ゆるっと書いてまいります。
ペルナ=グロザ・ストルミナ。
それが今の私の名前。そして有り体に言えば元男の転生者である。
名前の響きからお察しの通り、私は女に生まれ変わってしまった。
前世の話は、苛烈極まりない超絶ブラックな会社で働いており、仕事に忙殺されて禄に休みも取れず、いつも現場で暴力沙汰にあったため余り多くを語りたくない。強いて言えば、電気を取り扱う仕事をしていたとだけ言っておこう。
さて、今現在の状況を整理しよう。
私はこの世界にストルム伯爵家の次女として生を受けた。
意識がはっきりと芽生えた時は、両親や姉に甘やかされていたと思う。
父親はイケオジ、母親はナイスバディのセクシー美人、姉は超がつくほどの美少女だ。
私の名前に関して疑問を呈する人もいるだろう。これに関して、私への名付けで父と母が大喧嘩した挙げ句、妥協案として「両方つければいいだろう」ということで、こうなった。ペルナが母の、グロザが父が考えていた名前である。ちなみに姉はプリティという名前を考えていたが、採用されなかった。
両親と姉の愛情を一身に受けて、育って数年。
自分の足で立てるようになった年齢のときに、声を発して両親を驚かせようと思った。前世の両親も、私が初めて言葉を喋ったときはとても喜んだと言っていたので、それを実行しようとした。
ところが、言葉を出そうとしてもこの世界とは異なる言葉、有り体に言えば前世の「日本語」しか発声することができず、この世界の主流言語の一切を喋ることができなかった。読み書きは出来たのが、唯一の救いだろうか。
まったく言語体系が異なる言葉しか喋らない私を、両親と姉はとても気味悪がった。
もちろん、聞き取りは完璧に理解できる。両親や姉、屋敷に詰める使用人たちの会話や言葉も理解はできる。だが、言葉がどうしても上手く発声できなかった。上手く喋ることができないのに癇癪を起こした母に、精一杯の土下座もかましたが、何が気に入らなかったのかますます機嫌を損ねるだけだった。
言葉が喋れないのならば、精一杯家業を手伝おうと努力をすることにした。
父が書類仕事の計算を間違えていればすぐに訂正して矛盾点を指摘し、母が商人の口車に乗せられてボッタクリの買い物をしようとした時は、正規価格と商人が提示した値段を照らし合わせた走り書きを横から見せて阻止したり、姉が欲しがったアクセサリーを見様見真似で本物の商品そっくりに作ってプレゼントしたりと、色々立ち回ってみた。
その結果どうなったと思うだろうか。
メチャクチャ不気味がられて屋敷の離れに幽閉されました。Why?
確かに、わずか十歳の言葉が喋れない子どもが大人の仕事に口出しをしたり、大人でも頭を抱えるような書類を捌いていたりしたら、不気味に思うのは正常な反応だろう。私だってそんな場面に出くわしたら扉をそっと閉じて、見なかったことにすると思う。
離れに幽閉されてからは、使用人たちの態度も手のひらを返したように冷たくなった。姿を見ようものなら、ツバを吐かれるレベルだ。泣きそうになった。
幸いにも、一人だけ老齢の執事は私の世話を積極的にしてくれた。その執事は一人でも身の回りことをできるように教えてくれたり、言葉の練習にも付き添ってくれた。そして私が(この世界の人間にしては)ずば抜けた知性と人間性を持っていると、常々私に語りかけていた。
その執事は私の世話をしていることによって、両親から冷遇されても気にもとめず、甲斐甲斐しく世話を焼いてくれた。
ある日の夜。
それはとても激しい雷雨が吹き荒れる嵐の夜だった。
私がスヤスヤと眠っていると、突然天井が暴風で吹き飛び、その轟音で目が冷めて呆然としている私に追い打ちをかけるように雷が直撃した。前世で経験した、電圧が身体を駆け巡る感覚と電気が爆ぜる轟音が鼓膜を突き破る。
その時に私はまた死んだ、と思った。しかし、意識は暗転せずに逆に力が身体を巡る感覚が駆け抜ける。
「無限のパァゥワァアアアアアア!」
身体が熱い。身体の内側を何か、物凄く巨大な力が駆け巡る。衝動的に、某7つの玉を集めれば願いが叶うバトル漫画の必殺技のポーズをとって、私はその力を開放した。
手の先から紫色の、とてもキレイな光線が発射されて、分厚い嵐の雲を突き抜けていった。それからしばらくして、空中で大規模な爆発が起きて辺り一帯を覆っていたドス黒い嵐の雲を吹き飛ばして、星が瞬く満点の夜空が顔を見せた。
その時に見た星星と月は、まるで力を得た私を祝福しているかのように輝いていた。普段は真ん丸の形をしていた月の一部分が、まるで何かでえぐり取られたような形をしていたが気のせいだろう。
その後、私は怒涛の日々を過ごした。
私が引き起こした事象を観測した国のお偉いさんや、胡散臭い格好をした魔術師や天文術師たち、白い方衣を着たキレイなお姉さんたちに事情聴取をされて、実家から引き離されて教会が運営する施設に引き取られて、身体のあちこちを検査されては、力をコントロールする訓練をする毎日を送った。
以上のことをかいつまんで、辿々しい大陸共通語で対面に座る、こめかみを押さえて唸っている同期の聖女に説明した。
「私、爆誕。めでたし」
「ちっともわかりませんわ!?」