機動戦士Gundam_GQuuuuuuX 大地の子らの旗の下に 作:ティタマチュ
失った少女のその後1「全てを失った日」
サイド6『イズマコロニー』、土砂降りの夜の街を1人の少女が走っていた。
「シュウジとのキラキラは私だけのものだったのにっ…!」
そう言っている
いつもは『シュウジ・イトウ』と組んでクランバトルに参加していたが今日は邪魔が入りいけなかった。
そして愛機である『GQuuuuuuX』に乗っていたのは親友であるはずの『ニャアン』だった。
色々と心に整理が付かなくなったアマテは土砂降りの中を走っていた。
「もう、帰ろうかな…」
そう言っていたアマテの携帯が鳴り響く。
電話の相手は母親である『タマキ・ユズリハ』からだった。
「もしもし、お母…」
「アマテ!貴方何をやったの!?ジオンの新型MSを盗んだって嘘よね!?」
母親から言われた事に関して確かに心当たりがあった彼女だがいきなりバレるとは考えられなかった。
通話しながらニュースのサイトを見るとそこには速報でこう書いてあった。
『イズマコロニー在住の女学生。ジオンの新型機を強奪か!?」
驚いたアマテが恐る恐るその記事を見てみるとそこの中には
『イズマコロニーに在住する女学生「アマテ・ユズリハ」さんがジオンの新型MSを強奪した』
『「アマテ・ユズリハ」さんはジオンの新型MSを奪った後、軍警の機体に損傷を与えて逃走。その後、クランバトルに参加していた』
『機体の出自を怪しんだ「カネバン有限公司」が調べているとジオンの軍人が接触し「アマテ・ユズリハ」さんがジオンの新型MSを強奪していた事が発覚した』
『新型MSは正式なパイロットの元、改めて「カネバン有限公司」の元でテストを行っている』
これを見たアマテは携帯を落とし崩れ落ちた。
「う、嘘だよね…。私、最初から騙されていたの…?」
泣き叫ぶ気力すら無くなり、ただ目から涙がこぼれ落ちる。
『シュウジ・イトウ』も『ニャアン』も『カネバン有限公司』も全部ジオンと繋がっていた。
GQuuuuuuXは最初からニャアンの物で自分は機体のテストに邪魔な軍警を排除する為の捨て駒だった。
シュウジのあの態度も嘘で本当は裏で馬鹿な自分の事をニャアンと一緒に笑っていたのだろう。
もしかしたら本当は最初からニャアンと付き合っていたのかもしれない。
だからクランバトルにも一緒に出ていたのだろう。
「…あはは。私、ただのピエロじゃん…。」
自分は掌の上で踊っていたただの愚かなピエロだった。
『シュウジ』、『ニャアン』、『カネバン』、全てに持ち上げられて最後の最後に身包みを剥がされて罪まで擦り付けられた。
普通じゃない日常を望んだ結果、最終的にはジオンによって犯罪者の汚名を擦りつけられた。
信じていた者達に裏切られ自分の愚かさを後悔したアマテの心はボロボロになっていった。
だが、彼女の身体は動いていた。
どうにかして逃げなければと思ったアマテは自販機でありったけの飲み物を買うと学生証も携帯も捨てていった。
そしてひたすら走ってスペースポートを目指した。
とは言え、スペースポートとなると当然自分の情報は出ている。
「えっと…、こっちかな。」
狙いは貨物の輸送船だった。
そこの荷物に紛れてサイド6から逃げる為だ。
流石に貨物の輸送船まではまだ監視が厳しくなっていなかったらしくアマテはその中で『ある行き先』を探していた。
「…あった!地球行きの貨物輸送船!」
アマテが探していたのは地球行きの輸送船だった。
「…地球かぁ…。」
彼女にとって今や地球への感情は複雑だった。
シュウジが『薔薇を探しに行きたい』と言っていた地球。
しかし、今となってはそれも嘘かもしれない。
本当はサイド3でニャアンと一緒に暮らせる家が欲しかったのかもしれない。
アマテの心には不信感が湧き出ていた。
「でも、今は…!」
アマテは輸送船の貨物の中に入ってひたすら息を潜めた。
空港の監視に来た軍警も流石に貨物の中身までは見なかった。
輸送船は発進し、彼女は無事にサイド6からの脱出に成功したのであった。
貨物の中でアマテは身体を動かさず最低限の水分だけで過ごしていた。
そして真っ暗な貨物の中、基本は眠る事で体力の消費を抑えていた。
しかし、彼女が見るのは悪夢ばかりであった。
『軍警に捕まり刑務所に送られる夢』
『ジオンに捕まり、人体実験される夢』
『そもそも捕まる以前にジオンの兵士に撃たれる夢』
何度も何度も悪夢にうなされていき、心は疲弊し壊れていった。
そして今更、地球に行った所でどうしようもない事も理解して来てしまっていた。
身分を証明する物が何も無い今の自分では当然マトモなアルバイトに就く事なんて出来ない。
精々、ニャアンの『
最悪、悪人に捕まりそういう場所で身体を売らされる羽目になるかもしれない。
「うっ、うぅぅぅぅぅぅ…!」
アマテの目から大粒の涙がこぼれ落ちた。
自分のいる貨物が動かされているのを感じたアマテはようやく輸送船が地球に到着した事に気付いた。
そして、脱出すると再び逃げる様に走り出す。
降り立った地球も逃げ出した時のイズマコロニーの様に土砂降りだった。
夜になって雨の勢いは収まってきたが彼女の目に生気は殆ど無かった。
心身共に疲労困憊で何も考えられなかった。
目的も理由も無くただ、走っていた。
走っていればいつかどこか自分にとっての安寧の場所があると信じて。
「はあっ、はあっ…」
しかし、アマテはとうとう立ち止まってしまう。
そんな彼女を車のヘッドライトが照らした。
何も映っていない様な目で彼女がライトの先を見るとそこには車が走って来ている。
驚きのあまり茫然とし、立ち止まってしまう。
そして彼女は全てを諦めたかの様に目を閉じた。
一方、車は急に出てきた上に立ち止まった少女を見ると急ブレーキをかける。
そして彼女のギリギリ前で停止した。
「どうしたのかね?」
後ろの席に乗っていたジャミトフは運転手に尋ねる。
「いや、急に目の前に女の子が飛び出して来まして…」
運転手が指を指した先には少女がいた。
そして、少女はまるで糸の切れた人形の様に崩れ落ちる。
それを見たジャミトフは車のドアを開けて外に出る。
「閣下!?」
側近として隣に乗っていたジャマイカンもそれに続く。
「おい、君!大丈夫か、君!」
ジャミトフが少女を軽く揺らすと少女は息をしていた。
ただ、疲労で眠ってしまっただけの様だ。
「閣下、この子は一体…?」
「分からんが、今はとりあえず家に連れて行くとしよう。何か不穏な気がするからな。」
そう言うとジャミトフとジャマイカンは少女を車に乗せると自宅へと急いだ。
ジャミトフ自身もこの少女を何故か放っておく事は出来なかった。
「う、う〜ん…」
アマテはようやく目を覚ましたがそこに映ったのはまるで誰かの家の中と言える光景だった。
「目が覚めたみたいだな。」
1人の男性がアマテが眠っていた部屋に入って来た。
アマテは警戒するが男性が
「そんなに怖がらなくても良い。私は君をどうこうするつもりはないから安心してくれたまえ。」
と言ったので少し警戒を弱めた。
「私は『ジャミトフ・ハイマン』という者だ。君にいくつか質問をさせていただきたい。」
ジャミトフはそう言って目が覚めた少女にいくつかの質問を行った。
『どこの出身か』
『両親等、家族はいるのか』
『何故、雨の中を走っていたのか』
しかし、少女はどの質問にも答える事は無かった。
それを見たジャミトフは頭の中で
(おかしい…。路上生活者にしてはあまりにも身なりが良過ぎる。もしかして人身売買で売られそうになったのを逃げて来たのか…?)と推測を立てていた。
それを見ていたのか少女は怯えた様子だった。
「怯えさせてしまってすまなかった…。今までの質問には答えなくても構わない。だが、これだけは答えてほしい。」
ジャミトフは謝った後に改めて質問をした。
「君の名前を教えてほしい…。私も呼びようが無いのでな。」
その質問を聞くとようやく少女は口を開いた。
「………マチュ…。」
これがジャミトフとマチュの最初の出会いだった。
マチュが指名手配されるのが早過ぎる件に関してはエグザベから報告を受けたキシリアがサイド6を脅したからです。
サイド6はそれに屈して『アマテ・ユズリハがGQuuuuuuXを盗んだ』という事にしました。
また、地球行きの貨物船に関してはたまたまあったとお考え下さい…。