殺人鬼達に救われる道はあるのか? 作:コミカド
巽家での一件から3ヶ月後、一と美雪、そして剣持の3人は都内の喫茶店で待ち人をしていた。
程なく店の扉が開き、新たに3人組の来店があった。
店員に待ち合わせしている事を伝えると、3人組はまっすぐに一達のテーブルに向かってくる。
「久しぶり、はじめ君、美雪ちゃん、それに剣持警部も。」
「どうも久しぶりです、珠樹先生!それに…」
挨拶を交わした一は珠樹の後ろにいる2人に目を向けた。
「本当に東京に出てきたんだな、隼人、それと桐山ちゃんも。」
「はは、久しぶり。うん、今はこっちの高校に編入したんだ。環も一緒にね。」
そう言って巽隼人は隣に立つ桐山環と一達に笑いかける。
今回珠樹は隼人達と共に遺産相続騒動の顛末について報告に来たのだった。
店員に注文を伝えると、珠樹は一息ついて話し始める。
「まず隼人君についてだけど、いま本人からあったように東京の高校に編入したわ。正直学力面で心配があったんだけど、あまり問題なかったみたいね。」
「これでも一応独学で勉強してたからね。環も教えてくれてたし。」
環はかなり早い段階で隼人の演技に気付いていたそうで、学校の教科書や参考書を隼人に与えていたらしい。
そして驚くべき事に実は隼人と環は密かに付き合っており、仮にあのまま隼人の演技が明らかにされなかったら2人で駆け落ちする事を考えていたのだという。
「ほんと話を聞いた時は心臓が止まるかと思ったわ。16歳の男女が駆け落ちするなんて。どんな無茶をするつもりなんだと...」
「ごめんごめん野々宮先生。それについてはもえぎ姉さんからもしこたま怒られたんだから勘弁してよ。」
「そうだ!もえぎさんも東京に出てくるつもりなんだって!」
平謝りする隼人の隣で環が一達に報告すると、一達は意外という顔をした。
「へー、あの姉ちゃんが。なんかそういうのは興味ないと思ってた。」
「うん。僕も姉さんはずっと村に残るつもりでいると思ってたんだけど、色々と考えが変わったみたい。しかも分配される遺産の大部分をうちが経営してる会社の株で貰ったんだ。」
「株?そりゃまたどうして?」
「なんか将来的に会社の経営に関わりたいんだって。東京に出るのも、経営や会計について専門的な勉強をするためで来年東京の大学を進学するからなんだ。」
「あら、立派じゃない!誰かさんも見習わないとね。」
「うるへー。」
美雪の小言に一はストローでコーラをブクブクと言わせながら答える。
それを珠樹は微笑ましく見ていた。
「でも、もえぎさんが前向きに自分の未来を自分で歩み出せたのは本当に良かったわ。彼女、高校卒業後は花嫁修行後に親族の紹介で嫁ぐ事になってたそうよ。一概にそれが悪いとは言わないけれど時代も変わったし、女性であろうと家に囚われず自分の人生を自分で決められるべきだとは思うから。」
「僕も同感。もえぎ姉さんはこれまで何処か人生に諦念してる雰囲気があったけど、今は凄くイキイキしてる感じがするんだよな。ある意味あの遺産騒動があったから姉さんは家の呪縛から逃れられた感じはあるよね。」
「そうだ、遺産の分配は結局どうなったんだ?確か4人で話し合うみたいな事になってたと思うけど…」
「きっちり4等分に分ける事になったわ。さっき言ったようにもえぎさんは大部分を株にして貰ったけど、他は現金化出来るものは現金にして、相続税分を納税した残りを4人で分けた感じね。まあ多少揉めたけど。」
「揉めたって…まさかまた龍之介が何か文句つけたり…」
剣持が顔を険しくしながら尋ねると、珠樹は苦笑を漏らしながら首を振る。
「ああ、いや、龍之介さんが遺産の分配について異議を唱えたのは間違いないんですけど、その理由は自分には遺産を受けとる権利が無いってことだったんです。なんでも彼、紫乃さんと征丸さんの殺害を企てたみたいです。」
「なんですって!?それは本当ですか!」
「ええ。本人が告白しました。当主継承の儀が行われる日に、紫乃さんと征丸さんの飲み物に毒を入れて殺害するつもりだった。だから自分には遺産を受けとる権利は無い、と。」
「…それでどうなったんですか?」
「話し合いの結果、実行には移して無いから不問、という形にしました。殺されそうになった征丸さん本人も同意してたし、龍之介さんもそれ以上は何も言えなかったみたいです。」
「そうそう。なんか征丸さん、龍之介兄さんの事をなんとも言えない目で見てたよ。龍之介兄さんもまるで人が変わったみたいで、完全に意気消沈ってな感じで縮こまってたよ。」
ある意味憑き物が落ちたって感じかな…と隼人は感慨深げに呟く。
それを聞いて剣持は何とも言い難い表情になる。
「なるほどな…龍之介に征丸君を殺させようとする蔵之介の計画は、たとえ紫乃さんが征丸君を殺そうとしていなくてもあのままでは予定通りに事が進んでいたわけか…本当にギリギリだったんだな。」
「…龍之介さんはこんな事も言ってました。『自分はずっと不安だった。心の何処かで常に自分はこの家で異物のような感じかして、自分より父に可愛がられて人や愛されている存在を見ると心がザワザワしてイラついて、もし自分が後継者として認められなければ自分が自分じゃ無くなる。そんな不安があったような気がします。』って。」
「…つまり、龍之介も本当は感じていたのか。自分が巽家の人間では無いと。その不安を振り払うために当主の座に固執していたのかもな。」
だとすると、巽家での龍之介の人生は紫乃が願ったような幸せな人生では無かったのかもしれない。
裕福な家にいながら常に心の奥底で不安と孤独に苛まれ続けた、哀れな人生を送ってきたのかもしれない。
一方で征丸は、貧しいながらも偽りの母親の元で愛情と優しさを注がれ幸せを感じることの出来る生活を送れていた。
この世で最も憎い相手の子供に幸せを与え、この世で最も愛した我が子を幸せから最も遠い場所に置いていたのだとしたら、龍之介もまた紫乃の被害者の1人なのだろう。
「…龍之介さんは、もう一度イギリスに留学するそうです。巽家という家を離れ、巽龍之介としてどう生きるか考えてみたそうです。」
既に龍之介は日本を離れている。
遺産についての話し合いが終わると、龍之介は出国直前まで東京のホテルで過ごし、一度もくちなし村には足を運ばなかった。
紫乃とも、一度も面と向かって話をする事はなかった。
「まだ、2人が親子として向き合うには時間が掛かると思います。そう出来るようになるには、まずはお互いが自分自身と向き合う必要があります。」
「…征丸君は、どうしてますか?」
「征丸さんもくちなし村を離れました。今年大学受験なので勉学に集中し、その後はもえぎさん達と同様に東京の大学に進学するつもりだそうです。」
「つまり、巽家の子供達は全員村を離れるわけか。結局当主不在の状態が続くけど大丈夫なのか?」
「うん。それについては問題ないよ。親戚にもまだしばらくは誰を当主にするか決めないって伝えたし。そもそも今の時代、家督を継いだくらいで何が出来るって訳でも無いし、会社の方は父さんが死んでからもなんだかんだ回せてるから何とかなりそうなんだよね。」
むしろ会社経営なんて経験の無い10代の若僧が経営に口出しする方が現場は困るからホッとしてたみたい、と隼人は楽しげに語る。
「それと、紫乃さんについてですが…」
「っ!!紫乃さんに何かあったんですか!?」
剣持が緊張を孕んだ声で食い気味に聞く。
「ああ、いえ。特別なにかあったと言うわけではありませんけど、彼女も村を離れ岐阜市内の心療内科でカウンセリングを受ける事になったみたいです。」
「カウンセリング、ですか?」
「ええ。あの時以来、少々メンタルが不安定になってしまって身体にも影響が出ているそうで。それに、彼女が犯行に及ぼうとした動機についても一度詳しく診療を受けた方が良いと。」
「動機って、隼人の母ちゃんとの確執?」
「そう。学生時代、紫乃さんは綾子さんに執拗な嫌がらせを受けた。それが征丸さんの殺意の切っ掛けに影響したのは間違いないわ。おそらく紫乃さんはPTSD のような症状を患っているんじゃないかと思うの。」
「なるほどトラウマってやつか。確か征丸さんが当主に指名されて勝ち誇っている顔が綾子に似ていたから殺意を抱いたって言ってたな。その時、過去の記憶がフラッシュバックしたわけか。」
「…なんか、そんな話を聞くと我が親の事ながら申し訳なくなるよ。母さん本当にキョーレツな性格だったし、母さんのせいで辞めていったお手伝いさんも何人もいたし。」
一の言葉に隼人も複雑な表情で溜め息を吐く。
8年前に亡くなった母について、隼人が覚えている事いえば常に不機嫌そうにして事あるごとに他人に怒鳴り散らし癇癪を起こしている事くらいだ。
間違っても愛着は無いし、龍之介を除いて隼人やもえぎは母を反面教師にしていた程だ。
「…まあ、綾子さんが決して良い人では無かったのは間違いないわ。けれど巽家に嫁いでからの彼女の人生が紫乃さんが思っていたような裕福で恵まれた人生だったかというと、私は疑問を覚えるわ。」
「えっ?どうして、珠樹せんせー?」
意外な物言いに一が疑問を口にすると、珠樹は少し憂いのある顔つきで語り始めた。
「綾子さんが巽家に嫁いだのは高校を卒業してすぐ。相手の巽蔵之介さんは当時既に50代半ば。完全な家同士の思惑が絡んだ政略結婚よ。蔵之介さんは中々結婚して跡継ぎを作らない事を親族から詰められ、綾子さんの実家も綾子さんが巽家に嫁ぐ直前は財政が悪化して結婚後は巽家の支援を受けてたみたい。つまり、蔵之介さんと綾子さんの結婚は必ずしも当人同士が望んだものでは無かったという事よ。」
そして巽家に嫁いだ綾子は嫁入りした翌年から立て続けに3人の子を産んだが、年々精神状態は悪化していっていたらしい。
「18歳の女の子が家の都合で見知らぬ土地に嫁いで自分の父親よりも年上の男性の子供を産む。それって当人の立場になって考えたら酷く心の負担になる事だと思うの。それに蔵之介さんと綾子さんの関係も決して円満なものでは無かった。やっぱり年の差がネックになってたみたい。」
「…確かにそうだな。そこまで年齢差があると女性の方はもちろん、男性の方も相手をどう扱って良いか分からなくなるもんだ。なのに周囲からは跡継ぎを作るように求められるとなると、まともな夫婦関係は難しいだろう。」
家庭持ちの剣持からしても、巽夫妻が円満な夫婦関係を築くのは非常に難しい環境であるように思えた。
嫁いだばかりの綾子の心境を考えると、恐らく彼女は親に売られたと感じていたのではないだろうか?
高校を卒業してすぐに好きでもない相手に嫁がされ、50代半ばの男性と子作りをするように周りから強制される。
周囲には友人はおらず、村人たちは皆古い因習を信じ切っている。
それまで自分が何でも中心であることを望み、それが実現できる環境にいた綾子にとって、巽家と言うのは地獄のような監獄に思えたかもしれない。
精神を苛まれ周りに当たり、それで余計に周囲から距離を取られ孤独を深める。
そんな悪循環に陥っていたのかもしれない。
「…そういえば母さんが笑ったところ、一度も見た事が無かったな。」
隼人はふとそんな事を思い出した。
幼い頃の隼人の記憶にある母と言えば、いつも使用人に怒鳴り散らし青筋を立てていたか、死に際に布団に横になりボウと庭に降る雪を部屋の窓から眺めていた姿しかない。
写真に映る綾子は常に感情の見えぬ鉄仮面で、その瞳は暗く何も映していなかった。
「母さんは、寂しかったのかなぁ…」
「…かもしれませんね。巽綾子さんがどのような想いを抱き29年の人生を終えたのかは分かりません。だけどどうして、私には名家に嫁げて幸せだったと彼女が思っていたようには思えません。」
しんみりとした口調で珠樹が語り場が静まり返る中、剣持は紫乃の事を思った。
この話を紫乃が聞いたら何を思っただろう?と。
紫乃が貧しいながらも征丸と支え合いながら生きている間、綾子は誰1人心を許せる相手を得られず1人寂しく29年の短い人生を終えた。
もしそれを知っていれば、紫乃はあんな馬鹿な真似はしなかったのでは、と詮なき考えをしてしまうのは無理からぬ事だった。
丁度よく隼人達が頼んだ飲み物が届き、剣持は一旦口を潤してから口を開いた。
「しかしながら、巽蔵之介という男もとんでもない男ですな。実の子である征丸君を龍之介に殺させ、お気に入りの隼人君に家督を継がせようとするなんて。」
「うーん、父さんも普段から何を考えてるか良く分からない人だったからなぁ。なんか腹の底が見えない感じ?でもまさかそんな事を考えていたなんて…」
幼い頃に可愛がられていた隼人にしても、父親が大それた計画を企んでいた事は未だに信じられない気持ちがあるようだ。
それを口にしている隼人の事を、珠樹が何とも言えぬ表情で見つめているのを一は目敏く気付いていた。
近況報告を終えて一同が解散した後、一は1人になった珠樹を呼び止め「少し話をしませんか?」と誘う。
少し驚いた様子の珠樹だったが、一の瞳の奥に謎を解く者特有の知性の光を認め頷いた。
「それで、はじめ君、私に話って?」
近くの公園に移動し先に口を開いたのは珠樹だった。
それに対し一は気楽な様子で答える。
「いや、ちょっと気になる事があって確認をしとこうと思って。」
「気になる事?」
「うん。どうして蔵之介は珠樹先生に2枚目の遺言状を託したのか?それがずっと気になってたんだ。」
巽家では長年岩田が顧問弁護士を務めてきた。
にも関わらず、今回に限ってはわざわざ珠樹を呼び寄せて事件の鍵となる2枚目の遺言状を託すまでしている。
岩田ではなく珠樹に2枚目の遺言状を託す意味があったのか?
それが一の抱いた謎であった。
「…はじめ君は、その謎が解けたの?」
「まあ、『謎は全て解けた』とは言えないけど、それでもこの事件のもう1つの真相だと思う物には心当たりがありますよ。」
そう言うと一はバッグから2冊の小説を取り出した。
「それは…」
「『犬神家の一族』と『八つ墓村』。珠樹先生は読んだことある?」
「…ええ、八つ墓村の方なら。犬神家の方はまだよ。」
「そうなんだ!でも分かるよ。なんか身内が取り上げられた作品を読むのって気が引けるんだよな!俺もくちなし村で北見さんに勧められて初めて読んだんだ。」
「…どうだった?読んでみた感想は。」
「そうだな…やっぱジッチャンは凄ぇなってのもあったけど、一番印象的だったのは『ラストが思ったよりも爽やか』だった事かな。」
「ラストが爽やか?」
「そう。どちらも悲惨な事件が起きてはいるけど、生き残った人達は懸命に前を向いて、辛い事件を乗り越えて未来に向けて歩いていく。そんな風な希望があるラストが描かれているんだ。」
一の言う通り、どちらの事件も関係者達はラストは生き残った人々が前を向いて歩き出す様子が描かれている。
実際に珠樹の祖父母は事件後に結婚し幸せな家庭を築き、犬神財閥も紆余曲折ありながらも事業形態を変え現代まで存続している。
八つ墓村の主要人物も事件を経て埋蔵金を発見すると共に事件で知り合った女性と結婚し子供を儲け、八つ墓村自体もその後事件関係者が興したセメント企業による近代化に成功し、今では事件その物を観光資産として過去の物とした。
「蔵之介さんが珠樹先生に依頼を出したのはこれがあったからじゃないかな?珠樹先生が悲惨な事件を乗り越えた『犬神家の末裔』だったから、自分が死んだ後に骨肉の争いが起きることを危惧した蔵之介さんは珠樹先生に遺産相続の始末を着けて貰うように頼んだ。」
「………」
「蔵之介さんの本当の狙い、それは巽家に溜まった膿を出し切って、その上で自分が真の黒幕として振る舞うことで子供達の反抗心を自分に向けさせ、父親の思い通りにはさせないと協力して事に当たるように仕向ける事だったんじゃないかな?」
おそらく蔵之介は一枚目の遺言状が公開されれば紫乃が征丸に殺意を抱く事を見越し、その情報を珠樹と共有していた。
だからこそ珠樹は北見に紫乃と龍之介をマークさせていたのでは無いだろうか?と一は考える。
「結果的に見れば、巽家の四兄弟はアレだけ複雑な因縁と憎しみに翻弄されながらも一応はお互いに納得した形で遺産相続を終え、それぞれが家ではなく自分自身の人生の為に前を向いて歩きだし始めた。誰1人犠牲を出さずに。考えられる限り最も丸い形で事が治まった。親としては、これが一番望ましい結末だったんじゃねえかな?それに…」
一は珠樹の目を見ながら愛嬌のある微笑みを浮かべながら言った。
「珠樹先生的にもこういう仕事の方が好みでしょ?だから珠樹先生は蔵之介の依頼を受けたんじゃないの?」
一の指摘に珠樹はキョトンと目を丸くすると、不意に吹き出し笑った。
「アハハっ!そういう事ね!それが君が私達を疑った切っ掛けだったのね!」
一は何も言わない。
ただ悪戯に成功した様にニヤリと笑みを濃くするだけだ。
ひとしきり笑った珠樹は目の端の涙を拭う。
「ごめんなさいね、はじめ君。私は弁護士だから依頼人の心情みたいな個人情報はおいそれと明かせないわ。だから君の質問には否定も肯定も出来ないの。」
「あー、そういやそうか。まあ、もしかしたらって話ですよ。全部俺の『想像』です!すみません勝手なことを言って。でも…」
一は無邪気な笑みを消して少しだけ真剣な表情を作ると珠樹に対して頭を下げた。
「俺思うんですよ。もし珠樹先生がいなくて、紫乃さんを止められなければ、彼女はもっと恐ろしい『獣』になって、更なる悲劇を産み出していたかもしれないって。だから珠樹先生、本当にありがとう御座います。」
そう言って頭を上げた一は、「じゃあ、また!」と言い残し美雪達が待つ方へと歩き去って行った。
それを見送った珠樹は1つ息を漏らすと何ともなしに空を見上げた。
「そういう事も...あったのかしら?蔵之介さん…」
珠樹の脳裏に、在りし日の蔵之介との会話が思い出される。
『犬神珠樹さん、貴方は犬神家の惨劇を止めるには、どうすれば良かったと思いますか?』
『…そうですね。難しいとは思いますが、結局は話し合いで解決するのが一番良かったと思います。遺言状に振り回されるのではなく、互いにそれぞれの言い分を話し、時には譲歩し、その上で関係者が一番納得できる形で遺産を分配する。それが生きている人間が誰も傷つかず、丸く治める事が出来る唯一の方法ではないでしょうか?』
『…ええ。そうですね。』
『私もそう思います。そうなって欲しいと…』
斯くして獣は去り、子供達はみな家から旅立った。