殺人鬼達に救われる道はあるのか? 作:コミカド
原作のネタバレも含まれますので、読むかどうかは自己判断でお願いします。
「へー、じゃあはじめ君と美雪ちゃんは明日から四ノ倉学園に通うのね。」
「そっ!んで、今日はその正式な申し込みの為に来たって訳。」
自殺未遂騒動の後、いったん別れた珠樹達と一たちは、その後連絡を取って近くのファミレスに集まって近況報告をしていた。
「そういえば、はじめ君も高2だからそろそろ本格的な受験勉強の時期だもんね。」
「ああ。でも四ノ倉学園に通いさえすれば、来年からヨユーでエリート街道待ったなしさ!」
「もう!通う前から調子に乗っちゃって。本当に仕方ないんだから、はじめちゃんは。」
珠樹の言葉にカッコつけて決め顔を作る一に、幼馴染の七瀬美雪は呆れた様子を見せる。
「けど金田一、お前が弁護士の先生と知り合いだなんて知らなかったぜ。」
すると美雪の反対となりに座った男子生徒が一に話を向ける。先程首を吊った生徒の救助に協力した、額のホクロが特徴的な少年だ。
「ええと、君は?」
「千家貴司って言います!金田一とは小学校からの友達で、同じ高校に通ってるんです。」
「千家君ね。よろしく。私は野々宮珠樹。こっちの2人は古舘恭一郎先生と、冬部蒼介先生。三人とも弁護士なのよ」
珠樹が三人纏めて自己紹介すると、千家は非常に興味を持った様子で目を輝かせる。
「やっぱ弁護士さんって良い大学に通っていたんですか?ちょっと参考までに教えてください。」
「うん?私と古舘先生は東大の法学部ね。それで、冬部先生は…」
「俺は普通の大学だよ。家庭の事情で色々大変だったけど、奨学金とか利用して卒業してすぐに司法試験に合格したんだ。」
「へー、じゃあ下世話な話ですけど、弁護士ってやっぱり儲かるんですか?」
「うーん、今はそうでも無いかな。なあ、野々宮?」
「そうね。今は平均年収700万円くらいだったかしら?」
「はあっ!?700万!?てっきり年収3000万くらい行くもんかと思ってた。」
冬部と珠樹の話に一が驚きの声を上げると、2人は揃って自嘲気味の笑みを漏らす。
「3000万なんて2000年代までの話よ。法律が変わって弁護士に成りやすくなったんだけど、そのせいで都市部を中心に弁護士の数が飽和してね。事務所に入ることさえ難しくなって、事務所に入れない野良弁護士も増えたのよね。」
「そうそう。俺も一時期正式な所属先が見つからなくて古舘先生の事務所に間借りさせて貰ってたしな。今はなんとか自分の事務所を構えてるけど。」
「で、でも、滅茶苦茶勉強して大して儲からないんじゃ色々辛くないですか?」
「そりゃあまぁ、資格を取るための労力に対しての金銭報酬は充実していると自信を持って言えないけれど、遣り甲斐はあると思うな。」
「そうね。私達が日本の法治国家としての一端を担っているという使命感があるから、あんまり金銭の高い低いは気にならないわね。」
そんな珠樹達達の話を聞いた千家は感心した様子で「やっぱ凄いなぁ~、弁護士になる人って」と感嘆の声を漏らすが、その横でコーラを飲んでいた一が口を開く。
「それはそうと、なんで先生達が四ノ倉学園に来てたの?もしかして、例の『首吊り鶏』の件?」
「『首吊り鶏』?なにそれ?」
初めて聞く単語に興味を持った珠樹が尋ねると、一は学園の講師である浅野という女性から聞いた話を珠樹達に話した。
曰く、一週間ほど前に学園の使われていない部屋でニワトリの死骸がまるで首吊り自殺したように天井から吊るされていた。
床には盗み出されたテストの答案用紙がばらまかれ、ニワトリの血が撒かれていた。
そして一枚の答案用紙には、ニワトリの血で『コ』という文字が書かれていたらしい。
「…なんか、ただの悪戯にしては手が込んでるわね。儀式的というか。」
「で、金田一君はその浅野って講師から、悪戯の犯人を捕まえてくれって頼まれたってこと?」
「そうなんすよ。ばらまかれた答案用紙が浅野先生の管理しているヤツだったんで浅野先生が疑われて困ってるらしくて。てっきり俺は珠樹先生達も学園の依頼を受けてその件を調査しに来たのかと思ったけど、違うの?」
「弁護士は探偵とは違うよ。僕たちは別件で来たんだ。」
恭一郎は苦笑しながら、学園長から受けたネット上の誹謗中傷対応の依頼について話すと、一達は納得したように頷いた。
「という訳で、私たちは事実確認調査の一環として学長から自殺事件を起こした生徒の個人情報を預かったの。」
「へー!それで何か分かったんっすか?」
「1つ気になる事があったわ。四ノ倉学園では過去10年で20人の生徒が自殺、或いは自殺未遂を起こしているけど、その内7件はここ2年に集中しているわ。」
「うげぇ、マジかよ!だから、自殺未遂が起きても学園の奴らは慣れた感じだったのか。」
「それと、これまでの場合自殺しようとした動機は受験ストレスだったり成績の伸び悩みだったりで、ある程度はっきりしてるんだけど。一件だけひどく不自然なケースがあるの。一番最後に自殺した生徒、『深町充』君ね。」
その名前を珠樹が口にした瞬間、飲み物を飲んでいた千家が激しく咳き込んだ。
「ちょっ、大丈夫かよ千家!?」
「あ、ああ、大丈夫だ。少しびっくりして…」
「ねえ、千家君。もしかして、深町君と知り合いだった。」
千家の様子を見て珠樹がそう尋ねると、千家は見るからに顔を強張らせた。
「…はい。俺は2年前から学園に通ってますけど、深町も同じくらいに入ってて。あんまり話をするような関係じゃなかったけど…」
そう説明しながら、千家は気まずげに視線をテーブルに向けた。
その態度に、珠樹は何か後悔の色が滲んでいるように感じられた。
「珠樹先生、その深町って奴の何が不自然なの?」
一が珠樹に尋ねる。
「一言でいうなら自殺する理由に全く見当がつかないって感じね。彼、高校に入学して間も無くに学校を辞めてるんだけど、四ノ倉学園で高校卒業認定を受けて美大に進学するつもりだったみたい。だから学園内では学習指導の他に、受験時に持ち込む用の絵画の制作も認められてたそうよ。成績的にも問題無し、絵画の制作も順調。なのに突然学園の敷地内で首を吊って自殺した。学園はそれを受験ストレスが原因としているけど…」
珠樹は『深町充』の資料を睨みながら暫し唸っていたが、程なくして何か決心した様子で立ち上がった。
「よしっ!やっぱり気になるわ。恭一郎先生、冬部先生、私これからちょっと深町君について調べて来るわ。学園側の対応は2人に任せるから。それじゃあ!」
「えっ!?ちょっと、珠樹先生!」
恭一郎が止めようとするのを尻目に、珠樹は自分の分の会計を済ませるとあっと言う間にファミレスから出ていった。
残された者たちは皆唖然としている。
「…相変わらずだな、あいつは。」
そう口にしたのは冬部だった。その口元には、どうしようもない、という様な苦笑が浮かんでいる。
「本当にすいません!うちの先輩が、御迷惑をおかけして。」
「良いよ、別に。あいつの性格は昔から良く知ってるし。それに、あいつが気になったって言う事には、大抵何かあるもんだしな。」
頭を下げる恭一郎に冬部は気にしていない風に言う。その言葉には、珠樹に対する深い信頼が感じ取れた。
その様子を見た一は面白い物でも見つけたかのようにニヤケ顔を見せる。
「へー、冬部先生って珠樹先生と仲が良いんだ。もしかして、2人は昔付き合ってたりとか?」
「ちょっと、はじめちゃん、失礼よ!」
「ははっ、期待に応えられなくて悪いけど、俺たちは一度だってそういう関係にはなった事はないよ。あいつとは司法修士課程の同期で、同業者で、そして…」
冬部の目が少し遠いところを見詰める。
「本当の意味で俺を罪と向き合わせてくれた、かけがえのない友人さ…」
その翌日、恭一郎は冬部と共に炎上事件の対応を行っていた。今回の場合だとやるべき事がはっきりとしている分、難しい作業は殆どない。
夕方前にはその日に完成を目指していた資料は完成し、昨日から連絡の取れない珠樹の帰還を事務所でのんびりと待っていた。
そんな最中である。
連絡先を交換している一から次のような知らせが届いた。
『二体目の首吊り鶏が発見された。』
恭一郎は冬部と共に四ノ倉学園へと向かった。
学園に到着すると、講義を終え中庭で待っている一、美雪、そして千家と合流する。
「金田一君、連絡をもらったけれどいったい何が?」
「前回と一緒だよ。首吊り状態のニワトリが、血とテストの答案用紙が巻き散らかされた空き部屋にあって、血で『モ』って書かれた用紙が見つかった。前と違うのは、『地獄の子守唄』を名乗る人物からの脅迫状が置かれていた事だよ。」
「『地獄の子守唄』だって?その脅迫状はどこに?」
「なんか学園長が持っていったよ。あいつ、完全に浅野先生を疑っていやがったぜ。』
「浅野って言うと、昨日金田一君達が入塾する時に対応してくれた人だったっけ?」
「浅野先生があんな事する訳ないよ。」
聞き覚えのある名前に記憶を遡っていると、新たな人物の声が聞こえた。
声のした方を振り向くと、眼鏡をかけた小柄な少年がいた。
「あれ?君は…」
「昨日はどうも有難うございました。宮園彰です。」
昨日、三人の学生に囲まれて暴行をされているところを助けた少年であった。
宮園と名乗った少年は恭一郎と冬部に向かってぺこりと頭を下げる。
「宮園君だね。僕は弁護士の冬部蒼介。此方は同業者の古舘恭一郎先生だ。昨日はアレから大丈夫だったかい?」
「はい。おかげ様で。昨日はろくにお礼も言えず、すみませんでした。」
「良いんだよ。それよりも、浅野先生というのは?」
「この学園で数学を担当している講師です。偏差値至上主義者っていう人もいるけど、凄く僕たちの事を考えてくれてるんです。」
「ああ、なんつーか、ハートがあるんだよな。」
「それにチョー美人なんだよな!」
宮園の人物評に千家と一が続く。
その様子から見るに、一部の評価は別として浅野という講師が生徒から信頼されているのが見て取れた。
「でも、その浅野先生が学園長から疑われてるってどうして?」
「部屋に巻き散らかされた答案用紙、どれも浅野先生が担当する教科で先生が管理していた物だったんです。それに、もともと浅野先生と学園長はそりが合わなかったみたいで…」
「そんな理由で…少し根拠が薄いような気がするな。」
「それに、生徒の中にも浅野先生の事を良く思わない奴がいて、浅野先生を追い出そうと変な噂を…」
「おいおい宮園ぉ!今度はチクリかぁ?」
突如として乱暴な物言いが割って入る。
現れたのは昨日宮園にサッカーボールをぶつけていた室井という大柄な少年である。
室井の登場に宮園の体が強張る。
それを見た恭一郎は宮園を庇う様に室井の前に立つ。
いくら室井が大柄とはいえ、それはあくまでも高校生としてはという話。
元柔道重量級の国体経験者の恭一郎の前では、完全に大人と子供。
室井は目の前に立ちふさがった山のような巨体にギョッと身を竦ませる。
「な、なんだよ?おっさんは退いてろよ!」
「今僕たちは宮園君と話してるんだ。君は後にしてくれないか?」
見下ろしながら掛けられた言葉に室井は一瞬反抗しようとしたが、恭一郎の圧を感じさせる視線に言葉を詰まらせる。
「何をやってるんだ、室井?」
そこにまた新たな人物が現れる。昨日、宮園が甚振られている様子を携帯で撮っていた少年だ。
「古谷さん!いや、このおっさんが!」
「ん?ああ、昨日の人達か。室井、相手にする必要はない。行くぞ。」
それだけ言うと古谷と呼ばれる少年は背中を見せその場から立ち去る。
驚くべき事に恭一郎にさえ反抗しようとした室井が何の文句も言わずに古谷の命令に素直に従い、その後を追って行った。
その姿はまるで主君と従者の関係のようだった。
「あの二人は?」
「室井と古谷。あの2人に仁藤という奴を加えた3人が浅野先生を学園から追い出そうと『首吊り鶏』は浅野先生の仕業だって吹きまわってるんです。」
「…どうしてそんな事を?」
「さあ?熱心に指導してくる浅野先生の事が疎ましかっただけなのかもしれませんけど、たぶんあいつらにとってイジメられるなら相手は誰でも良いんです。深町君だって…」
「やめろ宮園!適当な事を言うんじゃない!」
深町の名前を口に出した宮園を止めたのは千家だった。
「あいつは受験ノイローゼで自殺したんだ!昨日野々宮先生が変な事を言ってたけど、あいつは…」
「あ、ああ、分かった。分かったから落ち着いて、千家君。」
冬部から宥められ、千家はハッとし気まずげに顔を俯ける。
「すいません、俺、もう遅いんで失礼します。行こうぜ、金田一。」
「お、おう。じゃあね、古舘先生、冬部先生。」
友人の様子に戸惑いながらも、一と美雪は千家の後を追いその場を立ち去る。
宮園もそれを見送り「僕も失礼します」と言って暗い表情でその場を後にした。
残されたのは、恭一郎と冬部だけである。
「千家君、なんか抱えてそうだな。」
「はい。炎上事件とは直接関係ないかもしれませんけど、やっぱりこの学園、何かおかしい気がします。」
「だな。恭一郎、野々宮とはまだ連絡が取れないのか?」
「それが全然。一応メッセージは送ってるんですが…」
そう言った矢先、恭一郎の携帯が着信を知らせるべく震えだす。
画面を確認すると、ちょうど二人が話題に出していた人物からの着信である。
「もしもし、野々宮先生?いったい何処で何をしているんですか?」
『ごめんね。ちょっと色々調べてたんだけど、情報共有しときたいことがあるから話せないかしら?場所は昨日のファミレスで。』
「…どうします、冬部先生?」
「俺は構わないぜ。野々宮が丸一日何を調べ回っていたのか気になるし。」
「分かりました。野々宮先生、冬部先生と一緒に行きますね。」
『OK.じゃあ先に行って待ってるから。』
電話が切れると恭一郎は小さく溜息を吐いた。珠樹の様子から、決して軽くない事実が判明した事が、長い付き合いの経験から察せられた。
「いったい何を掴んだんですかね、野々宮先生。」
「さあな。鬼が出るか蛇が出るか…」
ほんの少しの不安を胸に抱え、恭一郎と冬部は珠樹の待つファミレスに向かった。
「まず結論から言うわね。深町充君は受験ノイローゼで自殺したんじゃないわ。」
3人が揃うと、珠樹は開口一番に恭一郎たちにそう告げた。
彼女の手元には調査情報を書き込んだメモ帳がある。
「深町君のご両親にあってみたんだけど、御二人も息子さんが自殺した理由には疑問を覚えていたわ。高校を退学したとはいえ、成績自体はまったく問題なし。本人も美大受験に向けてとても前向きだったらしいわ。それともう一つ気になる事が。深町君、彼女がいたみたいなの。」
「えっ?それって予備校にか?」
冬部の問いかけに珠樹は頷く。
「うん。お母さんによると予備校に通い出してから表情が明るくなって外に出かける事が多くなったみたい。最初は仲の良い友達が出来たのかな?って思ってたそうなんだけど、やたら身なりに気を遣うようになって新しい服を自分で買うようになったから、あっ、これはイイ感じになってる女の子が出来たのかなって気付いたそうよ。」
「なるほど。息子の変化には親が誰よりも敏感ってことか。で、その相手は?」
「それが分からないの。どういう訳か携帯の連絡履歴にもそれらしい名前は無くて、ご両親も困惑してたわ。」
「変ですね。今の時代、知り合いの連絡先を携帯に残さないというのは有り得ないと思いますし…」
もしかしたら深町充に気になる異性が出来たというのは母親の勘違いだったのでは?という考えが恭一郎の脳裏によぎる。
あるいは深町充は恋人の存在を他人に知られるのを恐れ、その痕跡を消していたのでは…
そんな事を恭一郎が考えていると、冬部が話を本筋に戻す。
「まあともかく、深町充君の自殺の原因は受験ノイローゼなんて単純な事じゃないってのが野々宮の考えなんだな?だとすると、いったい他にどんな理由があると思う?」
「それについて、もう一つ興味深い話をご両親から聞けたの。まず、深町君が高校を退学した理由は、同級生からのイジメだったの…」
「なっ!?イジメだって!」
珠樹の言葉に冬部は思わず声を上げる。その顔は一瞬にして強張っていた。
「だ、大丈夫ですか?冬部先生。」
「あ、ああ、すまない。大きな声を出してしまって…」
恭一郎から気遣われ冬部はハンカチで自分の汗を拭う。
その様子を一瞬痛ましげに見た珠樹は話を続ける。
「深町君は高校入学時から同級生に酷いイジメを受けてたらしいわ。学校に訴えたけど状況は改善せず、1学期の時点で不登校になって2学期が始まる前に退学したわ。それから間も無く高校卒業認定を得るために四ノ倉学園に入ったの。」
「そして美大への進学に前向きになり、気になる異性も出来た可能性があるって事でしたよね。順風満帆とは言えずとも、イジメで高校を辞めた時に比べれば随分と状況は改善できたように見えますけど…」
「一見すればね。ただ、どうもそういう感じでもなかったみたいよ。深町君はね、四ノ倉学園でもイジメにあってたみたい。」
「おい、それって本当なのか!?」
前のめりになる冬部に珠樹は重々しく頷く。
「うん。顔にあざを作って帰って来たことがあったし、せっかく描いた絵がボロボロになっていた事も有ったそうよ。本人はお母さんから聞かれてもイジメは否定していたそうだけど、顔つきが高校でイジメに会っていた時ととてもよく似ていたみたい。」
「という事はまさか、深町充君が自殺した理由は…」
イジメの可能性がある…
その認識が三人が座るテーブルに重い影を作った。
・冬部蒼介
年齢30歳、職業弁護士。大学卒業後、司法試験に合格。
やせ型で短髪の見た目をしており、友人が酔っ払って未成年に絡んでいる時に穏便に窘めその場を治める良識を持ち合わせている。
弁護士としては主に少年犯罪を専門にやっており、非行少年の更生活動にも力を入れている。
一方で、時折自分を露悪的に見せる事がある。
本作では司法修士課程時代の珠樹と同期で友人、恭一郎の司法修士課程先の受け入れ先と言う設定である。
以下、原作の重大なネタバレ!
中学生の頃、友人2名と共に同級生に対し悪質なイジメを行い、エスカレートした末に校舎の2階から突き落とす。下は芝生であり、2階の高さからでは大した怪我にはならないと思っての行動だったが、相手は打ち所が悪く首の骨を折って死亡してしまう。
その後、少年院に入って罪を償うが、出院後に当時の友人達と共に被害生徒の墓参りに赴いた際、被害者遺族が無理心中をしていた事を知る。
冬部自身の家族も、事件後に加害者家族として世間から追い詰められ首吊り自殺をしている。
天涯孤独の身になった冬部は、アルバイトをして学費を稼ぐ一方で、とある一家に送金をしていた。実は無理心中したと思われていた被害者遺族の中で被害生徒の妹だけは生き残っており、名前を変えて養子として育てられていたのだが、養父が亡くなり家計が困窮しているのを知った冬部は名前を出さずに金銭的に援助していた。
そうして苦学の末に弁護士になると、自分のような過ちを誰かに起こさせないために、少年犯罪を中心に取り扱う弁護士として活動している。
こうした事からも分かる通り、金田一少年シリーズ全体を見渡しても本当に数少ない、過去に取り返しのつかない罪を犯しながらも、それを本当に心から悔いて更生し真人間に生まれ変わったキャラである。