島に突入するのなら、東海艦隊のやる事だ、違うかね?」

「何も申せません」

「戦争は数学であり、気合いの問題じゃない、1945年にベルリンで証明されたな、違うかな」

「何も申せません」

 

政治員の言葉に、彼は最後に一つ尋ねた。

 

「軍以上の、意向なんだね?」

「何も、申せません」

「……よかろう。行くよ」

 

彼は成人以来の党員だった。

赤色中国の時代を作るために、死ぬ覚悟くらいあった。

出撃した中国軍水上特攻部隊は青島へ目指し、シャントウやルダ、ジャンフーと言った明らかにその規模・性能に於いて些かばかし劣る乙女たちを連れていた。

小型の舟艇、フリゲート、やることはわかっている。

人民解放軍海軍は水上部隊の何たるかを、これから青島の重光線級に見せつけねばならない。

だが彼らに天佑があるとすれば、ちょうど似たようなことを考えて突撃した第四艦隊が朝鮮半島の重光線級のことを根こそぎに食い散らかした。

 

「行けるんじゃないか、これ」

 

物事を悲観しても意味はない、彼は即断した。

まずは水平線に最大に隠れれるシャントーたちで対地ロケット制圧、その隙に我々も突っ込むぞ!

突入が始まった、沿岸警戒の光線級が”ぎょっ”としたように、打ち上げられるロケット弾に眼を向けた。

インターバルが始まるが、狙いはロケットではなく小型舟艇群だ。

着弾と光線の発射はほぼ同時だった。

ロケットの必然たる山なり軌道はそれだけの時間を与えてしまう。

 

『第33中隊消滅!』

『小型舟艇損耗12パーセント!』

『沿岸の光線級は半数を撃破または起動不能!』

 

よーし案外うまくいってる、敵の全力でこれならキルレートは俺達の勝ちだ。

人海戦術は俺達の特許だぞ。

 

「陸軍に支援要請!」

「予定通り支援射撃開始!」

「タスクフォース<杭州>から第二砲兵、早く撃て。終わり」

 

撃ちだされた中国軍の戦略弾道弾は、すったもんだの末にソ連が遺したものである。

どうせ殆ど整備してない金食い虫だ、パッと咲かせてしまえ、咲かなくても囮になる。

構想は正しく、敵の重光線級が空へ睨む。

数発のスカッドが注意を引いてる、運が良ければ刺さる、そうでなくても数隻は助かる。

 

全艦横隊で人民解放軍南海艦隊は突入を始めた。

海岸が煌めく、重光線級が放った光線が旗艦<杭州>に直撃したが、艦首が溶解しただけで済んでいる。

台風の風雨は、いまは人類の味方だ。

殺しきれなかった!と即座にインターバルが再開され、不運なジャンフーが艦首から艦橋を粉砕された。

僚艦の撃沈はむしろ戦意を震わせる。

 

「射程に入った!」

「ミサイル発射!」

 

ソヴレメンヌイの特徴たるミサイル発射管が、8発のミサイルを吐き出す。

中国側の改修でフランス製の巡航ミサイルを撃ちだすこの<杭州>は、鄭和提督以来の中国の海軍英雄に導こうとしていた。

 

 

 

【嵐過ぎ去る】

 

午前4時ちょうど、九州と山口は暴風圏を抜けた。

神風は去った、結果はと言うと長崎と佐賀の山岳を陣取る要塞級に載せられた光線級の脅威増大だ。

風雨が威力を弱める為射撃範囲が狭かったが、こうなると面倒になる。

更に糸島主戦線と佐賀市主戦線で光線級の突撃級デサントが活発化した、敵はこれを後方へ浸透させんと図っている。

悪いニュースがあるとすれば、後退しきれなかった五島列島の後退部隊が殆ど玉砕した。

残念ながら救いようがない、島原まで下がれた部隊は残存する韓国海軍がネズミ輸送兼ねて援護戦闘中だ。

良いニュースがあるのも事実だ、暴風圏が京都から東へ向かっており、機動中の決戦機動兵団は完全に動きが早まる。

既に前衛は関門海峡を越えた。

 

「時間との勝負だ、遅ければ佐賀市主戦線は瓦解し北部九州の喪失になり、早すぎれば機動兵力の濫費だ」

 

第二総軍司令部はそういう言葉に包まれていた。

敵が進出するのを阻止できなきゃ鳥栖・久留米の線が断絶、すなわち北部九州抵抗線完全崩壊だ。

何故か?国鉄九州の博多・佐賀への結節点は鳥栖駅だ、高速道路も付近にジャンクションがある、正に大動脈だ。

 

「陸軍38万中の10万を注いだ作戦だ、負けたら反撃が出来ん」

 

だが、上陸した40万のうち残るは20から15万、意外とうまくやっている。

無論当然だった、今日本軍が勝利している要因は円滑な計画、インフラ、機械化、そして戦争指導体制に不必要な妨害を廃しているからだ。

以前から反首相的な第一戦術機甲連隊の某大尉が聴けば憤慨しかねないだろうが、彼は対馬で護国の鬼となる無上の喜びを得た、本望だろう。

樺太の某中佐など、本土決戦を聞きつけて何かを企んだらしいが、自動車移動中樺太の冷えた海へ姿を消した、飲酒による事故と憲兵は結論付けた。

それ以外に避難中の不幸な事故で幾人かの近衛の人間が事故死したが、これも不幸な事故に違いない。

無関係な筈だがこれ以降武御雷生産派の発言力は下がった、無関係に違いないが電磁投射砲と不知火派またはF-15増産派が主流になった、きっと無関係だ。

 

 

 

【佐賀の乱】

 

佐賀市の攻防戦は激烈を極めて居た。

佐賀城跡の県庁舎を守備隊司令部としたが、敵が夜襲して戦線が押し返され、吉野ヶ里公園砲兵陣地に近い目達原駐屯地へ後退した。

89式小銃を連射した歩兵が対人掃討中の兵士級を中隊単位で皆殺しにし、続けてビル群を跳躍する闘士級に掴まれて投げ飛ばされた。

ビルの三階にエリコン35㎜連装機関砲を据えた陣地に、突撃級が突進しビルを破壊、直後連装106㎜無反動砲の側面射撃で突撃級が粉砕されていく。

目達原へ後退した佐賀方面部隊の司令部では、輸送処の駐屯地だけは有り指揮作戦に全く不足はない。

 

「敵の要撃級大隊規模が佐賀市に入る」

「目達原の第四砲兵が射耗、作戦継続不能。」

「晴れたせいで神崎方面が敵の光線火制を受けとります!」

「クソっ、段階的に後退させる。

 次の阻止線は三重津海軍所跡から伊賀屋の線までさがらせろ」

 

臨時兵団の司令官の決断は早かった。

高取山へ進出した要塞級の火力範囲を現状何とかする力がない、戦術機と言う機動戦力が遮られてしまい、防衛戦闘に苦慮している。

国道208号線の筑後川にかかる橋梁を早めに落としたのは正解だった、大川・柳川への浸透は失敗して荒尾と大牟田の守備隊が睨んでいる。

 

「血反吐吐いてでも鳥栖への侵入を許すな!」

 

無論そうはいっても、戦線再構築は完全に難しいものになりつつある。

そう考えた直後、轟音と衝撃波が押し寄せた。

 

「なんだ、地震か?!こんな時に!」

「報告!白蛇神社周辺から敵集団!およそ2個連隊規模、なお突撃級に跨乗せる光線級あり!」

 

刺された!鳥栖への防衛線の無防備な脇腹!

防衛の要たる砲兵が食われた!最悪のタイミングで!

砲兵がいま失われればもっとマズい事になる、歩兵のキルレートが一気に不利になる。

なにより痛いのは朝鮮から後退できた派遣軍と韓国軍のK9自走砲が撃ち減らされた、熟練した砲兵は数倍する敵を押し返せる、ディエンビエンフーでも証明された事実だ。

 

「総軍司令部に核攻撃要請!」

「割り当てがありません!糸島への力攻が最優先です!」

「あぁくそっ!仕方ない!学徒だろうと戦術機をぶつけて側面援護に当てる!」

 

さあ、何割残るかな。

生き残るうちに自分たちが入るのか、もだけど……。

 

 

 

【白襷】

 

防衛司令部の言いたい事はスズにも理解できる。

これでも偉大な帝国軍の義務教育はぼんくらをマシなぼんくらにした、予備士官とはそう言うもんだ。

 

「刺し違えていいから行けって事か」

 

深いため息をして、鳥栖のターミナルから予備隊が全力出撃する。

眺めは壮観だ、F-15に、不知火に、ファントム、激震、瑞鶴は居ない、いない方がいい。

なお白嶺スズ大尉は、武御雷を知らない、噂でしかほとんどの兵士は知らないのだ。

行けと言われたら行くしかない、軍隊はヤクザな商売よ、危ないし金は割に合うか分からんし。

不知火とかに乗ってりゃまあお国の為で死ねるだろうが……、生憎これは退却時のどさくさのF-4Dだ。

 

「残存機は各自志願で来るように、正直邪魔だ」

 

割と本音である、戦闘機動もへたくそな味方じゃ機動の自由を奪う。

ただ部下には何か違う意味に聞こえたらしい、学徒の大半が志願した。

取り敢えずまだマシな面子だけ選んで、スズはついてこさせた、駄目な連中は警戒に回す。

動く戦術機にマシな奴を入れ替えて、あとは機動戦闘だ。

流石にベテランの鹿屋と太刀洗の熟練兵は、電線なんぞ当たらず低空機動で佐賀へ進出していく。

無論学徒に出来ないから山岳部へ迂回飛行する訳だ。

 

『熟練兵の人たち、大丈夫でしょうか』

 

学徒兵が不安から呟いた。

 

「お前よりは上手いはバカ!」

 

事実だ、鹿屋に太刀洗と言えば築城とトップ3争いしている精兵である。

これとやり合えるのは帝国内部でも数はさほどいない。

山岳部を迂回した学徒部隊は、中之島公園を基準点に変針、背振町へ向かう。

 

「捉えた!」

 

ファントムの肩部ミサイルが唸る。

しかし、想像もつかない行動に相手は出た。

なんと要塞級の背中に顔を出している光線級は、まるでMG42のように、魔法少女の変身が如く瞬く。

短期連発照射、それが初めて運用されたのだ。

これ以降の変化する対BETA戦争後半期、そのすべての変化が現れたのが対日戦だという。

のちのちの人類は「恐らく、かれらにとっての最後の賭け」と分析しているのは当然だった、これが無理ならアラスカは超えれない、中国も落ちない、未だにシナイ半島で漸減されているアフリカは何をいわんやである。

要するに人類の中で最も好立地にある実験対象だったのだ。

 

「誘導弾全弾撃墜命中無し!」

 

光線が10回は短期照射されたが、命中は4発。

概ね命中率は4割、いや5割としよう、スズは「即時斬りこみ」を命じた。

逃げるのも無理なら勇んで飛び込んでサイコロ任せ以外道がない。

学徒の中で動きが良かった連中が抜刀した、誤射の恐怖は理解したらしい。

スズは長刀を持たないタイプの衛士だ、単純に近接戦する武装より携行弾数が欲しい類だ。

 

「突入!」

 

再び連続射撃、F-4Dにも掠める。

無論、ファントムの装甲は掠った程度じゃ大破へ導かない。

だが直撃した連中はそれ以前だ、腕が吹き飛び、足がもげ、胴体が爆発する。

 

「あ、ばかっ!」

 

迂闊に3機、高度を上げた。

パニックから高度を上げたのだろう3機は、長崎の火点から睨んでいる要塞級の上に鎮座した重光線級が撃ち抜いた。

だが阻止射撃が間に合わない、遂に要塞級へ直接戦闘が開始される。

前衛数機が囲むように円周で旋回、突撃砲を脚部基部へ撃ち込む。

動体の付け根は稼働の都合から装甲化が弱い部分だ、スズは後方に回って尻尾の触手を根元へ掃射している。

続く戦術機が、長刀で触手の根元を叩き切る。

細やかな敵に密集させられて不愉快な要塞級はスタンプを行い、振り払おうとするが上から光線級が零れ落ちる。

振り落とされた光線級が脚部への攻撃で吹き飛び、ぐちゃぐちゃ死体がスタンプで飛び散る。

案外効果はあった、飛び散った血液が、頭部の光学機器へ飛び掛かった。

 

「洗浄!」

 

音声入力指示で、即座に頭部にかかった血液を高圧空気で吹き飛ばす。

網膜投影で最悪な点は目にかかった錯覚が気持ち悪いことだ、だから長刀が嫌いなのだ!

僚機は学徒兵故か、慌てているためワンテンポ遅い。

そこを突かれて脚をぶつけられ、学徒兵が一機大破した。

さらに、スズの機体へRWR(光学級照射警報)が鳴り響く。

方向指示を信じて頭部を向ける、其処に居たのは要塞級、別の要塞級だ!

 

「あ……」

 

光線級を12秒もかける雑魚と呼べるのは、熟練者だけだ。

普通は何かする前に迷ってしまう、逃げるか戦うか、人間の哀れな本能。

逃げる事も出来ない場合、スズはとっさに射線を切ろうと今殴っている要塞級で射線を切ろうとした。

が、短期連発の照射はあっという間にF-4Dを大破させる。

イジェクションブロックは正確に作動、スズは何とか外に出たが指揮官機ロストが学徒を動揺させた。

 

「畜生!」

 

スズが即座にコルト・コマンドーを手に取った。

M4カービンのご先祖様で、朝鮮半島で米兵から賭け麻雀の戦利品で手に入れた自衛装備だ。

だがこれだけじゃ要塞級は殺せない。

服装からして衛士強化装備の上に歩兵強化装備とジャケット一式であるから、まるで意味がない。

火力もないなら衛士はただの人だ。

が、その直上を投げられた短刀が飛んでいく。

それを認識する目にサクッと刺さった要塞級が身もだえし、続いて前線将兵全てを高揚させるあの唸り声が轟いた。

 

30㎜(アヴェンジャー)!」

 

朝鮮から帰還できた最後のA-10 4機と不知火2機だ!

適切な火力援護が居る中での不知火は、馬鹿みたいに強かった。

卓抜した高機動性で光線級を膾切りして、要塞級が何かしようとすれば30㎜を乱打する。

学徒の苦戦をまるで気にせず、熟練者による阿吽の呼吸が要塞級2体を撃滅した。

 

「すげえ……」

 

どんな機体でも言えるが、中身が伴えばとんでもねえな。

無論それは少数だけだ、凡人の自分には米軍機が良いと信じてる。

 

『ご苦労、損傷機と脱出者を連れて下がれ』

 

彼らはそう言うと、別の要塞級を狙って素早く消えた。

あとあと聞いたが、実のところあの不知火とA-10は何の関係もない連中だったらしい。

ベテランゆえの即断。

それが故の奇跡だった。

 

『全部隊へ、戦術機の吶喊で高取山方面の火網は排除!これより対戦回転翼機を投入する!』

 

戦況は、改善しつつある。

 

 

【包囲作戦】

 

目達原を全力出撃した第3対戦車ヘリ隊はAH-64Dを有する最精鋭対戦車ヘリ隊だ。

AH-64Dはロングボウレーダーにより、圧倒的攻撃力を有するアパッチシリーズの改良型で、ヘルファイア誘導弾は3キロ近くを容易く飛んでいく。

 

『タカスからホーク、IP到着!』

『ヘルファイア射撃はじめ!』

 

全くの一方的な一撃だ。

長崎の火力制圧範囲から山で隠れて、NOEでデータリンクした陸上部隊が誘導している。

眼を提供しているのは偵察型のRF-4EJである。

撃ちだされるミサイルは鳥栖へ最後の突撃を図る突撃級集団の進撃を、完全に虚数へ打ち砕いていく。

戦場を真に支配し、作戦を動かす人間の意思の勝利である。

 

『大牟田、荒尾からMPMS発射!』

 

久留米から陣地変換中だった対舟艇隊が96式多目的誘導弾を撃ち始める。

光ファイバー式の日本人が作ったスパイクミサイルに近い物だ。

それらが的確に光線級のデサントした突撃級を打ち砕く。

デサント先を失った光線級は投げ出され、別の突撃級に避けれずひき殺されてしまう。

続いて突撃を始めた築城の不知火隊は、更に容赦が無かった。

帝国も試験配備した25㎜オンリーの突撃砲改型を構えて後方と側面から蹂躙したのだ。

 

これまでの陣地突破と積年の恨みが吐き出される。

ばら撒かれた殺意は、突撃級の大半をほぼ損害なく完封で勝ち切った。

古来から戦車無しの突撃級集団攻撃の撃破は偉業である、中国・ソ連軍以来伝統なのだ。

だが、良く連携して方針があれば、現代ならば戦車無しでも捌けると実証できた。

 

 

 

【ここぞ国のため 日本刀を試し見ん】

 

佐賀への攻勢はその突破戦力たる突撃級の喪失で失敗した。

戦車とガチンコで殴り合う突撃級無しで人類軍の戦線は突破不可能だ、なによりまずかったのは山間部で戦術機に漸減され、アードバーグが突入したせいである。

あの爆撃が突撃級の大半を瀕死か足を鈍らせてしまった、性格が悪い事に遅発信管を混ぜて投下したのだ。

更に後退戦闘で地雷を散布して後退した日本軍の対戦車地雷で次々足が飛ばされた。

要撃級や幾つもの小集団が筑後川から突破を図るが、韓国海軍の浦項級及び東海級フリゲートに揚陸舟艇に積まれた75MSSRが阻止射撃している。

筑後川を強攻して大牟田・荒尾への打通は不可能だ。

従い、佐賀の戦闘は完全に人類が有利になった。

 

「全車前へ!」

 

そして、国鉄による鉄道輸送を終えた帝国陸軍の主力決戦兵団も前線へ参陣した。

戦いは二日目に入り、長い日(ロンゲスト・デイ)は上陸橋頭保へ押し返されつつある。

多少疲れた毛色の有る西部方面戦車集団に代わり、陸軍最精鋭のエリートが参着した。

完全充足の戦車部隊は、日本刀が和紙を斬るように戦線をへし折った。

BETAの微弱な抵抗線をまるで無いかのように89式歩兵戦闘車と90式戦車が前進する。

もはや抵抗はないも同じだ!

 

「突入ー!」

 

戦車の群れは、遂に海岸を蹂躙する。

各所で絶望的な抵抗を続ける闘士級や、必死にのたうつ突撃級が120㎜の小隊射撃であっという間に絶命し、89式から降車した歩兵が掃討へ移る。

電話線を敷いた工兵が展開し、遂に電話が糸島から広島市へ繋がった。

 

「こちら糸島、我の攻撃成功。敵推定20万は我の総攻撃により壊乱し四分五裂!」

『了解、次は唐津に伊万里だ!』

 

猟犬が解き放たれた。

 

 

 

【大いなるもの、東より】

 

ワシントンDCは珍しく朝から景気が良かった。

各新聞は一面に【JP VICTORY】と戦地からの写真、佐賀城を背景に米兵と日本兵、そして学徒兵に韓国兵と中国兵が肩を組んで写真を撮っている。

人類の記録的な大勝利、しかも敵が新手を使ったが次々とそれを打ち破ったという事実。

それは人類全体の士気と自尊心を満足させた、国務省はその後の数ヶ月記録的に民需が増え、出生率も増えたと大戦果が記録された。

朝からCNNなどは【国連軍は現地軍と連携、果敢に戦い敵40万のうち25万は2日で撃滅した】との統合参謀本部の後方を流している。

……というのが、合衆国の国民としての勝利だった。

では、合衆国政府からすればどうだろうか?

 

「断然、攻撃あるのみだ。

 合衆国大統領の支持率は異星人へ撃ち込んだ巡航ミサイルの数で決まるのだよ!」

 

大統領が自信も満々という顔で主張した。

第二次大戦後に生まれた最初の大統領、若々しい彼は下半身も若々しいので、女性問題はとかく多かった。

対日政策も経済では対立したが、安保では「ナイ・イニシアティヴ」構想で日米を前線基地として押し返す構想を協力して来た。

経済屋だが、戦線好転は経済も動かす魅力だ、ついでに大統領支持率も上がる。

 

「まぁまぁ、それは現在進行中です。

 オペレーション・オデッセイはまだチョルウォン・ハイヴを潰すだけですが、朝鮮奪回に大きな意義を持ちます」

 

国防長官は共和党員らしい控えめな言い方をした。

大統領は民主党だが彼は別だ、軍事長官としての彼は「F-22要らねえだろ」と削減した男でもある。

 

「CIAも同様の意見です、長崎の要塞級がやや厄介ですが、数日以内でジャパン・アーミーがケリをつけるでしょう」

「NSAの分析ですが、ジャパン・アーミー及びROKA(韓国軍)などは損失が3万から3万8000、我が軍も300名近い死者が出ました。

 代わりに得られた戦果は……あまりに膨大ですな、35万から32万です」

 

流石に大統領もやや気が変わる。

戦果に釣り合うかについては愚問だから言わない、大統領は内政政策で当選したが、外地での大戦果を喜ばない国民は存在しない。

国防次官も概ね賛同している、国務長官は女性らしいユダヤ系なまりの英語で言った。

 

「例え50万将兵が死んでも価値ある勝利です。

 我々はアジアでの巻き返しを棄ててはいけない、アラスカの向こうも概ねです」

「それで、レッドなチャイニーズはどうだ?」

「国防次官、同盟国ですよ。

 それに戦果はかなりのものです、青島の重光線級排除の直後に限定反撃で青島で間引きを成功させています。

 ざっと2万は消えました」

 

情報長官はシンプルに報告した。

なにせ中国軍は情報収集ではまだ金の問題の都合がある、だから代わりにアメリカが測定しているのだが、中国軍のカメラがどんぶり勘定で計測している。

大陸特有のべらんめえではあるが、ちゃんとまともな共産主義者は統計を記録している。

 

「さて、では戦費はどんなものかな」

 

大統領は財務長官に視線を向けた。

大きな政府の志向する民主党内部にあって、民間投資銀行で出世し続けた天才児である。

 

「いつも通り莫大な戦費です、B-1ランサーで戦略核をしたのは高かったですな、それにジャパン・アーミーからまた核寄越せと来てます。

 連中本土決戦するから国債無効にするぞとか言いだしてましたよ」

「魔法の壺があると信じてるのか日本人は」

 

片手で大統領が頭を抱えた。

だがかけた価値はあった、今はそれで満足しよう。

大統領ミーティングは終了し、ホワイトハウスの会見室へ向かいながら、台本の内容を確認する。

地球最強の国の大統領は、そういう仕事がある。

 

「我々の勝利は今や目前に……」

 

喉の調子を確認し、何度か整え、水を飲む。

 

「我々の最大の成功は目前にある……」

 

うん、こんなもんか。

ネクタイを直し、身なりを整えた。

 

 

 

【晴れた日はイーグルに乗って】

 

合衆国の追加対日援助政策は、貿易問題の日米の妥協だと言う説がある中スムーズに進んだ。

戦車と戦術機の集中投入が長崎での残敵掃討を本土決戦3日目で終わらせ、決号作戦はその完遂を得たのである。

そして、学徒兵の大半はその動員を待機としつつも、実戦部隊から外された。

乗機を喪失した白嶺スズもハワイから太刀洗へ直行して来た輸送機の中から割り当てされたF-15Eの割り当てを奇跡的に確保した。

最大の理由は腕と言うより、朝鮮から生還した政治的理由からだ。

要するに帰還兵が朝鮮奪還をする絵が欲しいと言う、アメリカ合衆国などの国連軍の要望である。

 

「すげえなあストライクイーグルは」

 

スズは感嘆して呟いた。

まず、網膜投影装置は削除し機体全体のサブセンサーから、ゴーグル型の装置に変更。

これで目が疲れる網膜投影装置とおさらばで、機体の視界もシステムも完全改善だ。

だが何より興奮させたのは、その大馬力だ、こればかしは体感の話である、数字より乗るのが分かりやすい。

機動性に関してだが、これもファントムの数倍は良い、噂ではホーネットはもっとすごいらしいし、トムキャットもどえらいらしい。

だがストライクイーグルは”実に”スズ好みで、大馬力で高速で重武装だった。

 

「なんでお前そう渡来品好みなんだ」

「アメリカ製のが馴染むんですよ、知りません?最近の世代は多いんです」

 

編入された部隊の中佐はそう言った。

整備部隊のラジオは『これぞ正に、今次戦争における最大の軍事的成果と言えます』と大統領演説を流していた。

 

 

 

 

【オペレーション・オデッセイ】

 

国連宇宙海軍の再突入型駆逐艦は、ほぼ抵抗なく突入した。

米軍虎の子のSR-71戦略偵察機、即ちレーザーですら減衰する大気の分厚い雲に護られて成層圏を飛ぶSR-71は、照射時間中に逃げ切られるのだ。

あまりに高価なので米軍ですら戦略偵察任務でしか出せないSR-71が得たデータは、極めて重要なものだ。

本当に極東アジア地域から重光線級が激減している、そうなればもう決行だ。

動かない動目標へ9発のトライデントSLBMを斉射したアリューシャンのSSBNが、予定通り迎撃もほぼ受けずに鉄原ハイヴに飛び込んだ。

信管作動耕土ほぼ0で起爆したトライデントは、ハイヴ地上構造物を完全に吹き飛ばし、衝撃波で表層近くを吹き飛ばし、最下層の幾つもの地域を埋め尽くした。

 

『突入。神の加護を』

 

先陣をきるのは米軍空軍特殊部隊、同じく続くは近衛16大隊及び帝国軍、更に中国と韓国軍が入る。

ソ連軍が空挺保を縦深40キロ圏まで制圧、米海軍の援護を受けつつ海兵隊と日本海軍の支援も入る。

そして、ハイヴを救うべく黄河の戦線から兵力を機動した瞬間、人民解放軍が一気に反攻に転じ、ソ連軍はアラスカの援護を受けつつ再侵攻に移る。

遂に戦線の広さに敵が根を上げた。

そして、突入部隊はハイヴ最深度にて未確認の新型と会敵しこれを撃破。

アメリカ空軍特殊部隊が死体を運び出し、急いで横浜基地の研究施設へ移送する。

判明したのは脅威的な事実だった、恐らくBETAは真社会性動物、つまりアリが一番近いシステムなのだ。

 

「なるほどねぇ」

 

人類は、一つの主要攻撃目標を見つけた。

要するに、我々はハイヴの中の奥底のゴミをほじくり返してぶっ殺せばいいのだ。

彼らの結論は明確だった。

 

「じゃあこれ、全地球規模で機動戦やって、敵機動主力を引きずり回して潰せばよいではないか」

 

人類は”諦めて逃げ出す”と、”やけくそ”でしかないオルタネイティブ4および5を廃棄した。

人類の残存する機動戦力は極論すれば、さほど多いものではない。

エヴェンスクスクハイヴの建設阻止、マンダレーでの進攻阻止、重慶防衛の9・16作戦はアジア戦線を再整理した。

敦煌・ウランバートル・ブラゴエスチェンスクのアジア戦線を睨む3ハイヴへの圧力増加、更に海軍によるインド亜大陸とイランへ圧力を加える。

更にヴェルホヤンスク・オリョクミンスクのハイヴへのソ連からの進出だ。

 

オペレーション・オデッセイは、真実、始まったばかりだった長旅の一幕だった。

 

 

【あ号標的の困惑】

 

急速な人類の反撃と洗練化は、あ号標的に理解を与えなかった。

ハイヴが一つ消えた事に、月と火星のブレイン級は困惑している。

何故だろう?

 

答えは単純だ、理由などない、邪魔なのだ。

 

 

 

【オペレーション・アークライト】

 

全ての兵士諸君、全ての関係者に、この報告を伝える事を誇りに思います。

国連宇宙海軍は、かかるこの大戦の最終的解決案として、大攻勢を準備し、計画を続けて来ました。

人類はこの、西暦2002年を生きて迎え、そしていま、2003年へ入ろうとしています。

大きな犠牲を払い、ユーラシアの最期の土地に踏ん張っている。

しかし、全ての戦争と努力はこの瞬間の為にありました。

 

第五世代戦術機、F-35。

あるいは、大東亜連合軍のJ-21。

皆さんが涙をにじませて揃えたこの最新鋭機は、このアークライトの為、優先して作られてきたわけです。

 

我々は全ての力と、万苦の涙を偲んで諸官らへ託す。

カシュガルへ突入し、最優先攻撃目標へただただ前進し、制圧して欲しい。

全ての労苦は人類史は、この為に紡がれてきたのだ。

 

諸君、歴史を作れ。

 

オペレーション・アークライト、作戦開始時の演説。

西暦2002年12月8日、ケープ・カナベラル宇宙基地。

 

 

 

【ファスター・ザ・ライト】

 

ケープ・カナベラルの大量打ち上げが終わる。

メリーランド州のサイトRの国連宇宙海軍司令部は、作戦がどう奇跡が起きようと成功以外認めない腹つもりだ。

 

「全世界の工業力を搔き集めて建造した再突入大型駆逐艦24隻。

 全世界へ割り振って共同開発した第五世代戦術機、230機。

 全世界で開始される兵力、5400万。

 カシュガル最深部への部隊到着はおよそ38%は突入できる。」

 

素晴らしい作戦だ、呟いてみて彼は満足げな笑みを浮かべた。

現在の合衆国大統領、彼は本は聖書以外自発的に読んだことが無い類で、バリバリの行動主義者だった。

合衆国はワシントン以来この瞬間の為にあったとすら信じている。

 

「人類の英知の光、いつ見ても美しい……」

 

偵察衛星が、ソ連軍の100メガトン級大型大陸間弾道弾の着弾を伝えた。

スーパー・ツァーリ・ボンバー、或いはオーバーロード・ボンバー、米ソの合同研究が生み出した人類の最強の力。

これが、地表で炸裂すればハイヴはどうなる?

地球最古のハイヴ、大深度地下へ到達しかねているハイヴといえど。

 

『ソ連監視衛星から報告。

 目標ハイヴ第二層まで露出!』

『周辺敵勢力沈黙』

『全部隊が突入開始』

 

矢は、弦より放たれたり。

この場の高官たちは、いま再突入型駆逐艦でガタガタ揺らされている白嶺スズの事に何ら気にも留めていない。

再突入型駆逐艦<ユキカゼ>に詰め込まれ、F-35Bに載せられ、こんな仕事辞めてやると本気で叫んでいた。

神様、いい加減自分は働きました、そろそろ休ませてくださいよ。

彼女がそう言っても、神は何も語らない。

 

 

次回

「オルタネイティブ」

 

BETA大戦が終わる日は何時か?

 

*1
史実の広島への攻撃も雨で希釈され無害化されて海に消えた

*2
本編ラストで結構黒いタケミー喰われてるんですよね……武ちゃんに配備しろよ

*3
広島市でもあったらしい




サブタイトルは全てマブラヴの同期と呼べるゲームからです
この頃の反米的なエロゲーは今ではすっかり見なくなりました
姦染とかアメリカがなんかBC兵器作ってるとか言う設定でしたし、退魔忍は米連が居ましたし……
ユニテラリズム時代なアメリカの終焉と言うのが大きいですね
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